PandoraPartyProject

シナリオ詳細

軍国の亡霊、もしくは、エンドレスマーチ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ヴィーザルに風は吹くなり
 鉄帝東北部に広がるヴィーザル地方にはあまたの少数部族があり、生きづらい環境であるからこそに各個の独自性が保たれていたが、そんな部族をいくつも吸収し拡大していったゼシュテル鉄帝国に抵抗する部族も当然現れた。
 戦闘民族ノルダイン、高地部族ハイエスタ、獣人族シルヴァンス。
 彼らはノーザンキングス連合王国と名乗って鉄帝へ抵抗を始めたのである。
 鉄帝軍は幻想との『北部戦線』を維持するため、ショッケンをはじめとする将校たちの相次ぐ喪失による首都圏混乱の処理のため、さらには大きな損害をうけた鉄帝海軍の回復のため、必然的にこの『美味しくない大地』へのリソースは減少していた。
 だから、だろうか。
 ヴィーザルの東に位置する小部族『鳳圏』が、にわかに動きを見せ始めたのは。

 茶褐色の軍服に、そろいのライフル。
 軍帽で深く顔を隠した兵隊が、一糸乱れぬ行進を続けている。
 楽団などどこにもないにも関わらず、彼らは金管による行軍歌に包まれていた。
 どこへ向かうやもわからぬ、雪を踏む軍靴の足音。
 軍を率いる指揮官らしき兵隊の一人が腰にさげた軍刀をとんと叩いたことで、しかしその軍靴は止まった。
「なんや、なんやぁ? そろいもそろってピクニックかいな。どこいくん、ジブン」
 雪をどっしりと踏み、白鞘の柄頭を柔らかく撫でる男が……軍隊の前に立っていた。
 その後ろから、ゆらりと姿を見せる小柄な女性。こちらは黒い鞘の刀をゆるく握り、馬上の指揮官へと目を向ける。
「地獄以外のどこへ行けるというんです。あんな馬で」
 あんな馬呼ばわりも、無理からぬ。
 なぜなら指揮官のまたがる馬には、首から上がなかったのだから。
 抜刀する指揮官。
 ライフルを一斉に構える兵隊たち。
 男と女は――否、鳳圏憲兵隊陸軍久慈峰 弥彦中将及び久慈峰 はづみ少佐は全く同時に姿勢を落とし、弥彦が笑うあまりに歯を見せたその瞬間にはづみの姿がかき消えた。
 一斉乱発。ライフルによるバースト射撃が幾度も繰り返され、雪の地面が滅茶苦茶にえぐれていく。
 しかし弥彦は腕が見えなくなるほど高速で刀を振り弾丸を弾き、一方のはづみは兵隊たちの間を風のように駆け抜けては大きなカーブを土に刻んで弥彦の後ろへと帰ってきた。
 パパパンと音をたて、兵隊たちの首が次々に跳ね飛ばされていく。
「おお、ええぞええぞ。高得点や」
「遊ばないでください、中将」
 弥彦を未だ盾にしながらちらりと兵隊をのぞきみるはづみ。
 何にも期待していないような黒くつぶらな目が、一瞬だけ大きく見開いた。
「中将」
 兵隊達の射撃はやまない。
 衰えもしない。
 なぜなら、首をなくした兵隊は未だにこちらを打ち続けているのだから。
「こらオモロくないことになったわ。しゃーない……」
 弥彦は懐からスモークグレネードを取り出すと、それを兵隊たちめがけて放り投げた。

●エンドレスマーチ
「お、きみがエータツくんか。えらいガッシリしとるのお! ええ飯食うとる証拠や! ケッコーケッコー!」
 鉄帝のはずれにある飯屋の一角にて、弥彦はテーブルの横で敬礼したまま直立する加賀・栄龍(p3p007422)の足や腕をぽんぽんと叩いて笑った。
 触れ方から察するに、初対面のつもりなのだろう。栄龍にとっては背筋が凍るほどに覚えのある相手なの、だが。
「中将」
「おーすまんすまん。けどウワサの青年、気になるやろ?」
 横に座って手帳を開いているはづみを肘でこづくも、はづみは無言で弥彦の顔をにらんだ。
「す、すまんて」
 弥彦は両手をあげ、あらためて栄龍に向かいのテーブルへ座るように言った。
 骨身にたたき込まれた礼儀作法。栄龍は『は!』と短く大きく応えると、素早く座って背筋を伸ばした。
「なんやエータツくんもっとリラックスせえや。今は鳳圏陸軍とかカンケーあらへんで?」
「し、しかし……」
 いつまでも固くなったままの弥彦を前に、弥彦はテーブルに肘を突いてにやりと笑った。
「今は、ボクは依頼人。きみはギルド・ローレットのメンバーや。せやろ? ほら、お仲間もきよったで」
 親指でくいくいと指し示せば、確かにローレット・イレギュラーズたちが集まっていた。
 弥彦はメニューブックをテーブルの端から引っこ抜くと、それを開いて彼らへと突き出す。
「ほれ、好きなモン食い。ボクのおごりや」
 爽やかになつっこく、弥彦は笑った。

 食事をしながら語られたのは、ヴィーザル地方に出没する奇妙なモンスターたちの討伐依頼であった。
 彼らは不明な方法で軍歌を放送しながら雪道を歩き続けているという。
「それを、お――我々が、討伐すればよろしいのでしょうか」
 いまだ食事が喉を通らない栄龍に、はづみが『はい』と無感情に返した。
「人間に酷似した形状と武装をしており、小隊規模で統率のとられた移動を行っています。
 人間を前にすれば警告なしに発砲することから察するに、雪国に引きこもって暮らす小部族に遭遇した際の被害は明らかでしょう。誰もがノーザンキングスではないのです」
「たしかに……」
 ヴィーザル地方はアクの強さからノーザンキングス連合王国が目立ちがちだが、その他小部族はいくつも存在し彼らは畑や家畜を育てて静かに人生を送っている。そこへ銃を持った集団が攻撃を行えば、きっと恐ろしい事態がおきるだろう。
「ま、ボクらなりのジゼンジギョーってやつやな。やってくれるやろ? ……加賀栄龍くん」
「は、はい!」
 栄龍は思わず立ち上がり、素早く敬礼をした。
「『祖国のために』!」

GMコメント

■オーダー:『亡霊小隊』の討伐
 ヴィーザル地方の東。雪深いエリアに出没する『亡霊小隊』を倒します。
 事前のファミリアー偵察によって足取りをつかんでいるので捜索プレイングは必要ありません。
 馬や馬車で襲撃をかけ、この『亡霊小隊』を全滅させてください。

・亡霊小隊
 小隊規模で統率がとられている人型実体の集団。
 全員がライフルによって武装しており、首無し馬にまたがった指揮官が指示を下していると思われます。
 事前の接触による調査から首をはねる、腕をもぐ、心臓をえぐり取るといった破壊を行っても停止することがなく、微量ではあるが再生能力を有するとみられています。
 非常に高いEXFと『再生』を持っていると予測されています。

 いかに初撃を仕掛けるかも重要になってきますので、馬や馬車などを用いて襲撃をしかけましょう。
 うまくすれば先制攻撃によってなにかしらの有利をえることも可能かもしれません。

●フィールドデータ
 ヴィーザル地方にある雪深い土地。
 亡霊小隊は森の中に入っており、戦闘も森の中で行うことになるでしょう。
 地面はやや雪が積もっていますが、足場ペナルティ等は発生しないものとします。

■オマケの解説
・鳳圏
 ヴィーザル地方の東に位置する『国』。ノーザンキングスやアドラステイア同様国家を名乗っているが列強諸国からはそれを認められていない。
 ノーザンキングス同様支配するには痩せた土地であり制圧に要するコストの問題からかなり放置されているとみられている。
 軍国主義国家で普天斑鳩鳳王を主とした軍主導の政治が行われている……はずだが、つい最近になって中枢部への立ち入りが禁止されるようになり、鳳圏内部がどういった状態にあるかを鳳圏出身のイレギュラーズたちも把握できていない。エータツくんもその一人。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 軍国の亡霊、もしくは、エンドレスマーチ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月07日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
金色のいとし子
マリア・レイシス(p3p006685)
白虎護
加賀・栄龍(p3p007422)
人生葉っぱ隊
伊佐波 コウ(p3p007521)
故知らぬ造花
茅野・華綾(p3p007676)
折れぬ華
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
橋場・ステラ(p3p008617)
ジョーンシトロンの一閃

リプレイ

●明くる日の招集、もしくは、シークレットソルジャー
「亡霊退治とはまた変わった仕事だね」
 鉄帝のはずれにある飯屋。久慈峰中将より依頼の説明を受けた店である。
 店内には誰ぞわからぬ演歌が流れ、板前は無口にカウンターで冷凍した魚の調理を行っている。
 解凍鯖のサンドイッチを食べ終えた『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)は、紙ナプキンで口を拭った。
「彼らはもう十分働いたろう。休ませてあげなくては」
「ですねー。現世に未練を引きずる亡霊なら、どうにかせねばというのは、そうねぇ」
 上面に飛子をまぶしたカルフォルニアロールをぷちぷちたいらげた『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)も、おなかをぽんと叩いて同意した。
「ところで、ほーけん? というのは、かぶんにしてぞんじませんがー……」
「ヴィーザル東部にあるという小部族ですよね。独立国家を主張してると、聞きましたが」
 『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)もまた食事を終えて壁に立てかけていた剣をとりに立ち上がった。
「何にせよ、平和な小部族も多いと聞きます。彼らに被害を出す前に亡霊を打ち倒すのみ、です」
「ふむ……」
 マグロスパゲッティナポリタンを食べ終え、目をぱちくりとまばたきする『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。
「正体不明の、亡霊小隊、か。それの出処も気にはなる、が。未知の怪物というだけならば、混沌では随分見た」
「そうですね」
「だが」
 話を切り上げ、させずに。
「それ以上に、凰圏なる、国……自国に被害が出たわけでもなく、戦力的にも脅威足り得ぬだろう存在に、国の重鎮が態々手を出すのは、一体」
「中将は慈善事業と仰っていましたが?」
 特に疑っていない様子で、『折れぬ華』茅野・華綾(p3p007676)は絹で拭った眼鏡をかけなおした。
 鳳圏国民の多くがそうであるように、彼女もまた軍人に憧れ、それゆえに中将の伝説的武勇伝にうっとりもする年頃の女性である。
「しかしよりによってあの中将閣下からの任務……華綾も久方ぶりに、取り戻さねばなりますまい。
 張り切っていきましょう! 加賀准尉! おー! ですよ! おー!」
「は、お? おー」
 塩をふっただけの握り飯をがつがつ食べていた『人生葉っぱ隊』加賀・栄龍(p3p007422)が反射的に拳をあげた。
「違います、こうです。おー!」
「『祖国のために』、おー!」
 あまりに大きい声をあげたものだから、店主がこちらをじっと見ている。
 栄龍はわびるように頭を小さく下げたのち、冷えた茶で握り飯を飲み流した。
「気持ちは分かります。我が鳳圏の栄えある中将閣下に、名前を……」
 初めて顔を見た(見られた?)時と比べてここまで……とひとり感動に浸る栄龍。そしてこのことを大佐にいずれ報告するであろうことを考えて、急に胃を痛めた。
「な、なんとしても成功させなくては……!」
「笑ったり泣いたり忙しい奴だなぁテメェは」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)はひたすら飲み食いしたあとで、爪楊枝を歯にぐりぐりやっていた。
「ったく、おれさまのハーレムだと思ってたのに軍人野郎ォが混ざってるとはよぉ」
「悪かったな!」
「けどま、おエライさんに気に入られてェみてえだし? 手ぇ貸してやってもいいぜ」
 ニッと笑うグドルフに、栄龍は『山賊ぅ……』と少し感涙する目をした。今日は情緒のアップダウンが激しいらしい。
 そんな彼に、胸に山をつくるジェスチャーをするグドルフ。
「あのネェチャン乳デケエもんな。気に入られてえ気持ちがわかるぜ!」
「少佐をそういう目で見るな山賊ゥ!」
 立ち上がって拳を握……ろうとする栄龍の肩を素早く掴んで座らせ、店主の方を指出す『不完不死』伊佐波 コウ(p3p007521)。
 これは失礼と今度こそ深く頭をさげた彼を横目に、コウは熱い茶をすすった。
(我らが祖国からの依頼とあらばと馳せ参じたが……)
「亡霊兵団、か。『黄泉軍計画』を思い出すな」
 黄泉軍計画とは鳳圏において行われた不死兵団製造計画である。月光人形や廃滅病の例をとるまでもなく、混沌世界において死は絶対のルール。死者復活や不死は神のルールへの挑戦といえた。無論現在に至るまで何人たりともルールの突破はならず、黄泉軍計画も伊邪那美型甲式――伊佐波コウという『失敗作』を産むに留まったと記憶しているが。
「何処であろうと同じ様な事を考えるものなのだな。
 しかし、やはり奴らも紛い物。であれば斃す方法は嫌という程熟知している」
 食事を終え、立ち上がるコウたち。
「さあ、亡霊退治といこうか」

●雪の進軍、もしくは、エクストラエンカウント
 片栗粉を握るが如く、深い雪を踏んで歩く音が続く。
 彼らをせかすように響く軍歌。太鼓の音に合わせるように馬と兵隊は進んでいく。
 どこへゆくやら知れぬ道。足跡だけが森に続く。
 そんなまばらな足跡を――馬の蹄と二台の馬車がかき消していった。
「バケモンどもがまたぞろ来やがったぜ。もう一度念入りにブッ殺してオネンネさせてやるのも慈悲ってやつだ。派手に暴れてやろうぜえッ!」
 御者席に立ち乗りしたグドルフは馬をけしかけ馬車を走らせ、山賊刀でもって馬と馬車を繋ぐパーツを切断した。
 暴れて道をそれる馬とはなれ、馬車だけが行軍する兵隊たちへと突っ込んでいく。
 兵隊たちはまるでボーリングのピンのごとく吹き飛ばされ森に散乱。
 馬車はといえば木にぶつかり派手に横転。
 かろうじてかわした兵隊は倒れた馬車めがけてライフルを連射する。
「ありがとうグドルフ君!」
 対して馬車から飛び出したマリアは扉を突き破る勢いで自らを垂直発射。空中に作り出した赤電パネルを蹴って鋭角にターンすると、兵隊を斜め頭上から蹴り倒した。
 ギラリと八重歯を見せて笑い、その場から素早く反転。
 周囲の木々をピンボールもかくやという勢いで跳ね回り、兵隊たちを次々に蹴り飛ばしていく。
「君達がどういう経緯でそうなったかは分からない。だがもう十分戦ったろう! もう休みたまえ……!」
 常人であれば死んでいて充分なダメージをうけた筈だが、兵隊はすぐさま起き上がってライフルを手に取った。
 そしてナイフを装剣。銃剣状態にすると死角から蹴りつけようとするマリアへと突き出した。
 ざくんと音をたて靴底を貫くナイフ。足の甲を刃が抜けるのを目視すると、マリアはぎりりと歯を食いしばった。
 直後後方から飛んでくる山賊の斧。
 背中に突き刺さった斧をそのままに、グドルフは猛烈な勢いでドロップキックを繰り出した。
「い、たたた」
「ったく、早速くらってんじゃねえぞネコチャン」
「ねこちがうし! とら!」
 グドルフがロザリオを握った手に光を灯し、それでマリアの足へと触れた。暖かな光が傷を塞ぎ、マリアの身体にどくんと活力を満たしていく。
 そんな二人を、立ち上がった兵隊たちがライフルでねらいをつけて包囲――したかと思いきや、次なる部隊が突入した。
 伸ばした頭髪で馬をあやつるエクスマリアが形成した翼に光を帯びさせ、まるでユニコーンのごとくつばさを広げた馬によるタックルを浴びせていく。
 馬のひく馬車からはコウと華綾がそれぞれ飛び出して荒れた雪の上を前転。
 ライフル、試製四六弐型『火雷』を素早く構え、コウはエクスマリアの撥ねた兵隊たちへと射撃を浴びせた。
 腰だめ姿勢で射撃を行いつつ接近。まだ熱いライフルの銃身を握りしめ、ストック部分で兵隊を殴りつける。
「こっちだ出来損ないども! 同じ贋作同士仲良くやろうではないか」
「ふふ、こうしていると、コウ殿と共に戦ったあの日々を思い出すようで御座いまする。数多の戦場を共に駆けたもの……」
 一方の華綾は樹幹の裏へと回り込んで一旦射撃をやりすごすと、腰ベルトに接続したホルダーから鳳圏式術札を一枚ずつ取り出して両手の指に挟んだ。
 『急急如律令(クイックアップ)!』と唱えると、札の先端に炎が灯り瞬く間に燃え上がった。
 それをカード投げの容量で次々に投擲していく華綾。
「戦場に立ったなら、我らは兵士! いざ! いざいざ! 祖国の為に!!」
「応――『祖国のために』!!」
 華綾の炎術に対抗しようと射撃を仕掛ける兵士。または銃剣装備で幹を回り込んで追い詰めようとする兵士。それを指揮する将校風の兵士。
 そのさなかに雄々しく突入うする黒鹿毛の軍馬。名を火花。騎乗者を加賀栄龍という。
 片手で馬を制御し、右腕だけでライフルを構えた。
 射撃――よりも先に銃剣による刺突で兵士の側頭部をえぐると、至近距離から射撃を浴びせまくった。
 吹き上がる鮮血。
 ターンした指揮官が軍刀を抜いて突撃し、栄龍は馬上から無理矢理に薙ぎ落とされた。
 転落しつつもそのまま転がり自らも軍刀に手をかける。鞘と柄にそれぞれ鳳圏の紋章のはいったそれを抜刀し、再びターンしてきた指揮官の剣を打ち払う。
 そこへ突っ込んできたのがHMKLB-PMにまたがった胡桃である。
「わたしの炎はこういう時にぴったりなの。跡形もなく燃やし尽くしてあげるのよっ」
 ぽぽぽっと胡桃の周囲に湧き上がった炎を次々に発射。指揮官の馬に炎が着弾し、たちまちのうちに燃え上がった。
 首のない馬は自らの肉体が焼けただれているというのに身じろぎひとつせず、またがる指揮官も顔色ひとつかえる様子はなかった。
 否。顔に感情らしきものは何一つみえない。黒く淀んだような目がぼんやりと開かれているのみである。
「コャー……」
 これは勢いが必要なのよ、とつぶやくとすぐさまステラが突貫。軍馬をかるといかめしい大剣を背から外して振り上げた。レバーを握ると超高熱のブレードが展開し、余った熱が炎となって吹き上がっていく。
「勢いをつけるのは得意、です!」
 燃えさかる軍馬と指揮官めがけて斬撃を繰り出すステラ。
 指揮官の胴体を真っ二つにしたことで、指揮官はくるくるとコマのように回転して転落。
 下半身も馬からずるりと転落した。
 それぞれがばたばたと暴れるように動き、上半身は懐から拳銃を抜いてステラに狙いをつけた――が、それを栄龍が手首ごと蹴りつけた。
 指揮官の脳天めがけて銃剣を突きおろし、乱射。
 完全に動かなくなったことを確認すると獣のように叫んだ。
「戦果! 次ィ!! 覚悟しろ亡者ども!!」

 首を斬ろうが腕を落とそうが起き上がる兵隊達。
 しかし『そうである』と知っていれば対処は容易なものである。
 それぞれが備えた必殺攻撃が的確に兵士を鎮圧し、動く死体から動かぬ死体へと変えていく。
「せっ!」
 赤い電撃を纏った拳を打ち込むマリア。同じく赤い炎を纏って拳を打ち込む胡桃。
 一方では華綾が敵から奪った銃剣のストックで幾度も相手の頭部を殴りつけ、同じくライフルで相手の心臓部をコウが執拗に撃ち続ける。
 いくら高いEXFを有しているとはいえ、コウほどの高性能には至っていないらしい。
 何度も倒し続ければ流石に起きては来なくなる。
 エクスマリアやグドルフなどは慣れたもので、敵の複数をまとめてエクスマリアが頭髪性の斧でなぎ倒した所へグドルフが折りたたみ式コンパクトクロスボウで次々と仕留めていく。銀の矢が刺さったそばから兵隊たちは倒れ、それでも逃れようとする固体をステラは必殺のフルスイングショットでぶっとばしていった。
 まるで野球のホームランバッターよろしく豪快に剣をふりこんだステラによって兵隊が飛び、樹幹にぶつかりトマトのように破裂する。

●鳳の闇、もしくは、黄泉軍伊邪那岐型丙式
 潰れたトマトと化した兵士の死体を前に、ステラは剣をぼろ布で拭って背におさめた。
「不死兵の対処はこうすればいいんですね。勉強になります」
「いや、そこまでは……ンンッ、間違ってはいない、か」
 咳払いをするコウ。
 改めて観察してみると、もう起き上がる兵隊はいなかった。
 死んだふりでもしていないか確かめるためにエクスマリアが幾多に伸ばした頭髪で掴んだり振ったりして確かめてみたが、どうやら殲滅は完了したらしい。
 今度こそ動かぬ死体となって兵士にかがみ込み、顔を歪めるグドルフ。
「死んで尚、お国の為にってか? 泣かせるじゃねえかい。おれさまみてェな根無し草にゃあ、絶対ェ真似できないね」
「軍歌もいつのまにか止まった、な」
「あぁ?」
 言われてみればと首をひねるグドルフ。確かにもう歌は聞こえてこない。最後の兵隊を倒した辺りから聞こえなくなった筈なので、彼らの活動に連動しているものなのだろう。
「君達もかつては大切な物の為に戦ったのかい? 今となっては分からないけれど、戦士に敬意を……」
 マリアは簡単に祈りの動作をしてから、兵士のドッグタグ諸々を探し始めた。
「何をしてるんです?」
 問いかける華綾に、マリアと一緒に遺留品捜しをしていた胡桃が顔を上げた。
「遺族に届けられればって思ったのだけれど……この人達も元は鳳圏の軍人さんって事でいいのよね?」
「ん、ん?」
 華綾は眼鏡のつるを中指でトンと叩いた。
「中将の説明では、亡霊のモンスターってことでしたよね。言われてみれば、なんで死体が残るんでしょう……? アンデッドモンスターなんでしょうか。
 というより、というよりですね、わたくしこの兵隊を見たときからずっと思っていたのですけど……」
 華綾が栄龍とコウに向けて振り返った。
「この軍服、鳳圏のものですよね?」

 話を一度整理しよう。
 ここヴァルドナント地区は鉄帝支配の及ばないヴィーザル地方の一区画であり、森で狩りを主体として暮らすいくつもの少数民族が点々と暮らしている土地である。
 鳳圏からは遠く、そこへ至るまでに戦争中の敵対部族の土地がぐるりと囲んでいるせいで出入りは困難であった。
 よくよく考えてみれば、そんな情勢下で中将たちが鉄帝まで出向けた理由もよくわからない。
「私、最初は鳳圏の土地に帰れると思っていたんですよ。長らくあけていた自宅で湯浴みができるなあって。けど遠く離れた土地での任務だなんて正直――」
「いや、待て。待ってくれ茅野」
 主題はそこではないとばかりに手をかざして止める栄龍。
 そして、倒した指揮官の死体の軍服を調べ始めた。
「やはり、そうか、よかった。確かに鳳圏の軍服と同じ規格だが、きっと偽物だ。
 部隊番号は滅茶苦茶だし、こんな部隊章も見たことがない。ふう……」
 愛すべき祖国が兵士の死体をアンデッド化して野に放っているなどという事実はなかったんだ。栄龍は憂いを払うようにため息をついた……その時。
「いや」
 かがみ込んだコウが、部隊章をもぎ取って手の中で強く握りしめた。
「自分は見たことがある。焼き付いて離れないほどに」
 開いた手には部隊章バッヂ。彼女の手からにじんだ血に汚れた、紋は一本蓮華。奇しくもコウの専用ライフル『火雷』にある紋と同じだった。
 更に部隊番号を示すタグを引き抜くと、そこにはこうある。

 ――特別部隊『黄泉』 伊邪那岐型 丙式
 ――黄泉軍計画 責任者 技術部顧問■■■■■■

「鳳圏の技術部だ」
 エクスマリアが、小さく顎を上げる。
「仮に……鳳圏の実験体か何かが野に放たれたのだとして、その処理をローレットに依頼する意味は、なんだ?」
「「…………」」
 胡桃やステラも、そしてマリアも、いわんとすることの意味を察し始めた。
 露見すればそれは身内の不祥事ということになる。
 もしくは、鳳圏が敵部族の勢力圏を飛び越えた場所に自家製のモンスターを放って無差別攻撃を行っているという事実を知らしめることになりかねない。
 他ならぬ鳳圏の兵士である加賀栄龍と他数名を名指しで呼びつけたのだから、このカラクリは露見して然るべきだろう。しかも、『わざと露見させた』ようにも見えた。
「ケッ、めんどくせぇことに巻き込みやがって軍人野郎ォ」
 グドルフはつばを吐き捨てて横転した馬車の立て直しにかかった。
「さっさと帰ンぞ」
「お、おい山賊……」
「わかんねぇかよ」
 グドルフは力強く馬車を持ち上げると、栄龍へと振り返った。
「おれらの行動に任されたんだよ、この案件が」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――依頼を達成し、仲介人から報酬を受け取りました。
 ――久慈峰中将および久慈峰少佐とはその後連絡がとれていません……。

 ――次の行動を選択してください
 ――次の行動を選択してください
 ――選択は、あなたに委ねられました

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