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シナリオ詳細

[404 Not Found] 09021-α

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●404 Not Found

 ――この依頼書は後に消失する。
 これは貴方達の記憶にだけ残る物語。

●α-β
 人が死ぬなどと言う事はあっけないものだ。
 例えば事故であったり例えば突然の病であったり。
 人は何の前触れもなく死んでしまう。

 ――命を奪い合う戦場であれば特に、だ。

 傭兵にドラマティックな死に様など期待するな。
 お前達の命などパン屑と変わらぬ。
「んな事言ったのはどこのどいつだったかな……」
 空を眺めてぼやく男が一人――ああくそ、憎たらしいほどに綺麗な月が出ている。
 ここはラサの砂漠地帯。その中にあった遺跡……の中に彼はいる。
 仲間の傭兵達と共に。傷ついた仲間達と――共に。
「どうだ。傷は癒えたか?」
「何とか全員応急処置は済ませたが……流石に万全とはいかないな」
「いつだって傭兵は負け戦さ。少しでもマシになっただけ、良しとしようや」
 視線を巡らせれば体のあちこちに包帯を巻いた連中ばかりだった。かく思う彼……この傭兵団を率いる団長だが、そんな彼もまた足を負傷しているのか動きが些かぎこちない。
 端的に言えば彼らは襲撃された後なのだ、盗賊団に。
「どっから情報が漏れたんだかなぁ」
 呟き、遺跡の窓から外を見れば――ああいるいる此方を伺っている盗賊団が。
 完全に包囲されているようだ。奴らのお目当ては傭兵団が護っている『宝石』だろう。
 先日、鉱山で大きめの宝石――売ればそれなり以上の額になりそうな――が発見されたのだ。当然持ち主は売って金にしようと考えた訳だが、ラサの首都ネフェルストに運ぶまでに危険がないとも限らない。よって傭兵団に運搬と物の警護の依頼をしたのだ――が。
「多すぎるだろ。三十人は超えてるぞ」
 敵の戦力が多すぎる。傭兵団は十人、盗賊団はその三倍以上。
 同数か、少し数が多い程度なら負けるつもりはなく。二倍の数が来ようと依頼物をなんとか突破してネフェルストにまで運ぶ自信はあったのだが……これだけの数が違うと流石にそうはいかなかった。
 放たれた多くの矢を始まりに大量の数が押し寄せて。
 何人も切り伏せたがそれでもまだ多く――なんとか敵の攻勢を退けながらこの遺跡に逃げ込んだのが現状であった。この遺跡も穴ぼこだらけであり別に城塞と呼べるような堅牢さは無いが、壁があるだけ外の平地よりはマシだ。
 ……だが結局状況は好転していない。
 敵も獲物を追い詰めたとみて一息ついているのか、今の所動く様子はないが……
「時間の問題だな」
 攻撃が始まれば今度こそ終わるだろう。
 これ以上は逃げられる余地も無し。逆転できる余地も無し。
 せめて傭兵の矜持として――依頼物だけでもなんとかしたい所だが――

「はいはいはい! じゃあボク! ボクがなんとかしま――す!」

 と、その時だった。嫌な空気を振り払うかのような陽気な声。
「ここでなんとか出来なくてもさ……一点突破して援軍呼んで来ればいいよね!」
「――レイン。お前、そうは言うがな。援軍なんて間に合わないだろ」
「ふふん。どうかな、盗賊の連中油断してるからワンチャンあるかもよ?」
 それはこの傭兵団の紅一点。
 レインと言う名のまだ年若い、少女ともいえる人物の声だった。まぁ彼女が言うのも一理はある。この場でなんとかしかねるのなら、どうにかこうにか『外』に希望を寄せるしかない――
 どの道、このままでは敗北あるのみだ。
「……そうだな、やるだけやってみるか」
「おっ、流石団長! そうこなくっちゃね!!」
「そんならレイン、お前がこの依頼物は持っとけ。俺は脚をやられてる――動きが鈍ってる奴が依頼物気にかけて更に鈍るより、一番元気なお前が持ってんのが一番いい筈だ」
「ん? あぁ、おっけおっけぃ。任せておいて!」
 故に団長も決意する。陽気に振舞うレインが脱出のための準備を進めつつ。
 その背後にて、小声で周囲と。
「おい」
「ああ。最悪の場合レインだけでも逃がすぞ――」
「あいつは女だ。捕まりゃどうなるか分からねぇし、そうでなくとも若い奴だ。こんな所で終わっちまうのは寂しいわな」
 決意する。
 もはや最良が望めぬなら、せめて次善を。
 未来ある奴の未来を繋ごうと。

●α-1
 首都にまで――でなくともよい。
 近隣の街に辿り着ければラサには幾らでも傭兵がいる。
 だから希望があったのだ。どうにかなる希望が――
「ぉぉぉ逃がすなぁ――!!」
「チィ、しつこい連中だぜ!!」
 だが盗賊団も決して甘くはない。そう簡単に一点突破などさせるものか。
 傭兵達は包囲の薄い所をと見込んだが……しかし駄目だ。
 やはり負傷による動きの鈍さが突破を一歩届かせない。
 周囲の賊が集って来ればやがて殲滅される事は目前で――
「ダメか――仕方ねぇ! 全員レインを援護して逃がせ!」
「ッ、団長!? ダメだよ、絶対皆で……!!」
「俺達ぁ傭兵だぞ!! 甘えてないで目標を最優先しろッ!!」
 だからやはり当初の予定通りレインだけを突破させる。
 彼女に宝石も持たせているのだ。彼女さえ逃げおおせれば全ては果たせる。
 若い命を救う事も、傭兵団としての矜持も。
 皆が助かる事は果たせないが。
 ああ。

 所詮傭兵など、パン屑と変わらぬ命なのだから――

「――あっ」
 瞬間。レインは見た。
 包囲の奥。そこに確かに人影があった事に。
 盗賊団ではない。あんな所に布陣している理由はない。あれは、きっと。
「助けて!!」
 人だ。盗賊団とは関係ない――人だから。
 声を張り上げる。
 自分が傭兵だとは分かっている。それでも優しい皆の命だって諦めたくないから。

「お願い! そこの人!! 皆を助けて――!!」

 だから――例えば偶然の出会いであったとしても。
 通りがかった『貴方達』に助けを求めるのだ。
 希望の光を見たのだから。

GMコメント

 これはちょっと不思議な依頼。
 備考欄にも記載していますがβとの直接的な繋がりはありません。
 よく似た依頼か、或いは――

■依頼達成条件
・傭兵団の死傷者が0である事。
・後述の『宝石』が奪われない事。

 両方の達成。

■戦場
 ラサの砂漠地帯――の中にあるとある遺跡。
 時刻は夜です。月明かりがあるので視界にはほぼ問題ありません。
 遺跡の中は多少の壁や障害物が存在していますが、遺跡故か穴ぼこも多く回り込む(回り込まれる)事も決して難しくないでしょう。

■傭兵団
 ラサで様々な依頼を請け負う傭兵団の一つです。
 メンバーは後述のレインを含めて十人。近遠にバランスの良い編成です。
 今回、とある宝石の運搬依頼を引き受けていました。

 ……が、数で勝る盗賊団に襲撃され戦況は不利に。近くにあった遺跡の中に逃げ込んで体制を立て直そうとしていますが、傷が癒える間もなく、戦況は未だ傭兵団の方が不利なようです。

 戦闘能力は個々人では盗賊団よりも勝っています。
 ただし負傷している人物が多く、戦闘能力やHPが低下している様です。

■レイン・クルジス
 傭兵団の紅一点で、十代後半の若い年齢ながら将来の才覚に溢れた人物です。
 剣を用いる近接タイプ。非常に素早い動きで敵を翻弄させることを得意としている様です。現在、依頼物の宝石を持っています。

■盗賊団
 砂漠地帯に潜む盗賊団です。縄張りにしている地帯に入り込んだ商隊の襲撃などをよく行う連中。今回、貴重な宝石の運搬依頼を傭兵団が行っているとの情報を得て襲撃。数で押してついに遺跡の中へと追い込んだようです。

 確認できるだけで三十人程度はいます。
 強さや武器はまちまちですが、大きな斧を持っている頭目だけは抜きんでた実力を持っている様です。また頭目は周囲R2以内の盗賊団員の戦闘能力をほんの少しだけ上げる指揮能力を所有しています。

■宝石
 鉱山で発見された大きめの宝石で、傭兵団はこの宝石を運搬していました。
 現在はレイン・クルジスが持っている様です。

■備考
 この依頼は[404 Not Found] 09021-βと非常によく似ていますが【繋がりはありません】。例えばβの参加者と出会う事などは【ありません】。ですので両方の依頼に(当選した場合)参加する事も可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • [404 Not Found] 09021-α完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月29日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
ラダ・ジグリ(p3p000271)
天穿つ
咲々宮 幻介(p3p001387)
背で語る
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
黒・白(p3p005407)
エルス・ティーネ(p3p007325)
デザート・プリンセス
一条 夢心地(p3p008344)
殿
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

リプレイ


 盗賊と傭兵がやりあう――ああ傭兵が主体のラサではよくある話だと『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は思考する。特に砂漠地帯が大半であるラサには盗賊が潜みやすい場所も多々……
「――しかし随分と賊が多い様子ではあるが」
 詳しい事情は分からないが、余程重要な物でも持っているのだろうかと。
 されどいずれにせよ同じ事だ。ただ、助けを求められたなら。
「その依頼、受けた! 遺跡へ一度退け――立て直すぞ!!」
 それに応じてみせよう。この砂漠で生きる為に……私達に、商人という商いの者達に。
 傭兵達は重要な存在だったから。
 射撃音。傭兵達を囲み、しかしだからこそイレギュラーズ達に背を向けている盗賊団に攻撃を仕掛け立場を明確にする。貴様らの敵だ、と。傭兵達の味方だ、と。
「『助けて』と言われたら……私は助ける側、になるのかしらね? ふふ、さぁ助けましょ!」
 故に『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)もラダと同様に傭兵達の加勢に入る。まずはとにかく追い詰められている彼らと接触し、共に戦える位置に立たねば始まらない。
 大鎌の形へと変質した己が武具。振るいて舞うは盗賊の一人へ。さすれば。
「むむむのむ。不埒極まる悪漢共に襲われ麿に助けを呼ぶは、見目麗しき女子!
 これは当然、助太刀せねばゆかぬしちゅえーしょん。ならばいざ!!」
 『殿』一条 夢心地(p3p008344)もまた刀を抜いて盗賊へと飛び掛かる。女子の悲鳴に馳せ参じぬ男があろうか? 否である! 大上段の構えより猛進ッ!
 救い求めし者を救う機は彼の士気を押し上げ振るう刀に力を宿し。
「あらあら……何かイベントでもやっている、ていう風でもないのよねぇ~
 あら大変! 盗賊に襲われている子達が居るのね? 急いで助けてあげましょ~」
「全く以て、いつの世も追い剥ぎ盗賊は絶えぬものよな……太古から遡っても気奴らの様な存在が滅びたという逸話を聞いた事が無いで御座る」
 次いで『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)も事態を把握すれば急いで駆け出し『咲々宮一刀流』咲々宮 幻介(p3p001387)もまた傭兵団の布陣へと参戦する――己と言う存在を善人だと騙るつもりはないが、請われたのならば。
「手を貸さぬ訳にもいかぬのが特異点の性で御座る故に」
 振るう。刀の一閃が闇を斬り裂き賊を押しのけ、レストの治癒術が傷付いた傭兵団を覆う。
 ラダの射撃から始まった一連の攻勢。
 予想だにせぬ方向からの襲撃に盗賊たちは慌てふためき。
「なんだ奴らは……傭兵団の増援か!?」
 顔を上げた盗賊団を――『白い死神』白夜 希(p3p009099)が撃ち抜いた。
「時間はない。奇襲の効果もすぐに立て直される筈――今のうちに合流を」
 あと一発放つまでに混乱も収まるとみるべきか。
 一秒一秒が千金の価値を持つかのようだ。動き回り敵を読んで、戦場を駆け巡ろう。
「はっ、砂漠の移動退屈だと思ってたらこんなところに盗賊がいやがるじゃねか……丁度いい気晴らしになりそうだぜ。それに、助けてと言われたからには応えるしかねえな」
「偶発の依頼とは中々に珍しいものですが、まぁこれも依頼と言えばそうなりますか」
 更に黒・白(p3p005407)と『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)もまた傭兵団を支援する――何の前情報も無いが故に、助けを求めた側が正しいとは限らない、が。
「全ては事態を鎮静化させてからなのです。ひと先ずは助けさせて頂きます」
 落ち着いた後で把握すればいい事だとヘイゼルは思考し。
 穿つ。混乱の真っただ中を駆け抜け盗賊団の布陣を崩す様に。彼らの動きを押し止め、負傷者の治癒を施そう。白もまた傭兵の魂を持ちて彼らに施しの光を。
 初手においてイレギュラーズ達の行動は即座の介入と傭兵達の治癒に大きな力を割いていた。救助の依頼であれば傭兵達に犠牲を出させる訳にはいかないし――なにより一塊と成って対抗する方が戦いやすいからだ。
「まさか……君達はローレットのイレギュラーズか!?」
「あらあらそうよ~? よく分かったわね~あぁもう大丈夫よ~お手当てしましょうね~」
 傭兵団の団長が驚愕する。まさかこんな偶然があるのか、と。
 レストの治癒を引き続き受けながら……そして。イレギュラーズの数も含まれたのであれば、強引な脱出をせずとも活路は開ける。
「詳しい話は連中を蹴散らしてから聞く。まずはとにかく戻れ」
 故にラダの声に応じて防衛線を敷くために遺跡の方へと。
 さぁ希望は見えた――ならばここからが逆転の物語の始まりである!


「何してやがるテメェら! 前に進みやがれ!!」
 盗賊団の首領は歯噛みしていた。
 何やら傭兵団には『援軍』が訪れたという――その所為で絶好のタイミングを逃した。
 未だ包囲は崩れていない故に逃がさない体制は整っている、が。
「全く、何もかも粗暴。多勢に無勢は先述の基本であるが故、責める訳では御座らぬが――性根だけはもう少し何とかならぬもので御座るかね? どれだけの物を奪い取っても、品性だけは奪えないで御座るよ?」
 イレギュラーズ達の分の戦力が増えて防備を固められれば先程と同様とはいかない。
 近付く盗賊団の一人を幻介が斬り伏せる――遺跡の内部であれば障害物があり、飛び跳ねる様にして高所を渡るのだ。それはさながら船と船の間を自在に舞う様に。八艘を超える様に。
 しかしわざわざ待ち構えている所に飛び込んでくるとはその我欲の強さに呆れるものである。奴らの様子を見ていれば狙っている物のほかに、うら若い女子を手籠めにしようとしている様も……あぁあぁ醜悪。
「斬り落とせば、少しは大人しくなるで御座るかな?」
 何を、とは口にしなかったが。同じ男としても引く奴らの有り様……見ていられない。
 接近する影を片っ端から捉えて、掃討する様に数を減らしていくとしよう――
「――頭目は少し遠くにいる様ですね。頭を潰せれば敵も散会しそうなのですが」
 そして遺跡の隅から盗賊共の布陣を見るのはヘイゼルだ。夜である故、視界良好とはいかないがどうやら指揮官級が出てきている様子はなさそうだ……近くにまで至れば引き付ける為の術が幾つかあるのだ、が。
「奴らは何を狙っているのでしょうか? 運んでいる物でも?」
「あっ、ええと――コレかな! ボクが持ってる宝石!」
「成程。連中はソレを嗅ぎ付けたハイエナと言う訳か……私は彼女の護りにつこう。
 万一にも持っている人物が判別された場合、一気に危険に陥るだろうからな」
 ヘイゼルの問いにレインが答え――懐に入れていた宝石を見せる。
 中々の輝きだ。さればラダは瞬時にこれまでの事態を把握し、彼女の守護を行わんとする。優れた五感で敵の接近を察知。背後、七時の方向にワン・ショット。
 ――悲鳴が上がる。そう簡単に裏は取らせぬと新たな弾薬を装填して。
「はははっ! こんなちっぽけな宝石の為にあっちもこっちも大層な事だぜ。
 いいだろう――報酬は酒と肉だ! 後でたんまりと用意しておけよ!」
 同時、魔力を収束させ敵へと殺傷の霧を紡ぐのは白だ。
 あまり高くない身長と容姿から繰り出される『今宵の言動』は些か粗暴な様子を伺わせるが――外見? あまり気にするなよ、と白は前へ進む。敵が多い事と遺跡に立て籠もっているが故に混戦ではない今ならば誤射を気にせず全力を出せると。
「この戦力差でその程度の怪我か――やるなお前ら」
 放つ。頭目はどこだと、闇夜に視線を巡らせて。
「あなた方もね、殺すつもりは無いのよ。
 そう……ね。例えば大人しくこの場を引いてくれると助かるのだけれど、ね?」
「ふざけんなよ小娘! 俺達の飯の種を前に退く奴がどこにいるよ!」
 直後。エルスがやんわりと終戦を語り掛けるが――盗賊は拒否。
 舐めた態度だとむしろ激高するかのようだ。未だ数の上での優位が彼らの目を曇らせているのだろうか……ならば止む無し。
「なら――ちょっと痛いぐらいの事は覚悟してほしいものよね」
 舞わす大鎌が彼女の腕の中に納まり、足先のステップで敵の剣撃を躱す。月夜の下で踊る一幕が彼女の集中を高め――鎌の柄で腹部を殴打。
 動きを読み切り翻弄し、逃げ場なく追い詰めての一撃は――さて、しかし殺意に非ず。
 悶絶させ抑える意図を込めた物、だ。
 ――それでも尚に立ち上がるなら次の一手は文字通り容赦は出来ぬけれど。
「そなたらが牙を剥く程に相応の爪が迎え撃つぞよ。
 さぁさ如何する? 屍山血河の果てに奪って見るか石ころひとつ」
 そして別方面では夢心地もまた敵を叩き伏せていた。
 自ら地獄耳とも称する優れし聴覚で敵の接近を察知。成すべき事柄は三つと定め、己が身命を賭けている。
 一つは先程の様に敵をすぐに見つける事。
 一つは賊を撤退させるように振舞う事。
 一つは――
「命との天秤をしてみよ。どちらが重いか、どちらが羽毛が如くか」
 その状況を明確にする為に刀を振るう事。
 いきなりの助っ人により状況は盗賊優勢でないとは分かっている筈だ。浮足立っている様子から露骨だし、ならば獲物の宝石にしても奪う価値がある宝か――? 命の危険を顧みずに特攻する程に?
 そうではなかろうと扇動する。更に臆させれば此方のものだ。
 一度尻込みした者達は、もう前には進めない。

「――来た」

 だがその時『気付いた』のは希だ。
 彼女が見るのは天――否。そこから飛来する数々。
 弓矢の雨である。
 最も始めに傭兵達を襲ったモノか。敵意を、敵陣を捉えながら探っていた彼女だからこそ気付き――故に退避を。屋根のある場所に隠れ、凌がんとする。
 これは総攻撃の始まりの合図だろう。中々攻め切らない事に業を煮やしたか。
「でもソレならそれでもいい」
 弓矢が飛んできたという事は、逆にこちらの攻撃が射手にも届く距離と言う事だ。
 ――ならばその頭を纏めて吹き飛ばしてやろう。
 初手を挫かれ攻めきれなかった時点でそちらは攻勢時を見失っているのだ。
「あらあら~皆、大丈夫~? 今ので怪我をした子はいない? レインちゃんも大丈夫~?」
「はい! ボクは大丈夫! 今のなんかで挫けませんよ……!」
 周囲を見ればレストの治癒によって傷の大部分が癒えている傭兵達がいる。
 元々元気だったレインを筆頭に――皆が活力を取り戻しているのだ。
 攻め込んでくる盗賊達に面と向かって抗えるほどに。ならば。
「さぁ――気奴らにとって『割に合わぬ』時間じゃぞ!」
 戦おう。刀を構える夢心地の視線の先。
 そこには一斉射撃を終えた後に攻め込んでくる――愚かな盗賊達の群れが映っていた。


 幾つもの剣撃。幾つもの銃声。
 ぶつかり合うは意思と意志。宝石に目がくらんだ欲望と、責務を果たさんとする義務感。
 勝敗を決めるは高潔か否かではない。どちらに『力』があるか、である。

 ――もしかすればイレギュラーズ達が盗賊達に味方し、総力で勝る未来もあったかもしれないのだから。

「おおぉぉふざけやがって! 俺に続けオラァ!」
 完全に体制を取り戻し遺跡に立て籠もる傭兵団を崩すのは容易ではない。
 故に頭目が前面へと出始める――部下を鼓舞しその斧を振るうのだ。
 剛腕を持って防衛線を食いちぎらんとする。金目のモノも女も俺の物だとばかりに。
「はっは――なんだよ。今更馬鹿面晒してこんな所に来たのか?」
 されば白の挑発じみた言と共に繰り出される一撃は真っ黒な『腕』
 幽霊の様な白の同胞たちが頭目の周辺を囲み、纏わりつくのだ。所詮我欲に塗れた盗賊であれば容赦はしない――殺意全開でその首を獲らんとし。
「粗暴の権化とも言うべき御方ですね。臭いが移りそうなので近寄らないで頂けると結構」
 次いでヘイゼルの『糸』が頭目へと襲来する。
 それは青い糸。魔力で紡がれたソレは頭目の腕に巻きつくように。
 ――されば啜る。その精神と活力を。されば伴う。痛みによる怒りを。
「ぬぅッ! 舐めやがって、こんな程度で俺を獲れると思ったか!!」
「さて。解釈は如何様にでも」
 引き寄せる――誘う怒りで此方へと。手招きする様に奥へ奥へ。
 青に続いて赤を混ぜ。多重に発動する糸の魔術が一点へ襲来。終わらぬ終わらぬまだまだと。
「来たぞ――火力を集中させろ! この一瞬で、形勢を完全にこちらに引きよせるッ!」
「ああ……勿論だ! 行くぞお前らぁ!」
 そこへ往くのがラダと傭兵団だ。
 引きずり込んだ頭目へ、飽和するほどの攻撃を一気に叩き込むのだ――
 銃撃剣撃魔術に打撃。何でも宜しい、なんでもやれ。
 頭を潰して全てを瓦解させるのだ!
「左。九時の方から迫って来るよ、対応を」
 それでも敵は一人ではない。盗賊団はまだ多く――故にあちらこちらから奥へと援軍が如く参陣してくる。そこへ希は至近距離用の射撃を放つのだ。
 それは敵を吹き飛ばし距離を取る次手の為の一撃。
 安易に接近してきたモノの防御を崩す悪射。頭を上げるな地でも舐めていろ。
「――怖がりは伏せててね」
 連射する。頭部を撃ち抜かれるかもと恐怖させ、鴨にしてやろう。
 無論敵も頭目が前に出てきた影響からか恐れない者も時折いる。盗賊団とはいえ骨のある奴もいるのか――彼らの攻勢は舐めれる様なモノではなく、包囲の輪を狭めて圧殺戦としてくる。
 繰り出される刃。鋭く深く、始末せんとする強き意思。
「ほほっ。賊にしてはやるではないか――然し練武が足らんの」
 それでも夢心地の刃の方が一枚上だ。刀の切っ先が賊の剣先を上回る。
 接触、一瞬だけの金属音の後――叩き落としたと同時に踏み込み振り抜き。
 その腕を肩から切り落とした。
 恐怖を煽ろう。
 ――これ以上前に進めば汝らも『こう』なると。足りなければ足でも落とそうか。
「ひ、ひぃぃ! 冗談じゃねぇ……勝てる戦だからここまで来たんだ!」
「もうお帰り~? そう、じゃあ早くお帰りなさいな~」
 されば段々と奴らの戦意が落ちていく。レストの目に映るのは、逃げ出さんとする幾人かの盗賊達。無理に追う事はしない。逃げるなら逃げるがいい、こちらはとにかく傭兵達の安全を確保できればそれでよく。
「リーダーもこんな感じだし、もう危ない橋を渡らなくてもいいんじゃないかしら~?
 あなた達にも、また会いたい人くらい居るでしょう? ね?」
 だから更に紡ぐ。頭目へと意志の衝撃を叩きつけながら。
 最早そちらに『楽勝』などという道はないのだと。レインと――彼女が持つ宝石を守るべくレストも近くに布陣しながら。
「待て、テメェら逃げるな! くそが! もう少し、もう少しなんだよぉ!!」
 更に激高する頭目――これだけの損害を受けてはタダでは帰れぬと。その思考がもはや目を曇らせていた。
 とはいえ奴の振るう斧の威力は健在。宝石を持つレインを守る様に位置する傭兵達を吹き飛ばし、返しの刃をその胸に受けても尚止まらない。殺されるよりも前に殺してやるという戦意が――折れていない。
「そう。続けるのは勝手だけど……
 これ以上引かないと言うのなら、捕縛と言う手も無くはないのよ――」
 なんて、ね?
 エルスは冗談めかしたような口調を紡ぎながら――跳躍する。大鎌の一閃が天より襲来。
 それは直死の一撃だ。確実な殺意を内包した黒の大顎。
 飲み込む。その命を、その全てを。
「今だ! 皆、あともうひと踏ん張り――ッ!」
 そしてレインの豁然とした一声と共に。皆の一撃が更に紡がれる。
 傭兵団の者達が刃を振るい、希の射撃がラダの射撃が頭目を襲うのだ。倒れよ倒れよと――

「ぐぁ、が、ぉ……寄こせェ! そいつは俺のだ! 俺の、オレ、の……」

 さすれば、息も絶え絶えに成りながらレインを掴まんとする。
 虚空に伸ばした腕は震え、それでも執着心の塊が彼を前へと進ませ、それでも。
「否。最後まで見苦しい――大人しく黄泉路への旅に出るがよいで御座ろう」
 届かせない。幻介の刀が月光を反射して。
 その刀閃を――頭目の首筋へ『するり』と差し込んだ。
 真っすぐに、華やかに。天下御免の一閃は何者をも両断す。まぁ野良犬に手を噛まれたとでも思って……潔くここで死んでもらおう。駄賃はいらない。
「ひ、ひぃ……逃げろ!!」
 であれば残っていた盗賊達も蜘蛛の子を散らす様に。
 一目散に駆け出し――ああもう姿も見えはせぬ、と。
「は、はぁ~助かった……あっ! た、助かりました! ありがとうございました!!」
 そうまで至れば緊張が解けたのかレインがイレギュラーズへと感謝の言葉を述べる。
 ――あのままでは確実に全滅していた。今皆の命があるのは、貴方達のおかげだと――
「ははっ、なんとかうまく切り抜けられたでござるな――
 あぁ。これなら報酬として、酒の一つでも奢って欲しいもので御座る」
「一先ず一難は去った、かしら?
 もう大丈夫そう……いえ、油断は禁物。もう少し警戒はしておかなくちゃね」
 言えば幻介は刀を仕舞い、エルスは念の為にと再なる治療を負傷者に施しながら周囲の警戒を。
 これは偶然の依頼だった。もしかすれば会わなかった、もしかすれば立場が違っていた。
 しかし『偶然』であろうとも、今宵。イレギュラーズは確かに命を救い挙げ。

「本当に、本当に――ありがとうございました!」

 一人の少女が満面の笑みを――灯していたのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

404 Not Found

――お探しの依頼は見つかりません――

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