PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おもちゃの叛逆とサンタクロース

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■そこは夢が叶う世界……だった
「うむ、うむ。今年も順調なようじゃな。これならクリスマスには間に合うじゃろう」
 赤い服に白いヒゲの老人。俗にサンタクロースと呼ばれる老人は、満足げにヒゲを手で撫でながら笑みを浮かべる。
 彼がいるのは秘密の雪国。そこにあるおもちゃ工場。不思議な力で常に冬、そして動力不明だが常におもちゃを作り続ける工場。彼が大仕事を迎える12月25日に備え、全力稼働中である。
 今年も至って生産は順調。今年も夢を信じる子供達の下へと。そう思いを馳せていたところ、事件は起きた。
「さ、サンタのじいさん、大変だ!」
「なんじゃ騒がしいのナダレ。お前さんが泥棒した時より大変なことがあるもんかね?」
 慌てた様子でサンタのいる小屋に駆け込んできたのはナダレと呼ばれた痩身の男。前年悪事を働いたが温情をかけられ、サンタとなるべく修行と工場の警備員を兼任している。
「ほ、本当に大変なのねんおじいさん」
「ノーも騒がしいのぅ。何があったんじゃ?」
 続けて入ってきたのは白熊のノー。本来のんびり屋な彼がここまで慌てるのは珍しい、とようやくサンタクロースが話を聞く体勢に入る。
「に、人形が一体、とんでもない魔力を纏って叛逆したんだ!」
「……ほ? 人形が?」
 ナダレとノーいわく。彼らは悪事を反省し、今日も真面目に工場の警備を行っていた。そこへ小さな女の子が一人現れ、迷子かと思い話しかけたところ。
 急に膨大な魔力と恨み言を撒き散らし、二人を吹き飛ばして工場に入っていったとの事だ。後を追いかけようかとも考えたが、歯が立たないと思いサンタクロースの下へ来たと。
「あれはきっと呪いの人形なのねん!」
「まあまあ落ち着きなさい。……しかしまいったのぅ、アレ、そうなのじゃろう?」
 サンタクロースが小屋の窓から遠目に見える工場に目を向ける。そこは、紫のオーラを纏い禍々しい空気を発していた。
「戦う事はできんしのぅ。……去年みたいな、優しい子達がまた来てくれると嬉しいのじゃが」

■おもちゃ工場を取り返そう
「……そんな訳で。去年、一回サンタクロースのおじいさんがいた世界に出向いたのを知っている人はいるかな?」
 協会案内人のカストルが集まったイレギュラーズの顔を見比べる。反応は様々だが、彼は気にせず話を続ける。
「そこのサンタさんがまた困っているみたいなんだ。おもちゃ工場を謎の人形に乗っ取られたらしい。このまま放置すると、その世界のクリスマスはなくなっちゃう」
 子供達の夢がなくなるのはとても悲しい事だからね。頑張ってと締めくくり、カストルはイレギュラーズを送り出す。

NMコメント

 クリスマスまで後2ヶ月ありますが、それはそれ以下略です。
 拙作『バッドなサンタを梱包せよ!』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2398)と世界観、登場人物を共にしていますがそちらを読まれなくても大丈夫です。独立した一話です。
 オーダーは一つ。サンタクロースと共におもちゃ工場を取り返して下さい。
 以下味方NPCと敵NPC詳細
味方:サンタクロース×1
 よくあるイメージのサンタクロースそのままな外見の老人。その正体は子供達の夢の具現化。
 ・P子供達の夢:絶対にHPが0にならない
 ・P平和の象徴:攻撃行動が一切取れない
 ・A応援:イレギュラーズ一人につき一回だけHPとAPを全回復。タイミングは要請できます。1ターンに何人要請しても大丈夫。

敵:復讐人形
 自らを『アリス』と称する女の子の人形。捨てられた玩具の怨念が溜まった存在。それなりに魔力が高く強敵です。
・P玩具使役:彼女が戦闘可能である限り、2ターンに一回おもちゃ兵士(遠距離射撃型)朽ちたツリー(近接タンク型)くまのぬいぐるみ(物理攻撃型)のどれかが召喚されます。兵士とくまはイレギュラーズなら一撃で倒せますがツリーは少々タフです。
・A呪いの言霊:人間への復讐の言葉を呟くことで、範囲攻撃を行います。

 この復讐人形を倒せばノーマルエンド、ある一つの非戦スキルによって説得することができれば別エンドです。
 以上となります。異世界の、とはいえ。子供達の夢を救う為に、どうかご協力を。

  • おもちゃの叛逆とサンタクロース完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月21日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

驚堂院・エアル(p3p004898)
でうすのかけら
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束

リプレイ

■玩具工場へ
 件の異世界へやってきたイレギュラーズ達は、工場の前で立ち尽くしていたサンタクロースと合流。協力を申し出るとサンタクロースは大層喜んだ。
「ホッホッホ、子供達にこのような仕事を頼むのは心苦しいが、今は頼もしい事じゃ」
 子供という歳なのかどうか怪しい者が多いが、サンタクロースにとっては人類皆子供なのである。さておき、鍵のかかっていない玩具工場の扉を開けると、稼働を続ける機械の駆動音が一行を出迎える。 だが、明かりは僅かにしかついておらず、周囲は暗い。
「少々視界が悪いですね、皆さん油断なさらぬよう」
 『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は幾度となく経験した戦闘経験から、奇襲もありうると警戒を呼びかける。彼以外の三人のイレギュラーズは見た目が年若い女性達なのだから、余計に気を使うところもあるのだろう。
「サンタクロースと言う者は子供達に夢と希望を配る存在だとか聞き及んでおりますが……」
「そのとおりじゃよ、お嬢さん」
 『黒翼の恋人』ガーベラ・キルロード(p3p006172)の質問に、人当たりのよい笑顔のまま答えるサンタクロース。その言葉が真実ならば、夢と希望を待つ子供達の為に頑張らないと、と気合を入れ直す。
「玩具を作る工場が人形に乗っ取られた、と……何か、随分、”ふぁんたじー”な世界観なんですね……?」
 操作する者が誰もいないのに稼働し続ける機械を横目で見ながら、『天色に想い馳せ』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は誰にともなく呟く。混沌世界も大概な物であるが、豊穣から外に出たのが最近な彼女にはわからぬ事も多いのだろう。
「エアルもひとつほしいな~。おわったらサンタさんにねだろうっと。どうやって自動的に動くのかしくみをしらべないとね」
 『夜光蝶』驚堂院・エアル(p3p004898)は興味津々といった様子で動き続ける機械を見つめている。サンタクロース曰く「この世界の子供達の夢と希望じゃよ」との事なので、この世界から持ち出したとしても動く保証はなさそうだ。
 暫くサンタクロースの案内で奥へと歩み続けるイレギュラーズ達の前に、小さな女の子が突然に飛び出す。
「この子が……」
 皆を守る為にと前へ出るガーベラ。その背筋に冷たい汗が浮かび上がる。目の前にいる女の子の目は怒りと狂気に濡れており、見ているだけで精神を削られそうな気がしたからだ。
「許さない、人間なんて嫌い、大嫌い!」
 怨嗟の声を振りまくソレに気圧されぬように、イレギュラーズ達はそれぞれのバトルスタイルをとる!

■復讐の人形
「人形が人に捨てられて恨みに思ってるのかしらね」
「そうよ! 人間なんて私達がちょっと古くなったらすぐ捨てる!」
 エアルの声に反応したかのように叫ぶ人形……アリス。その声には恨み辛みだけでなく、聞く者の心を抉り取る復讐の魔力が宿っていた。
「成程、さほど威力はないようですが……声に宿る攻撃とは」
 冷静に分析しながらも黒子は己の魔力をお返しにとばかりにアリスの周囲へ展開する。人形故にか奪える熱はないものの、視界を塞ぐ事はできる。
「これで私を止めたつもり? 甘いわ、来なさい!」
 アリスの声に合わせ、玩具を作る機械の影より熊のぬいぐるみが現れアリスを守るかの如く前に立ちはだかる。
 しかしそのぬいぐるみは腕を振るう間もなく、朝顔の一撃で霧散することになる。
「怨念の人形だからって悪とみなして倒すのは簡単だけれど……きっと、誰かがあの人形の怨念を受け止めなくちゃいけないと思うんです」
 その為に戦わなくてはいけないけども。交わした言葉は無駄にはならないはず。この顔ぶれならなんとかしてくれるはずと信じ、朝顔は乞う。
 そして、その願いに応えるべくガーベラは人形の前に立ち続ける。
「あなたが子供達に捨てられた恨みも理解は致しましょう……」
「人間が、私の、私達の恨みを理解できるというの!?」
 人形だというのにアリスの振るう腕の一撃は重い。ガーベラの持つ白の盾越しにでも衝撃が臓腑に伝わる。それだけの魔力を、怨念を抱いているというのだろう。
「確かに、私には理解できかねますわ……ですが!」
「貴女の言葉を聞く事はできる、話す事はできる。だから、もっと、話しましょう」
 盾を巧みに使い、アリスを跳ね除けるガーベラと。彼女の傍らから声をかけ続けるエアル。二人はアリスの言葉を、感情を引き出す為に防戦一方の構えをとる。
「どうでしょう、サンタクロース様。彼女を、どう見ます?」
「ふむ……寂しい、娘じゃのぅ」
 ガーベラ達とアリスのやり取りを少し下がったところから見ながら、黒子はサンタクロースに問いかける。返ってきた答えに同感を示しつつ黒子は考える。どうすればアリスの怨念を鎮められるのかを。

■彼女の戦う訳
 説得を主軸にしているからとはいえ、無抵抗でいればいいようにやられるだけである。それが為に適度に抵抗の姿勢を崩さずにいたイレギュラーズだが、徐々に疲労は蓄積してくる。
「サンタさん、お願いします!」
「ほっほ、良かろう」
 朝顔の要請に応え、プレゼント袋をがさごそ漁るサンタクロース。彼の手にはドリンクが握られていた。ソレを受け取り飲み干した朝顔は体に活力が蘇るのを感じ取る。
「どうして、どうしてあなたたちは壊れないの!?」
「壊れる訳にはいかないのです。貴女を救う為に」
「ッ! 人間が、私を救うだなんて……!」
 黒子の声に動揺したのか、アリスの目線が一瞬泳ぐ。やはり、と黒子は感じ取った。口では恨み言を言っているが、その本音は『捨てられたから寂しい』のだ。
 ならば、その為にできることは何か。この面々でできることを探すのが黒子の役目。ほんの少しの違和感も動揺も見逃さないように目を凝らす。耳を澄ませる。脳を働かせる。
「貴女のしている事は、これから出会う本当に大切にしてくださる子供達とおもちゃの縁を切ってしまう行為ですわ」
「そんな、事ない! 私はここに、玩具の理想郷を作る、の!」
 ガーベラの言葉に揺れながらも、アリスは己の理想を語る。その為に彼女は、人と敵対する覚悟を決めたというのだろうか。
 しかし、ガーベラを殴りつける腕に力が弱くなってきている。魔力切れなのか、それとも……。
 今が好機と見た黒子が、エアルに叫ぶ。
「エアル様!」
「任せて。ねえ、アリス。もうおそれなくてもいいのです。ここに貴女を無下に扱う人はいませんから」
「嘘、嘘よ! あの子だって、玩具を壊して……!」
 あの子。それはアリスに喚ばれる玩具達を相手とっていた朝顔の事だ。確かに彼女は兵隊達を攻撃していた。だが……朝顔は忘れていなかった。
 その玩具も『アリスの友達』であった事を。
「大丈夫、この子達は壊れてないです」
 命を奪わない、救うための一撃は。人形達を壊すに至っておらず、朝顔の足元で寝ているだけに過ぎない。
 朝顔だけではない、黒子も、ガーベラも、エアルも。やりすぎないようにと加減して戦っていたのだ。そのおかげで余計な傷を負ったのだが、それもまた覚悟の上である。
「そ、んな……だって、人間は……」
「貴女の身に降り掛かった不幸は取り消せません。しかし……これから先の幸せを掴む事は、できるでしょう」
 黒子の言葉にアリスは膝から崩れ落ち、小さな子どもの外見に違わず泣き崩れる。
 そんなアリスにエアルは近寄り、ぎゅっと抱きしめる。ガーベラと朝顔も傍に立ち、泣き止むまで頭を、背中を、撫で続けた。

「……私、やっぱり人間は信じられない」
 ひとしきり泣いた後。アリスはぽつり、とそう零す。まだ戦う気かと一同は警戒するが、アリスは慌てて首を振る。
「違う、違うの。あなた達の事は特別、信じてみる。けど……また捨てられたらと思うと、怖い」
「そう、ですわよね。そう簡単には克服できないですわよね」
 ガーベラが困ったように頬に手を当て考え込む。エアルも、朝顔も何かいい方法はないかと考え込むが、黒子は何か思いついたかのようにサンタクロースへ振り向く。
「そうだ、サンタクロース様。彼女を貴方の側で働かせては如何でしょう?」
「ほっほ、良いぞ」
「かるっ!? ……けど、それが、いいのです」
 二つ返事で了承するサンタクロースに、朝顔がふわりと笑う。サンタクロースの下でなら、再度の暴走はないだろう。それに、アリスの玩具使役の力は玩具工場にとってはプラスに働く。
「あ、そうだ。アリス、手を貸して」
「?」
 何かを思い出したかのようにエアルはアリスの手をとり、自らの胸に当てる。
「こうして、ハートとハートを繋げるの、人間同士のやり方だけど……また、誰かを恨みそうになったら、エアルのこと思い出して」
「あら、抜け駆けは許しません事よ。私の事も覚えていてくださいな」
「私の事もです」
 ガーベラと朝顔も、エアルに習ってアリスに心の鼓動を、暖かさを伝える。
「俺はやめておきましょう」
「遠慮はだめですわよ」
 淑女に混じって男一人というのが気恥ずかしいからだ、とは言えなかった黒子が、ガーベラに押される形で渋々とアリスの手を自らの胸に当てる。
「……うん、覚えた。みんなも私のこと、忘れないで」

「それと、今度会ったらもう一度勝負よ! こ、今回は、油断しただけなんだからね!」
 彼女も気恥ずかしかったのだろう。別れ際に、顔を赤くしながらそう叫んでいた。

成否

成功

状態異常

なし

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