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シナリオ詳細

《狐の嫁入り 第八幕》黒の封印

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■夏の終わりに
「お呼びですか、お父様」
「ああ、そこへ座りなさい」
 森の護り人が住まう屋敷。その中でも一段立派な部屋を自室とするのは、アングラー・フォレスト。現在の護り人の長である……もうすぐ隠居を考えているが、それはさておき。
 彼が呼び出したのは長女のシルヴィア・フォレスト。一時は喧嘩もしたものだけども、今では良き親子関係になったといえるだろう。そんな親子が、二人きりで部屋で顔をあわせる。
「コルスに聞いたのだが……お前、獅子戦争で黒き影を見たようだな?」
「え、ええ。獅子王様に取り憑いておりました影の事でしたら……」
 先立っての戦争の原因とも言える黒き影。結局その正体は掴めてはいない。獅子王を打倒した際に彼から離れ、霧散しようとしたところをシルヴィアは結界の術で閉じ込め小箱に詰め込んだのだ。今も彼女はそれを持っている。
「……儂の知っている通りのものであれば。それは大変に危険な代物だ」
「……それは、なんとなくは察しております」
 獅子王も言っていた。この影……元は石のようであったが……を見た瞬間に意識を奪われた、と。放置していいものではないであろう事は安易に予測できた。
 それ故に。とアングラーは言葉を続ける。
「それを封印するに良い場所がある。トート様を訪ねると良い」
「大賢人様……ですか」
 シルヴィアは一瞬言葉を失くす。伝説だとばかり思っていた大賢人が実在しているどころか存命であること、それどころかつい先日の海岸でのお祭り騒ぎにはしれっと参加していた事や父アングラーと顔見知りであったことが判明したからだ。
「あの方はこの世界の全てを知るとまで言われるお方だ。きっと、その影についても……」
「わかりました。それではお父様の名代として参ります」
 同時刻。似たような会話を城塞都市の騎士団長とその義娘も行っていた。

■この世界の光
「……ということで。皆にはこの二人……トートさんもいれて三人、かな。の、護衛をして欲しいの」
 境界案内人のポルックスは、すっかりおなじみとなった本を手に、新たに開かれたページを捲る。
「今回、旦那様のコルスさんやイグニスさん、その子供達も全員いないわ。……万が一が起きると大変なことになるかもしれないから」
 二人の女性が持つ物は、この世界の絶望かもしれない。そして、その二人の女性は世界の希望なのかもしれないのだから。

NMコメント

 毎度お世話になっております、以下略です。
 オープニングは割とシリアスしてますが、今回はそんなに大層な問題は起きません。ちょっとした海賊に襲われる程度です。イレギュラーズならよっぽど下手うたなければ問題ないです。
 以下シチュエーションやNPC紹介。
■シルヴィア・フォレスト
■メルティ・ルークス
 今回護衛すべきNPCの姉妹。本人達は攻撃系スキルは苦手ですが回復系スキルは大得意です。何かあったら頼ってやって下さい。
■トート
 この世界の大賢人。護衛すべき対象3人目。今回は彼の魔術により海中及び海底散歩となります。彼が戦闘不能となればバッドエンドとなります……が、魔術師の癖に防御性能がとても高いので気にする必要はないかも?
 移動の為の魔術に力を使うため戦闘には参加しません。悪しからず。

■鮫人×4
 海中を移動中に襲ってくる魚人の一種です。性格が荒々しく肉弾戦が得意。護衛対象の三人を守りながら追い払って下さい。

■シチュエーション:海中散策
 舞台は海の中ですが、トートの魔術により全員なんの問題もなく行動できるものとします。なお水着である必要はありません、多分。
 トートの先導で海の中を進み、海底にある神殿へと赴き。姉妹の持つ封印の箱を収める事が目的です。余力があれば海中散歩も楽しめます。

 以上となります。ちょっとした戦闘もありますが、海中散歩も楽しめる側面もございます。お気軽にご参加下さいませ。

  • 《狐の嫁入り 第八幕》黒の封印完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月01日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)

リプレイ

■海の底へ
「神殿で人が死んでんねんで」
 暑い夏が終わりを告げ、寒々しい冬へと変わっていく。その間にある実りの秋に、海岸にやってきたのはシルヴィアとメルティの姉妹と四人のイレギュラーズ。
 この世界における大賢人トートに用件を告げ、いざ出発となった頃合いに『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)の一発ギャグが放たれた。まだ残暑はあろうかという季節なのに、何故か一気に冬がきた気分になった一行であった。
「……ごめん、気にしないで。忘れて」
「……こほん。では、気を取り直して、これより海底にある神殿に向かうとしようか」
 いたたまれない空気に耐えられなくなったセリアが縮こまり、トートが咳払いをして気を取り直す。
「世界を守るだなんていいねぇ」
 そう口にして、周囲を見渡す『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、護衛が他にいない事を疑問に思っていた。令嬢二人に危険なものをもたせているというのに、イレギュラーズ以外の護衛はいないのだ。
「ワシの魔術も大した事はないからの。最大展開しても10人を守るのがやっとじゃ」
「それに、友人様のお力はよく知っておりますもの」
「皆なら大丈夫、だよね」
 人数制限があり、その上で四人を信頼しているという姉妹の発言に身が引き締まるイレギュラーズ達。
「しかし、見た目はただの箱だけど随分物騒な物なんだねぇ」
 ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)が護人姉妹の手に抱えられた箱を見下ろす。彼女の言葉通り、それはなんの変哲もない小箱にしか見えない。
 だがしかし、今もこの箱には姉妹が封印の魔法をかけ続けている。例えごくわずかと言えど常に消耗し続けている状態なのだ。今はいいかもしれないが、長期間続くと流石に変調をきたすであろう。
 故に、海底神殿を目指すのだ。
「それでは皆、ワシから離れすぎぬようにな。アクアバブルじゃわい」
 トートが大きな右手を空に向けてかかげ、一つの呪文を口にする。すると一行の周囲を透明な空気の膜が包み込み、外と隔離されたような感覚が発生する。
 そのまま海の中へ一歩一歩歩みだすと、水が空気の膜に遮られ入ってこない。空中を浮遊しているような、それでいてしっかり地面に足がついているような不思議な感覚だが、問題なく息も歩行もできるようだ。
「流石ですな、トート殿。……今回は押さずともよろしいので?」
「あれは小僧を教育するための方便じゃったというのに」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)が冗談交じりに以前の出来事を口にする。苦笑を返すトートだが、彼も本気ではないことはわかっている。
 小僧の母であるシルヴィアも何の事か聞いていたので、ああ、と納得したような声をあげた。

■明るく暗い海
 いきなり底を歩き続けても、光が届かない為に周囲が見えなくなるとの事で。まずは光が届く範囲の高度を歩き、神殿の頭上まで行くとの事であった。
 ふ、と。ノアが海底の方を見やる。それなりの距離を歩いてきたからか底は深くなっていき、眼下に広がるのは光の届かない闇の底。
「海底に近づくと光が入らなくなるから海は段々と暗くなるって聞いたね。確かに『黒い影』の封印なら相応しいのかな」
 そんな事を一人思う。ノアはその黒い影を見たことはないが、話の限りではとんでもないもののようだというのは理解している。
 故に、他の生物が寄り付かない海底に、というのは合理的だとも。
「……そろそろ、来るかしらね」
「ああ、客のようだ」
 海に住まう妖精達と意思疎通ができるセリアと世界が、声色を険しくする。先程までののんびりお散歩ムートはここまでだ。
 海の向こうから、槍を持った、或いは素手の上半身裸で鮫のような姿をした魚人達がやってくるのが見えてきた。
「トートさん達は後ろへ」
 さり気なく世界が三人を後方にかばうように立つ。彼の前ではノアとジョージが既に臨戦態勢に入っていた。
「来い! 鮫肌野郎ども! 俺が相手になろう!」

 ジョージの言葉が効いたのか。彼に狙いを定めた魚人達は思い思いの動きで襲いかかる。
 海に住まう鳥人とはいえ、相手は魚人。力量では完全にジョージが上だが水中の動きは相手が上回る。
「しかし、軽い。この程度では俺は倒せん!」
 一人の魚人の腕を掴み、左腕でカウンターを軽く当て。本命のガントレットを装着した右腕で思い切り鳩尾を殴りつける。
「確か鮫ってのは、鼻が弱点なんだったかな?」
 ジョージが殴り飛ばした魚人が一瞬気をやり無防備に浮いたところを、ノアは見逃さない。水中ならではの多角的戦闘を活かし、魚人の頭上からブーツの底で鼻を蹴り飛ばす。
 この一撃で戦意をなくした一人は即座に逃げていく。
「あ、こら。テメェ!」
「よそ見していると、危なぇぞ」
 水中に描かれた陣から世界が呼び出すは巨大な白蛇。術者の意のままに敵に食らいつき、その牙から多数の苦痛、呪いを与える恐ろしき白蛇。
 全身激痛に苛まれる魚人も、これはたまらぬと一目散に逃げ出す。
「命を落とさないうちに、あなたたちも帰ったほうがいいわよ!」
 明るさと暗さが同居する海中に、まばゆい閃光が奔る。セリアの体から放たれた殲滅魔術だ。普段は一発ギャグが好きな彼女だが、決める時はしっかり決める。
「流石ですね、皆様」
「うむ、やりおるわい」
 後方で戦いを見つめていたシルヴィアとトートが、のんきに話し合う。もっとも、終始イレギュラーズが優勢なままだったので心配する必要がないとわかっていたからだが。
「あら、お兄さん。ちょっと怪我してるわ」
 メルティがジョージの左手についた傷に気づく。鮫肌というのはザラザラしており、素手で触れると皮膚が割かれる事もあるのだ。先程殴りつけた時についたのだろう。
「ああ、これくらいなら問題ない」
「だめよ。きちんと治しておかないと化膿するわ」
 世話焼きのメルティがさっさと治癒魔術を施し、傷を治す。「かたじけない」と一言返し、ジョージはもう一度周囲を見渡す。
「どうかな、お二人さん。もう他にはいなさそう?」
「……うん、大丈夫そうね」
「ああ、こちらの精霊も大丈夫だとさ」
 ノアの問いかけに、二人の精霊術師が応える。
「それでは再出発しようかの」

■海底神殿
 トートの道案内ならぬ海中案内の下、やがて底へ底へと沈み始める一行。
 陽の光が届かぬ程の深さになり、周りが何も見えなくなる。本当に道があっているのか微かに心細くなっていく中、トートが声をあげる。
「おお、見えてきたわい。あれじゃよ」
 彼の指が指し示すのはもう少し底。周囲に光源となるものは何もないというのに、ぼんやりと薄く淡く光る神殿であった。
「あれが……」
「不思議ね。なんで光ってるのかしら?」
「ワシが近づけば光るように細工をしておいたからの。皆も目的地が見えていた方が良いじゃろう?」
 流石大賢人ということか。暗闇の中歩くというのは、強靭な精神力をもってしても相応の負担がかかる。それを少しでも軽減しようと予め魔法をしかけておいたというのだ。
「凄いな、トートさんは」
「そりゃ、伝説の大賢人様だもの」
 世界の呟きに、何故か自慢げに応えるメルティ。姉のシルヴィアはどこか困ったように笑いつつも、たしなめる事もない。

「さて、到着じゃわい。この奥に今は使ってない祭壇があるんじゃよ」
 神殿の中に入り、魔術を解除するトート。海底神殿だというのに、空気があるのはこれもトートの魔術か。それとも、古代に沈んだこの神殿故の仕掛けか。
「ところでトート殿。封印は良いのですが、他の者にここが見つかる事は?」
 ジョージが一つの懸念事項を口にする。近くに生物がいる気配はなかったが、万が一の侵入者がないとは言い切れない。
 しかし、トートは笑って返す。
「今この時代でここを知っておるのはワシと、ここへ来たお主達くらいじゃよ。……古代文献を読み漁れるほどの知識あふれるものがおれば別じゃろうが……まあ、ほぼおらん」
 どこか安心しきれないものもあったが、大賢人がいうならば。と納得する一行。
 神殿の奥、小さな女神像が集まり天に手のひらを掲げる祭壇。そこへ姉妹の持つ箱を乗せる。
 トートと姉妹が封印の魔術を重ね、他の者の視界に映らないように変化させる。
「お、おお……私にも見えないわ」
 セリアが驚きの声をあげる。彼女も決して魔術師としての腕は劣っている訳ではない。むしろかなり優れた人物だ。
 しかしそんな彼女の眼をもってしても、そこにあったはずの箱は映らない。
「なるほど。これじゃあ他の生物にはここには何もないとしか見えないな」
 ノアが安心したかのように笑う。他の者の知らない海底神殿の、他の者には見えない祭壇。これ以上厳重な場所はそうそうないだろう、と。
「俺、ここに残ってトートさんに少し鍛えて貰おうかな」
「お主の魔術形態はワシとは違うからの。教えれる事は殆どないわい」
 世界の冗談に、真面目に応えるトート。そこまで言われては、嬉しいやら残念なような、複雑な気分だ。
「……『アーク』もこのような物だったのか」
 ジョージはふと、混沌世界に存在するものを思い出す。実物を見たことはないが、滅びのアークとてこのように厳重に封じられていたのではないか、と。
 では、いつかアークのように封印が解かれる事はあるのではないか?

 一抹の不安を飲み込み、光溢れる地上へと。

成否

成功

状態異常

なし

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