シナリオ詳細
タント&ビューティーのミッドナイトカーチェイス
オープニング
●宿命のライバル、タント&ビューティー前代未聞のクライムアクションが今開幕!
「ビューティー、トラックのよこに車をつけますわ! ボンネットから飛んでくださいまし!」
「ボンネットから!? 嘘ですわよね!? 今この車、時速百キロは余裕で越えてますのよ!?」
金髪ドリルの御嬢様コンビがスーパーカーの運転席と助手席にそれぞれ座り、弾丸のごとき速度で抜けていく対向車をかわしながら都会のハイウェイを突っ走っていた。
普段の彼女たちを知る人間からすればあまりにもミスマッチな、しかしどこか何かを感じさせるテイストの組み合わせ。
タントはぐんとアクセルを踏み込み、ハンドル脇にセットされたニトロブーストスイッチを押し込んだ。
赤炎を吹いて風も景色も突き抜けていくイエローカラーのメタリックボディに黒い螺旋模様のステッカーが施された車体。正面のボンネットにはビューティーの仮面を摸したステッカーを大きくその存在を誇示し、運転するタントも同じ仮面を装着していた。よく皆忘れがちだし『ビューティーってメガネっ娘なんですね』と言われるがこれは実は仮面である。身分を隠した没落貴族だという設定を誰も覚えていないがゆえの弊害であった。
だがそんなことはどうでもいい。
音も風も時間さえも置き去りにしそうなこのスピードの中では、もはや。
「ええいやってやりますわ!! ふんぬ!」
開いた窓から淵を掴み、するりと車外へ身を滑り出すビューティー。
暴風が縦ロール髪を遊ばせるが、かまうことなくボンネットへと這うように移動した。
銀色のボディを晒すトラックのすぐ脇へと追いつく車。
運転席でタントが『はやく!』と叫んだ。対向車線から今まさにまっすぐ車がこちらへ突っ込んできているからだ。
鳴り響く対向車のクラクション。
迷う時間は一瞬だってない。ビューティーはトラックめがけて跳躍し、その上淵へと両手をひっかけた。
即座にハンドルをきって正面衝突をさけ、一方のビューティーは対向車のかすった火花をしりめにトラック上部へとよじ登る。更にはうようにハッチへと到達し、格納部へと滑りこんだ。
数秒後。
トラック後方の扉を豪快に突き破って、真っ赤なスーパーカーがトラックを置き去りにして飛び出していった。
素早くターンをかけるタント。
赤い車の運転席を見ると、アクセルを踏み込みこちらへ親指をたてるビューティーが見えた。
二人、いや二台のスーパーカーはサイレンを鳴らし猛スピードで迫るパトカーの群れをバックミラーで確認すると、深夜のカーチェイスを始めるのだった。
さて。
タント&ビューティーからは想像もつかないようなこの事態がなぜ引き起こされたのか、そしてあなたはその渦中へいかにして加わったのか。
そのいきさつを説明しなければなるまい。
●前日譚
ここは再現性東京GT。別名自動車狂いの街。練達の一角に存在する偽りの現代社会である。
疑似都市にはコンクリートで舗装された道路が複雑怪奇な網のごとく張り巡らされビルは天高くそびえ立ち様々な自動車が行き交うが、特に自動車の種類と性能は他の常識をはるかに上回っていた。
この都市内のみに効果をもつ跳馬結界(Fフィールド)によって、この都市内に存在する自動車はそのエンジン性能含め諸々のハイスピードさを実現したのだ。
いわばこの街はスピードジャンキーたちのサンクチュアリであり、エンジン音と風を切り裂く快感が忘れられないウォーカーたちが混沌の中に生み出した『例外』である。
それゆえこの街で製造された車はこの町で流通し、各国から集まった猛者たちによるレースが日夜行われている。
もちろん経済もよく回るとういもので、高級志向の歓楽街も存在するほどだが……。
「シャンパンタワーですわー!」
ビューティフル・ビューティー(p3n000015)は何の因果か依頼の流れでこの町に降り立ち、いい店ありまっせという誘い文句にホイホイつられて高級ホストクラブで豪遊(ノンアルコール)したのだった。
そして当たり前のように多額の請求をされ一文無しどころか借金を背負い鉄骨渡りか血液麻雀か地下労働施設かという選択がせまられかけたその時……。
「ビューティー、諦めてはいけませんわ!」
御天道・タント (p3p006204)が一枚の依頼書を掲げて現れたのである。
「お金がないなら作ればいい! この街ならではの超高額依頼を、もぎ取って参りましたわ!」
タントの依頼とは近日展示会へと輸送される超高級なスーパーカーを盗むというものであった。
車のオーナーは街を悪事によって支配している富豪であり、警察すらも癒着によって腐りきり市民達を苦しめ続けているらしい。この自動車強盗に成功すれば市民達からの支持が得られるだけでなく悪徳警官や悪しき支配層への強い牽制にもなるだろう。
だが当然ながら犯行中にバレれば高速パトカーに追い回されることは必至。
これをまいてから車を納めれば依頼完了という話である。
さて、ここでそろそろ、話を戻そう。
「パトカーが動き出して……いくらなんでも発覚が早すぎますわ!? ビューティー、そちらは!?」
無線機越しに呼びかけるタントの声に、ビューティーはハンドルを握ったまま呼吸を整えた。
「それはもうわんさか集まってきてますわ。この車をなんとしても取り戻すつもりですのね」
そうはさせませんわっ! と叫ぶと併走してきたパトカーへ猛烈に車体を叩きつけて派手に相手の車をひっくり返した。
「だ、大丈夫ですのそれ!?」
「安全性は抜群らしいので、車の修理費はタイヘンでしょうけど、身体のほうは無事なはずですわ」
さすがは自動車狂いの街。
しかしこのまま納車予定のガーレジまでパトカーを引き連れていくわけにはいかない。
「仲間と合流して作戦を立て直しますわよ。ソッコーで!」
二人は夜のハイウェイから下りると、町中の道路を豪快にカーブしていった。
ハイスピードな逃走劇が、始まろうとしている。
- タント&ビューティーのミッドナイトカーチェイス完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年10月25日 22時10分
- 参加人数5/5人
- 相談7日
- 参加費200RC
参加者 : 5 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(5人)
リプレイ
●move me,move me,move...
ハンドルを握りしめて歯を食いしばる。
窓の外を駆け抜けるネオンサインが幾本の筋となって流れて消え、踏み込んだアクセルペダルと急速にひねったハンドルに伴って真っ赤なスーパーカーが二車線道路の中央分離帯ポールをボーリングのピンのようにはねとばしながらターン。後続のパトカーを振り切って対向車線を走り始める。
「タント、聞こえてますのタント! このままだと流石に追いつかれますわ!」
胸につけた無線機に大声で呼びかける『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)。
ヘッドライトをまっすぐ照らしてくる対向車を蛇行するようにかわしていく。
ノイズ混じりの向こう側から、『オーッホッホッホッ!』という聞き慣れた高笑いが響いた。
「パトカーの集団はわたくしがなんとかしますわ。ビューティー、そのまま都心部を抜けて住宅街へ向かって」
「……信じますわよタント。けどあなた、今どこに居ますの?」
再びこちらを照らすヘッドライト。
ビューティーが目を細めた次の瞬間、時間がスローモーションになった。
「baby girl わたくしはこ・こ」
すれ違う軽スーパーハイトワゴン自動車。
派手なメタリック塗装の上、車体側面に仮面をつけたタントの横ピースが大胆にもペイントされていた。
運転席でペイントと同じようにパチンと横ピースでウィンクしてみせるタント。
軽自動車とはとても思えない加速をかけると――。
「あ~~~~~!?!?!? どなたか、わたしを、助けてくださいですの!!!」
車両後部からワイヤーでつながった『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)の叫びがドップラー効果を起こしながら遠ざかっていく。
ビューティーに先回りするはずだったパトカーの一団がこのクレイジーな鯉のぼり、あるいは拷問的な吹き流しを必死の様子で追いかけていった。
「ま……任せましたわ!」
ビューティーはまたもハンドルを大きくきると、道路から飛び出して知らぬ住宅の庭を突っ切っていった。
一方場面は変わってタントのスーパーカーもといスーパーワゴン車。
タントは高速で通り過ぎる無数の街灯におでこをキラキラと照り返しながら、ハンドルを握って笑い始めた。
「オーッホッホッホッ! まさかわたくしと同じ名の車があるなんて……まさに運命ですわね!」
「この車を700馬力にしろってガレージに持っていったとき、エンジニアがとんでもない顔してましたね」
『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)が後部座席から身体をおこして後方をのぞき見た。
回る赤いサイレンが無数に並び、殺意すらもってこちらを追いかけている。
当然だ。いかにスピードジャンキーの楽園といえど人間をふきながしにして走る自動車があってはたまらん。
ぐったりとしたノリアが絞り出すように言った。
「タント様……どうか、止めてくださいですの!」
「って、言ってますけど?」
後部座席から振り返るしゃにこに、タントはアクセルをより強く踏み込んで返した。
「わたくし、とめかた分かりませんわ」
「あ、ダメだこいつブレーキ理解してない!!!」
ほうわっ! と叫んでドアに激突するしゃにこ。その一瞬では分からなかったが、どうやらタントは正面から迫るなにかを察知して素早くハンドルをきったようだ。
頭上を激しい音を立てて通り抜けていくライト。
奇しくも(?)全方位を眺めることができたノリアにはそれが警察のヘリだとわかった。
こちらを発見しターンをかけ、ライトを向けて追いかけてきているようだ。
ヘリに取り付けられた機関銃が二車線道路のラインへミシン目でもつけるかのようにまっすぐうっていく。
「ひいっ!? 発砲早すぎませんかね国家権力! ノリアさんほら人質のふりして! できるだけ哀れに振る舞って!」
バンバンと後部の窓を叩いて叫ぶしゃにこにウーンとうなり、ノリアは渾身の演技をはじめた。
「警察のみなさま~! わたくしを~! たすけてくださいですの~~~~!!!!」
両手をかざして両足をばたばたさせてみせるノリア――の頬を銃弾がピュンという音をたててかすめていった。
アスファルトにぶつかってはね、金色に街灯の光を反射する弾頭が回転しながら後方へ流れ消えていくのがスローモーションで見えた。
「バレていますの!? だからって生身に発砲なんて、いくらなんでも、ひどすぎますの!」
ひとでなし! と叫びながらワイヤーをぐっと掴むノリア。
更なる追撃として打ち込んでくる機関銃の弾をバタ足運動で蹴り落としていく。
「攻撃が強すぎますの! 蹴り出すだけで精一杯ですの!」
「むしろなんで機関銃の弾を蹴れてるんですかねえ」
後部の窓に張り付いていたしにゃこは窓にほっぺをつけたまま他人事みたいにつぶやいた。
が、こういう状況はすぐに他人事ではなくなるものである。
「しゃにこ様、運転かわってくださいまし!」
タントは突如そう叫ぶと、窓を開いてハコ乗りし始めた。
「箱入りならぬハコ乗りお嬢様ですわ!」
「ですわじゃねー!」
突如運転手不在となったスーパータント号(仮)のハンドルに、後部座席から飛び出すかたちでしがみつくしゃにこ。
一方のタントは指をならして指でっぽうを作った。
「ごめんあそばせ! わたくしの恋人に習ったとっておきですのよ!」
\きらめけ!/
――発光と共に打ち出される架空の弾丸
\ぼくらの!/
――ヘリのプロペラ回転部にはしる火花
\\\タント様!///
――かたむきよろめき、火を噴きながら減速をはじめるヘリ
ウィンクしてフッと指先に息を吹きかけるタント。まるでろうそくの炎のように指先の光がゆれて消えた。
●easy go,easy dance
風を切り裂く黒いボディ。
ロップイヤーのウサギめいた防寒ハットははためき、金髪の先を光あふれる夜景のなかにもてあそんだ。
「あぁ、この街はいいな。すごく……血が疼く! 風の噂では聞いてたけど、最高だな!」
アクセルをひねる『跳兎』リコシェット(p3p007871)。
これまでに感じたことのないほどの速度で回転するタイヤと唸るエンジンに、胸の高鳴りがリンクしているようだった。
ローレットでも人気のモデル『MST101ファブニール』がかつてない喜びの中で吠えているようにも思える。
「行くよファブニール! 今日は限界まで回すからな!」
盛り上がったコンクリート製の山めがけて加速すると、カーブをかけながら跳躍。
それまで走っていた道路から立体交差する道路へと飛び込むと走っていたパトカーにかするようにして強引にカーブ。
驚く警官の顔めがけて拳銃を二連射。防弾ガラスに激しいヒビが走ったと同時に反射的にハンドルをきったパトカーが壁を突き破って道路のはるか下へと転落していく。
はるか前方にビューティーの運転する真っ赤なスーパーカーが見える。あれを依頼人のもとまで『安全に』届けるのがリコシェットたちに科せられた依頼内容である。
「面白い。この街で『安全に』とは――」
歯を見せてギラリと笑うと、自分の後方をちらりと確認した。
パトカーの助手席から身を乗り出した警官が拳銃をこちらに向けている。
射撃のタイミングを計って乱数起動で蛇行運転をかけると、銃弾をかわしながら後方に向かって拳銃を連射。
空になったマガジンを滑り落としてハンドル中央に飛び出した新しいマガジンを銃のグリップを叩きつけるかのようにして装填。銃撃で牽制しながらハイウェイを下りると数台のパトカーがそれを追って一般道へと流れ込んでいく。
目指すは大きな十字路。この時間帯なら……。
「しめた」
横切るレッカー車。いかめしく光る赤信号。
リコシェットはあえて加速すると車体を強引にたおしながらスライディング。
レッカー車の下部を滑り抜けていく。
急ブレーキをかけたパトカーやレッカー車を避けきれずにぶつかったパトカーが派手にクラッシュするのが音で分かった。
「私は運び屋。道なき道を走るストームライダーズ!! 舐めて貰っては困るな!」
再びバイクを加速させると、リコシェットは合流地点へと向かった。
●breaking black
ハンバーガーショップから紙袋を片手に出てくる青年。『砲使い』三國・誠司(p3p008563)。
ジーパンのケットから取り出したキーをくるくると指先で回し手にキャッチする。
「やっぱり車はキーで回したいよね。まあ僕、免許とかもってないけど」
この国に免許制度などない。そもそも自動車が普及していないので、当然の帰着である。 駐車場にとめた黒光りするオープンカーに近づき、助手席に紙袋を放るように落として扉を開いた誠司。
キーを差し込んで回すと、猛獣のようなうなり声と共にドドドというどこか暴力的なフレアがマフラーより吹き出した。
「さあ、仕事にいこうか――『バスターキャノンGX』」
目の前をノリアを吹き流しにしたド派手なワゴン車がその外観からは想像できない速度で通り過ぎ、その後を追って数台のパトカーが通り過ぎていく。
フ、と口の端で笑い、革張りのハンドルを握りしめアクセルを踏み込む。
急速に発進した誠司は路上へ滑り出ると、前方を猛スピードで走る前方のパトカー群へと距離を詰め始めた。
何事かと振り返る警官達。
無線機からはタントからの通信がはいっていた。
「三國様、いいところに来ましたわ! 後ろの連中をお任せできますかしら?」
「おっけーおっけー、僕のバスターキャノンの出番ってわけだ」
ハンドル脇にある赤いボタンを押し込み、ニトロブーストをかける誠司。急速にパトカーに追いつき車体側面を叩くと、制御を失ったパトカーが消火栓に激突して倒立。
更にもう一台のパトカーへ体当たりをかけたところで、パトカーはシャッターの下りた商店へ突っ込んでいった。
十字路を越えたところで更に数台のパトカーが合流。更に前方の道路に簡易なバリケードが形成された。
「誠司さーん!」
無線越しにしゃにこの声が響いたが、無線機をこんこんと指で叩くことで誠司はこたえた。
「下がってて、蹴散らすのは得意だ」
誠司はラジオチューナーをユーロビートステーションにあわせると、チューナーのすぐ下に設置された小さなレバーを指でカンカンをいくつかオンにしていく。
すると鋼鉄製のフロントスカートが地面にこするような位置まで下がり前方へと除雪機のように突き出た。
「斬り裂け! バスターキャノン!」
速度とそれによる空力が正面のバリケードを直接すくい上げ左右へかきわけながら放り出していく。まさか突っ込んでくると思わなかった警官が慌てて道路脇へと飛び退き、バリケードを突き抜けていった誠司は急速なターンで再び警官隊を攻撃。
「ここは任せて先へどうぞ」
「ありがとうございますですのあとできれば助けて頂けると――あっ!」
その間にタントたちはバリケードを突破して街の外へ向けて走っていった。
極限状態だったからか口調がブレたノリアがタント号から切り離され空中をきりもみ回転。
「おっと」
誠司はターンをもう一週させて落ちてきたノリアを助手席でキャッチすると、そのままタントたちとは別方向へと走り出した。
「なんだかお尻の下がくしゃっとしてますの」
「あっ、俺のハンバーガー!?」
街の外へ続く二車線道路をタント号とビューティーの赤い車が並んで走っていた。
「ここまでくれば、あとはしにゃにお任せですよ!」
後部座席のドアをスライドさせ助手席もドカンと蹴り飛ばすと、横ピースしたタントのペイントの左半分が吹っ飛んでいった。
「ああっ!? わたくしの半分が!」
「いやあこの車開放的でいいですねー。きっと銃撃戦のために作られたんですよしにゃわかるんです」
戦場は地獄だぜーと言いながら車体から身体を乗り出すと、傘型ライフルをパトカーへと構えた。
ぺろりと上唇を舐め、鋭く二発。
すると後続のパトカーのうち先頭二台のタイヤが急にパンクしスピン。そのまた後ろのパトカーとぶつかって横転した。
「これはお土産ですよー」
ラメやシールでギラギラにデコりまくったパッションピンクの手榴弾を二個ほど放っておくとしゃにこは車内へと身体をひっこめた。
爆発を置き去りにしてふうと息をつく。
「これであとは引き渡しポイントへ向かうだけですね? 終わったらご飯食べましょごはん」
「安心するのはまだ早そうですわ」
無線越しにビューティーの声。
と同時に頭上を激しいプロペラ音が抜けていく。
ビル街の中を、火をあげながら強引に突き進み側面を晒すヘリ。
開いた扉から大砲を構えた警官が姿をみせた。
「そこまでします!?」
「これは……避けられませんわ。突っ込みますわよ!!」
「突っ込――どうやって!?」
身を乗り出してタントとヘリを交互にみるしゃにこ……に、タントは不敵な笑みで答えた。
「もちろん、飛ぶんですわーー!」
斜面を猛スピードで駆け上がり、ヘリめがけて突っ込むタント号。
激しい爆発をおこしヘリは今度こそ墜落していく。
衝突の直前に車から離脱したタントとしゃにこは飛行能力を行使して併走するビューティーの車へとしがみついて乗り込んだ。
「ひゅー!!ぶっちぎってやりましたね! って、しにゃのぼりー! これは嫌だって言ったじゃないですかー!」
「オーーーーーッホッホッホッ! さあ、夜明けはもうすぐそこ! 登る太陽へ疾風(はし)りますわよーー!」
「オーケーですわ、タント!」
するりと車に乗り込んだタントを助手席におさめ、ビューティーはアクセルを思い切り踏み込んだ。
その左右に並んで合流する誠司の車とリコシェットのバイク。
もう誰も、彼女たちに追いつけなどしない。
すべてを振り切って、夜に溶けてゆくのだ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――無事車を依頼人へ納品し、ビューティーも借金地獄から逃れることが出来ました。
――同時にビューティーだけピンポイントで指名手配になりました。
GMコメント
タント史上最もカゲキなクライムアクション開幕
■オーダー
皆さんはビューティーを救うため、タント様と一緒に駆け抜けるため、街のさる筋からの依頼を受けて自動車強盗を行います。
自動車を盗みだすことが今回の依頼内容ですが、プレイング・リプレイにかかる部分は主に『パトカーの群れをまく』ことであります。
普段の依頼ではお目にかかれないような疾走感や豪烈をお楽しみください。
■メンバーの配置
シナリオはタント&ビューティーが目的の車を盗み出し、二台のスーパーカーで仲間と合流した時点からスタートします。
この時点で既に町中にパトカーが配備され、合流地点にも今まさに突っ込んでくる所なので素早く配置につきましょう。
・初期配置は自由!
黄色い車、赤い車。この二台のうちどちらに誰が乗っている状態でスタートしてもOKです。
ただし車は四人乗りが限界なのであまりぎゅうぎゅうに詰めないようにしましょう。
『新しくこの街で車を手配してきた』という設定で自分用のマシンで登場しても構いません。
合流地点から一緒に走り出すことにしてもいいですし、途中で合流したりどこかで待ち伏せしていることにしても構いません。
尚、車等々を用いない待ち伏せや徒歩での参加は秒で役目が終わりかねないのでスーパー非推奨です。今日は都市で車やバイクを乗り回すハイスピード感を楽しみましょう。
※今回に限りそれらしいアイテム等々を装備していなくても専用マシンを用意したことにして構いません。
また、今回(この都市内)に限り自動車、バイクなどガソリンエンジンを使用した乗り物アイテムはすごい高速で走れるものとします。
・パトカーをまけ!
ビューティーの赤い車をとめようと大量のパトカーが現れます。
これを撃退したり一部引きつけたりするのが今回の主なアクション内容になるでしょう。
銃撃や攻撃的なドライビングテクニックによって破壊してもいいですし、うまく相手の追跡を回避して建物やガードレールに突っ込ませてもいいでしょう。
あえて厳密な判定とかはしないので、『俺のブロッキングバッシュは車体を叩きつけてパトカーをひっくり返すやつだ』とか主張して頂いてかまいません。合い言葉は「できると思ったらやれ」です。
・悪名はつかない
クライムアクションと名乗っていますが、この町では速い奴が偉いうえ警察が富豪とズブズブに癒着した手駒でしかないので、自動車強盗に成功すると悪名がつかないどころか正名声が増えます。
もちろん失敗するととっつかまって悪名がつきます。きをつけましょう!
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