PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<盈揺籠>ちいさなあなたが

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎ゆりかごのなかで

 おかあさんがいいました。
「きょうは、だれがおえかきをしにいくのだったかしら?」
 あつまったこどもたちは、みんなてをあげていいます。
「わたし! わたし!」
「おれじゃない?」
「ううん、ぼくだよ!」
 あらあら、たいへん。みんなみんな、じぶんがいきたくてゆずろうとしません。
 おかあさんはそんなわがこをみわたして、いとおしそうにわらいます。
「ええ、ええ。かわいい、かわいい、よいこたち」
 ひとりひとりあたまをなでて、なまえをよびます。
 さいごに「ハル、ハナ」とやさしくよんだのは、はじめにてをあげたげんきなこ、それから、となりでにこにこわらっていたこのなまえ。
「はいはぁい!」
「……よんだ?」
「ハル、ハナ。きょうはあなたたちのひだったわね」
 ふたりはかおをみあわせて、こくこくとうなずきます。
「そうだよ、おかあさん! ハルたちのひ!」
「そうみたい……ハナのひなの、おかあさん」
 ほかにはだれがいくんだっけ。ハルはきょろきょろみわたします。
「ぼくとムクだよ」
「ナオとぼくだよ」
 ナオがムクのてをとって、ムクがにぎりかえしていいました。
 おかあさんは、そんなよにんをじゅんばんこにみてうなずきます。
「それじゃあ、おやつとクレヨンをもって。まいごにならないよう、きをつけて」
 ハル、ハナ、ナオ、ムクのへんじがかさなります。
「それから、あなたたちも。すてきなえをかいてらっしゃい?」



⚫︎しゃせいかいをはじめよう

「食欲の秋、読書の秋……秋っていろいろやりたくなる季節だよネ☆」
 棒付きキャンディーを咥えた小さな案内人の横には、積まれた本でできた山脈があった。ポップでカラフルなものからシンプルで落ち着いた色合いのものまで、様々なカバーの掛かったそのほとんどが児童書や童話の類いである。ホント捗っちゃって困るなーなどとケラケラ笑った彼はそこから一冊を取り出す。こんな状態でもどこに何があるのか把握しているらしい。
「ハイ、じゃあ今回のお願いはコチラ。ザックリ言うとお子様達と一緒に動物園と水族館に行ってもらいまーす!」
 晒された表紙を見て声を出しかけた誰かにシーッと口止めをしながら案内人は続ける。
「遠足の引率をして、みんなでお絵描きして、おやつを食べるだけの簡単なお仕事、だよねぇ?」
 画材も向こうで借りられるから身ひとつで飛び込めて、行楽の秋と芸術の秋を一度に味わえるお得な内容だという彼の説明に嘘は無い。
 それじゃあ早速、と腰掛けた大きなライオンのぬいぐるみから身を乗り出し、本の前に参加者達を呼び寄せる。
「……ああ、コレ。遠足のしおりもあるからチェックしておいたらいいんじゃないカナ☆」
 いってらっしゃい。無邪気に手を振る彼の瞳に滲んだ悪戯っ子の笑みに気づくかどうか。そこが分かれ道だった。

NMコメント

気づいている人も、気づいていない人も。
知っている人も、知らない人も、ようこそ。
LNも五本目となりました。氷雀です。

⚫︎目標
一緒に観て回ったり、題材を選んだり、アドバイスをしたり、お子様達と交流しながら絵を描く。

⚫︎世界
おかあさんとたくさんの子供達のためのふわふわメルヘンランド。
彼らの暮らす大きな家を出ると、お店や遊び場がいくつも並ぶまっすぐな大通り。
そこに本来いるべき大人達の代わりに玩具達が働いています。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3784
↑前作を読んだ方がわかりやすいです。いろいろと。
以降、この世界の物語は<盈揺籠>シリーズとします。

⚫︎主旨
簡単に言うと幼児化シナリオになります。
「生まれた時から大人でした!」という種族であれ、この世界に立ち入った時点で強制的に人間の幼児サイズ(4、5歳程度)に縮んでいただきます。
今とは違う姿(髪や瞳の色が違う、など)を指定したい方はプレイングに記載してください。
なお、中身はそのままです。そのままです。
基本的には普段どおりの能力が発揮できると思って大丈夫です。
話す言葉が舌足らずだったり、歩幅が小さかったり、身体的なペナルティを被りたい方は自由に設定していただいても構いません。
今回は前作を何かしらの形で『知っている』or『知らない』で最初の反応が変わるかと思います。
その辺りも含めて、存分にお子様ライフをお楽しみください。


⚫︎おかあさん
みんなのお母さん。たったひとりの大人。
母性・包容力カンスト。みーんな可愛い我が子です。
必殺技は泣く子も眠る子守唄。この世界においてそれに抗える者はいません。

⚫︎ハル
ハナとは双子。明るく元気な動の子。
興味の先も表情もころころ変わります。時間一杯まで遊び回るつもりでいます。
好き:全部

⚫︎ハナ
ハルとは双子。無口で大人しい静の子。
眠たそうな笑顔の先にいつもハルがいます。放っておくと何も描けずに帰宅するでしょう。
好き:ハル

⚫︎ムク
ナオとは双子。天然ちゃん。目を離すとふらふらどこかに行ってしまう。
ナオが喜びそうなことを見つけるのがうまい。
好き:うさぎ

⚫︎ナオ
ムクとは双子。真面目ちゃん。きちんと話せば素直に聞いて従ってくれる。
ムクが心配でいつも後ろを追いかけている。
好き:ペンギン

⚫︎動物園・水族館
ごく一般的なそれです。
絶滅種や御伽噺的な存在がいたり、生き物たちがおしゃべりする以外は。
動物園は屋外、水族館は屋内展示がメイン。
従業員はライオンのぬいぐるみです。


⚫︎えんそくのしおり 作・ナオ

ごぜん
どうぶつえんのいりぐちでしゅうごう
まずはじゅうぎょういんさんにごあいさつ
しょうどうぶつのふれあいコーナーもあるよ
たくさんえをかく!

おひるやすみ
まんなかのひろばできゅうけい
きょうはクッキーとチョコレートとキャンディー!

ごご
すいぞくかんをまわろう
ショーもあるし、ペンギンさんとおさんぽもできるよ
たくさんえをかいたら、おひさまがいなくなるまえにかえる!

  • <盈揺籠>ちいさなあなたが完了
  • NM名氷雀
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月11日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた

リプレイ

⚫︎よん、たす、よん

「わぁお! 皆、ちっちゃ可愛い!」
 待ち合わせ場所にて。あはは、と無邪気な声を上げたのは赤い髪留めで結い上げた黒髪が印象的な、美しい子供だ。くるくると視線を遊ばせる度に、その小さな耳でファイアオパールが煌めく。
「良いね、この視点! 全部が大きく見えて、それだけで刺激的! 偶にはこういう驚きも悪かないねぇ!」
 そんな好奇心に踊る『旅慣れた』辻岡 真(p3p004665)とは違い、戸惑いが先立つ『聖女の小鳥』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)。子供と絵を描く筈が、頬も瞳も丸みを帯びて愛らしいこの姿では無理も無い。俺も老けたなぁ、と弟分らを世話した孤児院時代を懐かしむ余裕を取り戻すのも割合早かったが。
「アンタとは子供絡みの依頼で縁があるな。今回は互いにこんなナリだが」
 振り返った知人、『闇之雲』武器商人(p3p001107) は番を愛でるのに忙しそうだ。
「おやまァ、小鳥ったら可愛いねぇ。雛鳥の様にふわふわの髪と甘やかで大きな赤と金の目」
「んん……ほんとに、ちぃさくなってしまった……」
 小鳥、と呼ばれた『戦場のヴァイオリニス』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)は一頻り自身の小さな手足に触れてから、そっと楽しみにしていた番の姿を窺う。
「……しづきも、かわいい」
 ぎゅーって抱きしめて、頬ずりしたくなってしまうほどに——舌ったらずな声でそう囀る前に、銀色を靡かせた武器商人が抱き寄せた。幼くとも失われない神秘的な容貌の中のアメジストは、どんな言葉よりも雄弁に語る。——これはあげないよ、我(アタシ)のだもの。

「楽しい時間になるといいなァ。この間の子達ともまた会えるそうだし……」
「あ、しょーにんだ!」
「またきてくれたの?」
 噂をすれば何とやら。幼子ふたりが見知った存在へぱたぱたと駆け寄った。
「この世界は興味深い点がいろいろあったからね。今日は可愛い我の小鳥も一緒」
 そこへ遅れてやって来るもうひと組。これで全員だ。
「やあ、僕は真! こっちは黒兎の鬼灯ちゃん。今日は一日、あなた達の引率のおにーさんだよ」
 真は子供の引率ならと背負ってきた赤目の黒兎リュックを見せる。
「わたしはハルだよっ!」
「……ハナはハナだよ?」
 ムクとナオよりもはっきりと真逆の性質の双子だった。

 出発前に、とベルナルドが荷物から手書きの名札を取り出した。
「迷子になっちまっても聞きやすくなるだろ」
 名前の隣に描き足されたそれぞれの『好きなもの』を覚えれば、交流も捗る優れものだ。口々に礼を伝えた双子達は見せ合いっこを始めたりと各々の形で喜んだ。
「それじゃあ出発ー!」
 トントンと足踏みをしてから先を歩き出す真は、断固として転ぶなんて無様を見せはしない。しかし当然、歩幅の違いに困惑するヨタカのような者もいる。
「しづき……て、つないでて……」
 転ばないよう意識するほどにふらつく番の手を取る武器商人。
「勿論。どこにも行かない様にね。ナオも心配であればムクと手を繋いでおいで」
 いつかとおんなじ、とくすくす笑う双子と共に、ライオンのぬいぐるみに見送られた一同は門を潜った。


⚫︎ふれあうまぼろし

 鞄にクレヨン、絵具を詰めて、画板に真白い画用紙を。
 ふれあいコーナーは小動物や大人しい草食動物が柵の中で放し飼いにされている、ちょっとした草原だった。
「ここにはムクの友達がいたのだったかな」
 武器商人に頷くムクだが、草陰にでもいるのか見つからない。それをチャンスだとベルナルド。
「じつはな、おれは、ふしぎなまほうがつかえるんだ」
 魔法という言葉に目を輝かせた幼子をしぃと黙らせて集中すると、見えてくる隠れた動物達の匂い。お目当てはコイツか、と案内してやればムクは名札の兎に負けないくらいぴょんぴょこ跳ねた。
「そうだよ、うさぎさん!」
「すごいな、ベルナルド!」
 感心したように手を叩くナオの胸には、ペンギンの名札が揺れる。
 ふたりは実に子供らしく目の前のことに精一杯で、兎とお喋りし始めればもう彼らだけの世界だ。人語を話す兎も気になるが、水を差すのは野暮かとベルナルドも自分の題材を探すことにした。

 武器商人は問う。どうして動物(キミ)達は此処にいるのだろうね、と。兎も牛も羊も山羊も返ってくるのは同じ口上だった。
「みんな、子供(あなた)たちのためよ」
 きっとこれ以上の答えは得られない。彼らはそれを持ち得ない。
「何か、お困りですか?」
 ライオンのぬいぐるみが尋ねた。
「何のために此処が在るのか、従業員たるキミは識っているかい」
 ぴくりとも表情の動かない硝子玉が窺う気配。
「外にも動物はいるのかな。猫とか、犬とか」
「いませんよ。大人だって、いないでしょう?」
 当たり前は当たり前では無い。必要が無いのなら存在しない。この場所はとても甘く柔らかく閉じていて、彼らは結局のところ『子供たちの良き友人』でしか無いのだ。
 ありがとう、と何事も無かったように笑みを湛えた武器商人は小鳥の元へと踵を返した。

 兎と戯れる幼子らを描き終えた真は、ぼんやりと柵に凭れる横顔に声を掛けた。
「ねえ、あなたは何が好き?」
 人見知りなハナは到着後すぐ駆け出していったハルを目で追うばかり。
「僕は友達と同じ鯨と、奥さんと同じイルカかな」
「……じゃあ、すいぞくかん、たのしみ?」
 ゆっくりと返事が返ってきたが、視線の先は相変わらず半身だ。
「うん。他にも……そうだ、面白い描き方を知ってるんだ。あなた達にも教えてあげたいな!」
 一緒に描こう、と誘う声に眠たそうな瞳が瞬く。
「……いっしょに、なら」
 太陽が描かれた名札を弄りながらぽつりと溢した応えに、約束だよ、と真は笑った。

「まさかペガサスとか、そういうのもいるのかな……」
 辿り着いた小さな池の畔。優美な力強さに満ちた純白の体と大きな翼。まさにヨタカが思い描いた天馬が、そこに佇んでいた。黒い瞳に捉えられて息を殺せば、控えめな鳴き声はむしろ呼んでいるようで。
「……おじゃま、します?」
 幼児の身には巨大と言っても良いようなサイズ差と神々しさに圧倒されながら、それでも触れてみたい。おずおずと上がった小さな掌に、擦り寄った天馬のなめらか毛並みが滑っていく。
「どうぞ、可愛らしい貴方」
 凪いだ水面に広がっていく波紋のような涼やかな声がして——
「……ん、羽? ペガサスなんてものいるのかよ、この動物園!?」
 ——ベルナルドの叫びが、そんな幻想的な空間を切り裂いた。ハッと我に返って謝る彼も拒まれはせず、思いのほか人懐っこい伝説上の生き物と彼らは存分に触れ合ったのだった。
 そうして描かれた絵の出来映えや如何に。ヨタカは決してそれを見せなかったという。


⚫︎わたしのすきなもの

 中央広場に集まって舌を甘やかしたら水族館へ。打って変わって落ち着いた照明の青色の空間に、わぁ、と思わず声を漏らしたのはヨタカだ。案内図の古今東西あらゆる海の生き物の中に鯨を見つけ、武器商人も感嘆混じりの息を吐く。
「イルカショーもあるよっ!」
「……まこと、よかったね?」
 ハルとハナに袖をくいっと引かれて真も満更でも無さそうだ。
「まずはペンギンのおさんぽ!」
「ナオのおともだちのとこだよ」

 ペンギンと並んで行進するナオとムクに、ヨタカ。全てを新しいことのように楽しんで、見た目相応にはしゃぐ姿を眺める武器商人。その幼子に声を掛けたのは、心を同じくするものがあったからだろう。
「ハナも、好きなものをお描き。例えばほら、あそこでクマノミを興味津々に眺めてるハルは可愛かろ?」
 ずっと焼き付く程に見つめていた、小花柄の名札をした片割れ。その周りを舞い泳ぐ鮮やかな橙色が、初めて意識に飛び込んできてハナは目を見開く。
「それを紙に残してご覧。我も小鳥を描いちゃお」
 ふたりは常よりも少しだけ、情熱的な瞳をしていた。

 ベルナルドはクロウタドリの姿に変化してナオに近づく。飛行種なら仲間みたいなもんだからな、とはやや暴論だが、ちょこちょこと歩く小鳥の姿は十二分に幼子らの興味を引いたようだ。
「くらげを見に行かないか。ふわふわして見飽きないぞ」
 子供でも描きやすく、絵が苦手でもとっつきやすいと選んだコーナーに誘えば、すっかり懐いたナオとムクは嬉しそうに付いて行った。
 
「ハルちゃん、ハナちゃん、おにーさんと一緒に描こうか」
 やくそくしたから、と頷くハナに、ハルは驚いたようだった。
 準備を終えた真は絵の具の使い方を説明していく。
「まずは手に水色をつけて……」
「えっ、いいのっ?」
「よごれちゃうよ?」
 上がる歓喜と不安の声に得意げに笑って、ぺたぺた。マンボウの群れの登場だ。拭った指に別の色を置き、次はヒトデを描いてみせれば我慢できずに差し出される手。
「海の青は、溶かした絵の具を霧吹きでシューッと。こういう絵をいっぱい持って帰りたいんだ」
 真っ白な画用紙に一枚、二枚と、まるで水族館を写し取ったような大作が仕上がっていった。


「うう、ねむ、い……」
 ヨタカは睡魔に襲われて再び覚束無い足取りだ。
「小鳥、眠いの?じゃあ背負ってあげる」
 武器商人に促された彼は数分のうちに眠りに落ちる。よかったねぇ、いっぱい遊べて。夢の中まで届く番の優しい声に幸せそうな寝顔を見せていた。
 ベルナルドと真は双子達と手を繋いでの帰路だ。
「……また会いに来るからな」
 愛着が沸いて別れ難いベルナルドに、待ってるね、と彼らは声を揃えた。

 ただいま。おかえり。行き来する声。
 色とりどりの思い出に目を細めるおかあさんへ駆け寄る真。
「ママ、僕、頑張ったよ。褒めて、撫でて」
 温かい笑顔で迎えたおかあさんは歌う。甘えん坊な子には特別、甘い子守唄を。
 誘われるようにみんな瞼を擦って丸くなる。
 さあ、おやすみなさい、またあした——

成否

成功

状態異常

なし

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