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シナリオ詳細

<忘却の夢幻劇>我儘女神

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●女神、生まれる
「貴方です、貴方! 貴方を私の司祭に任命します」
 夢に現れたのは一人の女であった。黎明を紡いだかのような輝く衣を纏い、額には銀の冠。物語に出てくる『どこか我儘だが愛嬌のあるお姫様』というのが存在したら彼女のような者だろうか。石工のノーシュはぼんやりと思う。
 そして、数拍後に気付く。当たり前のことほど見えにくいもの。何故気付かなかったのか、と呆然とする。
――これ、俺の彫った像と瓜二つじゃないか――。
 ノーシュの心を読んだかのように愛嬌たっぷりに笑みを浮かべる女。どこか彼の困惑を楽しんでいる様子が浮かんでいた。
「ええ、ですから、貴方は私の司祭にふさわしいのです。私をこんな素敵な姿に彫り上げてくれたのだもの。きっと気が合うと思います。違って?」
 首をかしげる姿は自分の願いが聞き入れられると確信している存在のもの。ノーシュは後ずさる。女はずい、と体を寄せる。
「い、いや……俺はただの石工で、そんな司祭も何も出来るわけが無くて……学の無いただの村人で」
 女は不満げに口をとがらせ、つん、とノーシュの額を突く。
「女神からの誘いはこの世界では名誉ではないの? はい、と答えなさい。反論はもう許さなくてよ」
 ノーシュははい、と思わず答える。勢いに押されたのもあった。それ以上に己を神と名乗る女に怯えたのであった。神を怒らせたらどうなるか分かったものではないが故に。
「宜しい。それでは今日から貴方は私の司祭。良く仕え、私を失望させないこと」
 女は満足そうに、ノーシュの頭を撫でた。まるで出来の良い子に行うように。
 ノーシュは心の中で思う。ああ、誰でもいい。俺を助けてくれないか――と。

 ノーシュが司祭となり数日後、名もなき村の人々は美しい女の夢を見始める。――ただしそれは心地よいものではなく、騒がしいものであったが。
「私、こんな狭い部屋はまっぴら御免です。もっとちゃんとした社を作りなさい」
「私、果物が食べたくなったわ。葡萄は無くて? え、この辺りにはそんなものはない? 分かりました、何か採って来なさい」
「なぜ礼拝者がいないの? まったく、まったく、ここの皆は敬意が足りないわ!」
 村の人々から話を聞いたノーシュは全力で謝ったが、村の人々は彼を不憫な人を見るかのような優しさで迎えた。
――この世ならざる者に憑りつかれたならば、定命にはどうしようもできないことなのだ、と。
 村人たちは思う。この村はもうおしまいかも知れない、と。

●眠れぬ村
「像に取りつかれて不眠になった村があるのだよ」
 『学者剣士』ビメイ・アストロラーブが開いた『忘却の夢幻劇』の頁には、寝台の上でうなされる村人達の挿絵があった。
「きっかけはこんな話だ。ある日天から落ちてきた石があり、それを拾った石工が何の気なしに女の姿に彫った所……神性を帯びてしまったようでな。いや、元からそういう石だったのかもしれんが。とにかく意志のある石の出来上がりだ」
 冗談を言ったつもりらしいが、笑みは力ない。
「別に石像……彼女自身には悪気は無いとは思うんだが、最初は石工の夢だけだったのだが、その内毎晩毎晩村人全員の夢に出て来てはやれ果物を取ってこい、やれ磨け、やれ居場所が狭いなどと我儘を言い始めてな。おかげで見事に村中が不眠だ。困った村人が石像を捨てようとしたんだが川に捨てても山に捨てても次の日見事に戻って来る。そして捨てられた石像は拗ねて夢の中で延々と不満を言い続けたり小指に物を落として来たりしててんやわんや……というわけだ」
 不満を言うだけや小指への被害で留まっているのはまあ、可愛らしいもんだが。そう付け加え、話は続く。
「大きな都市からは遠い僻地の貧乏な村だ。都市まで魔祓いの神官を呼ぶ金も無い。というか下手に祓おうとしたら大惨事が起きるかもしれない。というわけで、扱いに困っているこの石像をどうにかして欲しい。大事な刈り取りの季節だが、このままでは仕事も手につかないし――機嫌を曲げた石像が、何をするか分かったものじゃないからな。では、任せたよ」

NMコメント

 神秘と怪奇の『忘却の夢幻劇』へようこそ! ろばたにスエノです。
 わがままを言い続ける女神像をどうにかして、村人の不眠を止めてあげてください。

●今回の舞台
 僻地の名も無き村です。谷の合間にあり、他の村との交流は少ないです。貧乏な村でその日を暮らすのが精一杯な所に女神と名乗る奇妙な像が現れて、我儘を言い続けた結果皆不眠に悩まされることとなりました。村に住むのは百人ほど、おもな産業は農耕と牧畜ですが、土が痩せていてあまり成果は出ません。季節は夏、麦の刈り入れの時期ですが、このままでは皆が仕事に回るのは厳しそうです。

●目標
『女神像をどうにかして不眠を止める』
 壊してもいいし、なだめてもいい。手段は皆様の選択次第です。とにかく村人達の不眠を止めてあげてください。
 なお女神像は村人が一度壊そうとしましたが、あまりにも硬くて村人の腕では破壊できない上、その夜件の村人は足を柱にぶつけたあげく上から物が小指に降ってきて大怪我をしたそうです。ノーシュ曰く「俺が彫った時には普通の石だったんだが」らしく、神性を帯びた(?)時に硬度も増したと思われます。

●登場人物達
女神:像です。名前はまだありません。天から降ってきた石を偶然石工のノーシュが拾い、暇を見つけてはこつこつ彫った結果、何故か神性を帯びるようになりました。もしくは元々あったのが目覚めてしまったのかもしれませんが、詳しいことは不明です。女神自身は「秘密がある方が素敵でしょう」とはぐらかしています。それなりに我儘ですが、今までやっていることは夢に出て扱いに対して不平を言うこと、自分を壊そうとした相手を祟ること(もっともこれは自己申告であって偶然かもしれませんが)位であり、直接的な大被害を与えてきたりはしていません。……不眠を除けば。

ノーシュ:村の石工です。年は二十代半ば、拾った石を女性の形に彫ったら夢の中で女神だと自称され、なおかつ無理やり司祭役をすることになった男です。村人達は彼を責めるでなく、むしろ不憫な人として扱っています。果物を取って来たり社を作ったり毎日磨いたりしている結果、本業の石工の仕事に回せる時間が減り、何とか今は村人達からおすそ分けを貰って生きている状態です。

村人達:眠れていません。ノーシュと像を恨むわけではなく、ただただ現状に困惑しています。

●サンプルプレイング
「まあ、我儘に付き合っていても向こうがつけあがるだけだ。ここは一発殴って定命の強さをその体に叩き込んでやらないとな。ところでここにおあつらえ向きのハンマーがあるんだが。いくら硬い石だ女神だといっても全力の技で殴られれば痛いだろう」

 それでは、よい冒険を。

  • <忘却の夢幻劇>我儘女神完了
  • NM名ろばたにスエノ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月07日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
紅獣
回言 世界(p3p007315)
貧乏籤
黎 冰星(p3p008546)
パンドラの色は虹色

リプレイ

「わざわざ遠方からありがとうございます、旅人様……これが件のノーシュです」
 やつれ、疲れ果てた村長は<特異運命座標>らにノーシュを引き合わると、起きているのも惜しいとばかりに眠い目をこすり去っていった。入れ替わるように、げっそりやつれた若い男が粗末な小屋の中から出て来て挨拶をする。目の下にはくまができており、話す言葉は息も絶え絶えといった様子。藁のようにぐしゃぐしゃになった髪の毛を掻きむしり、ため息を一つ。そうして、奥にある小さなテーブルを示す。テーブルにかけてあるのは村で集められるだけの色鮮やかな布。大都市から見たら粗末ではあるが、村人なりに苦心したのだろう。その上に小さな果物や灯りと一緒に置かれているのは、素朴な意匠の愛らしい女をかたどった彫像であった。
「あれが、うちの村に降ってきた女神です。正確には俺が彫った石ですが……喋るようになってしまって」
 ノーシュが像に聞かれないように小声で話す様子は、まるで口うるさい人から逃げるかのようであった。
「夢の中に出てくるだけと言うのならば、我慢して眠れとだけ言って終わらせるんだがな」
 けだるげな中にあきれたと言いたげな感情を浮かべた顔で、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が胡散臭そうに女神像を見ている。
「厄介なことに現実への干渉能力もあるらしい。石像が元の場所に戻るとかどんな手品だよ……」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は世界の言葉につられて思わず像を見、夫の『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)をついついと小突いて話しかける。
「昔から人型をしてる物は色々憑きやすいっていうしなあ」
 ルナールはルーキスを穏やかに見つめ、真顔でつぶやく。
「度が過ぎれば女神と言えどただの害悪ってことだな。……世の中の女性全般はこうじゃないことを願うばかりだ」
「なあに?」
「いや」
 にっこりと笑うルーキスに、ルナールは一見無愛想な、愛情を込めた無表情で返した。
 『パウダー・アクアの拳』黎 冰星(p3p008546)はそんな二人の様子をちらりと眺めて、ノーシュに話しかける。
「私個人としては、なるべく話し合いで諭していきたいです。悪性は低いでしょうし」
 ノーシュは話し合い、とオウム返しに応える。果たして聞き入れるだろうか……と疑うような表情であった。しかし、壊さない様子に明らかに安堵した風になる。
「壊さないんですね。少し、心が落ち着きました。こんなに面倒をかけられていても、彼女が壊れるのは結構かわいそうだ、とふと思ってしまって」
「勿論暴力に訴えるのも一つの手ですが……。しかし、私は女神が悪でない点がどうにも引っ掛かるのです。暴力は互いに心身を擦り減らします。それが避けられるのであれば万々歳です。ですから懲らしめるその前に、女神様とお話する時間を私に下さい」
「聞き入れてもらえるでしょうか?」
「じゃあ、逆に質問だけど。彼女の要望を試したことはないの?」
 ルーキスが首をかしげて問い返せば、ノーシュはまあ、出来る範囲では、と答える。
「貧乏な村故にあまり思い通りにはいきませんが……一応頑張っていました。納得はしてくれないようでしたが」
 ルーキスの側にいるルナールはノーシュの言葉に、皆目見当もつかぬという様子で頭を横に振った。
「石像と言えど一応女性だよな? 女心ってやつは俺には分らん……」
「ダメなら物理でいこうか、手伝いお願いねルナ。こういうのは上下関係をしっかりしておかないと」
 間髪入れずにルーキスがにっこり笑う。
「まあ、硬度も分からない。結局夢の中で話し合うのが手っ取り早そうだな」
 世界が溜息を吐き、つんつんと指先で像の頭に触る。ほんのりと温かいものが一瞬指を走り、その感覚は消えていく。
「昼間でも女神像の夢は多分見られるんだよな? だったら寝てすぐに会いにいこう」
「同感です」
 冰星が真面目な顔で頷いた。

 今すぐ寝具を用意してくれと言われた村長は驚いたが、旅人には旅人の考えがあるのだと、深くは立ち入らず素早く人数分の藁を用意する。ノーシュの狭い小屋に敷かれた藁にくるまれて、<特異運命座標>らは眠りに落ちる。地べたに座ったノーシュははらはらとしながら彼らを見つめ、像は、何も言わずに全てを見下ろしていた。

 そこは、暖かく、全てが煌めく場所だった。中心にいるのは顔立ちに幼さを残した若い女が一人、光を紡いだような一本の編み下げ髪を弄っている。
「定命の者よ、よく来ました。横でずっと見ていたのよ?」
 いかにも女神ぶった最初の言葉と、二言目の娘めいた口ぶりはまるで別人のよう。二言目が素らしく、宙に浮いて話はまだかと言いたげに足をぶらぶらとさせている。
「はじめまして、女神様。私は黎 冰星、定命の端くれです。貴女はなぜ信仰を望むのですか? そんなところまで秘密ですと、定命の者は信仰したくても出来ないのです。こちら側の人間は、ご利益という見返りを求めて信仰します。その対価は? 貴女は何を返してくれるのですか?」
  冰星が話しかければ女は首をかしげ、
「なんのことかしら? 空のお姉様達は言っていたわ。女神は常に敬われ、崇められる……。銀の庭に白い孔雀、象牙の家に絹のクッション……それなのにこの村は、全くもって、まったくもって……!」
 むう、と幼くむくれる様子に、冰星が脅すように何かを言いかける。それを世界は手で抑え、ずいずいと前に出る。
「いいか、神像。世の中は常にギブ&テイクだ」
 指を一本立てた世界に、女神はなにそれ、と言いたげに首をかしげる。
「誰の役にも立たない像なんて信仰されないのは当然、ましてや出来立ての像なんて崇める謂れも無い訳だし」
「え、私は、でも、空の宮廷から来て――勿論何もできない訳じゃなくてよ! 不信心者の指を散々痛めつけてやったのだって、わたしの力ですっ」
 役に立たないなど心外な、と言いたげな様子で立ち上がり地団駄を踏む女神。それを聞いてなるほど、といった風を装って世界は続ける。
「そう、アンタには幸い少しの力があるらしい」
「ええ、これでも星々の娘が一柱――」
「ならそれで村人の役に立ってみせろよ。そういうことを少しずつ積み上げていけば誰からも感謝されて祀りあげてもらえるようになるはずさ」
 役に立つ、という言葉に女神はきょとんとした顔で返す。しばしの沈黙の後思い当たらなかった、という表情をしてから、世界に飛びつこうとする。世界は不意を突かれて抱き着かれ、大きなため息をこぼした。
「つまり、私の力強さを見せつければ良いのかしら? 見せれば白い孔雀をくれるのでしょう?」
「孔雀は知らないが……。少し優しくすれば意外と大きなリターンが帰ってくることもあるんだ。中々悪くない方法だと思うぜ?」
 力を見せれば願いが叶うのだと答えに飛びついた女神は、半ば世界の言葉を聞いていない様子でこれからに対して息巻いている。それを見てルーキスは心の中で
――安々と乗せられたなあ、この女神……。
 そう呟き、改めて手を振るように青色の翼を二、三度羽ばたかせてから、女神に話しかける。
「ところで、家って言ってたよね。良かったら、キミの願いをかなえてあげられるかもしれないんだ。ね、ルナール?」
 話を振られたルナールは、うむ、とうなずいて答える。
「うん? あぁ、アレか。力仕事なら慣れている」
 そういうこと、と夫の言葉に左目を猫のように細めながら、ルーキスはにっこりと笑った。

「睡眠不足が深刻になる前に終わらせるぞ! 皆もほら、はやーく!」
 目覚めて一行が欲したのは、図面用の羊皮紙と、いい香りのするよく乾いた木材、そして幾ばくかの人手であった。村人たちは、それで安眠が戻って来るならとこぞって手を貸す。故に作業ははかどり、普段の半分の早さで完成に近づいていく。
 『何か』を建てている村人の音頭を取るルーキスを、村人らに混じって作業をしているルナールは優しく見つめる。
――まあ、奥さんの綺麗な手が荒れるのは嫌だしなー?
 今すぐ近寄って頭を撫でてやりたいが、今はその時間じゃない。丁寧に木を噛み合わせ、槌で叩いて固定させていく。

 <特異運命座標>らが提案したのは、「女神に簡素な社を作ったらどうだ」という話だった。これを聞いた村人たちは確かに一理ある、と頷き、意見を受け入れた。ルーキスが図面を書き、ルナールが主となって社を作る。世界と冰星も手を貸す中で出来上がった社は小さく素朴であるが、可愛らしい意匠。そこにはノーシュが柔らかい白い石で素早く彫った孔雀の彫像も一緒に飾られていた。
「白い孔雀がどうだ、とかしきりに言っていたから……。これで、機嫌を直せばいいのですが」


 ノーシュは夢を見る。おなじみとなった夢の中では編み下げ髪の女神がいて、また無理難題を言いつけてくるのだ――そう覚悟していると、鮮明になっていく視界の中で、必死になんでもないさまを取り繕おうとしている女神とそのそばで遊ぶ一羽の白い孔雀が目に入る。
「まあ、これで及第点とします――いつかは生きている孔雀を連れてくるのよ? いいわね?」
 そうして、女神はぷい、と横を向く。そんな女神にノーシュは苦笑いをこぼしながら話しかける。
「女神様、御身を祭る社が粗末であることをお許しください」
「よくてよ。まあ、想像していた物よりかなり狭いけど」
「では、女神様をお祀りするために、御名を、お聞きしても宜しいでしょうか……その、呼び名がないと困りますので」
 ああ、忘れていたという風に、女神は数音の言葉を口から発し、にこりと笑った。

 その年から村の麦は数多に実をつけ、果物は甘く、気候は柔らかになった。
 村の民は不眠に陥ることなく、ノーシュの所に来る呼びかけも人懐っこいものに変わり――皆穏やかな夜を過ごしたと言う。

成否

成功

状態異常

なし

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