PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ダ・カーポが来るまえに

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悲劇のマーチ
 ずんずん、たかたか。しゃーんしゃん。ぴっぴ!
 軽妙な太鼓の音を奏でるのはおさるさん、シンバル鳴らすのは水色のぞうさん。
 そして先頭で旗を掲げた、もさもさ毛並みのテディベアが笛でみんなに合図を送る。
 夜の住宅街、道路の真ん中に小さなパレードが連なってゆく。
 音楽団の誰もが、いつかは誰かのものだった、動物のぬいぐるみ。

「ぼくらをすてた、こどもたち」
「ひどい、ひどい、ひどい!」
「いっしょに、ねむった、よるもあったね」
「きみは、もう、わすれたろうけど!」
「だから、きょうは、ころしにいくよ」
「さいごの、さいごの、『おやすみ』を!」

 縫い目が破けて綿がはみ出した子、耳や目が片方なくなってしまった子、洗ってもらえず淀んだ色をした子。
 たくさん遊んでもらえた、愛された証とも言えた。けれどもう子どもたちが離れてしまった今は、ただの、かわいくない、廃棄物。
 ――そんなみじめな気持ちで、ぼくらは役目を終えたくはないよ。
 だから、みんなの昔のおうちに行って、ぼくらを捨てた子どもたちを、この世界から捨ててやるんだ。
 愛くるしい瞳に、愛を裏返した感情をのせて。愉快なリズムで歩き出して、希望の旗を夜空に翻して。
 パレードは血の足跡を残して、つづいてゆくのだ。


●アニマル・パレードにおやすみを
「子どもたちに捨てられたぬいぐるみが、その子たちを恨んでしまってね。夜な夜なパレードを作っては、殺しに行っているんだって」

 『境界案内人』カストル・ジェミニは神妙な表情で、特異運命座標――イレギュラーズたちに語りかける。
 曰く、そこはモノに心が宿る世界。
 それを命と呼ぶかどうかは人それぞれなのだが、やはり心とは明暗を併せ持つものだから。彼らも殺意を抱くことが、あるそうだ。

「ぬいぐるみたちにとっては、捨てられたことは悲しい過去だろうけれど……命が脅かされるのはいただけないから。君たちには、この音楽団の討伐をお願いしたいんだ」

 子どもに忘れられ、あるいは飽きられて、愛を向けられなくなったぬいぐるみたち。カストルはそれと重ねるように、一冊の本の表紙を撫で――そしてゆっくりと頁を開いた。
 夜のパレード真っ最中、恨み辛みを歌い上げる彼らのもとへと、イレギュラーズを送り届けるために。

NMコメント

 磐見(いわみ)と申します。
 初めてのライブノベル運営になります。精一杯頑張ります……!

▼目標
 ぬいぐるみ音楽団の討伐。集団戦になります。
 何か思うことがある場合は、心情面もプレに書いていただけると良いかもしれません。

▼場所
 『モノに心が宿る世界』の中にある平凡な住宅街。世界の外観は現実世界とそっくりです。
 時間は夜、子どもが寝静まる頃。街灯が灯っているので、視界に困ることはありません。

▼敵について
 ぬいぐるみたちは多少、現実離れした戦闘能力を持っているようです。
(この世界に住む人間も大抵そうなのかもしれません)
 だからといって、PCさん方が戦闘能力で彼らに劣るということは全くありません。

▽『旗手のテディベア』
 音楽団のリーダー的な存在のようです。
 旗を振ると、対象の「孤独を感じた記憶」を呼び覚ます魔法のようなものが使えます。範囲は単体。
(記憶については、プレで指定がないのにPCさんの過去を捏造するということはありません)

▽『太鼓のおさるさん』
 音楽団のサブリーダー的な存在その1です。
 太鼓を鳴らしている間、ぬいぐるみたちの士気が上昇・攻撃力が若干上がります。

▽『シンバルのぞうさん』
 音楽団のサブリーダー的な存在その2です。
 シンバルを鳴らすと対象を怯ませることができるようですが、
 タイミングを見誤って仲間を驚かせてしまい、自分達を不利にすることもあるようです。

▽他
 あまり強くない、色々な種類の動物のぬいぐるみが10~15体ほど。
 ぽこぽこ殴ったり、突進したり、多少切れ味のいい刃物や小さな銃を使って攻撃してきます。

▼サンプルプレイング
【例1】
かわいいぬいぐるみ、大好きだから戦うのはちょっと辛いけど……
私は全体にあたるように炎の魔法で攻撃するよ!
ああでも、置き去りにされる寂しさってわかる気がするの……

【例2】
僕はこういうオモチャで遊んだことないから、好きになる気持ちはわからないな
幹部みたいな三体のどれかから狙っていこう。めんどくさい技を使われたら嫌だし

  • ダ・カーポが来るまえに完了
  • NM名磐見
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月02日 22時35分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛
ラウル・ベル(p3p008841)
砂の聲知る
ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)

リプレイ

●末路となる場所
「モノを捨てれば逆恨みに殺されるなんて、随分住み難い世界じゃないか」
「まあ、捨てられるってのは悲しいものさ。その感情に間違いは無いのだけど」
 点々と並び立つ電灯が明かりとなって辺りを照らす、夜の住宅街の真ん中を、恨み辛みをリズムに乗せた音楽隊が行進してゆく――その進路を阻むように、四人のイレギュラーズは物語の舞台へ降り立った。
 呆れたように口火を切った『貧乏籤』回言・世界(p3p007315)と、ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)の分け与えた生命力が彼らの身を軽くし、命中精度を高め――ノアの構えた栄光のタクトも扶翼となれば、洗練された捜索の能で標的を見つけ出した『砂の聲知る』ラウル・ベル(p3p008841)の駆けゆく足はいっそう迅く。
 ラウルの太陽色の瞳は、太鼓で拍子を刻む『おさるさん』へ向けられた。牽制の一手が行く手を遮り、よろめいて尻もちをついた『おさるさん』の太鼓が、たたん、と調子狂わせた音を鳴らす。
 リズム隊である『おさるさん』の太鼓が乱れると、パレードの列を成す皆々が戸惑いはじめる。仇を返せと頷き合って、彼らが小さく短い足をラウルの方へと向けた……そのとき。
「そう言えば私も、ぬいぐるみにジュースを零して捨てたことが有ったねぇ!」
 ノアの凛乎たる声が、名乗り口上の如く響き渡った。まるいボタンやビーズで出来た、嘗ては愛らしかったはずの――今は感情の見えぬ目が、いっせいに彼女を見つめる。
「こぼした?」
「すてた?」
「……ひどい、ひどい、ひどい!!」
 近くのぬいぐるみから、そのまた近くのぬいぐるみへと波及して広がる怨念はまるで輪唱。その中の一匹が向けた小さな刃をラウルがひょいと躱せば、彼の素早さには勝てないと諦め、仲間の加勢をするべくノアの方へ駆けていった。
 混乱を来した隊列を元に戻すべく、旗手たるテディベアが旗を挙げれば『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)も動く。
 仲間に魔法が及ぶ前にその手を封じるべく、ブラッドが自分に注意を引き付けたのだ。その魔法は一度にひとりだけを惑わすもの、テディベアが差し向けた旗の鋩は進み出た彼へと必然的に向かい――刹那に掠めた過去は、幼い頃からひとりきりの自分。
 ――ひとりであることをそう呼ぶのなら、孤独とは、俺にとっては当たり前のことだったのでしょう。他者を解すことが難しく、人と触れ合うことの少なかった日々を呼び覚ましてブラッドは思う。
 けれどその記憶に心が引き摺られることは無く、平常から波立たぬ精神を小さな魔法ひとつで揺るがすことなど出来はしなかった。
 綿の詰まった、毛並みの荒れた躰を掴み、魂すらも破壊するかのような強い一撃で――ブラッドは逃げ場を与えることなくテディベアを打ちのめす。
 『シンバルのぞう』はイレギュラーズに圧された戦況を打開すべくシンバルを力強く鳴らす。しゃあんと轟くその音は、しかし驚愕の感情すらを閉じ込め、そして切り離した世界の心には通用しない。その間に彼が虚空に描いた白蛇は、生命を宿して牙を剥く。
 咬みつかれる! 『シンバルのぞう』が狼狽え、威嚇するように両手に構えていたそれをまた打ち響かせれば、今度は身構えていなかった仲間のぬいぐるみたちが驚いて飛び上がった。
 身は冥き呪に染まりながらも、蛇の鱗は夜を照らすかのような眩き白。その執拗なまでの攻撃は容赦なきものか、苦痛を与えぬそれがあるいは、ひとつの慈悲ともなり得るか。
 怯えはすれども痛みを知らぬまま、『シンバルのぞう』の命は蛇に吸われ――心は、意識は遠のいて。短い一生の幕は閉じていった。
「心が宿るなんて聞いた時は、もっとハートフルな感じを想像してたんだが。現実は厳しいな」
 ノアへと向かった多くのぬいぐるみの討伐へ助力しようと白衣を翻し、さらなる陣の生成を為出す世界は、溜息をひとつ。
「誰だって寂しいのは嫌だろうね。でもお前たちが踏み越えた一線は――越えてはいけないものだった」
 狙い通り、自分の煽りに怒り狂い、その勢いに身を任せてやってきたぬいぐるみたちを見下ろしながらノアは心で独り言ちる。ジュースを零したのも、捨てたのも真っ赤な嘘。そう声高に言うのを聞けば、居ても立ってもいられなくなるだろうと予想して叫んだまでだ。
 遠く、ブラッドと対峙するテディベアが苦し紛れに放つ魔法もノアの防御の術式が掻き消して泡沫に帰す。些末な魔力ひとひらがノアの記憶に作用しようとも――。
「お生憎様さ! 孤独だろうと私は道を違えない。人を助けるって決めたんだ!」
 同情はしても容赦はしない。恨み辛みは真っ向から受け止めて捻じ伏せる。
 襲われそうになった子どもたちのことも、孤独に負けて憎悪に塗れたモノたちのことも、神は助けてなどくれない。だから私が、私たちが救うのだ、止めるのだと。
「恨みも辛みも全部私にぶつけてくると良い。それでもう『おやすみ』だ!」
 すべてを燃やし尽くされたあの日が過り、されど気圧されることなく奮い立つノアが此度は心の底から湧かせた思いに、ラウルもこくりと肯く。
 子どもたちが殺されてしまったら、ぬいぐるみたちを愛していたひとがいなくなる。愛されていた遠い昔のやさしい記憶すら、誰の心の中からも消えてなくなってしまうのだから。
「これ以上、罪を重ねないように……ちゃんと倒さなきゃ」
 ノアの殴打は、向かい来るぬいぐるみたちを針山咲かす獣のように散らし、それでもなお迫り来る者たちには世界の繰り出す蛇が喰らいつく。
 もはや太鼓は士気向上の意味を成さないと理解した『おさるさん』はバチを振り回してラウルへと向かうが、幼くも俊敏性に長けた彼の身の熟しには及ばず。回避されてよろめいた隙を狙って、深く間合いを詰めたラウルの一刀両断を受け、糸が切れたように『おさるさん』はぱたりと倒れた。刻まれた拍子が途絶え、ぬいぐるみたちの統制はさらに狂いはじめる。
「……孤独を感じた記憶、か」
 魔法の一手はラウルにも、命辛々に森から逃げた日のことを想い起させた。自然豊かな地を炎が舐め、住処は焼かれてみんな離れ離れになって――もう思い出したくないと、少年は首を横に振る。
 緊張感にぴんと張った狼耳をそのままに、残党を蹴散らすべく絶え間ない連撃を打ち込めばぬいぐるみたちは這う這うの体に、しかし逃げ出す間もなく次々に地面へ身を預けてゆく。
 ブラッドの追撃によってついにその旗を滑り落とし、魔法を使うことすらも出来なくなったテディベアにはもう抵抗する術もない。
「どうして、どうし、て、ぼくらは、すてられたのに!」
「――憐れな身ならば、復讐するのも仕方がないと?」
 命乞いにも近い叫びに間髪入れず、肉迫したブラッドのとどめの一打が叩き込まれる。
 モノに涙を流すことはできないけれど、もしもいま泣けたのならば、それはどんな感情を意味していただろう。ブラッドの沈着な思考は止まることなく、だが彼らを完全に解するには至らず――それでも。
 血の跡はここで絶たれ、パレードは終焉を迎えた。子どもたちの安らかな夜は、イレギュラーズたちの手で守られたのだ。

●救った路の先
 いわば命であったモノたちは、世界が呼んだ精霊の炎に包まれて焚き上げられた。静けさを取り戻した住宅街を覆う夜空に、白い煙が昇ってゆく。
 ――捨てられてから動くなんて、ノロマにも程がある。
 愛されたいという心があったのならば、そうあれるために努めるべきだったのではないか。世界は、運命に抗えなかった命たちの成れ果てへと視線を落とす。
「まあ、何を思ったところで後の祭りってやつか」
 けれど、これで子どもたちは今日も安らかに眠ることができる。彼の思惑がぬいぐるみたちの運命を諦観する代わりに、無自覚の優しさは子どもたちを救った事実へと向けられていた。
 とある国には人形供養という祈りがあるそうだ。感謝を込めて空へ焼納する儀式。この炎は、それに似ているのかもしれない――。
 復讐を選ぶほどの怨念は、裏を返せばそれほどに愛されていたということ。大切な時間があったということ。
 ならばその祭りと同じようにと、ブラッドは白い煙を見上げて思う。ぬいぐるみでも、子どもたちと同じく安らかに眠れるように。
 心あらばそれもきっと命。感情すべて理解することが叶わずとも、導き出された結論を胸に、彼は淡い青の双眸を閉じて静かな祈りを捧げた。

成否

成功

状態異常

なし

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