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シナリオ詳細

<忘却の夢幻劇>逃亡

完了

参加者 : 3 人

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オープニング

●さまよえる女
 己が仕えていた王子が偽物だと思ったとき、まず最初に行ったのは、その秘密を胸の中に隠しておくことだった。
 次に行ったのは、宮殿、そして王都ラウアザンから逃げだすことだった。
 最後に行っているのは本物の『彼』を探すこと。フレルという名は多い名で、探すことは難しかった。

 それはラウアザンのフレル王がまだ即位する前のこと。私は彼の義理の妹であり、彼の護衛を務める騎士であった。殿下とは幼い頃から一緒におり成長してからも友情は長く続いていた。中には愛情があるのではと揶揄する声もあったが、残念ながらフレル殿下と私は距離が近すぎて、互い家族以外の感情は一切浮かばなかった。ともあれ、私と殿下はどこに行くにも一緒であった。殿下は私を第一の騎士にして最高の義妹と呼び、私は殿下を手間のかかる義兄上と呼ぶ名誉を賜った。フレル殿下にはきょうだいはいなかった。母親は夭折し、父王が再婚した野心家の王妃――私の母でもある――とは不仲。己の命を狙う女の娘とよくまあ仲良くしてくれたものだと思うが、気が合ってしまったものはしょうがない。
 さておき、成長したフレル殿下と私は揃って遊学の旅に出た。母は暗殺者を送りながらもその一方で王子と娘の間に何かしら男女の関係性の発展があればいいと思っていたらしい。実際に出来上がったのは暗殺者の死体の山とフレル殿下との苦笑交じりの固い結束であったのだが。様々な街を巡り、様々な学者や芸術家や魔術師の元で学び、フレル殿下を見失ったのは帰路。私には気付かぬ所で、彼は彼でなくなっていた。人生最大の失敗であると思っている。
 私を義妹ではなく愛しのコーシェと呼んだ夜。共に王位を奪い取ろうといったあの口ぶり。そして残酷な笑みを浮かべて迫ってきたこと……思い出すだけで吐き気がする。
 私の知っていたフレル殿下はそのようなことが出来る人物ではなかった。何かのきっかけで本性が出たのだろう、といわれれば、私は神に誓って否、という。何かが違ったのだ。弦の緩んだリュートのように、フレル殿下は一瞬だけ、歪んだ音を出した。偽王子は次の日からまた何事もなく話しかけてきたが、ラウアザンに到着するまで私は気が気ではなかった。入れ替わりに気付いてはならぬ、と。

 偽王子が帰還してまず行ったのは、父王と義母の処刑――理由はもう覚えていない――そして、即位。遺された私に訪れたのは幽閉と強引な結婚。私が行ったのは城からの逃亡、そして当てのない探索行。

 数十年の放浪の後、私は<記憶喪失のフレル>という男の噂を聞く。ラウアザンの宮殿にて、快楽と夢想に溺れ日々を過ごす偽のフレル王。彼と同じ名を持つ瓜二つの魔術師は――何の冗談か、ラウアザンのスラム街に滞在していた。

「フレル様!」
 遠くから鎧を身につけた兵らの足音がする。数を確かめれば沢山、としか言えない。私は舌打ちをし、剣を抜く。
「ああ……もう見つかってしまったか。コーシェ、奴らの狙いは私です。どうか、貴方だけでも逃げて下さ……」
 私は笑う。無理やり笑みを作って見せる。義兄上はいつだって自分のことを大事にしない。年を経て再会しても、やはり同じまま。
「『義兄上』、馬鹿なことを言わないで下さい。ラウアザンには貴方が必要です。魔術師なのでしょう。空を飛ぶなり透明になるなりして逃げればいい。私は貴方の身代わりになれればそれで満足です」
 荒々しく戸を叩く音が一つ、二つ、やがて木材の砕ける音……私は斬りかかり、突き刺し、叩き、殴り、噛みつき……そして、痛みが熱のように体に広がる。鎧の隙間からやられたのだ。フレル殿下は逃げられたのだろうか。いや、無理だろう……。

 私は様々な神に叫んだ。ああ、こんな結末でよいものか――!

●再会は悲しく
「フレルという男の物語は、かつて『琥珀盗み』で語られた通り。<記憶盗み>の手によって記憶を奪われ、それを取り戻した魔術師は、実の所本物の王だった、という話だ」
 『学者剣士』ビメイ・アストロラーブは真面目な顔で本の頁に目をやりながら語る。
「<フレル王>の治めるラウアザンという都市は色硝子の城そびえる夢の如き都市。しかしその繁栄は微妙な均衡の上に成り立っているもの。宮廷では毎夜毎夜の陰謀劇が繰り広げられ、王は夢想と快楽に浸るばかり。地下には盗賊が巣食い、王は彼らと繋がっているという噂もある。生を謳歌する者らの陰には、貧乏に呻く者らが山といる。いつ破滅に転落してもおかしくない混沌の都、それがラウアザンだ」
 さて、とビメイはいい顔を上げた。『忘却の夢幻劇』に描かれた挿絵は、長衣を着た男が剣でめった刺しにされ、その横で騎士らしき女が息絶えているものであった。
「琥珀が盗まれたことを知らぬ偽の王ではない。素早く本物のフレルに軍を差し向ける。フレルを探していた騎士コーシェは再会を喜ぶ間もなく刺客から主君を庇って死に、庇われたフレルも助からず……物語は悲しい結末を迎え、やがてラウアザンは滅びる。無論私はそんな結末は望んでいない。私が望むのは昔ながらの大団円。偽の王が退治され、真の王が即位する、そんな話だ。――そのために、私は君達に頼みたいのだ」
 す、と息を吸ってから、ビメイは真摯な顔で頼み込む。
「ラウアザンを救うために、まずは、騎士と流浪の王を窮地から救ってくれないか。君たちが訪れるのは破滅の少し前のタイミング、兵士がスラム街を囲み始めた頃だ。急いでくれ」

NMコメント

 <忘却の夢幻劇>へようこそ。ろばたにスエノです。
 身をひそめる真の王と、忠実な騎士。二人を窮地から救い出しましょう。
 『琥珀盗人』の続編となりますが、前編に参加いただいていない方でもご参加できるようになっております。(PCサイドでは、これまでのあらすじに関しては、ビメイに聞けば詳しく話してくれます)

●今回の舞台
 <フレル王>が統治する大都市ラウアザンのスラム街です。かつては貴族の屋敷などが立ち並ぶ豪奢な地区でしたが、地震で地割れが出来た後は廃墟となり、住む場所のない人々が住み着くようになりました。『日陰者すら歩くのを避ける』地区であり、<廃市の老婦人>と呼ばれる物乞いによって支配されているといいます。記憶を取り戻したフレルは、王位を取り戻すため、そして自分の正体を知った<フレル王>や琥珀の持ち主であった日陰者達の頭目<素早き指の君主>の追手から隠れるために、スラムに滞在しています。

●目標
 フレルと騎士コーシェを生かしたままスラム街を脱出する。
 スラムは<フレル王>の配下によって囲まれており、普通の方法では脱出するのも侵入するのも難しい状況です。スラム街の住人達は怯えていますが、現状をどうにかできるという現実的な案を見せてくれるならば――もしくは幾何かの金を握らせれば――、手を貸してくれるかもしれません。フレルとコーシェのいる場所は、崩れた尖塔の側の小屋。詳しい道はビメイの『ちょっとした魔法』で感覚的にわかるようになっているため、迷うことはありません。が、急いだ方がよいでしょう。

●登場人物達

フレル:壮年の魔術師です。青年期に<記憶盗み>に記憶を奪われたラウアザンの王子その人です。記憶が戻った今は、スラム街に身をひそめ、追手から身を隠しながら、王位を取り返すための方法を考えています。

コーシェ:壮年の女、フレルの義理の妹にして忠実な騎士です。フレルが偽物に成り代わられたとき、正体に気付いた唯一の人間です。偽のフレルに幽閉され結婚を無理強いさせられましたが、逃亡。それから長年にわたってフレルを探していましたが、ようやく再会できました。

<廃市の老婦人>:スラム街の主と呼ばれる存在です。何時からいたのか、何歳なのか知る人のいない老女であり、人間かどうかさえ怪しいとされています。居場所は不明ですが、スラムの住人ならもしくは知っているかもしれません。

<フレル王>:何らかの手段でフレルに成り代わった存在です。現在は宮殿で快楽と夢想に溺れて日々を過ごしているとの噂です。この物語には直接的には登場しません。

ラウアザン兵:追手の兵士らです。規律正しく、士気も高いです。沢山います。

●サンプルプレイング
「木を隠すなら森の中、兵士に変装してスラムの中に潜り込む。兵士達より前にフレルとコーシェを確保したら、スラム街から抜け出す別のルートがないか住人に金を握らせて聞き出そう」

 それでは、よい冒険を。

  • <忘却の夢幻劇>逃亡完了
  • NM名ろばたにスエノ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月28日 22時10分
  • 参加人数3/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

墨生・雪(p3p009173)
言葉責めの天災
黄野(p3p009183)
愉快な麒麟
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物

リプレイ

 時は夕刻、スラム街を囲むラウアザン兵らは規律正しく整列している。磨かれた鎧と立ち並ぶ槍の穂先はは夕日を受けてギラギラと輝き、どこか不気味さすら感じさせる。その陰で身をひそめながら侵入のタイミングを探る人影が三つ。<特異運命座標>らである。

――麒麟せんさぁにビシビシ来る。
 黒髪の美少年、王を選ぶ瑞獣、『正直な旅人』黄野(p3p009183)がフレルとコーシェの物語を聞いて即座に浮かんだ感情はそれであった。
「座を取り戻さんとする真なる王、老いれども忠義を尽くす臣……好きだぞそういうの!」
 整った顔に喜色を浮かべ、息巻きながらボロ布をまとう黄野。その姿はどこからどう見ても物乞いの子どもといった様子。
「真の王と忠実な騎士って……テンプレといえばテンプレみてーっすわ………」
 『特異運命座標』星影 昼顔(p3p009259)は再現性東京で体験したゲームや小説の内容を思い出しながら同じくボロ布をまとう。何度も手を変え品を変え語られた物語、どの世界にもある貴種流離譚。
 そして、ふと我に返る。
「拙者は墨生氏、黄野氏のサポートかな。と思ったけど……ところでなんで王と騎士を迎えに行く所から始まるの? こういうのは颯爽とその瞬間に現れる所から始まらない? 常識的に考えて……!」
 困ったようにボロボロの黒翼が数度羽ばたいた。現実に戻すかの如く、鬼人種の若者――『つみのゆき』墨生・雪(p3p009173)がぽん、と昼顔の肩を叩く。
「まあまあ。私達がしなければならないことは、二人の救出です。頑張りましょうね、星影さん、黄野」
「いや拙者引きこもりだから……っ!」
 待って、と言いたげな昼顔の横でこれぞ我が役目、といわんがばかりに黄野は盛り上がり、雪は小さく握りこぶしを作る。
「無論! フレルどのとコーシェどのがこの『らうあざん』の地を太平に導かんとするならばこの黄野、身を尽くさせていただくとも!」
「えいえい、おー」
 盛り上がる二人に昼顔は慌て、
「……ちょっと待って、おいていかないで……! いや、拙者も役に立つから……!」
 そうして、意識を集中させ、エネミーサーチにエネミースキャン、二つの技術を駆使し、スラム街を囲む兵らの様子を探る。
「拙者らに敵対心を持っている兵士はなし……つまり気付かれてはいない。で、兵士の強さだけど……」
 まずいな、と昼顔は眼鏡を直し、冷静な様子になって二人を見る。その表情には、明らかな焦りがあった。
「強いししぶとい。具体的にはオープンワールドのRPGで出て来る衛兵並みにうざったらしい」
「おーぷんわーるど」
 鸚鵡返しする雪に昼顔は長い髪をくしゃくしゃとやりながら説明する。
「ありていにいえば、拙者らが囲まれたら大変だってこと……困ったな」
 どうしたものかと悩む昼顔に黄野は笑む。自信満々な表情は、どこか良い悪戯を考え付いた人を思わせる。
「ふふふ、安心せい。オレがいるのじゃぞ? そう、このような時に有用な手と聞いたでな……」
 にゃあ、と黄野の胸から鳴き声がすれば、ボロ布の中から猫が現れる。彼の式神であった。

 がさり、と音がし、ラウアザン兵らは一斉に槍の穂先を音の方に向ける。果たして音の元にいたのは金毛の大柄な猫。にゃあ、とすまし顔で鳴いて兵士らの足元を駆けまわり飛びつき武器にじゃれつく。
「なんだ、猫か……おい纏わりつくなじゃれつくな!」
 人の言葉を完全に無視し、猫は自由気ままに遊びまわる。さすがの規律正しい兵士らも目を取られ、意識が散漫になり――。
 三つの人影がその隙に駆け抜けていったことに気付いた者はいなかった。

 駆ける、駆ける。背後からは兵士らの突入の合図である角笛の音が響いており、重々しい鎧を鳴らして速足で歩く音が揃ってやってくる。どれもこれも同じように見えるスラム街の建物の中、崩れた尖塔が一つ。その横に寄り掛かるように立てられた小屋が一つ。
 <特異運命座標>らはこつこつと戸を叩く。息をのむような音が聞こえ、扉が勢いよく開かれ……飛び退いた三人の前には、剣を閃かせる壮年の騎士が一人。そして更に奥、今にも呪文を放とうと構える魔術師風の男が一人いた。
「兵士ではない――?」
 戸惑う騎士の隙をついて黄野はずかずかと小屋の中に入り込む。勢いに押され何かをする機会を逃した魔術師風の男の前に立ち、そしてボロ布を脱ぎ、跪く。
「『らうあざん』の王、フレルどの。迎えに参りました」
「――あなたは、」
 戸惑う魔術師に騎士――フレルとコーシェは目をぱちくりさせて目の前の美少年はいったい誰だ、と言いたげにじっと見ている。黄野は堂々とした様子で顔を上げ、フレルを見つめた。
「この身は麒麟、王を選ぶ者。そなたがここにひそみながら思うたこと、民のために考えた策がおありならば。この黄野、一時なれど、それを我が王命と承りまする。さあ、――皆の者、全力で逃げようぞ!」

 兵士を撒き、道を折れ、時に廃屋に息をひそめてやり過ごす。空になった小屋に気付いたラウアザンの兵士らは、散りながらスラム中を探し回っている。
「星影さん、あらかじめ調べておいた脱出経路の方は――」
「九割方塞がれているよ、墨生氏。……黄野氏、そちらの方はどうなっているかな……」
「情報収集ならお手のものじゃて。一応、道はある」
 コーシェが希望に満ちた表情を浮かべる一方、フレルは渋い表情となった。
「それは、緑の門がある道でしょうか」
「ん、なんじゃ、知っておるのか、王よ」
「……ええ。スラムの最奥に続く道、それより先はよそ者は決して近づかない場所です」
「<廃市の老婦人>がいるやもしれない、ですね」
 ぼそり、とつぶやいた雪に、フレルは頷く。
「黄野氏、どうする……?」
 昼顔が心配そうにのぞき込む横で腕を組む黄野。真面目な顔のまま、皆を見渡す。
「どうあがいても我らは寡勢、ゆえに、<廃市の老婦人>は鍵と見る。勢いのみで脱出できる機を逃したなら、お力を借りるが上策か」
 確かに一理ある、とフレルは考え込む。
「……フレルどの。そなたがこのスラムの民も『そなたの民』であると思し召されるならば。危険だとしても。この者らの不安を払い、<老婦人>にお会いになりなされ」
 数拍の沈黙の後、フレルは答える。
「無論。覚悟を、決めねばなりませんね」
 そこで、昼顔も意を決したように口を開く。
「逃亡戦なら、拙者に任して欲しいかな……! 守りを固めて逃げる方法なら、得意だし」
「私も、守りの技ならば自信があります。いざとなったら”説得”してでも推し通りましょう」
 儚げな面持ちの雪の口から出た言葉は、少々物騒な響きを帯びていた。

 もはや兵士を撒くのは難しかった。一同は昼顔の統率の元、彼に近づいて守りの陣形を維持したまま駆ける。体力に自信の無いように見えるフレルであったが、コーシェに支えられながら、必死についてきていた。
――彼らを襲うなら、この私を倒してからです!
 昼顔はちらりと雪を見る。兵士に名乗り口上を上げ、攻撃を引き付ける雪。傷を負うも、昼顔の陣形の指示と癒しの技によって深手にはならない。
「見えた――緑の門だ……!」
「後少しじゃぞ、皆の者っ!」
「今です、駆けこんで!」

 叫ぶ雪の声に合わせ、緑の門に駆け込んだ瞬間、あたりの空気が歪んだ。転移の術――と叫んだフレルにどういうことですかフレル様、とコーシェが聞く。永遠にも続くかのような眩暈の後、目を開けば、そこは古い神殿の跡。白い壁は年月によって濁ったような灰色へと変わり、部屋の中にはボロ服をまとった人影が無数、一同を敵意も露わに睨みつけている。
「手を出すのはおやめ、この者らはわらわが喚んだ者。スラムに騒ぎを巻き起こした点は許しがたいが、奇妙な相が見えたが故、<転移の門>を起動させ、ここへ連れて来た――処分は話を聞いてから」
 部屋の奥に積まれたクッションの山から傲然と一同を見下ろすのは、整った顔の老女。コーシェが「<廃市の老婦人>」、と震える声でつぶやけば、老女は頷く。
「さよう、わらわは寄る辺なき者の母、王に見捨てられたラウアザンの廃市を守る者――この地に何故騒ぎを持ち込んだ、よそ者よ。そして取り換えられた王よ」
 フレルは己の事情を一言で当てた老女を見て、驚きを感じながらも答える。
「私は、王位を取り戻し、「全ての」ラウアザンを統治するために参りました。ラウアザンに住まう者は、地下の者らも、地上の者らも全て、私が護るべき民です」
「王らの統治したがるラウアザンに、地下や、スラム街を含めた者はおらなんだ――しかし、そなたが善き王になるという証拠はどこにあるのかえ?」
 剣を抜こうとするコーシェをフレルは止める。その時、口を開いたのは雪であった。
「証拠は、彼がこのスラムもまた、ラウアザンの一部だといったこと。真なる王は戻られる。この街もかつての美しさを取り戻すことができるだろう」
 それは、人の心をつかむかのような言葉であった。興味深げに<廃市の老婦人>は雪を見る。雪はじっと、三つの瞳で老女を見返した。
「――だから真に冠を戴くべき人間のために、どうか道を開いてください」
 ざわめきの中、<老婦人>は沈黙し――そして、答える。
「ラウアザンの王よ。とくお聞き」
 フレルに<廃市の老婦人>は歌うように告げる。
「我らをラウアザンの民と認めよ。即位の暁には、スラムをかつての都のように復興させよ。そして、善き王たれ。さすれば、我らはそなたの窮地に駆け付けようぞ」
 フレルは膝をつき、我が名と父祖の血にかけて、と答える。
「外への道は、折見てわらわが開こう。今宵はゆるりと休むがいい、ラウアザンの王とその友よ」

成否

成功

状態異常

なし

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