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シナリオ詳細

MOTEL COBALT SKY 203

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●何の変哲もない、いつもの取引
 荒野の中の道沿いに、ぽつんと寂れたモーテルが建っている。
 今しがたその前に停車した車は明かな異音を立てていたが、持ち主の男はさして気にした様子もなく緩慢な動作で降車した。
 伸びっぱなしの黒髪にボロボロのコート。死んだ魚のような目をした猫背気味の中年だ。
 廃車寸前の相棒と並べてみても納得のいく風貌だが、トランクから引っ張り出したアタッシュケースは彼の他の持ち物とは浮くほど立派な物で――暗に"真の所有者"が別である事を示していた。

 このくたびれた男の名はダニング・ウッドワード。マフィア『フランコファミリー』のNo.7だ。
 正直なところ、ダニングに昇進欲はない。
 友人らがストリートギャングになった流れで巻き込まれるように組織に属し、気づけばこの地位に居たというだけだ。
 入るきっかけは成り行きだったが、彼は今の立場に満足している。
 フランコファミリーは代替わりを繰り返しながら、半世紀ほどの間、地元の街を他のマフィアから守り続けてきた。
 何よりボスのコルネリオ・フランコは、ダニングを息子のように可愛がってくれたし、よき理解者でもある。
「お前はもっと上に上がれる。優秀だというのに、わざと今くらいの地位になるよう手柄を調整してるんだろう?」
 後にも先にも、それを見透かしたのはボスだけになるんじゃないかと思っている。

 チェックインを済ませ、モーテルの2階にあがる。宛がわれた部屋にダニングが入ると、耳に入ってきたのは男女が愛を啄み合う音だった。

「宿泊料金がやったら安いと思ったら、壁が薄い訳か。まったく……呑気なもんだぜ」

 すぐ隣の部屋でマフィアの裏取引が行われる事など、彼らは気づきもしないだろう。ダニングは胸ポケットからペンライトを取り出し、窓に向かってチカチカと光らせはじめた。取引相手に向けた暗号だ。

 組織は今、跡目争いの火種を燻らせている。No.1とNo.2の仲は傍から見ても上手くいっているとは思えない。
 ボスもそれを憂いているのか、こうして隠密の仕事を2人ではなくダニングに任せたという訳だ。よくある"中身の分からないアタッシュケース"の引き渡し。今宵待ち合わせる取引先は、ロベリアの花の紋を背負う何でも屋。両足を戒めた女だという。

(戒めた……ってそれ、待ち合わせ場所まで本当に来れるのか?)

 車椅子でも使うのだろうか。モーテルの2階までの道のりは階段一つのみ。エレベーターはおろかスロープの類も無かったはずだ。
 そんな事を考えていると、ドアをノックする音が部屋に響いた。念のため姿の確認をと覗き穴を覗き込み――慌てて扉から離れる。
 ほぼ同時に大きく凹む扉。隣の部屋から聞こえた悲鳴もすぐに銃声でかき消された。何者かは知らないが本来の取引先ではないのは確かだ。

「まったく、冗談じゃないぜ……ッ!!」

●面倒事は"あなた達"のもの
「まったく、冗談じゃありませんわ」

 明らかに利用客ではないスーツの男達がモーテルを取り囲む様を遠巻きに見て、ロベリアは肩を落とした。
 こういう事になると踏んで、あらかじめ特異運命座標を呼んでいたのは正解だったが……男達の話を聞くに、自体はややこしい方へと転がっているようだ。
 ダニングを今まさに玄関で襲撃しているのは組織のNo.2、ジーノ・タランティオの配下達。
 一方で今、ロベリア達の眼前にいる――出遅れた男達はNo.1、ティモン・ウルバッキオの配下達。

 どちらも今回の取引の情報を入手し、相手を出し抜こうと襲撃に来たというわけだ。

「依頼内容はアタッシュケースとダニングの奪取。できるわね?」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 モーテルって泊まってみたいけど未だに泊まった事がないんですよね。

●目的
 アタッシュケースの奪取
 ダニングの生還

●場所
 モーテル『コバルトスカイ』
 荒野にぽつんと佇む寂れたモーテル。元々は青いペンキで壁が塗られていたようですが、現在は剥げたり色あせたりで見る影もない状態です。
 今夜の店員は若いボーイ1人のみ。部屋は2階建てで、ひとつの階につき6部屋ほど客室があります。

●敵
 ティモンの配下×10
『フランコファミリー』のNo.1、ティモン・ウルバッキオの配下です。銃や拳で戦います。基本的には喧嘩殺法です。
 ジーノの配下よりも少し遅れて到着したため焦っています。モールの外でダニングが飛び降りてくるんを待っているとか。

 ジーノの配下×10
『フランコファミリー』のNo.2、ジーノ・タランティオの配下です。こちらも同じく銃を所持。いざとなれば拳でも戦います。
 モーテルの2階を占拠しようと廊下に集まり、各部屋をまわっています。 

●その他登場人物
ダニング・ウッドワード
『フランコファミリー』のNo.7。身なりの冴えない男ですが、ボスであるコルネリオ・フランコからの信頼を得ています。
 戦闘力は並。お気に入りの煙草のフレーバーで常に林檎の香りを漂わせています。チェックインしたのはホテルの203号室のようです。

ロベリア・カーネイジ
 今回、特異運命座標たちに依頼をおろした境界案内人。足を戒めた妖しい黒衣の女性です。今宵、ボスのコルネリオ・フランコの使者からアタッシュケースを受け取る予定でした。

『フランコファミリー』について
 オープニングで語られた通り、とある街を長く裏で支え続けてきたマフィア組織です。ボスであるコルネリオ・フランコが年老いてきた今、跡目争いの火種が燻っています。

●最後に
 目的を満たせるなら、配下どちらかを味方につけても構いませんし、全て武力で解決するのもOKです。方向性は仲間うちである程度話し合った方がスムーズに動けると思います。

 それでは、よい旅路を!

  • MOTEL COBALT SKY 203完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月16日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に

リプレイ


「こんなところに巻き込みやがって! まったく、冗談にもならないぜ!」
「カッカッカ! そう言いながら律儀に来るあたり、世界の旦那は優しいな」
 叫ぶ『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)と、彼を労う『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)。最早腐れ縁となった二人が現場に到着するとーーそこは禍々しい殺気に満ちていた。
「状況は把握したわ、しくじったわねロベリア。
 鼠の駆除は早めに、は鉄則よ?」
「えぇ、勿論。だから貴方達を呼んだのではなくて?」
 揶揄い混じりの笑顔の『アルラ・テッラの魔女』エト・ケトラ(p3p000814)と、静かな笑みで応じる『境界案内人』ロベリア・カーネイジ。一見穏やかなやり取りに見えるその裏で、龍と虎のオーラが噛み付きあっている。
 そんな二人の冷戦から一歩引いた場所に、ほわほわ柔和な笑みを浮かべる『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)の姿があった。
 癒しすら覚える佇まいに世界とボーンは安堵の息をついた。ーーしかし。

「はっ……良いですね良いですね、昔取った杵柄って感じの仕事ですよ」
「「……はい?」」
「行儀よく並べ、順番に神の愛が満ちた良い所に送ってやります」

 あまりのギャップに硬直する男衆。その横をすいっとエトが横切り、ライの隣に並び立つ。
「それで、どれか味方につけるつもりかしら」
「は? 説得するのにどれだけ時間がかかると思ってるんです?銃を向けて引き金を引けば一瞬で終わるというのに」
「……奇遇ね。私も概ね同意だわ」
「それじゃいっちょ――」
「悪党共に血の華を咲かせましょう!」


「変な気を起こすなよ。外にはダニングの犬が尻尾を振って待っている。奴らには血も涙もないが、俺達には慈悲がある。……そいつを寄越しな」
「嫌だと言ったら?」
 203号室の入り口を封鎖し、我が物顔で部屋へ踏み入るジーノの配下。窮地に立たされたダニングは、アタッシュケースを抱えたまま窓際へ後ずさろうとするがーー逃げるなとばかりに一発、ガゥン! と音を立てて足元を打ち抜かれてしまう。
「――ッ!」
「もう一度チャンスをやろう。みっつ数えるまでにブツを渡せ」
 ひとつ――と男が唇を動かした時だった。悲鳴じみた声が幾重にも重なり外から響き、爆発音と共にモーテル全体が揺れる。何事だとダニングは窓の向こうに視線を投げ、眼下の光景に絶句した。

 生者に群がる亡者の手、手、手。恐怖と共に埋もれていくティモンの配下達の横を、悠々とボーンが歩いている。
「カッカッカッ! 恐怖に震えて泣きな!」
「ひいぃ! ばっ、化け物!!」
「マフィアは死を恐れない誇り高い男なんだろ? 志がねぇなら、悪いことは言わねェ……そこで大人しくしてな」
 ふと、ボーンが見上げると窓越しにダニングと目が合った。ヒラヒラ手を振り、魔王の凄みを見せた時とは真逆な陽気さを覗かせる。
「ダニングの旦那! 助けに来たぜぇ!」
「いや、アンタどう見ても白馬の王子様ってクチじゃないだろ?」
「それでも俺は敵じゃねェぜ! アンタの取引相手のしがない代理骨って所さ!」


 さて、入り口でボーンが派手に暴れてまわったのは、これ以上モーテルに誰も近づかないための牽制だが――加えて囮の意味も持つ。魔王の登場で目をひきながら、その裏でモーテル内部に侵入する影がみっつ。
「撃て撃てーっ!」
「危ねっ!」
 ロビーは早くも乱闘でボロボロだ。弾丸の雨から逃れようと世界がカウンターに滑り込むと、そこには縮こまって震えるボーイの姿があった。
「何なんだアンタら! うちの店に何の恨みがあるっていうんだ!?」
「恨みは無いし、同情もしてやる」
「あ? モーテルのボーイですか?」
 世界とボーイが隠れているカウンターの上へ、ライが軽やかに降り立つ。的になるリスクをものともせず立つ姿は、清楚な見た目と相まって可憐ではあるが……手元の魔銃は恐ろしくゴツい。
「わらわらと大勢居ますねぇ……。ジーノの配下かティモンの配下かは分かりませんが、まあいいです」
"慈悲"の名を冠したそれにマギ・インスティンクトの魔力を込め、引き金を引く瞬間――彼女の清らかな笑みに心奪われるマフィア達。彼らの意識が浮ついた瞬間、ガガガガッ!! と容赦の欠片無く、ライの相棒が火を噴いた。マジックミサイルがぶち込まれ、塵も残さずせん滅していく。眼前の敵を倒し切れば、次は壁の方へと狙いを定め。

「鴨の個体差なんて見分け付かないんですよ私」

 ドッッ!! とモーテルの壁ごとえぐり取るように、エネミーサーチで探り当てた獲物を穿つ。紙束のように吹き飛んでいく仲間の命に戦慄が走り、ジーノの配下とティモンの配下が視線を交える。
「おい兄弟、ここは一時休戦といかねぇか?」
「ヘッ。精々足を引っ張るなよ!」
 息を合わせて放たれた銃撃はーーしかし。ライに命中したと思った瞬間、あっという魔に癒しの力で治された。
「なっ!? 今のは確かに、命中したはず……!」
 首の後ろを押さえてコキリと音を鳴らすライ。その隣に現れるは、数百年の刻を生きる魔性。

「御機嫌よう、幸運の7を背負う紳士の貴方に有象無象の貴方達!」

 エトが不敵な笑みと共に手をかざせば、マフィア達の足元にたちまち聖なる光が輝き、膨れ上がる。
「ま、待ってくれ……悪かっーー」
「命は平等よ、そして死の誘いもまたね」
 死神だろうと天使だろうと、その誘惑には逆らえない。再びモーテルを揺るがす爆発が起こり、パラパラと埃が天井から落ちた。
「ボーイの貴方は、死にたくないならわたくしの傍にいなさい」
「はひぃっ!」
「連れて行くんです? 賢ければどこかで小さくなって隠れているでしょう。そうでないなら仕方ありませんが」

 二階への道を阻む敵は最早ない。問題は階段を上がった後の立ち回りだ。無関係の人間を守り通す覚悟のエトと、目的のためなら他はどうでもいいライ。そして世界は――かなり"キ"ていた。


 ダニングの借りた部屋の隣。
 若い男女は、今宵を最後の逢瀬にしようと決めていた。二人がいくら愛し合っても、社会が許さないからだ。
「撃つなら私を撃ちなさい!」
「何を言ってるんだ、姉さん!」
「ククッ、美しい姉弟愛じゃねぇか。望み通り、仲良くあの世へ送ってやるよ!」
 204号室に銃声がひとつ響き渡る。倒れたのは姉でも弟でもなく、侵入していたジーノの配下。どうと男が倒れた後、特異運命座標たちが部屋へと雪崩れ込む。
「貴方達はいったい……?」
「そんな事、今はどうでもいいでしょう。運動が捗ってるところ悪いけれど、逃げる準備をなさい」
 急かされ服を着る暇がないと慌てる姉弟へ、エトは凛として言い放つ。
「命より社会性が惜しいなら止めはしないけれど、二度と愛を交わせないかも知れないわよ!」
 彼女の助言に姉弟は面食らった後、互いを守り合いながら逃げ出した。捨てかけの愛をもう一度確かめようと、握り合う手は固く強く――。

 204号室の占拠後、ライが壁に撃ったマジックミサイルは、見事ダニングのいる203号室への入り口を作り出したのだった。
「これでいいんですか?」
「ああ。力こそパワー、大した作戦も無しに片っ端から薙ぎ払っていくことのなんと素晴らしい事か!」
「要するにやけくそね」
「いや別に自棄になってないぞ? どこぞの境界案内人様の所為でマフィアの抗争に巻き込まれたぜこんちくしょーとか思ってません、はい」
 ライとエトに図星を突かれて乾いた笑みを浮かべる世界。ふと視線を逸らした先では、ダニングが此方へ殴りかかろうとアタッシュケースを持ち上げているところで。
「……あ、馬鹿! 俺達は味方だ!」
「外の代理骨とやらの仲間か?」
「どこの馬の骨か知らねえが、邪魔をすると痛い目に……いでえぇぇ!?」
 助太刀を阻止しようとジーノの配下が踏み出すと、足が紐のような何かに引っかかり――次の瞬間、部屋のベッドがどすーん! と派手に降ってきた。訳も分からぬまま下敷きになり、悲鳴をあげる敵勢を見て、ライはヒュウと口笛を吹いた。
「精霊操作? 器用なものですね」
「それだけじゃない。陣地構築と罠設置でちょちょいと作ったスペシャルトラップだ」
 罠からはい出しかけたジーノの配下の元へ、ふわふわと光が集まっていく。
「ちなみに今日の俺はサービス精神旺盛だからな。こんな芸当も披露してやろう」
「……!? ……待っ、……!!」
「さて、改めて礼儀よくいこうか。こんばんは野郎共。今日はいい天気ですねさようなら!!」
 精霊爆弾が生き残りを見事に爆発で沈め――マフィアはダニングを除いて全滅。モーテルに再び平和が訪れたのであった。

「ところで、そのアタッシュケース……中身は何なんだ?」
 重労働の正当な報酬として、見る権利はある筈だと世界が主張すると、ダニングは少し迷った後、ケースの錠を外してみた。
「空っぽかしら? いや……何かあるわね」
 クッションの隅に挟まっていた手紙をエトが開いて読み上げる。

『ダニング、君に断りもなく新居を用意した事を許して欲しい。息子のように大切だからこそ、世継ぎ争いで狙われ始めた君を全うな世界に逃したかった。行き先は取引先の彼女が知っている。――どうか元気で』

「……だそうよ、ダニング」
「……」
「貴方の物語は、何処に向かおうとこれからも続くでしょうね」
「だとしても、俺はーー」


「――そう。ダニングはファミリーに戻る覚悟を決めたの」
 報告ありがとう、と一言添えて、ロベリアは通話を切る。足元に転がるジーノの死体に目もくれず、彼女は真っ直ぐボーンの方へと歩み寄った。
「お疲れ様。いい手際だったわ」
「カッカッカ! どうよロベリアちゃん。惚れ直してもいいんだぜ?」
「ふふっ。貴方は何度、私の心臓を壊す気かしら?
ーーいいわ、甘い時間を過ごしましょう。"未来のボス"へ沢山恩を売れたもの」

成否

成功

状態異常

なし

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