PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<幻想蜂起>暴徒の旗印

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●幻想はただ渦のなか
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演を契機に、『幻想』は大きな混乱の只中に放り込まれていた。
 繰り返される猟奇的事件、日増しに増える被害者、くすぶる不平と積み重なる屍。国の上層部に対する怒りへと転化するには、状況はあまりに整いすぎていたと言えるだろう。
 しかしながら、幻想国民は馬鹿ではない。王侯貴族達が蓄えたのは財のみならず、武力もまた然りである。
 素面で、丸腰の男が兵士に殴りかかることなどありえまい。だから、今この状況は『有り得べからざる事態』なのだ。
 もはや、貴族軍と放棄した市民との激突は必定‥‥その間際で、レオンが彼らを言いくるめて『イレギュラーズによる解決』を提案、受諾させたのはその口の上手さのみではあるまい。
 イレギュラーズが積み上げてきた信頼が、今ここで花開いたと言っても‥‥過言とは言うまい。

「言ってしまえば、幻想貴族に売る恩を積み増しするチャンスだと言える。人死にが少ないのは、俺達にとっても万々歳なんだけどね」
 『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)はそう告げると、「だから諸君、人助けだよ」と話を続ける。
 依頼してきた貴族は、穏健派の――匿名の貴族の申し出だ。自分の所領内という訳ではない。だが、見過ごせない動きを察知した……というのが依頼のきっかけ。
 今回続発している蜂起はおおよそ、怒れる市民の善を基にした奮起である。だが、今、公直の手にあるのはそういったものとは毛色が違う。
「どうやら、ラサで壊滅したっていう『砂蠍』の残党と思われる連中が蜂起の旗振り役をやっているらしい。武器の横流し、前線での扇動、市民の怒りを煽るために混乱に乗じての略奪行為。もう何でもアリってやつさ。貴族サマの依頼は、できるだけその『扇動役』を抽出して撃破してほしい、とそういうワケだ。それが無理なら、彼の軍が出張って皆殺しは避けられないだろうね」
 善良とはいえ貴族は貴族。己の金と命に著しい損が生まれるならおとなしく死を待つ道理はなかろう。
 ただ、他の貴族に比べれば随分と譲歩の余地が残されているというだけだ。ガブリエル・ロウ・バルツァーレク(おんけんは)ほどには穏やかではないが。イレギュラーズに依頼するということは、『最善に持っていくだろう』という信頼あってこそ、という思考も見えてくる。
「それで、残党についてなんだけど。数はざっと見で2桁はくだらない。突出した能力持ちはいないけど、我が身可愛さと命惜しさに関しては図抜けた才覚を持つ連中みたいだね」
 つまり、自分の手を極力汚さず、自分は前に出ず、直接戦闘ともなれば逃げる余地があれば地の果てまでも逃げていく可能性。残された市民達は、中途半端に煽られた怒りを収めるきっかけを掴めず、不退転の暴徒と化すだろう‥‥ということ。
「暴徒は幻想郊外の街で、所狭しと練り歩いてる。放っておけば暴力性を増して周囲を破壊しながら進むこともあるだろうし、もしかしたら暴徒同士で自分の家を壊しただ壊さないだの争いが始まる可能性もある。当然、残党連中には願ったり叶ったり。出来るだけ、早急に撃破してほしい」
 暴徒の数は『とにかく沢山』。個々の実力はともかく、巻き込まれれば無事で済む保証はないだろう。
 気軽に送り出してくれる……ため息混じりに公直を見たイレギュラーズは、それでも相変わらず、申し訳無さのかけらも見せずに笑う男が目の前にいる事態を少しだけ呪った。

GMコメント

 暴徒の歌を即興で作ったら、鳩は飛ぶわイケメンが料理対決始めるわ公共の電波で謝罪会見を始め……はしなかったけど平和で満たされました。三白累です。
 暴徒だと思った? うふふ、盗賊☆ な依頼です。

●達成条件
 『砂蠍』残党の大多数の撃破(捕縛・殺害問わないが後者の方が後腐れがない)

●情報確度
 Aです。能力が不確定な敵や状況などは基本発生しません。

●『砂蠍』残党×10程度
 大盗賊団『砂蠍』の残党とみられる連中。今回は特にその中でも人心掌握と扇動に長けた連中が中心で、暴徒を操っているのは彼らです。依頼達成程度に撃破できれば暴徒は自然と収まっていくでしょう。反面、発見と撃破が遅れれば遅れるほど、手に負えない暴動に発展する可能性が増大します。
 個々人の実力は一般的なイレギュラーズと正面切ってサシで戦って勝率4割くらい。駆け出しなら苦戦するかも、程度であり、武器もせいぜいレンジ3までを狙える投げナイフがいいところでしょう。
 ただし逃げ足は非常に早く、危機察知に長けます。可能な限り狙っていることを悟らせずに撃破する必要があります。

●暴徒×非常に大勢
 戦闘能力に乏しい一般人集団。しかしながら数が非常に多く、巻き込まれれば身動きとれぬままもみくちゃにされてズタボロまであり得る物量です。当然ですが吹けば飛ぶ命。積極的に殺すべきではないでしょう。
 残党もこの中に紛れているため、いかに抽出して打撃を加えるかも焦点となります。

●戦場
 中規模の商人街。手分けしないと回りきれない程度には広いです。残党の指揮統制能力は程度が低いためか、間違いなく暴徒に混じっています。
 家屋内、地形地物などに身を潜めているという可能性は『ありません』のでご安心ください。

  • <幻想蜂起>暴徒の旗印完了
  • GM名三白累
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月09日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
アレフ(p3p000794)
堕ちた光
カザン・ストーオーディン(p3p001156)
路傍の鉄
九鬼 我那覇(p3p001256)
三面六臂
パン・♂・ケーキ(p3p001285)
『しおから亭』オーナーシェフ
ズットッド・ズットッド・ズットッド(p3p002029)
脳髄信仰ラヂオ
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま〜いお菓子をプレゼント♡
獄ヶ原 醍醐(p3p004510)
契約済み

リプレイ

●さざなみは揺らぐ
 手に手にありあわせの武器を手にした暴徒たちが市街地を練り歩く。怒りが頂点に達した彼らにとって、目につく全てが敵対者、悪意を向けていい者達である。
 同じ『暴徒』という連帯がなければ、即座に方向性の定まらない暴力は互いを傷つけ、死者と負傷者をまたたく間に広げていくであろう。『普通』ではない。『自然』でもない。それは歪に組み上げられた人工物のような不自然さを醸し出していた。
「此処に来て幻想が大きく揺らぐか」
「お祭り騒ぎは好きだけど、こういう騒ぎはのーさんきゅーだねー。楽しくないもんね」
 『堕ちた光』アレフ(p3p000794)と『特異運命座標』猫崎・桜(p3p000109)は市街地南側に陣取り、人の流れを観察していた。目立たぬように最小限の装備に抑えたためか、桜はいささか得物の感触になれぬ様子だ。だが、その目はわずかな違和感も逃すまいと、鋭い視線を送っていた。
「敵の数は多い上に逃げ足が早いときた。厄介極まりない」
 アレフの顔に浮かぶのは明確な嫌悪。自分の手を汚す気も、危険をおかしてまで貫くほどの強固な信念もなし。愉快犯という表現が相応しい。
「声を聞き分ければ一発で先導者を見つけられると思ったが……ある程度近づかねば無理か、面倒な」
「大丈夫、見つけさえすればすぐに倒せるよ。見つけ次第、逃げ道は塞ぐからね♪」
 アレフの懸念をよそに、桜は笑みを浮かべて人混みへと近づいていく。巻き込まれぬ程度に、怪しまれぬ程度に、距離を詰めて人々の目を、顔を見ながら。
 人々があらわにする怒りは、なんとも純粋で……それでいてしごく単純。誰かに誘導されたから怒っている、という主体性の無さが一部には透けて見える。

『混乱は不安を呼ぶ』『仕方ないよね』
 『脳髄信仰ラヂオ』ズットッド・ズットッド・ズットッド(p3p002029)のもとから流れるノイズ混じりの声は、暴徒の怒りの根底にある不安を敏感にかぎとっていた。社会不安を背景にした暴動といえばまさにそのとおりなのだが、『幻想』の状況を考えるに、命をなげうってまで暴走しても実りがないのは明らかだ。
「我輩、理解したである。……しかし、我輩に怪しい連中を探す技術はないのである」
『肉の壁は』『なかなかに厚い』
「先導にはおれも心得がありますので、経験則と勘ですかね」
 ラジオの声に追随するように、ズットッドが応じる。イレギュラーズが分散しての探索は、相手の一人暴動の規模を鑑みてのこと。だが、分散した際に探索できる人間がゼロというのもいただけない……ズットッドの経験がどこまで有効に働くかも、彼ら2人の任務の達成度を左右する要素であると言えた。尤も、我那覇の『外見』がもっとも単純に懸念事項であることに異論あるものはおらぬだろうが……。

「幻想がすごく……ひどい揺らぎを感じる……!」
 『契約済み』獄ヶ原 醍醐(p3p004510)、否、『魔法少女・鳴海ほのか』(以後ほのか)は抽象的ながらも、現状の危機感を正しく理解していた。その雰囲気が不自然に生み出されたものであることも、肌で感じていた。
「このまま放置すれば、砂蠍は配下を手に入れて規模を広げ、無く子も増えるということだ。……不愉快だな」
 『路傍の鉄』カザン・ストーオーディン(p3p001156)は全身をくたびれた意匠に包み、苦々しげに吐き捨てる。『砂蠍』残党がこの状況を利用したのは偶然だろうが、されるがままの現状が生まれたのは……間違いなくこの国が抱えてきた病巣そのものでもある。
「先導してるくらいだから声が大きくて派手な人を狙うのがいいわよね」
 ほのかは取り立てて『探索』に適切な能力を持つわけではない。だが、人々が救いを求める声を聞き分けることが出来る。カザンもしかり。言葉で扇動を繰り返し、かつ『助けを求めていない』相手がいれば明らかに敵である。それを抽出するのが手間なのだが、探索能力とセットであれば多少は有効であろう、と踏んだのだ。
 ほのかはそのまま群衆の外側から動き出し、カザンはあえて目立たぬ格好で群衆に入り込んでいく。人々の目はカザンには目もくれず、先へ先へと進んでいく。

「妖精のボクも動かなきゃいけないなんて世も末よね~」
 『あま~いお菓子をプレゼント』タルト・ティラミー(p3p002298)は街の外周を回りながら、不審な存在がいないかをつぶさに観察する。他の面々がそうするように、北から東へ向かって不審者を捜索する流れだが、彼女は内側からの動きも十分に警戒していた。目ざとい相手なら、仲間の状況も把握した上で逃走に転じるだろう。どこまで効率良く狩り出せるかは、正直なところ仲間に頼るほかはない。
 彼女の利点があるとすれば、極めて小さなその体と下位の精霊を操れること。意志の伝え方次第とはいえ、かなり柔軟な行動が取れることは間違いない。
「どこの土地でも、民衆の反乱というのは精算的でないものだな。……彼らの腹が膨れれば、もう少し話は変わるのだろうか」
 『『しおから亭』オーナーシェフ』パン・♂・ケーキ(p3p001285)はその身がそもそも食欲をそそるナリであるのだが、彼自信も食っていかねばならぬ身だ。元の世界でも『混沌』でも、無益な争いは多少なり見てきているのかも知れない。
 とまれ、人ならずとも探すことには慣れている。カマをかければ容易に相手を狩り出せるだろう。……彼の目算は、概ねにおいて間違っては居ない。相手の行動がどこまで自由にできるか、というその一点を十二分に考慮する必要はあったのだろうが……。

●狩り出せ、蹴散らせ、踏み潰せ
「ここまで人の感情が荒れ狂ってると、想いだけじゃ扇動者をあぶりだすのは厳しいね……」
 ほのかは不安げに呟きながら、人混みをかき分け、南へ向けて進んでいく。彼女の怪態な格好はさすがに多少のひと目を引くが、大勢に紛れてしまえば個性の1つで片付けられる。
 問題は、『彼女』が想像していた以上に探索が困難なこと。そして、いざ見つけた時にどう連携を取るのかという明確な指針に欠けていたことである。
 ……これは『彼女』のみの問題ならず、任務に赴いたイレギュラーズの実に半数近くに言えることではある。ツーマンセルで行動している以上、2人で1人を狩り出す要領で扇動者を潰していけばそう苦戦せずに倒しきれよう。
 『砂蠍』の残党に手練はいない。黙々と、淡々と倒していけばいずれ終わる戦いだ。
 効率的な探索の是非は大きいものの、口にするほど難しいものではない。
 現に、カザンとほのかは同じ相手を敵とみなした。群衆に揉まれながらも声を張り、小さい身振りながらも確実に襲撃と暴走を煽る立ち居ぶるまいはどう考えても『悪』である。
 ほのかは勝利が近づいた事実に対する快哉を、口から迸らせようとして。とっさに己の口を強く押さえた。その態度に、すわ体調不良かと気遣い半分、不審者を見る目半分で周囲の視線が向くものの、ほのかは平気だと首を振った。ここで大声を出せば、カザンは確実に敵を殺すだろう。10分の1は、依頼達成に近付くだろう。……だがそれまでだ。その騒ぎを聞きつけた残党が1人ならず逃げてしまうのは、不味い。
 カザンはするすると残党に近付くと、すばやく拳をその腹部に叩きつけ、魔力のこもった一撃で相手の足を止める。驚きに声をあげかけた時には、すでに頭上から術式が降ってくるところだった。……驚く間も与えられずに、ぐったりと倒れ込んだ残党を抱え、カザンは人混みから抜けていく。

(声は雑多だが、大きい声を出す者というのは自然と目立つものだ。これだけの人間を誘導する手腕は厄介だが手段は限られる……迂闊だったな)
 アレフは、研ぎ澄まされた聴力で声の大きさや声色の違い、方向性などから確実に扇動者に近付きつつあった。その予感を確たるものにするには、近付く必要はあるが。それでも相手が迂闊であることに変わりはない。
 暴動を激化させる扇動手段など、数種類に限られる。声を張り上げるのが簡単な以上、誰だってそれを選ぶ。それが敵を招き寄せるとまでは考えが及ばなかったのは、哀れであるが。
(目標確認……アレフ君の逆側に動けば、逃げられないね。正面から立ち会えば確実に倒せるんだから、気負わない、気負わない……)
 桜はアレフの動きに応じるように、逆側からじりじりとにじり寄る。普段なら目立つ格好も、変化と扮装によって相当、目立たなくなっている。そして、桜はアレフよりも先んじて扇動者を特定していた。壁や障害物を透視できる分、やや視界が開けていたというのと。彼女の魅力が有効に作用し、男達が彼女の足取りを邪魔しなかったというのが大きい。
「私も幻想について不安に思っている事があるんだ、仲間に入れて貰えないだろうか」
 アレフは市民の1人に人好きのする笑みで語りかけると、肩を掴む手に力を込める。
 害意の感じられぬ善良な市民の顔のまま、彼はその手に魔力を流し込む。再生能力の逆回し。手に込められた真意を理解するより早く、市民――扇動者は遠ざかる意識を決死の覚悟でつなぎとめる。逃げられぬと悟った顔でナイフを突き込むが、あまりに遅い。2度目の逆再生を受け、男の命脈は寸断された。
「なっ……ンだよアレは、話に聞いてねえ」
「はーい、逃げたりしたらダメだよ♪ 大騒ぎにもしたくないからささっと無力化されてよね」
 その状況を視界に収めた男が逃げようとするが、回り込んだ桜が突き出した銃口までは逃れようがない。人混みに押され狙いが狂うが、外すほどには離れていない……だが、近くを狙うに向いてもいない。人混みを突っ切って足止めするにはやむを得ない判断だったが。響いた銃声はじつに3発。抵抗を奪うのは、なかなかに難しいものである。

『気を逸らせてはいけません』『タイミングは見極めて』
「この距離から狙うのは手間ですが、相手が人なら問題ないでしょう」
 ズットッドはノイズを撒き散らしながら、石畳を擦る勢いでガトリング銃を手に群衆の中へと突っ込んでいた。……一言で言えば過剰武装。控えめに言っても、かなり目立つ。周囲の人々が彼の威容に驚き、あるいは避けて通るが、それでも大きな騒ぎにならないのは恐らく、彼の言葉が群集心理に巧みに作用する話術たるがゆえであろう。『ラジオ屋』を名乗るだけあり、心得はあるようだ。限度はあるのだが。
(いささか周囲が騒がしいようであるが、大丈夫であろうか?)
 我那覇は長尺の棒をつとめて周囲に当たらぬように動きながら、慎重に周囲を見回して移動する。さすがに自身の姿が異常であることは心得ているのか、その身をローブで包み隠してはいるが、その分探索力に欠ける。もとより探索に足る能力がない彼と、過度に目立つズットッドの組み合わせで扇動者を探すのは正直、手間だったことは否めない。幸運が我那覇の前に転がり込んできたのは、ひとえに偶然の産物と言わざるを得ない。
 『砂蠍』の残党が隠す気もなかったのは大きい。彼らが目立っていたのも、あるいは類縁を呼ぶ形で作用したのだろうか。ともあれ、見つけた以上は逃しはしない。
 棒を地面に3度打ち付け、我那覇はゆっくりと残党へと近づいていく。慎重に慎重を重ね、自らの肉体に再生術式まで付与した上での接近。
 だが、彼が拳を振るうよりも早く、慮外の銃声が連続して響き渡る。
 重火器から吐き出された弾丸が、驚くべき集弾性をもって残党の男を打ち据えたのだ。ズットッドの持つガトリングからは硝煙が立ち上り、周囲の人々は悲鳴と驚きと明確な敵意で彼へと殺到する。
 この流れに飲まれてしまえば、残党を逃しかねない。ローブを剥ぎ取った我那覇は、6本の腕で泳ぐように人並みをかき分け、うずくまった残党に六腕武闘法による連撃を叩き込む。
 いささか以上に派手な立ち回りをもって、我那覇は残党を1人片付ける。その代償が、小さいわけもあるまいが……。

●流動する混乱
 遠くであふれる混乱をよそに、タルトと精霊達は人波をかき分けて残党の探索を行っていた。命令を単純にした分、精霊はタルトの意図を正しく理解して動く。彼女自身の矮躯もあって、目立たずに探索できるのは非常に大きい。
「ここまでわかり易いと申し訳ない気分になるな……タルトにはあとで礼を述べねば」
 パンは、彼女の操る精霊が発した光を頼りに残党と思しき相手に近付いていく。彼は『礼の代わりにその体をよこせ』と告げられる未来に気付いていないのだが、知らぬがなんとやらである。ついでに言えば、彼の存在感は周囲を歩く婦人方を魅了してやまないのだが、そっちは彼の意図通りなので問題ないらしい。……ひと目を大いに引くことが有利か不利かは、語るまでもないだろうが。
「撤収だ。キングが……」
 言葉を濁したパンの言葉に、振り返った男は訝しげに表情を歪めた。まあ、当然であろう。その『顔立ち』をもって近付かれて、異常と思わぬほうが無理な話なのである。
「なんだァ、お前。キングが……なんだって?」
 当然ながら。男の反応は険が混じったものになる。自らの頭領たる男の通称を口にする、見知らぬ(当然過ぎるが)相手。異様な手合いが何事かいいかけて語尾を濁した事実は、彼ならずとも異常と思わぬほうが不思議である。
「……ご婦人方、腹が減ってはなんとやらです。頃合いを見て炊き出しなどをお願いできませんでしょうか?」
 パンは口の前に指を当て、男に目配せしてから婦人達に向き直った。彼の笑み、彼が放つ匂い、外見は女性の意識を強く惹きつけ、言葉の説得力を増した。
 ……だがそれが逆に、直前まで言葉をかわした男の不信感をさらに強める結果となったおは皮肉というほかないだろう。
 男はパンが女性達に話しかけている間に、即座に踵を返して脱兎のごとく逃げ出した。足元に火薬玉……別世界では『癇癪玉』と呼ばれるそれを投げはなって騒ぎを起こしながら、巧みにパンとの距離を空けていく。これは、完璧にパンの想定外だった。人払いができれば幸いと状況を味方につけ、以て相手を生け捕りにしようとしたのだが、不自然過ぎては無意味だったのだ。
「いやねぇ、逃がすワケないじゃない☆」
 タルトはその様子を確認するなり、アイスキャンディを思い切り放り投げる。遠距離から飛び来たった謎のアイスキャンディをぶち当てられ、男が動揺とともに足を止める。次の瞬間、驚きとともに持ち上げた彼の腕が、手首から先が『ないように見えた』のは素晴らしくハードなジョークであったが……ともあれ、その男は倒れ込み、血の海で意識を失った。

「……まずいな」
 アレフは、さざなみが津波となるように、次第に騒ぎが大きくなりつつあることを肌身で感じ取っていた。
 彼の知りうるところではないが、些細な違和感、中規模な騒ぎ、そして残党達の撤退の符丁が折り重なることで、違和感は決定的なものとなったのだ。
 暴徒を上回る暴力性が人波に『ありのまま』放り込まれ、イレギュラーズの違和感が素のまま叩き込まれればどうなるかなど……子供に寓話を語って聞かせるよりも簡単な顛末だ。
 殺害無いし、捕縛できた人数は半数あまり。
 残りわずかな残党達は、人混みと混乱の中へと消えていく。
 この顛末が、いかなる事態を呼び込むか……今はまだ、語るときではない。

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 何といいますか……違和感というのは簡単に拭えるものではありません。
 人混みが割れれば、それは荒事かモーセかその他なにがしか、という感じです。流石に暴徒でも、自分を超える暴力には近付きたくないですからね。
 今後どうなるかは不明ですが、ある程度は『よくやった』のだと思います。

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