PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ENCOUNTE,██████!

完了

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オープニング


 其処は何処かの会議室のようだ。真っ白な壁、大きなホワイトボードをぐるりと囲むように配置された椅子、安っぽい机。
貴方はいつのまにか椅子へと座らせられている。状況に対応しきれない貴方に、声がかかった。

「ようこそ、職員の皆様。新人オリエンテーションへようこそ」

目の前の、顔のない女性が慇懃無礼に礼をした。いつ現れた? と不審そうにする貴方は女性の足元にある機械に、そして女性がうっすらと透けていることに気づくだろう。そして、その様子を察したように女性が告げる。

「私の体はホログラムで形成されております。ご容赦くださいませ」

そして、またお辞儀。ああ、なんと感情の籠もってないことだろう。
声はまるで磨り硝子のようで、澄んでいるのに、透明じゃない。逃げたい、逃げよう。
其処にあるのは、きっと抑えられない威圧感。
けれども、だからか。自分の足は、膝は。ぴくりとも動かない。お行儀よく、その女の話を聞く姿勢になってしまう。

「オリエンテーションは重要なものです。最悪命の危険性がございますので、聞き逃すことのないよう、お願い致します」

つらつらと話を続ける。難解な単語や、分かりづらい表現が続く……。
整理しよう。どうやら女の話を聞くに、貴方。もしくは貴方達は『研究所』の職員へとスカウトされたのだ。彼らは発生した、もしくは作り上げられた異常存在の調査や、研究を行っている。そして、今から貴方達は、その異常存在の調査──この研究所流に言うと『作業』を行うことになるらしい。

「今回担当して頂く異常存在は該当特殊物品が2点、指定異常生物が1点。その後は働きを見て判断となっています。報告書は……。セキュリティクリアランス上開示できない部分もありますね。一つ一つ、説明致しましょう」

ホワイトボードにプロジェクタが当てられる。浮かび上がったのは赤く塗られたドレッサー。鏡はくすんでおり、反射するものはない。

「ナンバー1、『写し鏡』。クラスはEASY。危険性はほぼゼロとされていますが、精神汚染を受ける可能性があります。この特殊物品は鏡の部位が異常性を持っており、非活性時はくすんでおりますが、知性を持つ人型生命体が入室すると活性化。鏡の中へ人を『写し取り』、模倣する性質があります。その際、少し……いえ。かなり歪んだ写し取り方をするらしく、対象の悪性、もしくは善性に偏った思考をするようになるそうです」

次に移りましょう。と女が言えば、からりと画像を切り替えた。
映し出されるのは古びた白い剣。鎖に繋がれて、ガチガチに固められている。塗装は半ば剥げているがなぜかふんわりと、光を帯びてみえる。

「ナンバー2、『「聖剣」だったもの』。クラスは一段階上がってNORMAL。此方はナンバー1よりは危険性が高く、能動的な活動を行う物品です。もはや滅びた、何にも使えない錆びついた剣ですが。他者に対しこの剣を引き抜かせようとするミーム汚染能力を持ち、抜いた剣本体にも強い残虐性をもたらす異常性があるそうです。ます。分かりやすく言えば、魅了されるということです。強い精神力を持つ方のみ、配属させていただきます。また、この剣に作業を行うと男の声が聞こえるそうですが……。気の所為でしょうね。

彼は英雄的行為を、戦いを。望んでいます。けれどいくらそれを持たせ脱走した所で鎮圧されるだけなのですが。その剣は、既に聖剣ではないのですから。永遠に英雄には成れないのですよ。彼はね」

ほんの少しだけ、ほんの少しだけ。剣の光がちかちかと、点滅したように見えた。それは誘蛾灯のようにも、助けを求めているようにもみえて……。無情にも、画面が切り替わる。

次に姿を見せたのは、可憐な少女だ。美しい白い髪、白い肌。そして、吸い込まれそうになるほどに美しい……。

「おっと。貴方は少し耐性があるかと思いましたが。やはり危険ですね。あまり彼女の顔を直視しませんように」

写真の真珠のような姿が、目線が[規制済み]で覆われる。

「残念だ、と思われたでしょう。それが彼女の……ナンバー3、『eye to eye』の能力です。それは非常に愛嬌が良く、人好きのする性格ですが、貴方の目から、彼女の目を通して貴方の中に入ってきます。這入られた人間は新しい宿主になり、魅力的な瞳は人の目を集め、繁殖が広がっていく……。クラスがHARDにされた所以です。」

無表情で女は続けながら、後ろの写真にちら、と目線を向けた。少女はにっこりと微笑んでいる。

「いいですか。彼女の顔を見ないこと。どんなに美しいバラであろうと、待っているのは毒の棘です。人類史上美しいものに触れて破滅する人間は後を絶えないのですから」


「どのような作業を行うかは大まかに指示致します。皆様はそれに、従っていただくだけでいいのです。それが人類の、はたまた世界の礎になるのですから。では、よき一日を」

まるで自分の役目は終わったとばかりに、女は姿を消した。自由になる腕、ひりつく脳内。
この奇妙な空間にやってくる前の記憶が、ようやく戻ってくる。


 不思議な図書館、広がる世界の一つ、本と言うにはあまりにがさつな報告書の束。
図書館の主である境界案内人。双子の男は言っていた。

「どうやらこの報告書一枚一枚、オリジナルで語られる不思議な物品……という、物語を綴ったものであるらしい。けれど今、この中で人手不足が起こっているらしくてね。情報が足りていないんだ」

「君たちには、研究員の代わりになって、その欠けた情報を埋めて欲しい。……大丈夫。危険な目に遭いそうなら、ちゃんと本から引き戻してみせるさ」

NMコメント

該当特殊物品及び指定異常生物についての情報。及び記録映像を開示します、職員コード及びパスワードを入力してください。
ログイン履歴は記録部、及び情報部によって常時監視されており、位置情報についても同時に収集されます。

警告: 不正アクセスは禁じられています。
保持セキュリティクリアランスレベルに関わらず許可された情報以外にアクセスした場合即座の措置の対象になる可能性があります。
付与された権限外の情報にアクセス可能となっている場合、セキュリティ担当にその旨を報告して下さい。

職員コード:[p3p00██]
パスワード:[******]

[ENTAR]

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──認証を確認しました。ようこそ、管理人様。


はじめましての方ははじめまして、またお会いした方はお久しぶりです。
金華鉄仙と申します。
今回のラリーは1章目、2章目まで『作業』の記録映像の放映を予定しており、その過程において異常存在自体が脱走した場合第3章に至る可能性がございます。

●世界説明
異常存在を保存し、観察し、研究することを主とした研究所のある世界です。
外には一般的な現代世界があり、『ゆめみるままに待ちいたり。』『鬼が不在の隠れんぼ。』『ねこは、ねこはここにいます。』などがあった世界と同一ですが、現在貴方達は閉鎖された施設の中なので外を窺い知ることは出来ません。

●目標
 目標の観察。『作業』をすること。少なくとも第一章はオープニングの彼らに作業を行うことになります。
本の外に出ればすべて元通りですので発狂したい方は存分にどうぞ。

●『作業』について
やっていただくことは自由ですが、いきなりそんなことを言われても……。という方のために
大まかにGMからの指標として『暴力』『愛情』『観察』『弾圧』の4つのジャンルを提示させていただきます。
『暴力』作業については例えばeye to eyeを殴ってみるとか、鏡を割ってみるとか。そういう物理的なアプローチを掛ける場合に該当します。
『愛情』はお世話です。窓を拭いてあげたり、剣の話し相手をしてあげたり。少女にご飯をあげたりとかです。
『観察』はその名の通り観察です。単純に彼らの行動を観察し、記録をします。出来る限り彼らには干渉しない方が良いデータが取れるかもしれませんが、しても構いません。
『弾圧』は物理的でないアプローチで、威圧的な行為のことです。暴言を吐いてみたり、そういうやつです。

  • ENCOUNTE,██████!完了
  • NM名金華鉄仙
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月20日 20時25分
  • 章数1章
  • 総採用数4人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

-■時■分,『写し鏡』収容房-

 己の普段の役目は観察ではなくその対処だ。だからこその物珍しさを感じ、溝隠瑠璃は指示されたとおりに、奇妙な鏡が待つ部屋へと足を踏み入れた。

「うーん、見た感じは普通の鏡だゾ……?」

鏡をまじまじと覗き込んだその時、赤いガワが脈動したようにうねった。驚いたように瑠璃が後ろに下がる。きゃらきゃらと、聞こえてくるのは異様に蠱惑的で嗜虐的な笑い声。

「僕ながら卑しい誘蛾灯だ。いい子ぶったって、無駄さ。そんなことをせずとも男なんて襲って、無様に立ち竦む様を良い様に嫐ってしまえばいいのに」

現れたのは瑠璃の姿写し。否、映し出されているのは彼女の半分。淫魔の血を歪め、拗じらせた何か。

「ア、アハハ……成程これは嫌がる人も出てきそうだゾ……」

瑠璃は苦笑して頬を掻く。確かに酷い。『二つの姿』を持つ瑠璃の例は少し特殊だが、目をそらしたい人は逸したいだろう。猥雑で、なんという。

「なんという……お粗末な姿だろうか?」

残念そうな声色で。ハッキリ言えば失望した口調で瑠璃は言った。
体が薄闇に溶けて再構築される。現れたのは鏡合わせの半淫魔の姿。

「僕、いや、我の姿で囀る内容がそれしきとは。我はがっかりである。もっと淫靡かつ悪意塗れな姿を見せてくれると思ったが……。期待はずれよな」

簡潔に報告書に現象を書き出して、それで終わりとばかりに踵を返す。
言葉を後ろで重ねる鏡など、存在しなかったように。

成否

成功


第1章 第2節

溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

-■時■分,『「聖剣」だったもの』収容房-


「あー、早々観察を諦めちゃったから割と怒られちゃったゾ……」

 失敗しちゃったなあ、と瑠璃は肩を落とす。あのAI、割と容赦がなかった。リベンジとばかりにもう一度本の中に飛び込んで、やってきたのは錆びた剣のある部屋。

『現れたか、勇士よ。剣に相応しき者よ』

入って早々、瑠璃の脳内に声が響いた。成程。これがこの剣の意志なんだね。無邪気な瑠璃蝶はにっこりと微笑んで。

「勇者、かあ……。うん、そうではないかもしれないけれど。君のお世話をしに来たんだゾ! お話しよう、寂しかったでしょ?」

『む……』

声は面食らったように揺らめいて。それから承諾を伝える。瑠璃は気づいていないかもしれないが、その声自体が誘惑を伝えているのだ。効かないことに驚いたのだろう。
そのまま、会話が少しずつ弾んでいく。打ち解けた所で、剣が錆落としをしてくれないかと申し出る。

「楽しくなってきたから良いかな、って思ったんだけど……ふふ。そういう思考誘導のつもりなのかな?」

くすりと、笑って。先程までとは一転冷えた瞳。彼女が目指すのは圧倒的強さ……。そして美しいロベリアの花、そのものであるのだから。

「汝を引き抜かせて我を英雄にでもさせたかったか? お生憎様、我がなりたいのはお定規のよい「英雄」ではない」

「誘惑にしてもお粗末すぎるぞ、どうせ其処で永遠と封じられ続けるハメになるのだ、学び直すと良い」

成否

成功


第1章 第3節

江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

-■時■分,『eye to eye』収容房-

「おや? 今回は二人なんだね」

「そのようです……? 宜しくおねがいします。ごめんなさい、見えてないですけど」

収容房前。互いに居合わせた二人の少女はぺこり、と頭を下げた。
とはいえ彼女らは顔が見えているわけではない。瑠璃の顔には目隠しが。樹里の顔には眼帯が……。両目に? 着いている。ちょっと異様な光景であることに間違いはないがツッコミは入らない。ハイセンスで周囲の情報を嗅覚や聴覚で把握しているとは言え、瑠璃の視界は真っ黒だからだ。

「うん、よろしくだゾ! 危ないし、ゆっくり行こうか」

「はいっ、でも、大丈夫です。これがありますからね」

「成程。……あー、杖とかかな? それなら安心だね」

と、自慢気に自らの杖銃を見せびらかす……。見えては居ないんだけど。布ずれと床にぶつかった時の金属質な音を聞き分けつつ、瑠璃は取り敢えずそっと合わせてあげた。
扉を開く。キュルル、と、小さな声。ふわりと花の匂いが広がる。空間は他の部屋とさほど違わない広さのようだ。中程まで入ってきた頃合いでがたと物音。誰かが立ち上がったようだ。

「ーーまあ、かわいい! 貴方がわたしたちとおしゃべりをしてくれるのね? それともおへやをそうじしてくれるのかしら。ああ、叩くのはやめてほしいわ。いたいの。とっても」

「ふぁ、っ、わぁ……」

あまりの勢いに樹里はつんのめって尻餅をつく。ばさりとうごめきが聞こえて、バランスが崩れた樹里の体を受け止めた。
それは瑠璃ではない。彼女は状況把握に努めていた。感じる気配は自分を抜いて2人分。

「ごめんなさいね、年頃の女の子なんて久しぶりだから、うれしくなってしまったの! ふふ。いい匂い、ご飯? そろそろお腹が空いた頃だから……。ちょうどよかった!」

樹里を抱きとめた少女らしき気配は椅子へと彼女を促して、貴方も、と瑠璃を手招く。軽く触ってみれば、それはテーブルと椅子のセットのようだ。

「ああ、うん……アイちゃん? でいいよね。一緒に御飯をたべよう!」

「私は観察を言われて来たんですけど……。ちょっとぐらい、ご飯が先でも……いいですよね」

テーブルに広がる携帯食。閉鎖された環境、時間の感覚は分かりづらいが、アイが言うのならば昼飯時らしい。

「教えてくれるの」

と、コロコロと笑っていた。何が、と聞かれればふんわりと、言葉を濁す。

「不思議な人ですね……」

「人なのかはわかんないけど、まあ、変な子だよね」

顔を見合わせても特に気にした素振りはない。そのまま何事もなく、食事を終える。

「じゃあ、私の観察ですね。じーっ…………」

「あー……。動いてないけど、それじゃあ何も見えないんじゃないカナ?」

「あっ……………」

「のんびり屋さんなのね。じゃあ作業はこれで終わりかしら。うん、気をつけておかえりなさい?」

収容房の扉が開かれる。双方に軽やかに手を振って、何事もなく、作業は完了した。



成否

成功


第1章 第4節

──一人になった部屋。白い少女はぽつりと、呟いた。

「ああ、怖かった。本当に怖かったわ。見られてしまうんじゃないかって」

『eye to eye』は瞳を開く。零れ落ちた虫を拾い上げる。戻すように、目元に押し込んだ。

彼女は、否。『彼女に寄生した』生き物は瞳の中から、人間へと入り込む。這入られた人間は新しい宿主になり、魅力的な瞳は人の目を集め、繁殖が広がっていく……。

では、抜け殻になった人間はどうなるだろうか? 役目を果たした親虫は、一般的には。少なくとも、繁殖が終われば……。

「……私、まだ死にたくないの」

震える手を、そっと握り込んだ。

ドアがノックされる音がする。少女はぱたりとまた、目を閉じて。

ーー録画終了ーー

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