シナリオ詳細
お前の作画コストは馬鹿みたいに高い
オープニング
●もうすぐ学園祭!
学園祭&体育祭を前にしてにぎわう希望ヶ浜学園。
一年に一度のお祭に向けて、生徒たちもはりきっている。
授業が終わったあとも教室に残って、出し物の練習をしたり、大道具を用意したり、……大忙しといってもよい。
「それにしても、夜の美術室ってさあ、なんか不気味だよな……」
「ちょっと、さ、先に入りなさいよ!」
劇の小道具を取りに来た二人の生徒。
ぎい、と引き戸を開いた。
「わっ」
「うわあー、な、なんだよ!?」
驚かしたのは、美術室に潜んでいたクラスメイトだ。
「びっくりしたか? ははは」
「びびったわ!」
「美術室にはさ、出る、らしいぜ」
「怖いこと言うなって。えーっと、背景に使う板だっけ?」
「ちょっと、男子、早く持ってきてよね」
「いや、手伝えって」
とはいえ。
夜の美術室というものは、非常に不気味だ。
石膏像がじっとこちらを見つめているような気がする。
「よし、あったあった、っと……」
用を終えたところで、明かりを落とす。
ぴちゃん。
何か水の音がした。
「え?」
「水道しまってなかったかな……?」
ぴちゃん。
ぴちゃん。ぴちゃん。ぴちゃん。
それは、筆を筆洗につける音であった。
さらさらと、デッサンをする音がそれに加わる。
その音は、四方八方から聞こえる……。
「ちょ、ちょっと! なんだよ!」
何かが、自分たちを描いている。
「う、うわああーーーーー」
●共通項を述べよ
昨日の事件で狙われた生徒は三人。
うち、服をズタズタに切り裂かれてしまったのは、大道具の二人だった。
幸いにも気絶で済んだようではあるが……。
「どうして、一人は助かったのかしら……」
音呂木ひよのは首をかしげる。
今までにも美術室にヨルが出るという報告はあった。
狙われた生徒は大道具の人間が多い。だが、絶対ではないのだ。居合わせながら無傷、全く被害に遭わない生徒もいる。
ヨルの狙う犠牲者はいったいどうやって選ばれているのだろうか。
「……作画コスト」
「え?」
普久原ほむらがつぶやいた。
「それはつまり、作画コストの問題だ」
つまり、美術室のヨルは……。
作画コストが低い人間を、狙っているようだ。
「というわけだから、……えっと。ごてごてに着飾ったり、描きにくいポーズを決めたりすることがヨルへの対抗策に……なるの? かしら? ね……。幸いにも今は学園祭の準備中。小道具も豊富に用意できる……ということだから、よろしく頼むわ」
- お前の作画コストは馬鹿みたいに高い完了
- GM名布川
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年10月05日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●作画コスト高い高い
「男ってだけで姿絵書いてくれる奴減るのに、獣人まで加わると探すの大変なんだぜ?
そーだろボルカノ!?」
「ぬわーははははー! まったくその通りであるな!」
メメタア、という音を立てて美術室の扉が開いた。
現れたのは『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)と『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)である。
堂々たる巨躯を披露するボルカノ。
ボルカノのイラストセキュリティに、美術室のヨルはおののいた。
厚い胸板と筋骨隆々の肉体にひらひらのエプロン(喫茶店か何かの備品だろうか?)。参照資料を求めて慌てて爬虫類図鑑をめくる。
そう、ドラゴンは! ない! 資料写真というものが!
一方で、カイトの方は比較的優しい。難易度はノーマル相当であろうとも、ココに住み着くヨルである。希望ヶ浜学園の制服はいくつも描いてきた……。
かっこよく描かなきゃ……赤毛フェチの一体がものすごい熱意で手を挙げ、意気揚々と筆を走らせ始める。
ヨルは、スカイウェザーのみなさんが、日常を崩さぬように人間形態をとっていることを知らなかったのであった。
「ここ、か……」
『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の特筆するべき特徴はそのとろけるような、長い金髪であろう。そしてなによりも赤銅色の肌。褐色に心を奪われたヨルが、我先にと筆を走らせ始める。
「作画コスト……あまりよくわからない、が。要は、絵のモデルとして、難易度を高めれば良い、か」
エクスマリアが少し姿勢を変えれば、あっ、巻角が見えた!
角度によっては見えないかも知れないが、是非にも入れたい……!
なぜならば、一見して人っぽいキャラクターが覗かせる人外要素は最高だからだ。ヨルもまた、こじらせていたのである。
ところが……。
「!?」
うねるような髪の毛が、美しいツーサイドアップをかたどった。かと思えばくるくると編み合わさり、シルエットを変える。太いみつあみ、細いみつあみ。はらりとほどけてふわふわのウルフカット。かと思えば繭のようにぐるぐると体を覆って、これは、えー、なんだ……。
無表情のまま、千差万別に形を変えて行くのであった。
さあ、とヨルの血の気が引いた。
「ハッピーハロウィン!!!」
ばあん、と扉が開いた。
『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は両肩に門松をセットして、背中にこいのぼりを掲げていた。
子供の日……。
>正月<
あまりに狂気じみた世界観に、ヨルの絵筆が一本折れた。
そのうえ、スペースには缶バッジを装着し、オーナメントを巻いている……。
「はいはい美少女ですよー! aPhoneもデコってます、見ます? よっ」
ふわりと浮き上がり、ぎゅるぎゅると回転する美少女。
時代は3Dアクションだ。ごてごてのコンセプトに構図が全然定まらない。スケッチブックは意味をなさないまま、風圧でぱらぱらとめくれていく。
「いっきますよー、キャット覇王でんえー弾!!」
ばばばばば、と美術教室を覆いつくす弾の阿鼻叫喚。
ヨルのロードがやたら重い。しにゃこの周りだけ負荷が高い。
「ハイエナですけどね! さぁ、どんどんコストあげていきますよ!」
でも、ぷるんと揺れる耳はほんとに可愛くて、あっ、アオリで見る美少女最高ですね。なんとか、可愛い女の子を描きたい、なんとか……一体が震える手でペンをとった。
「えっと、お邪魔、します……」
ヨルのひとつが、「まあ、任せろ」というような動きをした。
ここの生徒だ。あの制服だろう。
入ってきた生徒、『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)の姿に腕はのけぞりかえった。色とりどりの布を組み合わせ、繊細な刺繍を尽くした伝統衣装。裏地にまで飾り糸で丁寧に縫い付けられていて……。スカートの端を持ち上げれば何枚もの布のパッチワークが見える。
可愛い。
実際、今日この服を持ってきたら、ものすごく周りから注目されたりしたのであった。
いや、さすがに重すぎる。ここは大胆に省略をして……。
「ほんとうは、可愛く描いてもらいたい、ですけれど………」
そんなこと言われたら描かずにはいられないじゃないか。
「ゴテゴテしてると描きづらいよね、わかる!」
うんうんと頷く『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)の頭部には鹿のような2本の角が輝いている。「輝煌枝」と呼ばれる種族である。
ムスティスラーフは良く見えるようにお茶目に頭を傾けてみる。
これは、……キャラクターの命と言っても過言ではない。
パライバ・トルマリンってなあに? ヨルは、必死に資料を探している。あ、これだ。淡くブルーにキラキラと輝いているこれは確かに、むっちーだわ、むっちーのイメージカラーだったんだね。
わかる……。
「筆でこの輝きを再現できるかな?」
武者震いするヨルはとりあえず水彩絵の具を手に取った。
良い感じのテクスチャがばばばって貼れたら。生まれ変わったらペンタブレットのヨルになればよかった、と思いながら。
なお、別にペンタブレットを買ったからといって画力が上がるわけではない。
美少女の気配だ!
色めき立つヨルではあったが。
「ミッション……開始」
ぼきり。
『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)の機械パーツを見てまた一人筆が折れた音がした。クールな銀髪美少女と合わさったメカメカしい装甲は世界の3大性癖である。古事記にもそう書いてある。キャタピラーは、当然キャラクターの魅力であり、描かずには……何とかバストアップでご勘弁願えないだろうか……。
オニキスは任務に忠実だった。
ともかく、マジ卍祭りを妨害するヨルを倒す。守らなくては、マジ卍祭りを。主に食べ物の屋台を。
異世界からの侵略者と戦うために作られたロボ魔法少女であるオニキスの頭にあるのは食べ物のことだった。
こんなところで立ち止まっている場合ではない。
石膏タイルを装甲としてまとい、作画コストは飛躍的に重くなっていく。
設定資料集をよこせ。
「えい」
メイメイの腕から、にゃあ、と猫が零れ落ちる。
動物!!! 小物!!!
被毛のカラーリングが複雑な縞三毛猫。無限大の可愛さと、決して可愛くはない作画コスト。
「どう、ですか?」
ごろごろすりすりと足へ寄る猫を、メイメイは肩に乗せる。
絵になる。すごく絵になる。
しかし夜に猫さんがじっとしているわけもなく。
「にゃにゃにゃにゃああ」
まだ乾いてない絵の上を歩いていく!
メイメイは猫じゃらしをふりふりしている。
「ふむ」
『泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)の周りをぐるぐるとヨルが回っている。泥色の大きな三角帽子にドレッドヘアー。ボロボロのローブ。色彩……。ううん、渋い。もちろん、……大好きだ。
「ならば俺は、こうだ」
しかし、マッダラーが取り出したのは、泥人形のギターライフル……アコースティックギターであった。
アコースティックギター!? 弦の数は何本だ!? 何体かが描こうとしたそれはバイオリンである。
軽く音をとって。それから奏でだしたのは、イベリア半島のラテンのテーマ、フラメンコ!
「なに、移動しながらの演奏なんぞ些細な問題よ。吟遊詩人を嘗めてもらっては困る」
マッダラーは巧みな演奏技術で、ノリノリの音楽を奏でてゆく。
手首は慌ててどうぞ、どうぞと椅子を持ってくるが、マッダラーはそれをひょいと飛び越えて、高らかにギターをかきならす。
「情熱的な演奏だ、筆は乗ったか? 乗るわけなかろう」
じゃんと決めれば、ボルカノがステージへと躍り出る。
「この選ばれし作画高い族の8人にお任せあれ! であるな!」
ボルカノは着てきた服を脱ぎ捨てて、ぐるんぐるんと踊り始める。
ああっ、レースせっかく描いたのに!
「今こそ我輩達の連携攻撃の出番! 即興ダンスパーリーの時間であるな!」
ぱあん、とボルカノのしっぽが床をはたいた。戦鬼暴風陣によるブレイクダンスがあたりを一薙ぎした。
「マッダラーが演奏して、ボルカノが踊ってる。なら俺はバックダンサーだ!」
ばさりと上着を脱ぎ棄てたカイトは、鷹の獣人姿になる。
え!?
8割がた描き上げていたヨルにびしりとひびが入った。翼と尾羽根の鷹斑。腕や脚は本格的な鳥足である。でもなー! かっこいいんだよなーこれが!
「メタい? 知らんがな。緋色の鳥は意識の世界を飛ぶもんだ」
まーた鳥さんが収容違反を起こしている。自由だし。
羽ばたけばキラキラ舞い落ちる金粉。これが夜の美術室じゃなかったら……飛行種の新しいオシャレとして海洋王国を席巻しただろう。
「おい石膏腕。俺のギターライフルはそんな形じゃない」
よく見ろ、と、一瞬見せてくれるマッダラー。
楽器の構造なんにもわからん。途中まで描いたものの、納期を諦めてもう半泣きで手拍子するものまででてきた。
マッダラーが渋くてかっこいいことだけわかった。もうそれでいいじゃないか……。
「作画コストとか考えてるんじゃねえ! である! 今はイレギュラーズが踊る時間なのであるよ!」
不意に、ポーズを決めて、ぎらぎらと不敵に笑うボルカノ。流し目から醸し出される、シリアスな雰囲気。ボルカニックブレードを突き付ける。
(決まった……!)
その瞬間はほんとにもう、普段はぽやぽやしているボルカノが一瞬だけ、確かに竜人で、ギャップがすごい。
(普段できない、かっこいい我輩ポーズとかしちゃうもんねー!)
そして、銃剣はえぐい。
ボルカノは、詛を込めた生命力を手に宿してスケッチブックを切り裂いた。ちょっともったいないなあとは思いながら。
「芸術に勤しむのは結構なことだ。が、それで誰かを傷つけるなんて真似はあまりにも悪趣味だ」
ふ、と帽子をかぶりなおすマッダラーは、芸術を愛する人物で。きっと、下手でも、無害だったなら褒めてくれたのだろう……。
ば、馬鹿な、今まで描いていた赤銅色肌の美少女は!?
ばーんと、ヨルの目の前のエクスマリアが消える。そこに立っていたのは校長であった。ご安心あれ、練達上位式を操ってパンフレットから見せた幻影だ。
「綺麗に描き上げて欲しい、気もしないでは、ない、が。コレも仕事、だ」
その隙に、上へと飛んだエクスマリアの髪は球体を形作っていた。
球体へと変化した黄金の髪。その球体の中では、無数の髪が蠢き――ぱちぱち、と電気を帯びる。
そして、ぶわりと、髪の毛が翼に姿を変える。
神々しい……。
「ふふふ、さあ、描いてごらんよ!」
ウェーブのかかった髪はそれだけでも面倒なものなのであるが、ムスティスラーフの髪の毛はふわふわとやはり見えない手で漂う。
しゃららららーん!
ここで、CM。
「お髭もフワフワダイナミックに!」
「手入れは……欠かせない……」
エクスマリア・ムッチー(TM)は好評発売中です。
完璧に理解した状態になったところでオニキスのメカ部分がガチャガチャと変形していく。そして光り始める。
動く! 光る! 音が鳴る!
(……音は関係ないか)
まあ、魔法少女とはそういうものだ。
半端な攻撃をしてしまったがために、作っておいた装甲がはがれてまた構造がかわる。
展開する装甲がミサイルの発射を準備する。描きかけのスケッチは仕様とともに連続で爆破されていくのであった。
●それぞれのコスト
「んー、しにゃこ、人気ですねぇ」
缶バッヂがあるけど、あるけど複雑な機械とか人外よりは……! さかさか腕を動かしていたヨルだが、しにゃこはすっとボルカノの横で踊ってみる。
「かわいさの種類が違いますよね? どうします?」
「今こそ我輩達の連携攻撃の出番! 即興ダンスパーリーの時間であるな!」
「写真か……フ」
「俺も俺も!」
「てへっ」
ぎゅうぎゅうと詰まる作画コスト。
絵柄が! 絵柄が!
「しにゃはもう少し瞳が大きくてかわいいと思うんですけど!?」
頷きながら消しゴムをかけるヨルであった。
「缶バッジの数足りなくないです!? 髪ツヤはもっと綺麗!」
びしびしと指摘を重ねるしにゃこ。
「あとその髪飾り左右逆だと思うんですけど!?」
必死にペンを動かすヨルを、メイメイが覗き込んでいる。お絵かきしているところを見られると、ちょっと照れちゃうよね。
「なんか……ゆがんで、ませんか……?」
不殺属性のついた威嚇術は即死の威力を持っていた。
「にゃあ」
「……」
メイメイの猫を見たエクスマリアは今度は猫耳っぽいヘアアレンジをしてみた。
「……にゃー」
ちょっと乗ってみたメイメイであった。
「描画が攻撃になる、とは、摩訶不思議、だが。攻め手がわかりやすいのは、助かる、な」
「ほっ!」
ムスティスラーフは飛び上がる。アオリやフカンも自由自在。
(皺のある顔や身体は普通の人に比べると描く線が増えて大変!)
老若男女描くのって本当に大変だものね。
「見えないおしゃれなんだけど、防具のビキニアーマー、これ実はチェインメイルなんだ」
絶望。
ゲッダン。そのままの勢いで、ムスティスラーフはどこぞのMAD動画のような異様な動きを見せる。
「よしっ、『大むっち砲』で纏めて攻撃! ……と行きたいところだけど学祭向けの大道具とかが壊れたら悲しむ子が出ちゃうよね……」
「大丈夫だぜ! 保護結界があるからな!」
「やった!」
カイトが親指を立てると、むっちアートがあたりを埋め尽くした。
学園には優しい鳥さんであった。
「むっちりした体格、描くの大変だった? それじゃあ」
むっちーの体がぼぼんと縮む。シェイプシフトが決まった。アスペクト比が与えるダメージは尋常ではない。
「ほーら、がりっがりの骨みたいになった! 描き直しだね!」
居残り授業の風景のようだ。
よし、ようやく完成だ……。
ヨルが息をつこうとしたとき、カイトの体が再び変化する。
「っと、これで終わりじゃないぞ?」
変化Ⅱ。2回も変身していいのは魔王までだろ。
全長0.9m程度の緋色の鷹。ヨルは呆然としている。
イーグルマントをはためかせ、きらきらと羽が舞い……。翼……。大きな槍を構えている。しかもすごく波打っている。
「俺を描き上げられるようなベテランはそうそういないだろうな! 此処にいるような低レベルな奴らじゃ無理無理!」
斬神空波で飛び回り、緋刃六羽で切り刻む。羽根が舞い散り、きらきらとした金粉があたりを包んでいる。
「俺を絵の中の鳥かごに捉えようなんて100年は早いぜ! せーの!」
「合体! オシャンティ・アグレッシブ・ボルカニックモード!」
「オン俺!」
かっこいいポーズを決める。
どーん。作画コストに、一体のヨルが耐えられなかった。
「わあ、すごい! かっこいい!」
ボルカノのほっぺにムスティスラーフがちゅー。
「む、むはは! 照れるのである!」
「そう我らこそ英雄。世界を守るローレット、そして英雄は色を好むという」
マッダラーのギターが、やたらしっとりした曲調となる。
「その雄姿は俺が叙事詩として語り継ごう」
残ったヨルの動きがピタリと止まった。
だが、2体が。
ガリガリガリガリガリガリ!
ものすごい筆が早くなった。
「ん? なんだ?」
「まずいっ、やっちゃった!? ……あれ?」
なにやら同士討ちが始まっている。右か左かでもめているようだ。
「……今、です!」
今か?
「わかった!」
メイメイの言葉に合わせて、全員が集合する。
エメスドライブが刹那の疑似生命を? 猫もいるのに、これ以上増やされるなんて――!
「そっか、わかったよ、これは……!」
ムスティスラーフに、メイメイは頷く。
(メイン人物以外にエフェクト込みの召喚物を描くのは相当難しい……です)
マッダラーの演奏が佳境に入る。
エクスマリアの雷撃がばちばちと旋風を巻き起こしていた。むっち砲が妖しく輝いた。
「一斉射撃っ!」
しにゃこが牽制でスケッチブックをなぎ倒しているうちに、オニキスの体が明滅する。がしゃんがしゃんと脚部が変形し、姿勢固定用のアンカーが打ち出された。
『接地アンカー射出。砲撃形態に移行。
砲身展開。バレル固定。
超高圧縮魔力弾装填。8.8cm大口径魔力砲マジカル☆アハトアハト、発射(フォイア)』
「「「フォイアーーーー!!!!」」」
しゅううううううーーーーと排熱が思いっきりあたりを包み込んだ。
「ぬはははっは! おとといくるのである!」
そうして、しんとなった夜の美術室で、マッダラーはそっとスケッチブックの欠片を拾ってやった。
「在り方が歪だよお前たちは。俺が言えた義理じゃあないかもしれないがな」
そっと、机の上に置いてやった。
「……絵を描くことに、追い込まれてしまったのは、可哀そうではあります、ね」
「んー、準備した小物片付けるの面倒ですね……」
「間違っても散らかったままはだめであるよ!」
「あ、エフェクト」
まだいろんなエフェクトが滞留している。
(これでまた日常が始まるのであるな! ぶい!)
「さて、学園祭の準備に、戻りましょう、か……。夜食も用意して、朝までがんばりましょう、ね」
「にゃあ」
「綿菓子…たこ焼き……焼きそば……」
●もういくつ寝ると学園祭!
「え、なにこれー!? 誰か葉っぱ塗ってくれた!? いいじゃんこの緑!」
進んでる!
「遅くまで残って準備してたんでしょ?」
こくこくと頷くエクスマリア。
頑張ったのだと髪で主張する。猫耳になったり、ドラゴンっぽくなったり、戦いの様子をささやかに伝える。
祭りといえば屋台。屋台がなくては祭りの魅力が半減するといっても過言ではない。
なので、頑張って手伝うオニキスであった。色んな屋台を食べつくす予定である。
「じゃ、これお願いします」
カイトがしにゃこから飾りを受け取り、脚立に登る。
「高い所の飾り付けは任せろ!」
「すごい、ほんとに飛んでるみたい!」
……実際、飛んでるんだけど(ちょっと浮いてるし)。
「この絵は此処に飾ればいいんだな!」
ヨルに襲われるのはごめんではあるが、描いてもらえるのは嬉しいものだもの。かっこいい鳥のイラストを目立つところに置いてみたりして。
「ちょっとそこ看板の場所!」
「ばれたっ」
「学園祭、楽しみだねー」
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
夜の美術室の恐ろしい怪異は爆散しました。
ヨルになって好き放題やるのがとても楽しかった回でした。
気が向いたらまた作画コストで殴ってくださいね!!!
GMコメント
禁断の呪文:どうして右向きの顔ばっかりなんですか?
絵は得意じゃないんですが(※ほんとに上手でもなんでもない)、テレピン油の匂い、結構好きです。
●目標
・美術室のヨルの討伐
●状況
学祭の出し物の準備シーズン。
居残りしていた生徒が美術室でヨルに襲われる事件が起こっています。
しっかり退治して、準備に戻りましょう!
●登場
石膏の腕×10
10本の石膏の腕です。
今までのところ、生徒たちは全て軽傷。そんなにシリアスな事件にはなってないということですね。
それぞれがキャンバスやスケッチブックなどの画材を持ち、イレギュラーズたちをスケッチしようとします。
意思疎通などはできませんが……。クスクスとした笑い声が響き渡ります。
スケッチが出来上がると、スケッチは発光して消え失せ、ダメージを受けます。
基本的に、作画コストの低い(シンプルな服を着込んだ、静止している、あるいは簡単なポーズの)PCを狙います。強さは画力に比例し、弱いものと強いものがいるようです。強いものは難しいものを描こうとするかもしれませんが。
作画コストが大きければ大きいほどスケッチを描く速度はゆっくりになり、また、完全なスケッチにはならないので、ダメージを押さえられるでしょう。
混みいったアイテム。かっこいいポーズ。ひらひらのレース。ゲーミング発光。鎧、途中での衣装変更、仕様変更などに弱いです。
●更衣室
下準備が必要であれば着替えていきましょう。
今は学祭の準備シーズンで、小道具もそれなりにそろっています。
●美術室
よくある学校の美術室です。イーゼルや石膏像など。今は学祭向けの大道具などもあります。
夜頃に美術室に入ると現れます。
●その後
ヨルを倒したら出し物の準備に戻りましょう!
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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