PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ヤリナオシノハコ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある女の独白
「お前はなんだったらできるの?」

 そんなこと私が一番知りたい。
 頭が特別良いわけでもない。
 いい学校を出た訳でもない。
 人並み程度に家事がこなせる訳でもない。
 好きな事はあるけれど周りに比べたらド下手も良いところで、自分の実力不足を思い知らされて楽しくない。
 努力を怠り妥協で適当に着いた仕事は誇れる訳でもない。
 だからと言っていまだに未練がましく指を加えて好きな事を仕事にしている人達を観ている。
 かと言って今から血反吐を吐いて努力をし直す覚悟もない。
 ただ息を吸い、自堕落な生活を続けるだけの存在が私。
「生きている価値はあるの?」
 世の中には私なんかより余程ハンデを抱えているのに真っ直ぐと生きて輝いてる人達がごまんといる。凄い、と素直に思う。
 いっそ私も何か難病だったら、などと考えてしまう己が大層憎い。
 いっそ環境のせいにしてしまえたら、と思うが明らかに私は恵まれている。それはよく判っている。故に、全ては己の怠慢が招いたことということもよく判っていた。
 かといって、潔く死を選ぶことも出来ない。
 消えたい、死んで生まれ変わってやり直したいとは願えど死ぬのは酷く怖い。
 だって生まれ変われる保証などないではないか。地獄がある、とは思わないが死んだらどうなるというのか。たまらなく怖い。
 自殺をした人は責められるけれど、私は実行に移すその勇気が凄いと思う。嫌味ではなく。
 時を戻せたら、止まったら。と何度も思うが、そんなことできやしないと思っていた。

 ――アレを、手に入れる迄は。

 突然、その男は現れた。仮面をつけてにこりと笑った男は手に不思議な黒い四角形のナニカを持っていた。十年くらい前に発売されたゲーム機に似ている気がする。
 警察を呼ばなきゃ、と思うのに身体がなぜか動かない。そんな私を見下ろしながら男は言った。
「これは時を戻せる、ないしは止める力を持つ能力です」
「時を戻す」
 はい、と笑みを貼り付けたまま男は続けた。
「出来る訳が、と思うでしょう? でも出来てしまうのです。とは言え、すぐに信じろなど無理な話。ですのでまずはテストをしましょう」
 男がキューブに手を翳し、ぼそりと言葉を口にした。
「まずは、昨夜へ。そうですね、貴方が見過ごしてしまったテレビ番組の時間帯に戻しましょう」
 何でそれを知って――。
 私の言葉が終わる前に当たりが一面真っ白な光に包まれた。数秒後、光が収まり私は恐る恐る目を開ける。先程まで私は私室にいた筈なのに、何故かリビングにいる。ふと、テレビのリモコンが目に入り、半信半疑のままリモコンの電源ボタンを押した。
 私の好きなバラエティ番組が始まった。
 そう、昨日うっかり見過ごしてしまったスペシャル特番が。
「嘘……?」
 いや、こんなの録画したのを流すとか如何様にでも偽装は出来る。そして愛用のスマートホンを取り出してロック画面を見た。
 紛れもなく昨日の日付だった。
「お分かりいただけましたか?」
 呆然と立ち尽くす私に男が背後から楽しそうに声を掛けてくる。
「貴方、人生をやり直したいのでしょう?」
 ならば、やり直してしまいましょう!
 男の言葉に私は無意識の内に頷いていた様だった。

 そこからは、本当に薔薇色の人生だった。
 まず、中学生の時まで戻した。
 喧嘩別れをしてしまった幼馴染に心から謝った。許してくれた。
 家事を普段から手伝う様にした、得意料理が増えた。洗剤の種類もわかる様になった。
 高校生の時は親友がいたからあえて同じ学校を選んだ。その代わり死ぬほど苦手だった数学はわかるまで時を戻して勉強したし、課題はコツコツ進めて提出物は完璧に出した。テストの点も学年トップになった。先生からもかなり高い評価を得た。部活も死ぬ気で頑張った、コンクールで金賞を貰った。勉強をサボってしまうから嘗てやり込んでいたオンラインゲームは始めなかった。
 そして、専門学校にいく為に学費を貯める決意をした。以前の私は就職したくない、絵が上手くなりたいしなんて巫山戯た理由で選んで怠けた。
 なので、今回は就職をえらんだ。先生は大学を勧めてくれたけど事務の仕事で一般的なソフトはマスターするまで時を止めて勉強して、その間にプロの模倣を繰り返したりして少しずつ画力をあげた。
 そしてようやっとお金を貯め、惜しんでもらいながらも退職して専門学校へ入り直した。
 課題の量やアルバイトに目を回しながらもまた時を戻したり、止めたりを繰り返してメキメキ上達した。以前の私の絵とは大違いだ、おそらく神絵師、と言われるレベルだと思う。
 就職活動も何度もやり直した。憧れのゲーム会社に内定した。
「ああ! 頑張って良かった!」
 ラフを切りながら私はあの男に感謝をしていた。間違いなく恩人だ。
 なんせ、やり直しが聞く人生。しかも経験値持ち込み可。今はこのキューブ無しの人生は考えられなかった。
 ありがとう、貴方のおかげで私変われたよ。

「――などと、考えているのでしょうね」
 ああ、愉快愉快と男はキューブから覗き見た光景に笑いを堪えきれないでいた。
「テストをカンニングするとか、不正な事は確かにしていませんねぇ」
 だが、本来は其処には別の誰かがいた筈だ。
 学年トップを努力して勝ち取った優等生も。
 コンクールで金賞を貰う筈だった生徒も。
 ゲーム会社に受かってラフを切る筈だった社員も。
 それを便利な道具で奪っておいて変われた等と笑わせる。
「まあ、世の中には因果応報という言葉がありますよねぇ」
 にたり、と男は薄い笑みを浮かべた。

●ヤリナオシノハコ
「さて、今回のオーダーはちと厄介だぜ」
柄にも無く朧は緊張感漂う雰囲気を醸し出している。
「お前さん達は人生をやり直したいと願った事はあるかい」
 例えばあの時ごめんねが言えていたら。
 あの時勇気を出して好きだと伝えていたら。
 あの時差し出された手を取ることが出来ていたら。
「なに、そう思うのは恥ずかしい事じゃねえよ。ただ、そのごくごく自然な感情に漬け込んで弄ぶ奴がいる」
 詳細は不明、人生をやり直したいと願う者の側に現れては謎の物体を渡し文字通り人生をやり直しさせると言う謎の男だ。
「別にその行動自体を咎める気はねぇ。俺も似た様な事依頼した事あったしな」
 だがそれは、厄災を被る者が誰も居なければ、という前提だ。
「例えばかけっこで二等賞だからってそのレースをやり直して一位になったら、元々一位だった子は二位になっちまうだろ。なんて事ない小さなことでもその子の人生を大きく左右する可能性がある」
 さらに、と朧は続ける。
「そもそも、ノーリスクでそんな便利すぎるモンが使い放題な訳がねぇ」
 絶対に何か裏がある筈だ、と朧は語った。
「今回のオーダーはそのキューブを取ってくること。やり方は任せる」
 説得しても、強奪しても構わないが彼女は常に警戒しそのキューブを持ち歩いているとの事だ。
「持ってきてくれたら、こっちでどんな物なのか調べておく。幸い知り合いは多くてねェ」

んじゃ、頼んだぜ。と朧はあなた方を送り出した。

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして。
 そうでない方は今回もよろしくお願い致します。
 ノベルマスターの白です。
 OPえらい長くなりました、いやまじで申し訳ない。ともあれ今回のシナリオの説明を。

●目標 
 仮名『キューブ』を手に入れる
 黒い手のひらサイズの無機質な立方体です。
 手に乗せて呪文を唱える事で時を戻したりやり直したりする力を持っているとのことは判明しています。手段は問いませんので未来(後述)から何とかこれを入手してください。

●舞台
<ヤリナオシノハコ>というお話になります。
 2020年の現代日本です。
●敵NPC
 園山未来
 OPの独白をしていた女性です。20代前半。
キューブの力で過去を遡り嘗て出来なかった努力を何度もやり直した結果、嘗ての夢を掴み最高の人生を謳歌しています。これからもキューブは使い続ける様で、手放す気は一切有りません。

 謎の男
 未来にキューブを渡した仮面をつけた謎の男です。今回のシナリオでは出会う事はありません。

●サンプルプレイング
 そんな便利な箱、普通なら欲しくなるよな……。
 でも何か嫌な予感がする、早く取り返さないと!
 未来に説得を試みるぜ!

こんな感じです、それでは行ってらっしゃい

  • ヤリナオシノハコ完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月04日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物
シエル(p3p009306)
しろにゃんこ

リプレイ

「うん、いい感じだね! お疲れ様、園山さん」
「はい、ありがとうございます! それではお先に失礼します」
「お疲れ様、また明日ね」
 上司に一礼し、未来はオフィスを出た。
 苦労した仕事だったが、無事にやり遂げることが出来て良かったと未来は誇らしい気持ちだった。
 明日の予定を確認しようと鞄からスケジュール帳を取り出す。
 びっしりと書き込まれた文字を指で辿り、脳内でシミュレーションを繰り返す。
「ええと、明日はラフが二つ。ミーティングに。あっ、キャラデザの詰めもしなきゃ」
 好きな仕事ができる嬉しさを噛みしめ、鼻歌を歌いながら帰りを急ぐ未来を四人のシルエットがビルの屋上から見下ろしていた。

「こういうアイテムを手に入れると大半の奴らは何かしら悪い事を行って身を亡ぼすものだが……そう考えるとなんて聖人なんだこの女性は」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は未来が悪事は起こさず、何度も努力をした事に素直に感心していた様だった。キューブとやらに依存はしている様だが、それほど便利なものであるならば使わない方が寧ろおかしいだろうとも。故に未来を強く責める気にはなれなかった。

「……母さんの罪も、その他諸々で追いかけられ続けた事も。僕が生まれる前から決まってて。やり直しは無理で、するつもりもなくて……」
 ――君の瞳は本当に綺麗だね。
 優しく笑いかけてくれた母の記憶が『特異運命座標』星影 昼顔(p3p009259)の脳内に蘇る。大好きな母が犯した罪の果て。決して許されることは無いだろう。
「……ねぇ、母さん」
 もしソレを手に入れたら、貴女もやり直すの?
 もし貴女がここに居たら、彼女になんて言うの?
「……分からないけど、僕はやり直しは間違ってると思うんだ」
 その言葉にしろにゃんこ』シエル(p3p009306)大きく頷いた。
「やり直したい過去、……大人になればなるほどいっぱいあると思います。でもでも、それを乗り越えてこその人生だったり、世界だと思うんですっ!」
 未来を否定している訳ではない。
 けれど、いろんな過去を出来事を乗り越えて築き上げて来た物こそが人生だと思う。
 すべて無かったことにして、やり直してしまうなんて余りにも哀しいではないか。

「…… ふふ、ふふふふーー! 次がある、だなんて随分と悠長な事を言う」
 そんなのこれっぽっちもアテになんてならないのに。
 穏やかに、そして可笑しくて堪らないという様に『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)は笑った。つい先日行われた豊穣の決戦にて青の羽が黒く染まり奇跡の代償を叶えた時。
  死んでほしくないと願い、その奇跡に縋ったときにハンスはそのことを実感した。
 あの時奇跡が起こせていなければきっと彼は――。
 だが『そうなっていた』として、やり直し、人生の改変は許されない。
「時は金なりーー貴女が時を己が財産にしようというなら、屹度そこに生まれる大きな負債を返す覚悟をしておかなければならないのに。“日々”は、“時”は、屹度いつか貴女自身に牙を剥く」
 彼女はそれを受け入れれられるだろうか。
「今日という日の花を摘め」
 ハンスの言葉が空に融けて、四人は地を蹴った。

 靴の踵を鳴らし、目の前に現れた四人に未来は道を譲ろうと片側に避けた。
 が、避ける気配が無い。それどころかこちらをじっと見ている。
 ――自分に用がある?
 どことなくキューブを貰った時の状況に重なり、未来はギュッと鞄の紐を握りしめた。
「やはり貴女も、あの破滅の匣を持っているのですね……っ!?」
「……破滅の匣?」
 ハンスが不安そうな顔で未来に話しかけた。はっとした様子で未来は鞄を見る。
 まさか彼らはあの箱のことを知っているのだろうか。
「怪しい者ではないんです、どうか話を聞いてはくださいませんか……?」
 潤んだ青い瞳に天使を彷彿とさせる立派な翼。
 只者ではないことには気づいたがこちらに危害を加えるつもりは無いらしい事、懸命なハンスの様子に、未来は若干警戒を解いた。ハンスは自分達は所謂タイムパトロールの様な者だ、と付け加えた。
「その匣の所為で大勢の方が亡くなったんです。時を捻じ曲げた皺寄せは必ずどこかにやってきます」
 ドキリとした様子で未来は目を逸らす。
 大勢の人が亡くなったと聞いて無関心でいられるほど、未来は冷血ではなかった。

「変な仮面をつけた男に貰ったんだろ?」
 白衣のポケットに手を突っ込んだまま、世界は未来に問いかける。
 あの男のことも知っているのかと未来は世界を見た。
「俺達はその男を追っているんだ。奴は怪しい物を便利な道具に見せかけて配り歩いている」
 未来の鞄を指さして、世界は匣を回収しに来たと淡々と告げる。
「で、でも実際に時は戻ったわ! 今の私だって」
「ああ。何度もやり直して努力したってのは知ってる。凄いと思うぞ」
「なら」
「でも、それは他の人の人生まで大きく変えちまうことになる」
 他の人、という言葉に未来は金槌で頭を殴られたような衝撃を覚えた。
 そう、例えば就職試験で本来受かっていた筈の人などは正しくそれに当てはまるだろう。
 さぁっと血の気が引いた未来の顔を心配そうに見上げながらシエルは彼女に近づいた。
「あの! 私、未来さんの事、お聞きしたいんです!」
「私の……?」
「はい、箱によって変えてきた過去のこと、未来さんが本当に歩んでた人生のこと」
 私は何だったらできるのだろう。
 何度も自分に聞いてそんなの私が知りたいと繰り返すだけの人生。
 頭が良い訳でも、高学歴なわけでも、人並みに家事ができるわけでもない。
 努力を怠り妥協で適当に着いた仕事は誇れる訳でもない。
 ぐ、と未来は唇を噛んだ。ぷつりと切れた唇から血が滴り落ちる。
「元の人生でも、箱を使わなくたってやり直せたんじゃないでしょうか。……確かに今は、悔いなんて何もない素敵な人生かもしれません」
 シエルが未来の手を取った。悔しさか恐怖か、罪悪感か。その手は震えていた。
「けど、未来さんが時間を操ってまで人生を変えたように、未来さんが本来歩んでいた人生にも沢山の人が夢のために努力をしていたはずなんです」
 未来の瞳が大きく見開かれる。目を逸らしたかった事実に心が搔き乱される。
「それに、もしかしたら未来さんに運命的なものが将来あったかもしれない。ただ自分が望むだけじゃない偶然も、運命も、まだまだ信じたいじゃないですか」
 ぎゅっとシエルの手に力が籠る。
「一度きりの人生だからこそ、なかった事にしていい事なんてないと思うんです!」
「……僕もそう思うよ」
 シエルの説得に昼顔は同調するように言葉を重ねる。
「ねぇ、君の元々の人生は本当にいらないものだったの? 最低な過去から続く未来は。そこから出会う者は君にとって不必要だった?」
 未来が顔を上げた、その瞳は揺らいでいる。
「………僕は、きっとそんな過去から生まれた者だけど」
『確かに散々な人生だったけど…君に出会えたから、今までの事も肯定できるよ』
 苦笑いをしながら、それでも言い切った母の顔を昼顔は思い出す。
 そして、運命の出会いは時にそれまでの過去を肯定しえる物にすらなるのだとも。
「最低な人生だと言うなら……君はまだ報われる時を迎えてないだけだと思う。最低なら上がるだけなんだから」
 ――それは知りたくないの?
 
 もし、あのまま未来に向かって歩いていたら。
 こんなものに頼らずとも努力し続けていたら。
 このままコレを使い続けて、彼らのいう様に大勢の人が更に無くなったら。
 ああ、そういえば。元の人生ではオンラインゲームの友人が沢山いたんだっけ?
 それにいつも気にかけてくれる上司も居たなぁ。
 夢は叶わなくてもいいのよと受け入れてくれたお母さん。

 静かに微笑んで、未来は鞄の中からキューブを取り出した。
 万が一の事態に備え四人は警戒を強めたが未来はキューブを使うことは無かった。
 掌に載せられたソレを彼女は四人に差し出したのだ。
「私、本当に自分が嫌いだったんです」
 何もできない癖に言い訳をしては努力しない自分がと、未来は言った。
「だから、あの日。男にキューブを渡されてこれは神様がくれた最後のチャンスなんだって思いました」
 だから、嘗てできなかった努力を何度もしたと。
「でも、そうですよね。こんな道具に頼った時点で、私は本当の努力をしていなかったんですよね。それに、本当に頑張っていた人たちの人生まで壊していたんですね」
 無理して笑っているのだろう歪な笑顔から大粒の涙が零れ落ちる。
 最高の人生、最高の夢から覚める時が来たのだと。
 涙を拭う未来の手からハンスがそのキューブを手に取った。
「……ねぇ、未来さん。高所恐怖症だったりします?」
「え? ……そんなことは無いと思いますが……」
「なら良かった!」
「え? わっ、わ!?」
 辛い現実に帰る決断をした彼女に、最後の贈り物を。
 ハンスは未来を抱えると翼を羽搏かせ、飛び上がった。
 突然の事に未来は慌てふためくが、徐々にその高さに慣れていった。
 街頭の灯りがキラキラと輝いて、ほうと溜息が未来の口から漏れる。
 そして、自分が先程まで居たオフィスを見つけると寂しげに笑い、鞄の中のスケジュール帳を取り出した。びっしりと予定が書きこまれたソレを見つめた後びりびりに破いて空へと放り投げた。
「……いいんですか?」
「ええ、もう必要ありませんから」
 この空中散歩が終われば未来は元の時間へと戻るのだろう。
 そこから先の未来は彼女だけが知る。
   
(しかしその謎の男、無知を利用して己の為に利用するとか中々いい趣味してやがるな)
 落ちてきた紙片を拾い上げながら世界は未来に箱を与えた男の事を考えていた。
 今は無理だが、いずれ逢ったらその時は――。
 ポケットに突っ込んだ拳を世界は固く握りしめた。





成否

成功

状態異常

なし

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