シナリオ詳細
<幻想蜂起>この地が血を欲する前に
オープニング
空気が重く、刺すように痛い。
まだ夕刻だというのに、普段なら夜まで買物客で賑わう市場すら、その活気を急速に失いつつある。買物袋を抱きしめて家路を急ぐ人々の目はどれも険しく、殺気、あるいは恐怖に染まっている。
――レガド・イルシオン国内で頻発する原因不明の猟奇事件は、人々の暮らしに暗い影を落としていた。
隣人にも友人にも、家族にすらも気を許せない。募る不安と燻る不満。やがてそれらは、かねてから存在していた『怒り』の形をとって表面化した――民衆の一部が、貴族たちへと武装蜂起したのだ。
戦いの素人である民が充分な戦力を保有する貴族に楯突くなど、結果は火を見るより明らかだ。民衆もそれは充分に理解しているはずである。だからこそ、これは異常な事態だった。
この無謀な暴動に、例のサーカス――幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』が関係しているのかはわからない。ほかに何かしらの『外的要因』があるのかもしれない。いずれにせよ、貴族たちはその軍事力をもって愚かな暴動を鎮圧する。
その流れに待ったをかけたのが、ギルド・ローレットだった。
「率直に言おう。そちらのオーナー――バルトロメイ殿が軍派遣を押しとどめたことには、感謝している」
遠く窓の向こうの市場から名残惜しげに目を離すと、エイボス・イミニール男爵は室内に振り返った。あまり広くもない執務室には男爵のほか、秘書の獣種女性と、ローレットから訪れたイレギュラーズたちが佇んでいる。ほかに護衛らしき人物がいないのは、イレギュラーズをわざわざ呼びつけたことに対する礼儀の表れだろうか。
「主だった貴族が武力鎮圧に動けば、当家もそれに倣わざるをえない。だが見ての通り、我が男爵家は貴族としては弱小だ。負担となる選択はできるかぎり避けたいのだよ……そして、諸君に来てもらったのはほかでもない」
レオンが貴族たちと交渉した結果、所領における騒ぎの最終的な対処は、領主に一任となっているという。片眼鏡の奥、温和そうな光を灯す翠瞳が、イレギュラーズを見回した。
「諸君には我がイミニール男爵家の正式な使者として、武装市民グループとの交渉に向かってほしいのだ」
男爵家からの主張は以下の三つだ。
一、当家に争う意思はなく、講和を望んでいること。
一、民は速やかに武装を解除し、元の生活に戻ること。
一、当家は良識ある範囲で要求を呑む準備があること。
これを男爵家の者が申し入れに行っても、聞く耳を持ってもらえるかわからない。殺される恐れすらある。その点、ギルド・ローレットの者なら相手も交渉のテーブルについてくれやすいだろう。
必要な調査資料を秘書に配らせている間、イミニール男爵は再び窓の外へ視線を投げた。
「……私はここから見える町並みが好きでね。午睡のあとは、市場の賑わいを眺めながらここでよく二度寝をしたものだ」
「仕事してください」
「可能なかぎり譲歩するつもりだが、もしも決裂するようなら……そのときはしょうがない」
聞こえなかったのか秘書の鋭い呟きには反応せず、イミニール男爵は片眼鏡の奥で眼を細めた。
「血に染めることになる」
- <幻想蜂起>この地が血を欲する前に完了
- GM名吉北遥人(休止中)
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年05月09日 21時50分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●黄昏の来店
妙な客が来た――たむろする先客たちは一様にそう訝しんだかもしれない。
ドアベルの涼やかな音とともに酒場に入って来た団体は、そのほとんどが若い女性だった。正確な年齢はわからないが、明らかに子どもと呼べる外見の者もいる。
「注文は?」
武器を帯びていることからして、ただの女子供ではあるまい。酒場に満ちる不穏な空気や突き刺さる視線に怖じることなくカウンターまでやってきたその団体客に、大柄な店主は威圧するように訊ねた。
「うちは酒しか置いてないんでな。子どもが飲めるもんはねぇぞ」
「ごめんなさい。わたしたち、お客さんとして来たんじゃないの」
カウンターの下から申し訳なさそうに、しかしはっきりと告げたのは『軋むいのちと虚ろなこころ』はぐるま姫(p3p000123)だ。見上げる位置にある店主の顔へ上品な所作でお辞儀する。その発言を引き取るように、仮面で目元を覆った秋空 輪廻(p3p004212)が和服の胸に手をあてた。
「私たちはギルド・ローレットの者よ。イミニール男爵家の正式な使者として、講和の申し入れに参上したわ」
「イミニール!? てめえら、貴族の手先か!」
激昂したのは目の前の店主ではない。酒場の一角からこちらを用心深げに盗み見ていた若者が、リボルバーを手に立ち上がったのだ。それに触発されたように店中の男たちが次々と椅子を蹴立てて、拳銃やライフルを抜き放つ。
「ああ皆さん、どうか愛ある行動を」
貴族の名に過敏な市民たちに、『意志ある禁忌の愛玩人形』アインス・リーヴェ・ホムンクルス(p3p002010)が訴えた。見たところ、残念ながらその中にアインスの知人は見当たらず、彼女の声は届きそうにない。
およそ二十ほどの銃口を前に、『昇り来る月』ニゲラ・グリンメイデ(p3p004700)は落ち着いた表情で両手をゆるゆると頭上にあげた。降参のポーズだ。『tailor』カシエ=カシオル=カシミエ(p3p002718)も、あえて周りから見えるように提げたナイフに手を伸ばすことはない――ここへは戦いに来たのではないのだ。
「お父ちゃん、どうしたの?」
張りつめた酒場の空気に舌足らずな声が触れた。カウンター奥の扉から少女が顔を覗かせたのだ。その姿はすぐに、少女とよく似た顔立ちの女性に抱えられ、店の奥へと消える。
「銃を下げろバカ野郎ども!」
すぐさま扉をしっかりと閉めて、店主が大喝した。男たちが射抜かれたように竦む中、最初にリボルバーを抜いた若者が不服そうに店主を見返す。
「でもオヤジ! こいつら……」
「うるせぇ! ローレットの噂はお前らも知ってるだろうが!……で、使者とか言ったな。そいつはマジか?」
「うん! はいコレ♪」
ささやかな抗議を一蹴された若者を尻目に、カウンターに身を乗り出して、『まねー・いず・じゃすてぃす』リュゼ(p3p005117)が封筒を差し出した。蝋で封されたその中身は、自分たちが正式な使者であることを証明する書状だ。男爵本人に用意してもらったものである。
「いちおー確認するけど、おじさんがネビル・ウォードさんだよね? ここの経営者の」
「ああ」
『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474)の問いに店主――ウォードが封筒を雑に破きながら答えた。書状を広げて、険しい顔が眉根を寄せたことでさらに険しくなる。
「……ふん、間違いないみてぇだな」
「では、儂らとの交渉に応じてくれるかの?」
「……条件がある」
黙読を終えるとウォードは、ルア=フォス=ニア(p3p004868)が装着するガンウォンドに太い指を向けた。
「完全に信用するわけにはいかねぇんでな。その拳銃は預からせてもらう。そっちの嬢ちゃんたちの武器もだ。あと妙な動きをしたら撃つ。ローレットには、素手でも強ぇ奴がいるんだろ?」
「ふむ、妥当なところじゃのう……大事に預かってくれると嬉しい。思い入れのある品じゃからな」
正確には拳銃ではないがそこは指摘せず、ルアは近付いてきた男性にガンウォンドを手渡した。ニゲラも粛々と剣と盾を他の男性に預け、カシエもナイフを鞘ごと丁寧に手渡す。
武装解除は想定通りの展開だった。始めから率先して武器を預ける手も考えられたが、相手が要請してから素直に従う方が好い印象を与えられる。心理的なテクニックだ。
「それでは交渉開始ね」
仮面と髪で肌を隠していることについて疑念を抱かれることはなかったが、輪廻に魅了のギフトを使う意思はなかった。そんな交渉はフェアではないし、何より意味もないのだから。
●不満と望み
あらためて見ると、店内はなかなか洒落た内装だった。
木の床や壁は落ち着きのある色合いに統一されている。壁際で直角に曲がる階段の先、二階は宿泊室だろう。天井ではファンがゆっくり回っていて、見る者によっては「西部劇みたい」という感想も出たかもしれない。
「で、講和ってのはどういうことだ?」
だが店主の強面を前に落ち着くのは少々難しかったろう。酒場奥の大テーブルを挟んでイレギュラーズと向かい合うウォードの背後に、壮年くらいの男たちが油断なく銃を構えているとあってはなおさらだ。
「講和に何の意味があるってんだ? なんで俺たちがこうしてるか、わかってんのか!?」
「正直なところ、武装蜂起をしたのは驚きですよ」
気圧されることなく対応したのはニゲラだ。旅人が多いイレギュラーズの中では、カオスシードであるニゲラの感性は市民たちと近しい。
「貴族が僕たち平民をどう思ってるかぐらい知ってるでしょうに。アーベントロート領なんて、暴動は鎮圧一択ですよ?」
「あぁそうだな。俺たちだって殺されたくはねぇ」
ウォードがテーブルに目を落とす。その眼に宿るのは追い詰められた者の――そして、覚悟を決めた者特有の輝きだ。
「だがよ、それがどうした。いつかはやらなきゃならねぇことだ」
「お聞かせ願えるかしら……あなたたちを駆り立てるものが何なのか」
きりきり……と、はぐるま姫がアミーリアを横目する。アミーリアはこの交渉における書記だ。ペンを片手に、書き留める準備はオッケーとばかりにウインクする。
「『貴族が平民をどう思ってるか』……さっきそこの坊主が言ってたな。貴族にとっちゃ俺たちは道端の石だ。いや、石ころほどの価値も感じてねぇだろうな」
はぐるま姫の穏やかな物腰に促されてウォードの口からこぼれ出てきたのは、諦観と自嘲、そしてそれを上回る憎悪だった。
「自分たちの利害に絡まないなら野垂れ死のうが構わない……今回だってそうだろうが。わけわかんねぇ殺人事件が起こってるってのに、貴族様は俺たちに何かしてくれたか? 少しでも領民を守ろうとしてるのかよ!」
「ああ、なるほどなぁ。それは辛かったじゃろ……」
ルアが沈鬱な面持ちで深く頷いた。
まずはガス抜き――市民の不満を聞くことに徹しているわけだが、猟奇殺人事件はローレットでも捜査中の案件だ。他人事でないだけに自然、複雑な気分が残る。
「俺はまだいい。今までさんざん耐えてきたんだ、これからだって我慢できる。けどよ、ガキどもはどうだ? そのまたガキの世代は? このろくでもねぇ状況をそいつらにも背負わせるのか? 俺はな、それだけは我慢ならねぇんだよ!」
「そうだ! 俺たちが今ここで立ち上がるしかない!」
「貴族どもをぶっ殺して、クソったれな社会を変えるんだ!」
激しくテーブルを叩いたウォードに続いて、周りの男衆が次々と声をあげる。熱狂的な叫びは実体があるかのような圧を放ちながら酒場中に渦巻いて――
「――お話はよくわかりましたわ」
その小さな体のどこから、これほど自信に満ちた声が生じているのだろうか。凛と告げたはぐるま姫のカリスマ性にあてられ、男たちがその声を聞き逃すまいとするかのように徐々に静まりかえる。
「ようするにだけど」
その静寂にリュゼが言葉を差し挟んだ。
「男爵が領民のみんなを守ったり大事にしたりしてくれたらいいってこと?」
「それがありえるなら、ここにいねぇよ」
リュゼの確認に、ウォードが鼻を鳴らす。
●闇と光
「だとしても、武装蜂起はおすすめできません」
非友好的な視線が刺さるのを感じながらも、ニゲラは自論を撤回したりはしなかった。
「本当に幻想を変える革命を起こしたいのなら、必殺のその瞬間まで耐えて力を蓄え、より大規模で連携の取れた組織を目指すべきでしょう? 蜂起するならするで成功させなくては意味がありません。勝利こそが、流れた血が『無用』かどうかを決定するんです」
男爵に察知された時点で引き下がるべきだ――貴族に苦しめられる『同胞』としてのニゲラの提案は合理的だが、歓迎はされなかった。
「これ以上時間をかけたって、力を蓄えるなんてできねぇよ。ただ衰えるだけだ……今しかねぇんだよ、今しか……」
「分かります、とても……」
歯を食いしばって唸るウォードの、その苦しみに寄り添うように、カシエは頷いた。
「今日は良くとも明日は、自分は良くとも子供は……今の状況では、とても、とても……暮らしが上向くのならば、それは素敵なことですよね」
とつとつと、相手を慮る一言が胸を打つ。それはカシエが自身を交渉における『緩衝材』としているからだけではなく、心底から心を砕いているからだ――お互い個々人に怨みもないのに、憎み合わねばならないのは、悲しいことだもの。
「それを望むのはとても自然なことだと思いますよ……えぇ、だからこそ、望みを後悔なく叶えるためにも……誰をも傷付けないことが大事になるのではないでしょうか? 子供たちが皆さんのされたことを知ったときに、悲しみを覚えないようにも……」
「そいつは……」
「愛なき行動は、破滅をもたらす。愛ある行動は、生を生み出す。あなたがたに愛ある行動を望みます」
カシエの問いかけにウォードが黙り込んだ。アインスの祈りに似た囁きにも、ただ言葉を探すように唇を引き結んでいる。
「――私たちが男爵からことづかったのは次の三点よ」
頃合いと見て、相手にしっかりと伝わるように輪廻が時間をかける物言いで切り出した。争う意思はなく講和を望むこと。速やかに武装解除をして元の生活に戻ること。そして。
「当家は良識ある範囲で要求を呑む準備があること――限度はあるけど、できるかぎりの譲歩をするとおっしゃってるわ」
「譲歩か。けっ、いかにも貴族様らしい言い草じゃねぇか」
ウォードが不愉快げに吐き捨てた。
気に喰わないのだろうが、リュゼにしてみればこれはずいぶんと優しい条件に思えた。そもそもの交渉だって形式だけにするなり騙して武力制圧するなりできそうなものなのだ。それがこんなゆるゆるな譲歩ラインで、逆に心配になってくるレベル――依頼人がそれでいいならリュゼとしては従うだけだが。
「なら、金と武器をよこせ。俺たちが自分で自分の身を守れるようにな!」
「いやー、流石にそれは難しいんじゃないかなー」
譲歩のラインを超える要望だ。リュゼが穏やかに待ったをかける。
「例え大金であっても、あぶく銭は無くなれば終いじゃ」
ルアもやんわりと釘を刺した。刺激しない程度に、相手が先の事を考えられるように言葉を選ぶ。
「それよりは、環境の保全等のランニングコストが掛かる部分を、後世にも続く形でやらせ続けた方が、結果的により多くの利が出ると思うのじゃが、どうじゃろ?」
「はっ、そいつはいいな! だったら町の整備でもしてもらうか。だが、それだけじゃ俺たちは戻らねぇぞ……戻りようがねぇだろ、元の生活なんてよ」
戻れるくらいなら誰が蜂起などしただろうか。どうして先の見えない闇に戻ろうと思えるだろうか。
「でしたら、戦う場所を変えるのはいかがでしょう」
ウォードが要領を得ないとばかりに眉をひそめた。その怪訝な視線の先にいるのは、はぐるま姫だ。
「『戦う』といっても暴力ではありませんわ。話し合い、つまり『男爵側と市民の皆様の、定期的な協議の場を設ける』という提案です」
「協議の場だと? イミニール男爵と俺たちが直接話せるってのか?」
はぐるま姫が小さな顎を引いて頷く。
市民たちに必要なのは、暴力に依らず『自分たちの力で幻想を少しでも変えていける』と思えることではないか――そう考えたのだ。この案なら男爵の譲歩ラインにも触れない。
「頻発している事件を今すぐ解決することは、約束できません。けれども、未来を自分たちで切り拓くお手伝いならできると思いますの……わたしたちもまた、幻想を変えてゆく『可能性』となる意思があり、そのためにここに立っているように……」
「やるなら全員じゃなくて、代表者を決めるのが良さそうだねー」
ペンを走らせながらアミーリアが意見を述べた。アミーリア個人としては生活がどうのこうのには興味ないが、依頼は依頼なのでやるからにはキチンとしたい。少し考えながら所感を追加する。
「あと、それだけじゃ足りないようなら、いつでも請願書を書いて提出する権利も認めるって追加するのがいいかも。いずれにせよ、依頼主と確認をとらないとね」
「……本当にやれんのか?」
ウォードの低い声に宿るのは疑念と、推し量るような響きだ。
「本当に俺たちと男爵で、まともな話し合いができんのか?」
「ローレットが仲介に入りますわ。決して不安にはさせません」
「……嬢ちゃん、その目は反則だぜ」
上目遣いでうかがうはぐるま姫に何を、あるいは誰を想ったのか。天井を仰いだウォードが深く長い息を吐く。そして絞り出すように頷いた。
「いいだろう。その協議が実現できるんなら、こっちも手は出さねぇ。講和といこうじゃねぇか。……だが実現できなかったら」
「わかっていますわ。ええ、必ず」
はぐるま姫も強く頷く。
条件付きだが、それでも武装蜂起を防ぐことはできた。ニゲラが安堵したように肩の力を抜き、カシエもほっと頬を緩ませる。周りの男たちが銃を下ろしたのを見て、愛のある結末に満足したようにアインスも微笑んだ。
大きく伸びをしたルアが天井を見上げて口元をほころばせた。
「今度は私用で来たいのぅ。この酒場、中々に良いしな!」
●締結
「これでよし! 後で言った言わない問題に発展すると面倒だからね」
アミーリアのまとめた決定内容をリュゼが復唱して、交渉は終了した。最後にしっかりと確認して共有しておくのが、会議などではけっこう大事なのである。
「講和を持ちかけた男爵は優しい……なんて思ってるかもしれねぇけどな。それは違ぇぞ」
返却してもらった武器を装備し直すイレギュラーズに、ウォードが唸るように告げた。
「講和するのはその方が都合がいいからだ。どんなに人当たりのいい皮をかぶろうが、中身は幻想貴族……自分のことしか頭にないクズなんだよ」
「そうかもしれない。いえ、残念だけどそうなのでしょうね」
良い人間に見えても、幻想の貴族とはそういうものなのだ。領主の仕事よりも昼寝を優先してしまうイミニール男爵の行動も、その精神性が表れたものだろう――でも、と輪廻がドアを開けながら続けた。
「男爵はこの町並みを愛してる。屋敷の窓から見える、市場の賑わいを眺める事が好きなの。その言葉に嘘はなかったと思うわ」
それがあるかぎり、歩み寄れる道はあると信じられる……
そう言い残して、イレギュラーズは酒場のドアを閉めた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
説得や交渉は難しいものですが、皆様の提案によって講和は無事に結ばれ、貴族と平民の衝突は避けられました。
今はまだ幼い平和ですが、第一歩を踏み出せたことは誇るべきことです。
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
お世話になります。吉北遥人です。
このたびはシナリオのご参加をありがとうございます。
市民の不穏な動きが表れました。
本シナリオでは、穏健派貴族の意向に沿って、武装した市民たちと交渉ならびに説得を行っていただきます。
■成功条件
男爵家の意向を武装市民に伝え、両者の講和を締結させる。
(市民の反乱を阻止できれば、貴族に恩を売れて、今後の事件解決につなげていくことができます。がんばりましょう!)
■武装市民グループについての情報
・町の酒場を本拠地にしている。
・五十名ほどの男女で構成されている。年齢は様々で、若者もいれば老人もいる。
・リーダーは酒場の経営者であるネビル・ウォード氏。ガタイがよく、皆からは「オヤジ」と慕われている。
・『イミニール男爵ではなく幻想に不満がある』ので聞く耳は持つ。なので門前払いされる心配はない。
・貴族(ひいては国)へ怒りをぶつけることを主目的としている。そのために男爵家を攻撃するつもり。
■男爵についての情報
エイボス・イミニール男爵。32歳。既婚者で子持ち。
領主としての手腕は可も不可もなく。
趣味は寝ること。そのせいで書類仕事が滞るのが玉に瑕。
「当家は良識ある範囲で要求を呑む準備がある」の「良識ある範囲」は、例を挙げると、
「街の環境を良くしろ」などの政治的なこと……OK
「金を出せ」「首を差し出せ」など男爵家の損害を求めるようなこと……NG
といったかんじ。
■交渉が決裂した場合
武装市民もローレットの者をわざわざ殺そうとは思いません。こちらから挑発や攻撃をしないかぎりは戦闘は起こらず、無事に帰還できます。
その後皆さんが去ってから男爵家と市民が武力衝突することになるでしょう。
補足などは以上となります。
PBWにおいて説得や交渉は難しいものですが、相手が望むものをよく考えるなどして、話し合いを良い着地点へ導けるよう言葉を尽くしてください。
何か準備したいものがあれば、できる範囲で男爵が援助します。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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