PandoraPartyProject

シナリオ詳細

喋ってはいけないダンジョン24時

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■伝承の眠る場所
 いつかどこかの世界。剣と魔法が力を示す世界において、人と魔物は領土を巡って争っていた。人は常に劣勢を強いられていたが、一人の勇者が現れた事により逆転の勝利を掴む。
 彼は光り輝く剣を携えており、心根優しく、まさに勇者。戦が終わった後に数多の権力者達が彼を求めたが、行方はつかめず。ただ一つ。彼が後の世の為にと残した剣のみが、迷宮の奥にて目覚めを待つ。
 ならばせめて剣を手にと、或いは我こそが新たな勇者にと。権力者に雇われた傭兵、命知らずの冒険者たちが迷宮に向かったが、誰一人として剣を手にする事叶わず。
 そこは人であるならば、守る事が難しい「ルール」によって縛られていたのだ。
「あ? あの迷宮の話を聞きたい? 物好きだなあんたも」
 迷宮近くの街。酒場を経営するマスターがある冒険者に話を振られ、渋々と言った感じで語り始める。
「わずかに逃げ帰ってきた奴から聞いた話だが、あそこじゃ喋っちゃいけないらしいぜ。うっかり声を出しちまうと、世にも恐ろしい何かに襲われるって話だ」
 逃げ帰ってきた者達も逃走に必死だった為、「ソレ」が何かはっきりとは見ていない。しかしこの世のものとは思えない形相で、いくつもの武器を操る大男みたいだったと。
「権力者の皆さんは躍起になって次々傭兵を送ってきているがね。悪いことは言わねぇ、あんたもあそこへは入らない方がいいぜ」
 ま、無謀ものが寄ってくれるおかげで俺は繁盛してんだけどな、とマスターは締めくくる。

■前人未到のダンジョンへ
「……っていう場所があるらしいんだけど、行ってみたい人はいるかしら?」
 境界案内人のポルックスが開いていた本を閉じて、集まったイレギュラーズ達を見回す。
 イレギュラーズ達は困惑していた。喋ってはいけない、とはどういう事なのかと。
「普通に声を出すのは勿論、くしゃみとか悲鳴とか。とにかく声になっちゃ駄目みたいね。ただの呼吸は見逃されるけど、あくびはアウトとか」
 ようは口を開くな、ということであろう。わかっていれば対策の取りようもある。
「人って、無意識に声を出しちゃう事が結構あるものね。ほら、今、あなたも声を出したわ」

NMコメント

 タイトルは年末の某アレですが、内容はギャグじゃないです以下略です。
 今回出向いていただくダンジョンは2階層と浅いですが、声を出すととんでもないペナルティが課せられます。ご注意を。最奥まで到達し、伝説の剣を手にすれば魔法陣で入り口まで帰還できますので、片道だけの事を考えてくだされば結構です。
 以下詳細
ルール:会話、くしゃみ、あくびなど。『声』を出すと強化されたボスが即座に襲いかかってくる
 ダンジョン内には雑魚敵としてスケルトンやゴースト、スライムなど声を出さない魔物達が棲み着いている。
 またトラップもあり、驚かせて悲鳴を出させるもの。くすぐらせて笑わせるもの。埃を撒き散らしくしゃみを出させようとするものなどがある。

ボス:阿修羅像×1
 ルールを破らなければ剣の前に鎮座しているだけ。特に反撃もしてこず、スルーできる。
 ルールを破った場合ダンジョン内ならばどこまでも追いかけてくる。複数の手に数多の武器を持ち、強烈な連続攻撃を繰り出してくる強敵と化す。武器の数のせいか、防御は手薄。

 以上となります。
 喋ってはいけない、ので仲間内でのコミュニケーションはボディランゲージや手話。或いはテレパス類などあると良いかもしれませんね。

 それではよろしくお願いいたします。

  • 喋ってはいけないダンジョン24時完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月10日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ノワール・G・白鷺(p3p009316)
《Seven of Cups》

リプレイ

■意外としんどいものです
 そのダンジョン、洞窟はすぐに見つかった。街の酒場で聞いた通りの道筋、外観で迷う事はない。されど、油断してはならない。ぽっかりと口を開いた洞窟は、幾人もの冒険者、傭兵を喰らってきた捕食者なのだから。
 洞窟の前で四人のイレギュラーズはそれぞれが用意した『声を出さない為』の道具を着用する。
「はい、これ。皆の分」
 『桜花絢爛』藤野 蛍(p3p003861)は仲間にマスクを手渡していく。地球の日本で生きた彼女にとっては常用していて当たり前の物品なのだ。特に抵抗もない。『桜花爛漫』桜咲 珠緒(p3p004426)は受け取ったマスクを着ける前にマウスピースを咥える。
「無意識に力んでしまうこともあるでしょうし」
 力を出しやすくするには、猿轡よりもこっちが良いだろうと考えたようだ。実際、口を意図的に塞ぐというのは想像以上に肉体にも精神にも負担をかける。
 今まさに赤い顔をしている『真術師[マジュツシ]』ノワール・G・白鷺(p3p009316)がいい例である。道すがら声を出さない練習として、口にハンカチを詰めて歩いてきたが予想以上にしんどかったようだ。
「……大丈夫か? まだ声を出して大丈夫だから、一度深呼吸しておくんだな」
 水を手渡しながら『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は心配そうにノワールを見やる。当の彼女はハンカチを口から出すとすぐに水を口に含む。
 布に口の中の水分を全部持っていかれたようだ。
「ふはっ……これ、想像以上にきついですね」
「やめておくか?」
「いえ、やっておかないと喋ってしまう自信があるので。喋らないようにするつもりではあります、勿論」
 おしゃべりな事は自覚しているノワールだ。喋ってはいけないダンジョンなのは承知の上なので、心構えはしてあるのだが……気質はそうかんたんに変わらない。
 今回は楽そうだなと考えていた世界も、少しばかりの不安の芽が生えた気がした。
「準備は宜しいですか? 中では私が主に提案いたしますので、皆様は身振り手振りで答えてくださいませ」
 試しに、と珠緒がギフトを行使すると宙に一つのウインドウが現れる。そこには「このような文字を表示しますので、オーケーかノーか、等お願いします」と表示される。
 他の三人はそれを見て、指で丸を作ってみせる。オーケーのサインだ。これで示し合わせは完了。水を飲み終えたノワールが最後にマスクをつけて、一行は洞窟へ入っていく。

■絶対に喋るなよ、絶対にだぞ!
 事前の打ち合わせ通りに、洞窟に入った四人は世界を先頭にして慎重に歩を進める。罠に対処する知識と道具を用意した世界と、暗視機能つきのゴーグルを着用し感覚を研ぎ澄ます珠緒は油断なく前方を注視する。
 と、世界が腕を伸ばし、後方に止まるように意思を示す。全員すぐに従い、珠緒のウインドウが現れる。そこには「罠でしょうか?」と書かれていた。横目でちらりとそれを見た世界は、首を縦に振る。
 手で少し待ってろ、と示した世界は屈んで床を触る。蛍とノワールは魔物の不意打ちがないように、と後方を警戒。前方は珠緒が見ているので任せて大丈夫だと判断したのだ。
(あ、なんかこれ新鮮かも)
 と蛍がほんの少し笑う。いつもは珠緒の前へ守るのは蛍の役目だったけど、今はいつもと違う。それが何か楽しく思えてきた。
 ノワールも初めての異世界での冒険に胸を踊らせていた。喋ってはいけないという制約がなければ、それこそ大仰に歌を一節、即興で作っていたかもしれないくらいに。
 一方、黙々と罠解除の作業を続けていた世界。暫くしてカチッという音と共に眼前の床の様子が変わったのに気付く。少し前までは不自然に孔がいくつか空いていたのだが、それが全部蓋をされたのだ。恐らく粉を撒き散らすか、触手が出てくるかのタイプの罠だったのだろう。
 後ろの珠緒に指で丸を作ってみせる。珠緒が後ろの蛍とノワールの肩を叩き、進みましょうと無言で伝える。
(――っ)
 思わず「はい」と言いそうになったノワールが口を押さえる。蛍と珠緒が一瞬ぎょっとした表情をするが、ノワールはなんとか声を飲み込んだ。
 そんな女性三人の様子に気づいているのかいないのか。世界は油断なく前を見据えていた。

 更に進むこと……どれだけの時間が経っただろうか。陽の光が入らない洞窟。迷宮という同じところをぐるぐる回っているかのような感覚。極度の緊張は時間感覚を狂わせる。
 何度目かの魔物との戦闘があったが、特に問題は起きていない。スケルトンやゴースト、スライムが襲いかかってくるのだが数が少ない上に個々の戦闘力は低い。
 今もまたボロボロの槍を手にスケルトンが襲いかかるが、蛍の盾が槍を弾き、珠緒の血がスケルトンの身体を侵食し砕く。
 世界が油断なくトラップを探る。
 その手慣れた様子にノワールは見入っていた。彼ら彼女ら歴戦のイレギュラーズの戦いぶりに。もちろん彼女も戦ってはいるのだが、それ以上に感じ入っている時間が多かった。
(素晴らしい、素晴らしいイレギュラーズ。…おっと、今は私もイレギュラーズでした、集中せねば)
 パン、と頬を一つ叩いて気合を入れ直す。その様子を怪訝に思った珠緒がウインドウで尋ねる。「大丈夫ですか?」と。
 思わず声を出して応えそうになったノワールだが既のところで飲み込み。手を大げさに振ってから丸を作って示す。
「それなら良かった」との表示と共に、マスク越しでもわかるくらいふんわりと笑った珠緒に、ノワールはちょっと癒やされる。

 やがて一行は仁王像の前にたどり着く。途中うっかりと蛍がくすぐりトラップに引っかかるというトラブルもあったものの、精神力(もうそうりょく)で耐えきった。その後珠緒と二人の世界に入りかけてたが、世界の無言のツッコミとノワールの視線で戻ってきた。そのあたりの事は語られる事はないだろう。
 さておき、ここまで声を出さずにやってきたイレギュラーズ達に仁王像はなんの反応も示さない。喋ってはいけないという制約を守り続けたからだろう。眼球が動き、蛍、世界、珠緒、ノワールと順に視線を巡らせるが、それだけだ。
 もっとも、その視線に威圧感は込められており。心臓の弱いものはそれだけで悲鳴をあげてしまいそうなものだが、そこはイレギュラーズ。耐えきった。
 「あ、あそこで浮いているのが剣じゃないですか?」と珠緒のウインドウに文字が示される。そのとおり、仁王像の背後には鞘に収まった剣が謎の力で浮いていた。
 「誰が手にとります?」との珠緒の質問に、ノワールが手を挙げる。勇者という柄ではないと自覚しているが、一度くらい伝説の剣を手にしてみたいのだ。
 しっかりと柄に手をかけ、握りしめ。持ち上げ……ようとして。
「おっも……!」
「「「あ」」」
 光の剣という割にはとんでもない重量で。なんとか落とす事だけは防いだノワールが思わず声を上げてしまった。それにつられ全員が声を上げてしまった。
 恐る恐る仁王像を振り返る。元々厳つい顔をしていたその像は、顔色を憤怒に染め上げ、背負っていた武器に手をかけようとしていた。
「逃げろーーっ!!」
 叫んだのは世界だったか。目的の物は手に入れたのだからと即座に走り出す。四人の背後を仁王像が大股で追いかける。
 殿を蛍が務め、彼女を珠緒が補佐。前方は世界とノワールが駆け抜ける。道は珠緒のウインドウが示してくれている。道中のトラップは世界が解除してある。問題は背後の仁王像と、時折姿を見せる魔物だけだ。
「邪魔です!」
 魔物の姿を認識するなり、ノワールの手から青の衝撃波が放たれゴーストの外観を吹き飛ばす。
「喰らい尽くせ!」
 世界の呼び出した白蛇がスライムに噛みつき、飲み込み、潰していく。足を止めずに後ろを振り返ると、蛍が仁王像を桜の花弁でひきつけ。珠緒が蛍の受ける傷を癒やしている。問題ないと判断した世界は前に向き直し、ノワールと肩を並べ駆け抜ける。

 そして……。

■新たな英雄譚
「……といったところで、私共のお話は終了でございます」
 街の酒場でノワールが身振り手振りを交え、奇術も交えて冒険譚を語って聞かせる。冒険者や傭兵達はその話を聞いて、称賛や嫉妬の声を浴びせる。
 そんなノワールの様子を離れたところから世界は菓子を齧りながら見ていた。蛍と珠緒は剣を領主に預けてくる、とでかけたっきりだ。
 結局あの剣はなんだったのか、それは抜いていない為彼にはわからない。しかし、剣の鞘に掘られていた文字は四人で見た。
「世界よ、人よ。心に光を忘れるなかれ。か」
 ぽつり、と誰にともなく世界は口に出す。未だに喝采の嵐を受けているノワールと、周囲の冒険者たち。そして珠緒と蛍の二人の姿を思い浮かべ、小さく笑う。
「少なくとも、今暫くは大丈夫だろうよ、勇者さん」

 余談として。光の勇者の物語とは別に、英雄の物語が生まれる。
 仁王像から仲間を守った騎士と、騎士を支える魔術師。おしゃべり好きな奇術師と、不思議な盗賊の四人組のお話……。

「ちょっと待て。誰が盗賊だ」
 そのツッコミは誰にも聞こえなかった……。

成否

成功

状態異常

なし

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