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シナリオ詳細

再現性東京20XX:フルメタルカオス・オーバーブレイク

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鋼と魂
 夜の首都高を多脚パトカーがサイレン音をひきながら疾走する。
 車体を大きく傾けながらカーブを高速でまがり、取り付けられたサブマシンガンを連射。
 前方を走るトラックはライン状の銃弾を受け火花を散らしたが、すぐに対応を見せた。
 『とまりなさい』という合成音声による警告は無視され、トラックはコンテナの扉を解放。斜面上になった扉下部がアスファルト面を擦りガリガリと鳴るが、それが気にならないほどにトラックのコンテナ内部は危険で一杯だった。
 全身を黒く染めたパワードスーツが数体。
 まるで人型ロボットのようなシャープなシルエットだが、彼らの両目に当たる部位が赤く凶悪に光った。
 彼らは次々に車道を躍り出ると、増幅腕によって装備した剣で多脚パトカーの一台を切断。高熱によって焼き切られた足が後方へはねながら飛んでいき、両足のかかとにホイールを下ろしてくるりと反転したパワードスーツは剣に備え付けたエネルギーキャノンを用いて多脚パトカーへと射撃を浴びせた。
 赤い物体が車体にめり込んだ次の瞬間、膨張と爆発を起こし今度こそすべての足が吹き飛んでいく。
「ヒューウ、ストライク! 奢れよ今夜は。ギネスビールがいい!」
「馬鹿いえさっきのはまぐれだ」
「俺は黒いのはいやだ。ルートビアないのか」
「おい俺は奢らないぞ」
「いいからさっさと仕事に移れお前等。なんのためにコイツを用意したと思ってる」
 パワードスーツたちは同じように剣を装備し、残りのパトカーを始末するとハイウェイの壁を破壊して交差した下の道路へと降下。
 そこにあったのは、都内で最も金のあつまる銀行であった。

●出動命令
「メンテナンス完了。DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ――調子はいかが?」
 マイクとスピーカー越しにきこえる女性の声に、氷めいた瞳の少女は上向いた。
 所変わって青白い照明に照らし出された施設の中。コンピューター端末に向かう白衣の女性と、無数のアームによって身体をいじくられている少女の姿があった。
「悪くない。ここは、故郷の施設に似てるね」
 SpiegelⅡ(シュピーゲル)の背骨にあたる部分は無数のコードに繋がれていたが、それが一つ一つ外されていく。どこか艶めかしくすらある肉体を再縫合し、シュピーゲルは再び来秋の少女へと整形された。
「シュピのアーマーは?」
「こっちもメンテが終わったわ」
 声と同時に室内の大きなアームが動きシュピーゲルの手前へと並べられていく。
 ――斥力力場発生装置BW-DBS01通称『ヤタノカガミ』
 ――フォトンバズーカ砲HW-GUN11『ハサカニ』
 ――超電磁投射砲BW-LAY01『アメノムラクモ』
 ――銃身一体型単分子ブレイド『フツノミタマ』
 世が世なら戦争でも起こしそうな武装だが、ここは混沌。今並んでいるのが石の槍であろうと金の杖であろうと宝石のはまった手袋であろうと平等に兵器である。
 シュピーゲルがこうした『スタイル』に拘るのは、やはり彼女の生まれ故郷ゆえだろうか。
 白衣の女性はパネルを操作しながらシュピーゲルの横顔を見た。
「あなた、こっちに来てから強化改装は何回目かしら。もう20回以上はしたはずだけれど」
「たぶん、30回だよ」
「そう……なら、そろそろ仕事を任せてもいい頃よね。『ノワール0300』っていう銀行強盗団はご存じ?」
「……初耳」
「シュピーゲル、あなたと同じようにパワードアーマーを主体にした武装集団で、迅速かつ強引に建物へ押し入って目的の金庫へ突入。金を奪って即逃走。
 次の出現ポイントは分かってるけど都警察は何度も痛手を食らって今は人手不足って状態なんだけど……」
 ここまで聞いて、シュピーゲルは白衣の女性が何を求めているのかを理解した。
「シュピが、それを捕まえたらいいの?」
「あなたがというより……あなたのバックについてるギルドが、ね」
「そんなんじゃないけど」
 シュピーゲルはアーマーを着用し、装備をそれぞれ接続。
 フルアーマー状態になると、無数のアームからはずされ身体の自由を得た。
「けど、依頼なら……引き受けるね」

 依頼内容は銀行強盗の破壊、及び拘束。
 今夜中央銀行へ襲撃をしかける『ノワール0300』というパワードスーツ集団を迎撃するだけのお仕事だ。
 もちろん、『だけ』ということはそれ相応の困難さと危険が含まれていると言うこと。
 充分な武装を準備し、現地にて集合されたい。

GMコメント

 細かい説明の前に、大事なことを言っておこう!
 今回は、メカ回だ!
 メカが暴れてメカをぶっ放して火花がギャンギャン最後に大爆発ドカーンで親指たてて炎の匂いが染みついてむせるメカアクションシナリオだ!
 今からする細かい説明はそれを後押しするための舞台にすぎない。
 楽しもう! レッツ、エンジョイ!

■オーダー:銀行強盗の撃退
 このシナリオの大部分は戦闘であり、特にメカ要素の強い戦闘となります。
 夜に響く鋼の咆哮をお楽しみください。

・シチュエーション
 中央銀行は『再現性東京20XX』に作られ紙幣が集中管理されている施設です。
 ここを襲撃するのが強盗団『ノワール0300』の目的でした。
 あらかじめ複数の銀行や関連施設を襲撃し続けることで警察機関の武力を削り、警邏の都合からも深刻な人手不足に陥ったところで満を持して襲撃するつもりであったようです。
 今回は警察と合同で作戦が執り行われ、皆さんは警察の追加戦力として配置されています。
 周辺避難は完了しており、多少の破壊や二次被害は多めに見てくれるとのことです。
 つまり派手に暴れろってことだ。

・エネミー
 『ノワール0300』はパワードスーツで武装した集団です。
 メイン武装はレンジ問わず使える剣ですが、他にもいくつかの武装が施され固体ごとに能力が異なります。
 人数は8人だけですが、こちらと同等くらいの戦闘力があるものとして戦うのがよいでしょう。
 相手も範囲攻撃諸々を警戒して分散しながら攻め込んでくるはずですし、そのうえ『ここはまかせて先にいけ作戦』をされると非常にまずいので、できるだけ平たくぶつかっていくのが理想です。(各PCが一人一人をマークして実質的なタイマンに持ち込むスタイルです)

●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

・再現性東京20XX
 東京ベースではあるがロボットSFみの強いエリアです。
 警察は多脚戦車を採用しサイバー犯罪が横行し、サイボーグ手術を受けたウォーカーやメカメカしい装備を好むオールドワン、ないしはこの土地に馴染みまくったメカみの強いレガシーゼロたちが好んで暮らしています。

  • 再現性東京20XX:フルメタルカオス・オーバーブレイク完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)
ゲーミングしゅぴちゃん
アーサー・G・オーウェン(p3p004213)
暁の鎧
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
迅牙(p3p007704)
ヘビーアームズ
ドミニクス・マルタン(p3p008632)
特異運命座標
九重 縁(p3p008706)
戦場に歌を
イ型 8號(p3p008874)
珪素生物

リプレイ

●鋼に惹かれる魂たち
 暗い室内にぽつぽつと灯る光と、ブゥンという起動音。
『装甲、展開(スクリプト、オーバーライド)――戦闘機動構築開始(システムセットアップ)』
 カチカチと小さなレバーを順に操作する音に合わせ、薄暗い室内にマニピュレーターが動いていく。
 僅かに浮きあがる少女のシルエットを、厳めしい装甲が次々と覆い隠していった。
『本機体(ユニット)――動作正常(ステータスグリーン)』
「いくよSpiegel」
『Jawohl(了解)』
 ヘルメットの目元を光らせた『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)。ウィングタイプのトラックコンテナがゆっくりと開き、彼女の機体を中心に複数のパワードスーツやパワードユニットが機動した。
「作戦目標、受諾。『敵強盗勢力の鎮圧』……」
 マニピュレーターによって装着されたフライトユニットの翼部分を微細に操作し、各部のチェックを終えると、僅かなブーストをかけながら跳躍。ビルの建ち並ぶ街のアスファルトへと重々しく着地した。
「《B.E.O.1、ハンター。作戦行動に入る》」
「黒鉄の足音が聞こえる♪ 飛べよジャスティス♪ 僕らのせーんしーーーーっ♪」
 一方で『嵐の夜の歌姫』九重 縁(p3p008706)は元いた世界で流行ったらしいアニメソングを口ずさみながら待機状態のルナ・ヴァイオレットへと飛び乗り、コックピットハッチを開いた。
「今回の依頼内容は銀行強盗の退治でしたっけ?」
 シートへ滑り込み、閉じるハッチをよそに操作パネルをタッチする緑。
 『珪素生物』イ型 8號(p3p008874)は顔面の球体ディスプレイに音声のウェイブを表示すると、合成音声のような声で話し始めた。
「誘導ルート確認。合流ポイントを設定……。
 実にシンプルな作戦だ。それでは追い込み漁といこうじゃないか。
 これだけの火力が揃った小隊なら、楽しいパーティになりそうだ」
「パーティーか、そうだな……」
 『特異運命座標』ドミニクス・マルタン(p3p008632)が8號と共にトラックの運転席部分から下り、ドアを後ろ手に閉める。
「パワードアーマーを着た強盗の相手とは昔を思い出すな。
 この手の分かりやすい連中の方が夜妖や事情を抱えた奴よりは殴りやすくていいが」
 二人が振り返るとコンテナの上でスリープモードに入っていた『ヘビーアームズ』迅牙(p3p007704)がギュウンという起動音と共に両目を青く光らせた。
 犬のようなペイントが書かれた肩パーツからは翼が伸び、バックパックにはスラスターが取り付けられている。迅牙の空戦オプションユニットである。
 『暁の鎧』アーサー・G・オーウェン(p3p004213)も両腕を広げるような姿勢で展開式のアーマーを自動装着すると指を小指から順に握り込んでから手のひらを見つめ、その動きを確かめた。
「しかしパワードスーツなんて大層なモン持ってきて、やる事が銀行強盗とはなぁ……元手が取れるのか? ま、俺はぱーっと喧嘩できりゃそれでいいからよ!」
「逆にパワードスーツを買う金があるなら、職安で職を探していた方が良いと思うんだが? 職安で紹介されたのが銀行強盗なら……仕方ないかもしれないが」
「ここらの職安はそんなもん紹介すんのか?」
「否定。ジョークだアーサー」
「あー、そうだったな。この辺の街は非常識すぎてよ」
 パワードスーツは外ではだいぶ珍しいが、この町では銀行強盗に使われてしまうくらいありふれたものなのかもしれない。
 第一、この高層ビルが建ち並び道路がコンクリートで舗装され等間隔にLED街灯が並ぶ風景も、外からは考えられない洋式だ。
「いつの世にも悪人の種は尽きまじ、ということかのう」
 空から声がして見上げてみると、高機動ウィッチブルームにまたがった『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)がゆっくりと降下してくるところだった。
 細長くタイヤのないバイクめいた構造のそれは、後部に魔力式スラスターを備えた特別製である。
 手のひらの上で太陽を溶かしたような微発光コランダム八面体をゆっくりと回転させている。
「技術は正しく使われねばならぬ。
 悪用する輩には、さらなる力で鉄槌を打ち込んでやるとするかの」
 歯を見せて笑うクラウジア。
 見上げていたアーサーと迅牙はそれぞれ。
「赤だな」
「言うな」
 戦闘準備を追え、コンテナから飛び降りた。
 こうして居並ぶ八人の鋼の戦士。
 連続銀行強盗グループ『ノワール0300』の撃退作戦が、幕を開ける。

●金がすべてなら、金を奪える奴が偉く、それを殺せる奴がもっと偉いことになる。
 『ノワール0300』はこの街再現性東京20XXを賑わす連続銀行強盗グループである。
 無人ATMや警備ドローンで守られた銀行を中心に複数体のパワードスーツによる強襲を行い現金を盗み出していく彼らの手口はシンプルながら防衛が難しく、出現する時と場所が分からない以上広く展開した銀行グループもその対策コストに頭を悩ませていたが……。
「それも今宵まで。うちの情報屋をナメてもらっては困るの」
 高架ハイウェイを走る輸送トラックの真後ろに、交差道路から飛行してきたクラウジアがついた。
「そうれTin-dolls(ブリキ人形)!」
 コランダム八面体をかざすと空中に無数の仮想宝石を生成され、弾丸の如く一斉に発車される。
 トラックのコンテナ装甲を易々と貫通し内部で爆発を起こす宝石たち。
「しっかり避けねばご自慢のボディに穴が開く……おっと、もう開けてしもうたのう?」
 爆発と同時にコンテナからはパワードスーツを纏った強盗犯たちが飛び出し。踵部に展開したローラーでバック走行をしながらガトリングガンを発砲。
 クラウジアは前方に魔力を放ち急減速すると、ウィングを開いた輸送コンテナが猛スピードで追いついてきた。
 コンテナ部分から飛び出したのはSpiegelⅡ。
「バリアシステム展開」
 アーマー各所に設置された円盤状のユニットが宙に浮きあがり球形の障壁を形成。浴びせられる鉛玉をすべて空中で静止し転落させていく。
 放出された空薬莢と混ざり、弾頭がはねながら道路を転がりはるか後方へと去って行った。
「チッ、バリアシステムか。ビッツ、出番だ!」
 『ノワール0300』の一人が手をかざして合図すると、対戦車ライフルのようないかつい兵器を担いだパワードスーツが姿を見せた。
「おっと、あれはまずいのぅ」
 バリアを破壊し、さらなる集中放火でSpiegelⅡの機体を撃破する考えだろう。
 が、そうはさせない。
「縁、アーサー、対象AとBを任せる」
「ラージャ☆」
 ハイウェイのカーブ部にかかる壁を突き破り、縁のルナ・ヴァイオレットが空中で人型モードへ変形。飛び出たマイクスタンド型拡張装備をマニピュレーターでキャッチすると、ウサギ耳型の出力装置から縁の持ち歌BGMを放ち始めた。
 コックピット内に突き出たマイクめがけて歌い始める縁。
 味方のトラックコンテナへと着地したルナ・ヴァイオレットに一瞬警戒したノワール0300たちだが……。
「歌ぁ!? なんのつもりだこいつ、歌で俺らが倒せるかよ」
「倒せるですよねぇ、これが」
 スピーカーに鋭い指向性を持たせ、穴の先へと向ける。
 ――と、穴の向こうから銛のようなものが飛んできた。
 ノワール0300ーBの腰部へと突き刺さると、銛から伸びたワイヤーによって急速に引っ張っていく。
 0300ーAともつれあう形でハイウェイ外へと引っ張り出された彼らはビルに囲まれた空き地へと転落。
 そこではアンカーを巻き取りきったアーサーが待ち構えていた。
「追いかけ回される覚悟ができてるだろうな? そのイカした機体がぶっ壊れても文句は言わないでくれよ!」
「久々で、懐かしいですね。飛び交う砲撃、硝煙の匂い……。どれも、生きているという感じがします。では、ステージを始めてしまいましょう! 頑張りましょうね、相棒……なんて?」
 ぴょんと穴から追って飛び出してきた縁のルナ・ヴァイオレットが横に並び、同時に身構える。

 仲間を二人失ったノワール0300はハイウェイの閉鎖的な環境から逃れるため一般道へと下り、広い道路の車線へと展開。
「ビッツもエイブルたちも素人じゃない。残るこいつらを囲んで潰すぞ」
「いいのか? 騒ぎになれば公安が来る」
「どのみち仲間と分断された時点で計画は失敗だ。せめて傭兵どもを潰して次の手を考えるのが合理的だろ」
「公安も傭兵雇うくらい逼迫してるわけだしねえ」
 六機のパワードスーツが一斉に武装を展開――した、その時。
「コソ泥風情が」
 明後日の方向から飛来したマイクロミサイルが着弾。パワードスーツの一機が爆発によって大きくよろめいた。
 直後、真上を高速で飛行していくルクト。
「金を奪い、さらにはパワードスーツを悪用し人を殺めるだと?……到底許されるものではない。貴様らにそれは過ぎた装備だ……そして、貴様らは裁かれるべきだ」
「チッ、まだ仲間が――ぐお!?」
 急速に反転し、ルクトは機銃を連射。ノワール0300たちが散開して攻撃を回避した。
「よって。その破壊、そして制圧射撃を持って、貴様らを確保する。覚悟しろ」
「以下同文」
 フライトユニットによってビルの影から飛び出した迅牙が両脇に装備した機銃を連射。
 回避行動をとっていたばかりのノワール0300の背部に攻撃を食らって転倒した。
 それを助け起こす形でその場に残り、ルクトたちとの戦闘に入るノワール0300……かと思いきや、一部のメンバーノワール0300ーHがローラーダッシュによる離脱を試みた。
「付き合ってられるか、俺は帰る!」
「オススメはせんが……まあ、生きていれば命が無駄になることもある」
 迅牙は独自の信号弾を上空に発射。
 強い光が放たれ周囲をぱっとイエローに照らし出した。
 その時である。
 ブラックカラーのバイクにまたがったドミニクスと8號が路上へと飛び出し、それぞれ0300ーHを追尾。
「玩具を見せびらかしたいんだろうが、クリスマスにはまだ早いぞ子供達」
「前の車、止まりなさい。――なんて、な」
 ドミニクスは懐から取り出した50口径の大型拳銃を連続発砲。
 銃弾を足に受けた0300ーHは激しく転倒し、火花を散らしながら転がった。
「足を!? ――姑息なまねしやがって!」
「銀行強盗に言われたくないな」
「君には、我が鉄杭の錆になっていただこう」
 バイクをスライドさせるように停車し、車体からおりる8號。
 足のパーツを切り離した0300ーHは腕からヒートブレードを展開し斬り付けよう――としたが、8號は片手でそれをキャッチ。
 じりじりと焼けて切断されていくが、まるで感情がないかのように8號は平然と二枚おろしにされた手で相手の腕をつかみ取った。
「なるほど、これは楽しい」
 爪を鋭利に変形させ相手の胸に食い込ませると、肘部の突起を杭に変えて相手の胸部へ勢いよく突き立てる。
 その際に弾けた薬莢が肘から排出され、二度のバウンドをもって地面を転がった。
 几帳面にそれを拾い上げポケットへ入れるドミニクス。
「多分だが、8號……」
「うん?」
 フェイスディスプレイに『?』を浮かべ振り返る8號。
 ドミニクスはぐったりと仰向けに倒れたパワードスーツの、その頭部の点滅を指さして言った。
「その機体、爆発するぞ」
 『!?』
 素早くその場に伏せるドミニクス。咄嗟に飛び退く8號。
 闇夜を赤く染める、爆発。
 起き上がって振り返ると、炎上したパワードスーツとそのパーツが地面をからからと転がっていった。
「やれやれ、汚い花火だ」

●TIME TO COME
「悪りぃな、ここは通さねえ! 通りてぇなら俺を倒してからにしな!」
 肩パーツをパージさせ、左の拳へ装着するアーサー。
 同じく拳を巨大なハンマーに変形させて殴りかかってくるノワール0300と真正面からぶつかり合った。
 拳と拳が火花を散らして衝突し、ギィンという激しい音と共に周囲に衝撃の波を起こす。
「この程度で俺を倒せるつもりか?」
「そのつもりだぜ、俺と――『相棒』はな!」
 そのとき縁のルナ・ヴァイオレットがスピーカーからアイドルミュージックを解き放った。
 指向性の魔力を持って流し込まれた音波がアーサーの機体ダメージを急速に修復。
 両目のみならず前身各所を青く発光させたアーサーは右の拳にも肩パーツを装着。ジェット噴射をかけながらノワール0300の顔面を殴りつけた。
「駄目ですよ犯罪なんかしちゃあ、今投降したら罪は軽くなるかも……って聞いてないか」
 ビルの壁にめり込んで動かなくなった0300-A。
 残る0300-Aはその隙を突く形でビルの外壁へ発砲。壁を破壊すると無理矢理公道へ出て逃走を始めた。
「この期に及んで逃げんのか!?」
「追いましょう!」
 続いて公道へでたアーサーと緑。ルナ・ヴァイオレットをバイクモードへ変形させ、その後部をアーサーががしりと掴んだ。
 そこへ通りかかるルクトと迅牙。
「ルクト、先に行っててくれ。俺は二人を誘導して合流地点に向かう。途中で追い込みをかけといてくれると助かるが」
「了解」
 『あとで会おう』と二本指の敬礼ジェスチャーをすると、ルクトはフライトユニットを変形させて自身を流線型のシェルに収めた。黒い高速戦闘機のようなフォルムをとると、アフターバーナーを点火し超豪速で飛行していく。
 一方では、合流地点への誘導を終えたSpiegelⅡとクラウジアが複数のノワール0300と交戦状態に入っていた。
「武装を解除し此方の指示に従いなさい。理由如何によっては情状酌量も……ないですね」
「だろうな! 死ねやぁ!」
 ポットから発射される無数のミサイルに向けてバリアを展開するSpiegelⅡ。
 そこへたたき込まれた0300-C開口ドリル状の武装がバリアを無理矢理こじ開け、SpiegelⅡへ接近。
 急速に飛び退いたSpiegelⅡと入れ替わるようにクラウジアが横から強襲をかけ、ナイフのように尖らせた仮想宝石を発射。
 0300-Cの機体に食い込んだ宝石ナイフが機体内部へ侵食し、0300-Cはばたばたと暴れ始めた。
「くかかか! 呪詛を味わうのはそうないといったところかの? 魔女相手の勉強になったのう? さてお代を取り立てるとしようかの」
「てめぇ、キャメルになにしやがった!」
 マシンガンやライフルが一斉に向けられ、両手を挙げるクラウジア。
「そっちは複数。こっちはフライトユニットに乗ってるとは言えほぼ生身。ハンデが必要じゃないかのう?」
「なぁにを今更。狙いはなんだ?」
「教えてもいいが……」
 片眉をあげるクラウジア。
「もう遅い」
 そこへ、コンテナトラックが猛スピードで突っ込んできた。
 ノワール0300たちを一斉に跳ね飛ばす。
「遅くなったな」
 運転席と助手席から出てくるドミニクスと8號。
「おやおや、怖くてママのところに帰るのかね? 脳にグリスが足りないんじゃないか」
 大型拳銃による制圧射撃をしかけながらグレネードを投擲するドミニクス。
 一方の8號は両手のひらをかざしてそれぞれ空洞を作ると、内側でため込んだエネルギーを光弾に変えて連続発射。
 転倒した0300たちへ一斉攻撃を仕掛けていく。
「とーちゃーく!」
 そこへアーサーをつれた縁のルナ・ヴァイオレットが到着。人型へ変形しくるんと前転してから片膝立ち姿勢をとった。足でブレーキをかけながらアンカーを構えるアーサー。
 同時にフライトユニットを切り離して着地する迅牙。
 上空から投下されてきた陸戦ユニットを素早く装着すると、超大型のガトリングガンを構えた。
「チェックメイトだ。まだ行けるよな迅牙」
「肯定。『彼女』も到着したようだ」
 と言った途端、単独で逃走していた筈の0300-Bが地面と水平に飛んできた。
 飛行した、わけではない。まるでピッチングマシンにかけられた野球ボールのように回転しながら道路標識に激突。派手にひんまげながら停止し、ぐったりと四肢を垂れ下げた。
「どうやら、パーティーには、間に合ったらしい」
 ルクトが豪速でやってきていつもの戦闘フォームへと変形。
 機銃を残る0300たちへと向けた。
 ゆっくりと手を上げる0300たち。
 武装を床に落とし、震える声で言う。
「命だけは助けてくれと言ったら?」
「試しに言ってみなさい」
 SpiegelⅡは背部に装備していた『アメノムラクモ』を展開。
 0300は舌打ちし、隠し武装でもって一矢報いようと飛び出――。
「ファイア」
 SpiegelⅡの超電磁砲をはじめ全員による一斉攻撃が、0300の機体をバラバラのスクラップへと変えた。

 そして夜は静けさを取り戻し、ドローンを連れたサイレンカーがやってくる。
 戦いの終わりを、告げるように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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