シナリオ詳細
《狐の嫁入り 第九幕 前編》獣人達の運動会
オープニング
■まーた無茶を言い出したよこのおっさん
「最近、たるんでおるんではないか?」
狐人達を主構成として、多種多様な獣人達が住まう城塞都市。その長で騎士団長でもあるスーラクは、塔の頂にある執務室から眼下に広がる町並みを見下ろしそう口にする。
「いきなりなんだよ親父」
命がけの獅子戦争から帰還したと思えば、このスーラクの突飛もない発案に振り回された息子、イグニスはまた嫌な予感がしながらも、話を続ける。
「騎士団の者達だが、近頃気がたるんでおる」
「いや、そんなことはないだろ」
次期騎士団長として。そして何より一人の仲間として騎士達と共に過ごすイグニスは、即座にスーラクの考えに反対する。
今も巡回警備は真面目に続けているし、警備の担当でない者はそれぞれ事務仕事をこなしたり、厳しい鍛錬に励んだりと忙しい毎日だ。
「いーや、先立っての戦争で獅子人達に遅れを取りかけた事もある」
「それはない、それはない」
手を振って全力で否定する息子。これ以上この父親に発言させてはいけないと、長年の経験から察したのだ。
だが、それで止まる訳がないともわかっているのが悲しい点なのだが。
「だからといって、無理に鍛錬を増やせとは俺も言わん」
「……お?」
いつもならここで「鍛錬を倍に増やせ」とか言い出すスーラクが、予想外の言葉を口にした事でイグニスは油断する。
この父親は、基本的にお祭り騒ぎが好きなのだ、という事を忘れていた。
「だからここは皆を呼んで運動会を開こうではないか!」
「馬鹿か親父!?」
いつもどおりの親父であった。
■城塞都市の運動会
「……うん、本当イグニスさんって苦労人よね」
いつもの本、新たに開かれたページを読み終えた境界案内人のポルックスは苦笑いを浮かべる。イグニスの心労を思うと、物語上の登場人物とはいえ同情する。
「ま、まあ。今回皆は運動会の選手として向かって貰うことになるわ。スポーツマンシップだっけ? あれにはきちんと則るってことだし危険はないはずよ」
気楽に参加していいはずだから。
そう口にするポルックスの笑顔が、どこか引きつっているのをイレギュラーズ達は見逃さなかった。
- 《狐の嫁入り 第九幕 前編》獣人達の運動会完了
- NM名以下略
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年10月13日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
■準備運動は大切
「よう、皆集まったか!」
城塞都市の一角に設営された運動会会場。都市の長にして騎士団長のスーラクが魔道拡声器を用いて、集った全員に聞こえるように声を張り上げる。
そこには多種多様な種族の獣人達が、イレギュラーズの活躍もあって縁のつながった皆がいた。当然、この度運動会に参加を決めた四人のイレギュラーズ達も。
「今日は争いごとはなしだ。純粋な力比べ、己との勝負! そういう事で頼むぜ」
短い挨拶も終わり、イレギュラーズ達はそれぞれ助太刀する種族のテントへと移動する。
「なんだかこうして話するのも久しぶりね。今日はよろしく」
『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)は顔なじみのオーク族のテントへと。豚のような頭部を持ち、体格に恵まれた人物が多いそこは熱気が凄く若干汗ばむほど。
「あ、お姉さん。はい、今日はよろしくお願いします!」
一人場違いな狐人の少女がセリアに挨拶を返す。外見こそ狐人だが彼女はオーク族の長の娘、変装しているティティスだ。
セリアは言葉少なめに「ええ、こちらこそ」とだけ返しておく。そしてオーク達に混ざって軽く柔軟体操を。
「お邪魔するねー、今日はよろしく~」
『傍らへ共に』アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)はフラフラと歩き回った後に、狐人のテントへと顔を出す。
普段は騎士鎧に身を包んだ騎士達が、今日は思い思いの服装で和やかに歓談している。そのような空気だからかアイリスの訪問も歓迎された。
「本日はご助力頂きありがとうございます」
スーラクの孫娘、カイが一族を代表しアイリスに礼を述べる。が、あまり堅苦しいのは好かないアイリスが間延びした口調のまま笑う。
「いいよ~そんな気にせずに。気楽にいこうね~」
その代わり美味しいごはんが食べたいな~と要求するアイリスに、サンドイッチを振る舞う事になるカイであった。
「ここが逞しいお兄さん方のテントかねぇ?」
『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)は目星をつけていた獅子人の集うテントへと一直線に向かう。もっとも彼女の『目星』は『斬り合いたい』の意味でもあるのだが。
そんな彼女の内心に気づいていない獅子人の若者、アシュトンは爽やかな笑顔を向ける。
「おう、よく来たな。姉さんが俺たちの助っ人って訳か」
「そうやねぇ。怪我せん程度に頑張ろうなぁ」
「手袋は使ってええよね?」と確認する紫月に「いいんじゃねぇの?」と曖昧な相槌を返すアシュトン。
「失礼します、こちら猿人さん達のテントで宜しいでしょうか」
礼儀正しく幕を上げるのは『守護双璧』Binah(p3p008677)だ。猿人を援護すべくやってきた彼を出迎えるのは、逞しい肉体の若者。ギルダスJrだ。
「そうだ。ようこそ、客人。歓迎する」
言葉少ななながらも、不器用にでも笑ってみせる彼に好印象を抱いたBinahは握手を求め手を差し出す。一瞬戸惑ったギルダスJrも、大きな手でしっかりと握り返した。
「準備運動しながら、作戦会議をしませんか。騎馬戦はチーム戦だ、意思疎通は大事でしょう」
「ああ、そうだな。付き合おう」
屈伸運動から始めながら、彼らと付き従う猿人達は会議と称した談笑を繰り広げる。
■第一種目
第一種目はオーソドックスな徒競走だ。何組かが既に走り終え、休憩する者、健闘を称える者など、応援にも熱が入り始める。
おおよそ順当に。スピードに優れる兎人が一等を取る事が多い。他種族では勝ちにくいのだ。
そして最終組。それぞれの種族の代表を務める者達が集う中、狐人の代表としてアイリスがスタートラインに経つ。
「……あの人、大丈夫なのか? のんびりしていたけど」
「さ、さあ……でも自信あるみたいだし」
テントの方ではギルとカイが不安そうに声を潜めて会話する。確かに普段のアイリスを見る限りではそう思うのも致し方ない。兎人のクロードや、オーク族としては例外的に素早いティティスまでもが同走者なのだ。
走者が位置に付き、構え。スタートの銃声が鳴り響く。
「っ!?」
瞬間、走りを見ていた全員が驚愕した。トップに躍り出たのはクロードでもティティスでも、他の種族の者でもなく。
アイリスだったのだ、ダントツで。誰よりも早く駆け出し、誰よりも遠くへ走り去る。相変わらずのんびりとした表情のままだが、その下半身は虎もかくや。
「えっへっへ~、一等だよ~」
「は、速いですね……俺も足には自信があったのですが」
アイリスより遅れてゴールしたクロードが、息も絶え絶えに彼女を褒め称える。気分を良くしたアイリスは、狐人のテントへと戻り熱烈な歓迎を受けた。
もちろん報酬として美味しいごはんを要求する事は忘れずに。
■第二種目
運動場の中央に、6個の棒つき籠が設置される。その周囲に小さな球がばらまかれ、それぞれの種族代表の選手たちが一斉に散らばる。
この球を体が触れないように魔力を集中させる事によって、自分達の種族の籠へ入れるのが魔道玉入れだ。肉体面だけの勝負では種族による優劣があっさり決まる為、それを是正するための競技である。
獅子人や猿人の一部からは不満の声もあったが、その理由を聞いて渋々納得したという背景もある。
「ちっ……魔法なんて俺たち獅子人はからっきしなのによ」
「我ら猿人もだ。投げていいのなら得意なのだが」
ぼやく二種族を尻目に、魔術の得意な種族は気合十分である。
もう一種族、魔術の苦手な種族がいたのだが彼らは何の不安も抱いていない。何故ならば、彼らに助っ人をするのは、この城塞都市ではちょっとした有名人だからである。
銃声とともに、選手たちが一斉に精神を集中させる。狐人や土竜族、兎人の選手達は着実に数をこなしていくが、獅子人や猿人は浮かせる事にすら四苦八苦。
そして、もう一種族。オーク族は……。
「はい、これで10個ね。次行くわ」
「流石ですセリアさん!」
そう、セリアだ。何度となくこの都市、狐人達獣人と関わってきた彼女は類稀なる魔術の才能を存分に発揮していた。それ故に彼女が味方するオーク族は不安などなく、彼女への応援に専念する。
他の選手のように一個ずつなんてまだるっこしい真似を彼女はしない。一気に10個運ぶことなど造作もない。あっという間に籠に入り切らないほどに球が積まれ、強制的に競技が終了となってしまうほどであった。
■第三種目
先程の種目は魔術を競った。今度は単純明快な肉体の勝負、綱引きである。玉入れでは死んだ魚の目をしていた二種族が今度は生き生きとしていた。
特に獅子人は気合に満ち溢れ沸き返っていた。紫月という助っ人を迎えた事で士気が鰻登りである。
「この子は持っていってもええよなぁ?」
「抜かないならいいだろ」
もはや体の一部とも言えるような存在の刀に手を触れ、紫月はのんびりと問う。そんな彼女に腕力での支援は期待していない獅子人達だが、美女が一緒というだけで元気になるのは男の性というものか。紫月本人は恐らく気づいていないだろうが。
綱引きの試合は種族ごとに総当り。元々パワーに特化した獅子人達はその豪腕を発揮し、勝利を重ねていく。最後に一試合は猿人との純粋なパワー勝負と相成った。
全員が縄に手をかける。腰を深くおろし下半身に力を込める。少しでも気を抜けばやられるのは自分達だと肝に命じ。そんな緊張感の中において紫月はいつもどおりであった。
最後の試合が開かれる。お互いの肉体にぐん、と引っ張られる負荷がかかる。引き摺られてなるものかと抵抗し、むしろ引きずってやると力を込める。
「……うーん、思ってたより……うん、もう、ええかな」
一言、そう呟いた紫月が本気で綱を引っ張る。ただそれだけで、猿人の抵抗はあっさりと破られ地面に無様に引き摺られていく。
「す、すげぇ……そんな細腕でどんな力が……」
「やっぱり私は斬り合いの方が性に合っとるわぁ。誰か後で付き合ってぇなぁ」
妖しく美しく笑う紫月に、さしもの獅子人達も冷や汗をかいたという。
■第四種目
午前中最後の競技がまもなく開始となる。最後は騎馬戦。最後の一組まで勝ち残った種族が優勝。それまでに何人倒したかなどは関係ない。
「それでは皆さん、作戦通りにいきましょう」
「ああ、承知した」
Binahが猿人達の組む「馬」に乗り込み声をかける。ギルダスJrが言を返し、作戦を思い返す。
銃声と共にいくつもの騎馬がぶつかり合う。そんな中、Binah達は器用に、目立たないように、狙われないように立ち回っていた。
勝ち残れば勝ちである以上、自分たちから勝負を仕掛ける意義は薄い。ならば守りを固め最後だけ仕留めれば良いと考えたのだ。
それにBinahは体重が軽めである。猿人達は体力に優れた種族。長所が噛み合い長期戦にだって対応できる。
適度に近寄ってきた騎馬だけ巧みに捌き、獅子人の騎馬が相手の突進を受け止め、Binahが騎手の腕を掻い潜り、或いは払い除け。一瞬の隙を突いて無防備な帽子を奪い取る。
「やるじゃねぇか……最後の一騎打ちだぜ!」
狐人のギルが駆る騎馬と、Binah達が最後の二騎。ここまで来れば逃げる意味はない。後は真っ向から戦うのみ。
「信じてますよ、皆さん」
「任せろ!」
騎馬が正面衝突する。その衝撃に体が揺らぐ騎手二人だが、落ちては負けだ。踏みとどまる。
果敢で無謀な少年、ギルがBinahの帽子を奪おうと猛攻を繰り広げるが彼には通じない。Binahは熱くなりすぎず、冷静にギルの動きを見つめ、最小限の動きで帽子を守る。
「今だっ!」
ギルが伸ばした腕に対してクロスカウンターをするように、素早く腕を伸ばし帽子を奪い取る。一瞬遅れて帽子が取られたが、先にとったのはBinahだ。此度の勝者である。
こうして午前中の種目は全て終わり、昼休憩。そして午後へ……。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
10月だからね。体育の日だからね。以下略です。
でも一話だけで収まる気がしなかったので前編です。後編はこの続きです。
前編で行われる競技説明
■400m徒競走
【反応】【機動力】【EXA】が高いと有利になります
■魔道玉入れ
手を触れてはいけない玉入れ。【神秘攻撃力】【AP】【命中】が高いと有利になります
■綱引き
【物理攻撃力】【HP】【CT】が高いと有利になります
■騎馬戦
イレギュラーズは基本的に上に乗る役です。【防技】【抵抗】【回避】【命中】が高いと有利になります
以上4種目が前半戦です。一人一種目以上に参加して下さいませ。なお二人以上が同じ種目に参加してもいいですし、誰も参加しない種目があってもいいです。
以下参加NPCと種族特徴
■狐人
イグニス、ギル、カイを始めとする狐人達。全能力値が平均的。個体差で僅かに得意不得意がある程度
■オーク
ティティス率いるオーク族。意外に器用で、また体力に優れています。一方で魔術は苦手。なおティティスのみ例外でスピードに優れています
■猿人
ギルダスjr率いる猿人の若者達。フィジカル特化。若干不器用で魔術はほぼできない。
■土竜人
穴掘りが得意な一族。その為か力が多少強く、採掘に魔法を使うので魔術もやや得意。しかしスピードは遅い。
■兎人
クロードが代表を務める事になった兎人達。スピードに優れ、補助魔術が得意なので魔力も高め。但しフィジカル方面は苦手。
■獅子人
アシュトン率いる元レジスタンス。パワー特化。器用さも高め。但し魔術は苦手で意外にも防御方面もやや低い。
以上の種族のうち、どの種族の味方をするかも記入願います。もちろんこれも皆様で被っても問題ありません。
また、運動会ですのでアクティブスキル系統は使用禁止です。乱闘駄目、絶対。
後編はこの続きになる予定ですが、連続参加もどちらか片方参加でも歓迎です。
それでは楽しい(?)運動会、頑張りましょう!
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