Zombie movie in the Tokyo

オープニング

●パニック・ゾンビ！
　死体が動く話をご存知だろうか？
　肉が腐乱し、魂なき存在が動く――いわゆるリビングデッドの事だ。
　混沌であればこそそういう魔物が出る事もある、が。

「嫌だ――！！　嫌でござる、ゾンビものは苦手なんでござる――！！」

　練達に住まう赤坂・紘一は『そういう』連中が大の苦手であった。
　彼がいた過去の世界――なんでも日本という国で地球という場所らしいが――そこでは所謂リビングデッドが主題の……『ゾンビ映画』というものがあったそうだ。ゾンビ達が人を襲い、そのパニックの中での一幕が描かれる創作物。
　ジャンルとしてはホラーと言えるモノで、先述の通り紘一はこの類がほとほと苦手であった……が、所詮『苦手』でしかなかったのだ。だってそれは只の創作物だったから。
　しかし。
「だというのに……ううっ。ここではゾンビものが実際に発生してもおかしくない世界……ああぁ！！　何故このような世界に召喚されてしまったのか！！　嫌でござるゾンビに喰われる展開だけは絶対にごめんでござる――！！」
　現実に起こり得るかもしれないと考えた時――彼は心底恐怖に襲われた。
　まさか。いやしかし、もしかしたら。いつか。
　あの窓を突き破ってゾンビ達が己を襲ってくるのでは……！
　行う現実逃避に伴って再現性東京へと移住した彼だったが――やはり心の奥底に渦巻く不安を解消するには至らない。もしゾンビ達が襲ってきたらどうする？　どうすれば生き残れる？　どうすれば、どうすれば――
「その時、ふと思ったのでござる」
　そうだ。もしも未来が避けられないならば。『その時』がいつか来てしまうのならば。
　事前に『その時』のシミュレーションをしておけばいいのではないか、と。
　この国には、練達には優れた科学技術がある。
　それこそ精神を投影させるかのような電子の……VR空間でも！
「もしも実際にゾンビ共が湧き出たらどう動けばいいか――？　それのテストに付き合ってほしいでござる！　こーいうのは一人だけではなく、複数人以上で大量のデータが取れた方が有意義でござるからな！」
「成程。まぁ依頼であるというなら是非もないけれど――なんだか色んな制限がついてるのはなんでなのかなコレ？　どうしてこれ飛行とかが出来ないように設定されてて……？」
「だって拙者は飛べないでござるし。それにゾンビ映画で飛べる奴がいるのは視た事がないでござる！」
　君結構じっくりゾンビ映画見てない？　と問うのはギルオス・ホリス（p3n000016）だ。
　まぁ依頼人の傾向に合うように世界が設定されているのなら止む無しか……と言うよりもこれはいざの時の対抗データ取りと言うよりも、ゾンビ映画のシミュレーションなのでは……まぁゾンビ映画を体験できるイベントと思えばなんだか楽しみも出てくるものである。
　恐らくバリケードが破られたりと言った『お約束』も待ち構えている事だろう。さてさて、どのような気概で挑んだものだろうか……

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第2章

第2章 第1節

　大変だ！　学園内についにゾンビが入って来た！！
　最早その勢いを止める事は出来ない。新たなバリケードを築く様な時間はないだろう……ショッピングモールやその他の地点でも次々に防衛ラインが突破されているようだ。くそ！　どうしてこんな事に！
『更に最悪な状況でござる……
　政府はこの事態の鎮圧のために、市内にミサイルを撃ち込む決定をしたようでござる！』
　近くに偶々あったラジオから漏れる声は紘一の声だ――お前どこにいるねん。
　ともあれミサイル、ミサイルだと？　そんなモノが撃ち込まれれば壊滅する！
　どこか地下にでも潜れば安心だろうか……？　中々、賭けとなるが……
『今、希望ヶ浜学園や近くのショッピングモールに最後の救助ヘリ部隊が向かってるでござる！　生き残りたい人物は屋上やら高い所でHELPを求めるんでござる！』
　成程、もうじきやってくるヘリに救助されれば助かる（という設定）な訳か。
　ゾンビ達の攻勢は激しさを増している……
　しかしここが生き残るかの分水嶺！　さぁクライマックスに向けて突っ走ろうか！



●第二章詳細
　＊ここからは第二章となります。
　＊学園のバリケードが突破された事がフラグとなって、政府が市内にミサイルを撃ち込む決定を下しました！　間もなく市内全域は爆撃に包まれます！
　＊救助ヘリが向かっている様ですので、それに乗り込むことが出来れば助かります。或いは地下に潜って難を逃れる事も上手くすれば可能でしょうか……なお、ゾンビ達の攻勢は非常に激しいものと成っています！
　＊ここからはゾンビ達はどこを見ても大群です。うわぁ！

　＊と、言うような設定の上で是非お楽しみください。
　＊ゾンビ映画のクライマックスです！！

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第2章 第2節

「はぁ！？　これからっつー時にミサイルブチ込むとか正気かオイ！」
　葵は天へと向かって叫んでいた。かつてやった事のあるゾンビゲームでも似たような展開はプレイしたことがあるが――まさかマジで自分が（VR空間とはいえ）当事者になるとは……
「つってもまだ屋上に助けが来るなら幸いっス。事故る前に急ぐか」
　しかし救助が来るのであれば下を向いている暇はない。
　屋上まで行ければまだ助かる見込みが出てくる。故に――ああ通路は駄目だ、奴らで埋まっている。だからこそ窓の外……建物の壁だが、窓が付いている部分に手をかけ、跳躍。
　パルクールと言うべきかロッククライミングと言うべきか。
　出来る限り高い所へ移動し、屋上へショートカットする。
「――ったく。どんだけいるんスか、マジで」
　足場を次々に移動しつつ眼下を覗けば、大量のゾンビが蠢いていた。
　落ちれば終わりである……そして奴らがいつ上に辿り着いてもおかしくはない。
　急ごう。バリケードの山を崩して下の連中を潰して。

　希望を見据えて――葵はただただ上を目指していた。

成否

成功

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第2章 第3節

「はぁ、はぁ、リリファ先輩大丈夫？　まさか同志ルル家先輩があんな暴走するなんて！」
「はぁ、はぁ。ええ、とんでもない事をしましたねあの人は……！」
　フランは駆ける。息を切らしながら、しかしリリファと共に。
　その手には相変わらず『巨乳立入禁止』の看板――血やらなんやらが大量についている。歴戦の武具だ。
　が、ゾンビが殺到してきた下の階はもう駄目だ。
　囲まれる前に屋上へ行くしかない――邪魔する者は頭とお胸を潰して排除するとしよう。ん？　おむねは必要なのかって？　はは、そりゃあ必要だよ。もしかしたら頭だけじゃ再生するかもしれない。
「念の為ってやつだよ！　ねーリリファ先輩！」
　流石巨乳と比べて邪魔なモノが無いからか走りも思考も軽快な二人である。ははは！
　――すごく視線を感じるので黙ります。はい。
　ともあれ再度屋上を目指す二人。駆け抜け、しかし突如として襲来するゾンビ一体。
　ここは――立て看板を顔に突き刺す。
　さすれば、ゾンビの手はフランには届かないものだ。まっすぐ突き伸ばされるのだが、その五指は虚空を掴む……ギリギリ届かないのだ。え、どこに？　そんな、言えません。
「うん、よか……よか……ふんぬッ！！」
　全然気に障ったとかそんなんじゃないけど。渾身の力を込めて首を捩じ切りました。

　――さ、さぁ！　屋上へ急ぐとしよう！

　そこにはすでに辿り着いている者もいる。例えば海華がそうだ。
「ひゃー！　これだけのゾンビが押し寄せてくるとやっぱすごい迫力っスね……！
　現実だったら絶望の展開っすけど、そうじゃないならこれもワクワクっス！」
　下を覗けば――うわああ凄い数が学園に押し寄せてきている。
　もう何体も何十体も入り込んでいるのだろう……直接戦えば飲み込まれてしまう。
　だから彼女は棒を振るう。此処まで共に歩んできた武器にして、救助を求めるサインにもなる相棒を――

「おーい！　へるぷみーっす！　おーい、お――い！！」

　少しでも早く救助の手が来るようにと、心から願いながら。

成否

成功

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第2章 第4節

　ミサイル？　聞き間違いかな？　ミサイルってあの空を飛ぶ兵器の事だよね。
「――なるほど。それが打ち込まれる前にヘリコプターで逃げるってことか。OK、ここまで来たなら屋上へ脱出を目指そう！　それでミッション・コンプリートって事さ――いいよねウロ君！」
「みさいる……ミサイル？　……あは、面白い冗談～～～派手でい〜〜〜〜ね」
　え、本当に～～～？　とアントワーヌに引っ張られてウロも屋上を目指す。
　ぐずぐずしていたらゾンビと一緒に木端微塵だ。だが悪い事に外を見たら滅茶苦茶ゾンビが多くてとてもライフルで片が付くような数ではない……接近されて噛まれる方が先だろう。
「さ～～すがにこの数を相手にするのはキツいね～～～
　ま～～ぁこれだけいたら適当に撃っても当たるけど～～」
　しかし物は考えようだ。上手い事すればダブルヘッドショットを決める事も出来る。
　全部相手にする必要はないのだ。とにかく屋上へ、高い所へ行ければヘリがやって来る。
　やって来るからさ～～～？
「ははっ！　どうしたんだいこの程度かい！　さあさあ、まだまだ舞踏会は終わらないよ！」
「お～～いまともに構ってあげてる場合じゃ〜なくない～～？　王子サマ？
　先行っちゃうよ～～？？　囲まれちゃうよ～～？？」
　だというのにアントワーヌは目の前のゾンビに対し熱を込めている。ゾンビを引き付け階段を使って一気になぎ倒し、跳躍と共にゾンビに噛まれない位置で体勢を立て直す。実に素晴らしい身体能力だが――ミサイル！　ミサイルの時間が来ちゃう！
「瓦礫崩すよ～～早くこっちこっち～～」
　途端。ウロが狙うのは崩落が進んでいる天井側だ。
　穿ちてその衝撃で一気に下の者達を潰す――えっ？　他の逃げ遅れた人の道を塞いでる？
「んっ～～～？　なんのことか～～～な？」
　知らぬ知らぬ見えぬ聞こえぬ。
　さぁさ脱出の道を探るとしよう――行きますよアントワーヌさん！　アントワーヌさん！！

成否

成功

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第2章 第5節

　突如流れたミサイルアナウンス。え、何？　バグ？
「……じゃなさそうだけど、いいのかなこれ」
　まぁ主催者が言ってるなら良いんだろうな……と希は思い。
　辿り着いたはショッピングモール。であればと片っ端から探っていく。
　そう。希はマップをくまなく埋める派なのだ……！！
　どこかにサブイベントがあるかもしれない。大概の場合メインに進めば消えてしまうので、サブイベントから進める派なのだ。しかし！
「状況が大分変ったね。こうも数が多いと……ちょっと無理ゲーかな？
　弾薬もあと数発残ってるだけ、か……」
　回復薬のアイテムは見つかった。しかし一介のモールに弾薬は無かったか……
　このまま外に出てもゾンビにやられるだけだろう。かといって隠れて進める様なスペースもない。
「……あっ、これ絶対弾……切れた」
　そして迎撃の為に放った銃弾が遂に弾切れ。
　もはや鈍器としてしか使えない銃器。くそ、やむを得ない。これを使う時が来たか。
「――最強の武器、だね」
　ある意味と。取り出すはバール二刀流。
　片手で防御を崩し片手で頭を砕く、いける。慣れれば案外使いやすいものであり。
「……うん、ちょっと面白い」
　最早屋上は間に合うまい、ならばと。
　希は扉をこじ開けた。
　時間ギリギリまで探索する為に。開かれざる地下への扉を――

成否

成功

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第2章 第6節

「……は？　なんて？　は……はぁ……？」
　リリーは激怒した。必ずやかの邪知暴虐な……ってメロスじゃない！
　ゾンビとかバリケードとかミサイルとかいきなり情報量多すぎである。
　頭を使わせるとはいい度胸だ――このゾンビ共――

　暫く無双。リリー、鬼神へ至る。

　そのバールの暴虐っぷりや否やゾンビ達がなぎ倒される勢いであった。
　が、そこはいつものリリー。
　あるタイミングから電池が切れたようにいつもの調子に戻って。
「はぁ……なんかメンドくなってきた……何？　なんだっけ……ミサイルは地下……地下にいればいいんだよねぇ……？　ならもうそれでいいや……」
　マジで本気で面倒くさい。もーやだやだ。
　見れば丁度良く地下への階段がそこに在った――ここは何だ？　地下鉄の入り口か？　それとも――あ、もういいやなんでもいいホントに。あとはミサイル降るまでおやすみ……ぐぅ……

　……あ。ちな途中で起こしたらカチ割りの刑・再だから……ぐぅ。

成否

成功

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第2章 第7節

　お菓子美味しかったのでメイゾンビ再びなのですよ！　えっへん！
　他のゾンビさんと一緒に壁やバリケードの隙間から腕がいっぱい出てくるのやって皆さんを驚かすのですよ！　これがゾンビのお役目なのです！　お腹も一杯なのでがんば……がんば……

「ウゥゥゥゥアァァァー……タ……タスケ……アァァァアアァァー」

　――メイは動けなくなっていた。実は、お菓子を一杯食べてしまったせいでお腹が膨らんで、隙間に挟まってしまったのである。それだけならよかったのだが、後ろから他のゾンビも詰めてきて大渋滞！
「ド、ドウシテー……どうしてこんな……」
　前にも進めず後ろにも進めずメイは大ピンチに陥っていた。
　――このままではこの状態でタイムアップである！　どうして……はっ！
「まさかあのお菓子はこれを見越した生存者の皆さんの巧妙な罠だったですか！？　メイが、メイがお腹が膨れる程食べるという事を見越して……こ、孔明の罠って奴なのです！？」
　確実に違う気がするが、メイにとっては最早これが真実であった。
「うわぁぁぁぁぁん、抜けないのですよぉぉぉぉぉ！！
　た、助けて欲しいのですよぉぉぉ！！　わぁぁぁぁぁぁぁぁん！！」
　ゾンビの呻き声の中に紛れて、メイの悲痛なる叫びが天へと向けられる。

　ミサイル着弾まで、あと――

成否

成功

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第2章 第8節

　遠くから聞こえる悲鳴――銃声の嵐――
　ビルの狭間を抜けてくる狂騒曲が鳴り響き、しかし。

「――――」

　そこは屋上――辛くも逃げおおせ、後は救出を待つのみという幸運な者たちが集まる場所――そこに今、奇妙な噂を口にする者たちがいる。
　曰く。謎の黒衣の少女に助けられたと。
「あぁアンタもか……ありゃあ何だったんだろうな。現実の様な夢の様な……」
　その少女は、道に迷った者にはルートを指し示し――道が埋まった者には階段の上から手を取り引き上げ――奇妙にもその容姿は同じようであり、同じように揚げ物のような匂いがしたという――なんで揚げ物――？
「ハハハ。今考えれば幻覚だったのかもしれないな」
　――あるいはこれがＢ級映画なら、エキストラの使いまわしさ――ハハハ。
　ゾンビの難から逃れているが故にこそ零れる感情もあるものだ。
　安堵した人々の間で噂は一笑に付され、そして人々に笑顔を齎すのだ。

　――10秒後、その噂の主が現れるまで――

成否

成功

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第2章 第9節

「うーん。これが練達が誇るVR技術ですか、よく出来ていますね。
　よく出来ている分、ゾンビに迫られると本当に怖いのですが……うわああ沢山います」
　ゾンビ溢れる中、屋上をアンジェリカもまた目指していた。
　怖い。やたら怖いのだが、折角参加した以上は目指せ脱出！　その気概を持って他の脱出を目指す者達と共にゾンビに抗っていたが、此処に至るまで幾人もの脱落者が出てしまった……いやそれだけではない。
「ははっ。若い子がいたからって、ちょっと張り切り過ぎましたかね」
　アンジェリカが見据えたのは己が腕――其処には幾つも噛まれた跡があった。
　庇いに入ったまでは良かったのだが、まあ無事ではいられなかったのだ。流石にあの数を相手には頑張っても無茶があったか……
　そして今は屋上へと続く道の途中。
　なんとかそこの扉を閉めるのには成功したが、段々と己に熱が帯び始めている。成程、これがゾンビへと至る過程か……

「彼等の手を煩わせるわけにはいきませんからね――
　此処まで来たのです。どうか皆さんに、幸運を」

　だからアンジェリカは銃を構える。己がこめかみに、狙いが逸れぬ様にして――
　呼吸一つ、後に。

　弾いた。

　自分の始末は自分で付けますよと。
　彼女は最期まで――人間であり続けたのである。

成否

成功

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第2章 第10節

　空が曇っていた。
　地は腐敗した肉で溢れ、恐怖の渦に。
　それでも生存者達は希望を夢見て天を目指す――

　学園。その屋上へと繋がる階段の踊り場に、もふもふした毛玉が一つ。
　その辺の机とかを引っ張ってきて陣地構築したその巣でごろごろしていた――けど。階下の騒がしさはついに無視が出来ない。だからのっそりと立ち上がって活動を始めたんだ――猫の陰陽丸は！！

　にゃーん。

　どこか近い、けれど遠くで聞こえたかのように感じる鳴き声。
　瞬間。ゾンビの顔を襲ったのは――陰陽丸のねこぱんち。あふぅん。
　生存者を口に咥えて屋上へと。巣の向こう側に落として、追って来るゾンビは千切っては投げ、千切っては投げ。
　にゃにゃーん。
　それでも波の様にもふもふさせろと押し寄せてくるゾンビ達の物量はやばかった。
　故に陰陽丸も急ぐ。屋上のヘリへと――
「ミミミ、ミサイル！？　ミサイル撃ち込まれるの！？　え、なんで！？
　どうすんの！　どうすんのよルル家！　ていうかこれアンタの所為じゃないの！？」
　一方、リアは狼狽していた。ミサイル、なんでも広範囲を爆撃する兵器だとか……
　これもルル家がフラグを推し進めた所為ではないかと思うのだが。そうだよ。
「うぅ……駄目よ、あたしはここで死ぬんだわ……
　ごめんなさい、シスター……弟たち……
　ガブリエル様……せめてあたしが生きてるうちに貴方を領地に設置したかったです……」
　ついに天に祈りを捧げるより他は無くなってしまった……

　……て、いや待て！　これVRだ！　死なねぇじゃん！

「ってか、よく聞いたら助けが来るかもしれないって！？　なに！？　屋上とか高い所に行けばいいの！？　マジで！？　やった、神は見放してないわ！　こんな事もあろうかと私、着てる服に魔法掛かってるから高く飛ぶ事ができ……ねぇ！　これVRじゃん！」
　ぴょんぴょんしてもダメでござる！　リアさんは随分あわてんぼうのご様子。
　あああああああそうこうしてるうちにゾンビが――ッ！！
「うわああああガブリエル様――！！　もう一度お会いしたかった――！！」
　飲み込まれるリア。ああ、なんとか屋上まで行ければヘリが来ていたのに……
　音がする。プロペラが超即回転する、救助ヘリの駆動音だ。

　そして救助のヘリ。と聞けば、花丸の頭には『お約束』の単語が舞い降りていた。

　ヘリにも実はゾンビが紛れ込んでいたり――
　実は陰謀によりパンデミック発生させた人がヘリを撃ち落したり――
　そういうのが所謂『お約束』である。
　しかしここに至るまでそういう展開は無かった。当然である、だってヘリは今からだもん。
　と言う事は、と言う事はだよ？
　つまりそういうお約束を果たしている人もゼロと言う事か……？
「って事で、じゃじゃん！
　ここに用意しますは逃げる時に見つけたロケットランチャー！
　うーんなんでこんなモノが希望ヶ浜学園にあるんだろう、不思議だね！」
　えっ？
「そしてこれを、こうして、こうじゃっ！」
　花丸ちゃん、どうしてロケットランチャーの照準をヘリに向けておるのじゃ？
　花丸ちゃん、そこは引き金じゃ。止めるんじゃ！
　花丸ちゃん、花丸ちゃ、花丸――！！　ああ――ッ！！
「ひゅーっ、派手にやっちゃったぜ！」
　その時。鳴り響いているのはヘリが撃ち落とされる音。
　花丸によって撃墜されたのだ。ヘリは大きく回転して、地上へと落ちて大爆発。
　どうして――どうしてこんな凶行に及んだのだ花丸――
　それに対する答えは、一つ。

「いや、その……つい！」

　正直皆に悪いことをしたと思ってるけどこれも可能性を模索する為の致し方無い犠牲っ！　――許してねっ！（てへぺろっ）
　許すかぁああああぎゃああああ扉がついに突破されたぁああああ――！！
　救助ヘリは墜落したので救助フラグは消滅した。
　陰陽丸はやれやれと言った表情で事態の推移を見守り。

　そしてついにミサイルが到来する――あぁ――

『そ、そんな……まさか生存者によってこんな事が起こる事もあるなんて！
　うーんゾンビだけでなく生きている人間も怖いんでござるなぁ！』
　ラジオから流れるは主催者の紘一の声だった。
　そう。元はゾンビ襲来によるパターン検証の為のこの依頼だったが……結果は何と意外な事に！

　夢見 ルル家と笹木 花丸の陰謀により生存者は壊滅したのであった――ッ！

　Zombie movie in the Tokyo ―― Fin!

成否

成功