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シナリオ詳細

<幻想蜂起>蠍の囁き
<幻想蜂起>蠍の囁き

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●さぁ立ち上がれ!
 サーカスは楽しかったかい?
 ああいやいや楽しかったのならば良いのです。しかしサーカスの件はともかくとしても……なんでしょうかねぇこの帳尻合わせは。ええ、ご存知でしょう? ここ最近幻想で起きている猟奇的事件の事ですよ。
 楽しかったことに比例するかの如く不幸が、悲劇が増大している。
 これはおかしい事だ。だってそう。貴方達は――元から不幸なのだから。
「……不幸?」
 そう、不幸だ。ああそれとも幻想の貴族から搾取され続ける日常は不幸ではないと?
 感じたことぐらいはあるでしょう。税の重さを。生活の息苦しさを――さぁ思い返して。
「そうだ。おかしい……おかしいぞ! なんだって俺達だけこんなッ……!」
 酒場がざわつく。その通りだ、間違いない、どうしてなんで。
 そういう色のざわめきが広がっていく。燻っていた幻想上層部に対する不満が、ここ最近の不穏なる『空気』に感化されたが故か? 酒場の者達相手に演説でも繰り広げんとしている男の声に簡単に染まっていく。
「――そう。そうです! 今抱いた感情を忘れてはなりません! 皆さんの心の内から湧き出たその感情こそ、正しき理に燃える善性の証! 上に立つ貴族が持たぬ、皆さんだけが持つ誇るべき人間性なのです!」
 熱狂する。そうだ。正しいのは俺達だ、当然だ! 貴族は無能で悪なのだから!
 ――本来の時世ならば『そう』思う事はあっても『そう』酔う事は無い。なぜならば酔った所で鎮圧されるのが落ちである。戦い慣れている貴族の軍勢にどう足掻くのだ。ましてや酒場にいる少数程度の者達が徒党を組んだ所で。
 だから本来ならばこうまではならない筈なのだが――成っている。
 打ち倒せ。貴族にも悲劇を。これは当然の帳尻合わせである! と。
「ハハ。凄いなこれは」
 その熱狂ぶりを。先程真っ先に声を上げて扇動『だけ』した男が冷静に呟いた。
 いいねもっと狂えよ。そしたら色々やりやすい。馬鹿だろこいつら。馬鹿ばっかだ!
「微力ながら我らもお手伝いをさせて頂きます。他国での話にはなるのですが――ええ。こういう荒事には慣れた身でしてね!」

 ――敬愛せし『キング』の下で、の話ですが。

 それは貴方達にはどうでもいい事でしょう? フ、ハハハハハ。

●鎮圧せよ
 民衆の一部蜂起。ああ、とてもよろしくないニュースがローレットの中を駆け巡った。
「このままでは貴族軍が派遣される可能性がある。というよりそうなる」
 ギルオス・ホリス(p3n000016)が語る内容は真実だ。嘘の一片もありはしない。
「――だけどなんとかレオンが先手を打ってくれた。この蜂起に対する事態にローレットが介入する。事態の鎮圧をもって、貴族軍の介入は中止される事になるんだ……!」
 民衆の蜂起、といってもそれは極々一部の話。初動にして小規模だ。
 故にそこをレオンが突いた。今ならば大規模な貴族軍など必要なく、ローレットの介入にて被害を最小に留める事が出来ると。貴族軍が来たとなれば反応は敏感となり、ヤケクソになった民衆の中には玉砕を選ぶ者もいるかもしれない。そうなれば貴族達の損害も増えるだけ。
「全部……ではないけれどほとんどの貴族とはこういう話になってる。なんとか待ったをかけた状態だ」
「話は分かったけれど――そこまでして、この事態をローレットが担当する必要が?」
「ああ。引いてはそう、サーカス事件解決の為にね」
 本命は王様だ。とにかくアレがサーカスを支援しているのが一番厄介なのだから。
 この事態によって貴族に恩を売り、それを梃子として王を動かす。それがレオンの目算なのだろう。
「さて。その中でも君達にやってもらいたい事だが……『砂蠍』の残党討伐、になるかな」
 えっ? と言う表情する者がいる。当然だ。なぜ蜂起の話から『砂蠍』の話が――
「『砂蠍』はラサで壊滅したとされる盗賊団の事だ……でもね。どうも残党が幻想に侵入しているらしい。頭目たるキング・スコルピオの部下らしき人物が目撃されているんだ」
 蜂起目前の街の中で、ね。とギルオスは続ける。
「簡単に言おう。この残党が――蜂起の扇動をしている。間違いない」
 だからこそ彼らを倒す、あるいは捕縛しない限り燻る火は消えないだろう。
 奴らの狙いは不明だ。だが、盗賊であるのならば……この騒動を利用して金銭でも狙っているのであろう。例えば貴族の屋敷に民衆を攻め込ませたその最中に、など。あるいは単に引っ掻き回したいだけか。本当に迷惑な連中である。
「早急になんとかしてもらいたい、が。民衆は50人ぐらい今集まっているらしい。殆どは大した戦闘能力もないだろうが……真っ向からからぶん殴りに行けば間違いなく同士と思われている彼らを庇い立てする行動を取るだろう」
 秘密裏に、あるいは最初は潜入して。どうこうする必要がある。
「具体的なやり方は任せるけれど……すまない、頼んだよ皆。もし失敗した場合貴族軍が介入してしまう」
 そうなれば無用な血が流れる可能性もあるだろう――
 待ったで止まっているとはいえ、幻想の貴族はほとんどが碌ではないのだから。

GMコメント

茶零四です。
初全体――よろしくお願いします! 以下詳細!


■依頼達成条件
 『砂蠍』メンバー全員を捕縛、もしくは殺害。

■戦場
 とある貴族領の街中……の酒場。
 そこそこ大きい酒場で、後述する50人がゆうに入れる程度の広さがあります。
 正面入り口、裏口があります。

 この酒場にいない民衆は蜂起に関わっていません。

■ゲーベルグ
 『砂蠍』残党。昨今の惨劇で不安になっている民衆を扇動し、現在の状況を作り上げた人物です。首筋に蠍の入れ墨を入れているようです。
 【カリスマ】【扇動】【統制】の非戦技術を持っている為か、蜂起に関わっている者達は彼の熱弁に騙されています。本来ならば余所者でしかない筈の彼を信じ、頼りにしている状況です。

 武器としては大太刀を所持する近接型です。
 戦闘能力はそこそこ高いです。ラサの壊滅戦から辛うじて生き延びた程度はあります。

 貴族の手の者、もしくはローレットが介入したと知った時の行動は不明です。
 闘うか逃げるか。いずれにせよ必ず捕縛もしくは殺害してください。

■『砂蠍』メンバー
 ゲーベルグと共にいる、幻想でスカウトされた『砂蠍』の仲間です。二名、ナイフ所持の近接型。
 彼らも【扇動】の非戦技術を持ち、この騒動をサクラ役として盛り上げました。
 ゲーベルグと比べれば戦闘能力は大したことがありません。

 ゲーベルグと違い彼らの顔は初め、分かっていません。
 しかし同様に首筋に蠍の入れ墨があるようです。ある程度は隠しているかもしれませんが何らかの非戦・ギフトがあれば普通の民衆と見分ける事をスムーズに行う事が出来るでしょう。

■蜂起民衆
 酒場に集っています。人数は約50人。貴族を倒せ! と全員が熱意に酔っています。
 ほとんどは碌な戦闘能力を持ちませんし、明確な蜂起プランは全員持っていません。
 ゲーベルグさえ鎮圧すれば冷静になっていく事でしょう。

 ただし碌な戦闘能力を持っていないといっても50人という数は決して軽んじられる様な数ではありません。こちらには8人しかいないのですから。

■備考
 蜂起に関わっている民衆に関しては殺害が貴族より許可されています。
 また、蜂起はもう目前です。事前に何か下準備を行うような余裕はありません。
 即座に戦闘行動に移る必要はありませんが、酒場には早急に向かってください。

  • <幻想蜂起>蠍の囁き完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月09日 21時50分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
エスタ=リーナ(p3p000705)
銀河烈風
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
天穹を翔ける銀狼
雪原 香奈美(p3p004231)
あかいきつね
ティエル(p3p004975)
なぁごなぁご
牙軌 颯人(p3p004994)
黄金の牙
シロ(p3p005011)
ふわふわ?ふわふわ!
久住・舞花(p3p005056)
月下美人

リプレイ

●決起直前
 民衆が立ち上がる理由は不満、正義感――それぞれあれども。
「少なくとも、連中に関しては『正義感』から蜂起を起こしたんじゃねぇ、ってのは確かだろうよ」
 酒場へと足を踏み入れた『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)は周囲の様子を伺いながらそのように呟いた。熱狂している。酒場の中が、貴族を倒せと息巻いて。
 されどそれは作られた雰囲気だ。自然発生したモノではない『彼ら』によるモノ。
「砂蠍――その残党、か。私の初陣の相手には丁度いいけれど」
 言うは『白砂の傀儡』ティエル(p3p004975)だ。マグナ同様、酒場全体の空気を感じながら、怪しまれぬようにと酒場の店主の元へ。簡単な飲み物の注文をすれば、椅子をさり気に移動させるなど戦場作りを行いながら、しかして本格的な行動は移さず様子を見る。
 自らの故郷――ラサの者が主犯とは、思わぬ縁があるものだ。
 負けられぬ。ラサの獣人として、決して奴らなどには。
「マスター少し事情を尋ねたいのだが……この状況はなんだ? どうにも何がしかの集まりのようだが」
 そしてティエルの隣で酒を頼みながら訪ねるは『黄金の牙』牙軌 颯人(p3p004994)である。彼もまた怪しまれぬ様に。さも『知らぬ身』を装いながら酒場の店主へと。
 であれば出てくるのは案の定貴族を倒すべく集まった義憤の志――などという言葉だ。それは面白そうだ、と笑みと共に同調の言葉を交えながら颯人が視線を移すは。
「あれが――ゲーベルグ、ね」
 同時。久住・舞花(p3p005056)も奴を見た。
 砂蠍残党ゲーベルグ。机の上に無作法に上り、仰々しくも演説している男の姿。周囲を包む、異常な雰囲気は扇動者がいる事を納得させるが――舞花は思う。サーカスの件も含めて。
「……本当に悪い事は重なるモノね」
 嫌になる。苦々しくも、表情には出さず。見るは人影。
 時間に余裕はあまりない。故に早速、己が目を用いて件の三人、いや二人を探していく。ゲーベルグに紛れ、この扇動を更に加速させている砂蠍の者を。
 特に見るは首筋。そう、首筋に蠍の入れ墨がある者を、だ。
 隠しているのならばそれは看破の範囲。一人、二人。表情も注視する。扇動に乗せている者と乗せられている者は内に秘められた熱が違う。ただ只管に興奮している者は後者で、タイミングを計るかの如く冷静な感情の者こそが前者であると――彼女は推察。
 それは真理を得ている。見事な推察であり、であるからこそ観察はスムーズに進んで。
「――とッ! ゴメンね!」
 と、そことは別地点にて『銀河烈風』エスタ=リーナ(p3p000705)が一人の男にぶつかってしまった。
 ――いや違う。それはわざとだ。砂蠍の者を探す為。
 ナイフを持っていないか? 首筋に印は? 多少強引かもしれないが、それはそれ。胸を押し当て上目遣いで。申し訳ないという表情を見せればなんとかなる筈――そう思考して、次を探す。急がねばならない。
「どんな企みしてるか分からないすけど……このままじゃ街の人達の犠牲が出るだけっすからね」
 言うは『あかいきつね』雪原 香奈美(p3p004231)だ。彼女は自身で思う。舞花らなどと違い、探索なる技能を持たぬ自らでは一人一人を注視するには些か手が足りない。故に視るのは全体だ。
 自身の直感を用いて――全体の雰囲気から一部の違和感を探る。
 発言のタイミングや盛り上げ方に一定の波はないか? どこかの誰が主軸となっていないか?
 やりようはあるものだ。見ていく。少しずつ、少しずつ。されば。
「……ふむ。どうにも、あれが怪しいな。シロ。近くに付いてみてくれるか?」
「オーケーなの! シロにどーんとお任せなの!」
 おそらく奴らと思わしき人物を――『特異運命座標』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が目星を付ける。さりげなく『ふわふわ?ふわふわ!』シロ(p3p005011)にマークするように伝えれば、行動開始まであと少しだ。
 ゲオルグが発見できたのはその捜索技能の高さ故。目・耳・鼻に優れる――ハイセンス。
 それらを組み合わせて奴らを見出したのだ。目で入れ墨を確認できなければやはり耳で。ゲーベルグの演説に合わせている者。熱が無く、周囲の様子を伺っている者がいればそれに当たりを付ける。
 されば時折、このハイセンスをオフにしたりと個人的な試しも入れている。だが基本的に目や耳や鼻が優れていて不都合はない。例えば強烈な光や臭いがあったとしても負の影響は事前に情報として記されていない限りこれもない。オフにする意味はさほどないだろう。
 颯人もまた己が耳、超聴力によって特徴的な声が無いか探れば。
 あれと、あれか――イレギュラーズ達は見つけ出す。それぞれの工夫をもって、元凶達を。そして――

●接触
「――失礼。少し、いいだろうか?」
 颯人が往く。ゲーベルグの元へと。
「先程から聞けば、中々面白い話をしている様だ。俺も混ぜて貰えると嬉しいんだがな」
「ほう、貴方は――?」
 多少の荒事にはこちらも慣れていると、ゲーベルグに見える様に颯人は己が剣を示す。さすれば奴の目が細められる。それは予測外に現れた、戦う力を持つ者に対する注意か? まぁどうであれ構わない。
 なぜならば直後――間髪入れずに、颯人は踏み込んだからだ。
 剣を抜く。捨て身の一撃、初撃に掛けた一撃をゲーベルグへ。思わず反射的に彼は後方へ跳ぶ、が剣撃から完全に逃れられる事は出来ず。
「――貴族の犬だ! 奴らの手先が来たぞ!!」
 であれば傷口を抑えながらゲーベルグが対抗の檄を飛ばした。それに呼応するように動く民衆がいる。殆どは碌な戦闘能力を持たないとはいえ、貴族の者が来たなどと言われればゲーベルグの統制による効果も合わさって、怒りに燃える者はいるものだ。
「確実な戦闘力もないのに貴族を倒すなんてやめた方がいい! 返り討ちにされるだけだよ!」
 むしろ彼らの思うツボ――とリーナが続けて声を飛ばす。同時に己が肉体の力を呼び覚ます技能も用いたかった所だが、技能枠の都合で活性化出来ていない。使用を諦め、牽制攻撃を放つ。
 実際彼女の言葉は真実だ。ゲーベルグらの口車に乗せられて突っ込んだとしても、一時の混乱を引き起こすのが精一杯だろう。それすら確実でなく、全員惨殺されて終わりという事もあり得る。だが、それだけでは止まらない。元より幻想の民は貴族に反感を持っている。
 その感情が『何がしか』の理由によって更なる熱を持っているのだから。元より煽ろうとするゲーベルグ達の方がその点は優位。止めろという言葉よりも、やれという言葉の方が強く作用してしまうのだ。これに関してはやむなしである。
 しかしそれでも完全に無駄ではない。幾人かは動きが鈍る者も見受けられた。故に――使えない連中だ、と潜伏している砂蠍の者が更なる扇動をしようと口を開こうと。
「少し、黙りましょうか」
 した一人を、舞花が襲撃。背後より至近位置まで一歩で踏み込めば、慈悲なる一撃。
 出来れば捕縛して話を聞きたい所だ――と。砂蠍の手の者に攻撃を仕掛けて。
「碌に戦えもしねえ奴らを巻き込んでんじゃねえよ。しかも裏でコソコソしながらな」
 つまんねえ真似しやがって――と、マグナは呟きながら変化の術を解く。
 不審さを下げる為に人に化けていたそれを、半人半ロブスターの身体へ。もはや偽造の意味は無しと。
 放つ。遠距離術式を稼働させ、砂蠍の者を狙うのだ。人と人の隙間を拭い、彼らを穿つ。
 ともすれば砂蠍以外の者も巻き込みかねない遠距離攻撃だが……民衆に関しては出来得る限り殺すつもりはない。後味が悪く、楽しくもないからだ。されど――最優先すべきは砂蠍の打倒。そこを履き違えるつもりはないとマグナは心に刻み。
「まだほとんどの者達は浮足立っている。今の内にやれるだけ攻勢を仕掛けよう」
 同時、ゲオルグもゲーベルグへと遠距離攻撃を放っていく。彼が放つは星の輝き。
 煌めく光を落としていく。逃さない。彼を捉え続け、攻撃を続けていく。
 酒場は一瞬で戦場へと切り替わった。ゲーベルグへと攻撃を仕掛けているのはゲオルグ、香奈美、颯人、ティエル、シロの五人だ。四方八方から彼を囲み。
「悪名高き砂蠍の残党、ゲーベルグ。ラサの獣人として貴方を倒す。覚悟」
「おぉ? これはこれはラサの者とは――奇妙な縁もあるものだ!」
 ティエルが往く。等身大、絡繰り人形のゾルダートを操作してゲーベルグに肉薄。
 彼の大太刀を受け止める。人形の右肘で受け止め、左の腕で拳を腹へ。格闘戦にて殴りつける。
「にがさないよ! ラサのわるーい人、こんな事はじめちゃって、シロは許さないの!」
 さればシロも。身体強化の魔術によって己が速度を強化すれば、ゲーベルグへと蹴りを放つ。
 とにもかくにも食い下がる。逃げようとする動きが見えれば逃さず付き。決して己が範囲から彼を出すまいとシロは徹底していた。振るわれる大太刀の威力は高く、頬を掠めれば痛みが走るも――
「まけないの! こんな程度ケガの内に、はいらないの!!」
 恐れはしない。決して負けない。シロの決意は固く、ゲーベルグへと迫り続ける。
「チッ。この動き……始めから俺らだけが目的かッ……!」
 砂蠍の者は悟る。彼らはこちらを目的としていると。ともすればこの酒場の全滅を目的としているのでは、と思ったのだがどうやらそうではなさそうだ。ならば。
「どうしたのです皆さん! 貴族の手の者が来ているのですよ!
 今戦わねば――いつ戦うのです! 家族が飢えで死んでからですか!?」
 扇動し、統制する。不安を煽り、熱に浮かせて。統制の力をもってすれば。
 些か動きが見え始める。

●戦闘
 民衆には特筆すべき戦闘能力はない。殆どが素人だ。
 それでも殴り、あるいは羽交い絞めにして動きを制限するなど動く事は勿論出来る。それが一人二人程度ならば強引に押しのける事も出来るだろうが――相手は五十人。単純に壁として考えても相当な数だ。無視することは、出来ない。故に。
「ごめんなさい……大人しくしておいてっす……ッ!」
 自らの眼前に立ち塞がった民衆を、香奈美は足を払って蹴飛ばす。
 なるべく殺しはしない様に不殺の勢いで。目的は盗賊共だけなのだから――
「――動くんじゃねえぞ」
 だから、銃弾を床に放ち音と共にマグナが威嚇を行う。あらん限りの怒気を込めて。
「オレらの狙いは、そこにいる盗賊共だけだ。大人しくしてりゃテメーらに手は出さねえよ」
 だがどうしても止まらないなら。貴族に喧嘩を売り、命がいらぬというならば。
「いいぜ。相手してやるよ。死にてぇなら、別に今でも問題はねぇよな?」
 馬鹿な考えは叩き直してやると、彼は紡ぐ。
 さすれば目前に叩きつけられた『死』は強烈だったか。怯む者がいる。盗賊? 誰の事だ? と困惑する者もいれば、正面入り口側に布陣した彼は戦況を見ながら砂蠍を逃すまいと目を細める。民衆の壁が邪魔となりつつあるが、そうなれば戦術を遠術から至近にて対応できる魔棘を放つだけだ。絶対に逃がしはしない。
 しかし些か民衆の動きに対しての対応が少なかったか。完全無力化は元より無理だろうが、マグナの様に分かりやすく警告行動を行っているともう少しばかり怯んでいる者が出ていたかもしれない。影響の及んでいない民衆は熱に酔ったまま『貴族側』と認識した者と敵対し。
「まて、なの! そーかんたんに、出られるとおもわない方がいいの!!」
「――ここで倒す。それだけは決して違えない」
 それでも奴らを逃さないという意思で食い下がるシロとティエルがいた。ゲーベルグは逃げ出そうとしている。民衆を盾に、正面は威嚇していたマグナが居た故に裏口から。身の安全を優先したのか。煽るだけ煽って逃げ出すとは。
 元より悪人だと言えばそれまでだが――ともあれ邪魔をするなら大太刀を振るう。
 人形たるゾルダートを操るティエルへ向けて。踏み込んだ突きの一閃を彼女は受け止めきれない。ゾルダートの腋にて挟み込み、止めようとするが刃は彼女の肩を抉って――直後、シロの蹴りがゲーベルグの腹に入る。
 それでもまだ倒れない。されば太刀を返す形でシロへと振るわれ。
「邪魔なんだよどけ!」
 素だろうか。荒々しい口調を隠そうともせず、裏口から突破を図る。ここさえ出られれば何とでもなるのだから。ラサの殲滅戦からも運良く逃れられたのだ。ここでも。ここでも――
「いいや、そうはならない。お前の幸運の星は、ここで落ちる」
 瞬間。裏口側へと布陣していたゲオルグのスターライトがゲーベルグへと直撃した。
「窓側の逃走ルートを潰してくれ! こっちに来たら私が受け持とう!」
「承知した――蠍の。お前は此処までだ」
 民衆が入り乱れ、攻撃が難しくなり仲間の傷も確認できたゲオルグは回復行動へと移行する。ゲーベルグがこちらに向かってくればブロックをしようと。さすれば颯人が再び全力なる一撃をもってゲーベルグへと攻勢を仕掛ける。
 邪魔をしようとする民衆をなんとか押しのけ、民の拳が直撃しようと振り払いながら。
「ん、クソが! こんな所で――ッ!」
 死ぬかよ、とばかりに大太刀を。
 交差する。二つの剣と、一つの刃が。大太刀が迫る颯人の胸を一閃。されど颯人は倒れない。踏み込んだ、その姿勢から右の剣でゲーベルグへと返すように剣を一直線。
 血が舞う。互いの血が、空を舞い。それでも颯人には。
 二刀流。もう一つの剣が残っていた。それをゲーベルグの心臓部へと狙い済まして――
 貫いた。
「お、ごッ」
 吐血する。その姿が倒れるまで待つ気はない。颯人は傷を押して声を張り上げ。
「――皆聞け! 我々はギルドの者だ。熱に浮かされず冷静になれ。我々がこの場に居るという事の意味――理解すると良い。貴族は既にこの事態を察知している!」
 自らのカリスマをもって――周囲に言葉を放つ。ゲーベルグが倒れた今、ざわめき出す民衆の感情の流れを操作する者はいない。如何に貴族への不満が真に燻っていようとも、彼らには明確な蜂起プランはないのだ。流れは引き戻せる。まだ間に合う。
「ゲーベルグ――奴は、死んだのね。出来ればあの男こそを捕えたかった所だけど……」
 その状況に舞花は言う。砂蠍の一人を相手にしながら。
 ゲーベルグを比較的早くに倒すことが出来たのは奴にほとんどのメンバーが――つまる所、五人も付いたからだ。民衆が邪魔となり、捕らえる程の余裕がなかったのが残念だが逃してしまうよりは遥かにマシ。後は、潜伏している目の前の一人と、もう一人を――
「待て――いッ! 逃げるな! 罪なき民を扇動するだけ扇動し、戦火へ放り込もうとするとは!」
 例えお天道様が許しても、このリーナたんが絶対に許さない!
 戦況の不利を悟った砂蠍の最後の一人が窓から逃げようとする――それを、リーナは追う。机に足を。そのまま跳躍。天より前口上を述べながら奴に迫れば。
「くらえッ! リーナたん特注の拿津久瑠ッ――!!」
 ナックル。強引に当て字にしたその一撃を、逃げる男へと降り注がせた。
 だが流石にそれだけでは倒れない。逃げる。傷を負いながらも窓へと手をかけて。
「――絶対に逃さないっす!」
 故に。
「ここで逃がせば、また別の場所で同じ事やりそうっすからね! 往生っす――ッ!!」
 イレギュラーズの中でも突出して反応速度が高い――香奈美がそこへ、追いついた。
 拳を握る。地を踏み砕く勢いで、冷静さを取り戻しつつある民衆をかき分け跳躍。一歩で追いつき掌底を腹へ。そのまま肘を相手の顎へ。撃ち抜き、上半身が浮いた所へ。
 脚甲を纏った蹴りを鳩尾へと撃ち込んだ。
 流れるようなコンビネーション打撃が直撃すれば、砂蠍の意識が途絶える。
 死んだか? 生き残ったか? 確認は後でいい。捕縛用のロープを即座に取り出したリーネはその男の動きを封じて。さればここまでの状況に至れば最後の一人の鎮圧も目前だ。一人だけでは扇動の効果もさほどあるまい。

 砂蠍。ラサで暗躍していた、盗賊団。
 注意を注意をご注意を。蠍は尾に毒を持つ。拭い難き、毒を持つ。

「蠍共が。幻想の騒動に混じって何が目的か知らねぇが……そうそう上手く行くと思うなよ」
 マグナは呟く。熱が徐々に引いていく酒場を視界に。己が感情も心の奥底へ潜ませる。
 されどそれ以上言葉にはしない。言葉とは、目には見えどもそれだけで力を持っているのだから。そう。

 ――蠍の囁きが、そうだったろう?

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ティエル(p3p004975) [重傷]
なぁごなぁご
牙軌 颯人(p3p004994) [重傷]
黄金の牙

あとがき

依頼成功です。おめでとうございます!

砂蠍の暗躍の一部は、この場で食い止められたようです。
残念ながら主犯格のゲーベルグは捕縛に至りませんでしたが、潜んでいる者達を探し出すプレイングはお見事でした。
「スキルを使う」と言うだけでなく「具体的にどのように使用するか」が的確だったと思われます。

それでは、ご参加どうもありがとうございました!

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