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シナリオ詳細

銀閃の乙女と平穏を望む者

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「フィリベルト殿。調子はどうだ?」
 錆びれた廃屋に訪れた『銀閃の乙女』ユリアーナ(p3n000082)は、部屋の中で中央に座す男を見て語りかけた。
「ふん、皮肉としては上等だな。何をしに来た」
 聞かれた盗賊面の男は鼻で笑って答えた。
 食事はちゃんとしたものを与えられているのか気力が充実しているのが声で分かる。
 室内は廃屋だが、手足に枷の類もないし、脱出には向かないが窓から日差しも入ってきている。
「皮肉のつもりはなかったが……いや、そうだな、皮肉にも聞こえるか。
 君の同胞たちについてだが――鉄帝は彼らと講和を図ることになった。
 君は知らんだろうが、帝都で騒動が起き、遥かな東方では小さな国が興った。
 そこでまぁ、小さな火種はそろそろ解消しておきたいのが上の考えだ。
 なにせかれこれ一年以上、彼らは籠城しているわけだしな」
「……俺にそれを聞かせてどうする」
「単刀直入に聞こうか、フィリベルト殿。
 君は――君達は、東からの流れ者か?」
 ユリアーナの問いかけに、フィリベルトが一瞬だけ動揺を見せる。
「ふふ……教えてくれてありがとう」
「まて! 何も言ってないぞ!」
「今ので十分だよ。それに、状況を動かす理由は出来た。
 君に関してもそろそろ解放を考えている」
「よく言うぜ。アンタ、俺がいつ逃げてもよかっただろ」
「さぁ、どうだろうな」
 さらりと笑みを返したユリアーナはそのまま踵を返す。
「ちっ……食えない女だ……」



「君達に仕事を頼みたい。あぁ、君達も好きな飲み物を頼んでくれ」
 帝都スチールグラードにある小さな酒場に訪れた君達に依頼人だというユリアーナは呟き、そっと資料を手渡した。
「ここに古い砦がある。一年ほど前にここを不服住民が占拠してな。
 一度、ローレットに仕事を頼んだのだ」
 そういうと、ユリアーナは注文した飲み物を一口飲みこんだ。
「はっきり言うと、不服住民たちに内通する者がいる。それをあぶりだし、対処をしたかった。
 ローレットのおかげで不服住民の迎撃部隊の隊長を捉えることができてな。
 彼を使って何か動きがないかと考えていた……が。帝都方面では騒動が起き、東方にも国が興った。
 そこで今なら上に掛け合ってより整った条件で交渉ができないか上奏したのだ」
 そう言うと、ユリアーナがちらりと資料に視線を向ける。
 それを見て、君は資料に視線を落とした。
「俺達の仕事は……アンタの護衛か?」
「あぁ。これから私は砦側と交渉を行なうことになった。
 その交渉の場で、君達には私を護衛してほしい」
 そういうユリアーナから視線を外せば、他にも条件があるのが見えた。
「――内応者の捕縛?」
 小声で呟いた言葉に、ユリアーナが飲み物を飲みながら視線を向けてきて、しぃ、と口元を抑えた。
 あぁ、どうやらただの交渉の場ではないらしい――――


「ねぇ、本当に行く気なの?」
 黒一色の衣装を身にまとった、艶のある黒髪の女が大柄な男へしなを作ってもたれかかる。
「あぁ……もう限界だ。物資の手助けを貰ったところで、1年間もこんなところにずっといちゃあ気が滅入る」
「うふふふ、おかしなことを言うのね……ハイエスタが聞いてあきれるわ」
 女は男の身体に指を這わせて弄びながら、愉しげに笑うと、ポンっと男の胸板を叩いて起き上がった。
「トール様、大丈夫ですよ。だって、今回の交渉に出てくる女は今回の包囲網を呼びかけた女。
 うふふ、彼女を殺してしまえば、包囲網は瓦解しますわ」
 女の言葉に、トールと呼ばれた大男が目を見開いた。
「そ、そうなのか? しかし……いや、交渉の場で殺すなど、誇りを汚す行いだ」
「あらあら……そもそも、最初に交渉を蹴ったのはこちらでしょう? なに、一度蹴るも二度蹴るも同じよ」
 女はトールの肩に手を置いて、背中に回ると、そのまま覆いかぶさるように耳元でささやいた。
「ねえ、殺しましょう? それがいいわ」
「う、うぐぐ……」
「それじゃあ、少しだけ時間を差し上げますわ」
 そういうや、女はその場を後にし、迷いのない歩みでどこかへと消えていく。

「……計画を進めましょう。そちらにとってもあの女を殺すのは利があるはずよ」
 女が迷いない歩みで訪れたのは砦の中でも城門に近いとある場所。
 建物の影に隠れ、女は現れた男に声をかけた。
「あぁ……そうだな。そっちはどうしてもあの女を殺したいらしいが」
「ふふ、別に。私はただ、上司に頼まれてやってるだけよ」
 小さく笑った女がその場を後にする後ろで、先程まで話していた男が舌打ちする音が微かに聞こえ、空気にとけた。

GMコメント

さて、そんなわけでこんばんは春野紅葉です。

当シナリオは以下のシナリオに関連する物ですが、見る必要はありません。
『銀閃の乙女とまつろわぬ者達』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1640)

それでは早速詳細をば。

●オーダー
【1】ユリアーナの生存
【2】講和交渉を無事に終わらせる
【3】内応者の捕縛

【1】【2】は絶対目標
【3】は努力目標です。

●状況
講和交渉は上述した依頼において
イレギュラーズが作成した陣地に建てられたテントで行なわれます。

テント内においては砦側の代表者3人とその護衛2人、
対面にユリアーナが座って講和交渉を行ないます。

通常であればともかく、講和交渉という事もあって
今回、ユリアーナは武装せずに臨んでいます。
奇襲を受ければ重傷を負いかねません。

●NPCデータ
・『銀閃の乙女』ユリアーナ
今回の護衛対象です。丸腰のため、基本的に戦闘能力はありません。
素手でも戦えはしますが、武装している者を相手にするのは分が悪いです。
ある程度の回避力はありますが、交渉中は椅子に座って交渉しており、咄嗟の行動ができません。
初手が当たれば必ず【防無】攻撃の判定になるでしょうし、当たりどころが悪ければ重傷を負います。

・『茶鬚』トール・オールストレーム
二つ名の通り、たっぷりとした茶色の鬚が特徴的な鉄騎種の大男です。
実は現在でハイエスタと呼ばれる部族の中での小さな集団の長です。
短期間の群雄割拠の中で敗北し、流れに流れて流れ着いた者達です。

雷神の末裔を称する誇り高き高地部族であることには変わりませんが、
一年にも及ぶ籠城で砦側の人々は疲弊しており、条件によっては降伏もやむなしと考えつつあります。

・『一ツ目』ベイセル
切れ長の赤い隻眼が特徴的な人間種の男です。
トールと共に交渉に臨みます。今回の案件には反対です。
部族が流浪する際、この地を目指すことを提案した人物のようです。
普段は城門の防衛に務める大将らしいですが……?

・『黒き智嚢』ベルガ
人間種の女です。冷静で狡猾な性格、トールの参謀です。
交渉の場にトールと共に臨みます。
一年にも及ぶ籠城は彼女の提案であり、今回も降伏には反対です。
見た限りハイエスタ出身っぽくありません。

・『迅き者』ディーター
鉄騎種の男です。砦側の護衛集団を引き連れた隊長です。
テントには入らず、周囲を歩いていますが理由は不明です。

・テント内護衛×2
共に鉄騎種の男です。ライフルのような武器と剣を持っています。

・テント外護衛×10
テントの外で待機するディーター指揮下の護衛兵です。
ライフルを装備しています。

●交渉内容
・鉄帝国
鉄帝は今回の講和に対して、幾つかの条件を出しました。
1つは『現在占拠中の砦を降りて暮らす』こと
1つは『占拠していた砦の正式な破棄に抵抗しない』こと
1つは『今後、鉄帝に対する反対行動を行なわない』こと
1つは『砦側に内通し、砦側に物資を与えている者を鉄帝側に教える』こと
これ以外の条件は基本的には存在しません。

・オルストレーム部族
トール側からは恐らく、幾つかの条件が提示されると推察できます。
1つは『降伏した場合の身柄の保証』
1つは『出来る限り集団ごと暮らせる場所の提供』
1つは『フィリベルトの解放』
これらの条件はトールが持っている物ですが、
どうやらこのままではその条件が持ち出される可能性は低そうです。

●その他
また、今回は護衛するだけでなく、皆さんも交渉に話を持ち込むことも出来る他、
ユリアーナ側での立場に限っては事前に何らかの準備を行なうことも出来ます。

相手側の誰が敵であり、誰が味方なのかの様々な手で探れば、
内応者の発見も難しくはありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はB-です。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点が多く、
 情報の読み込みと予測が重要になります。

  • 銀閃の乙女と平穏を望む者完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月28日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
マルク・シリング(p3p001309)
マリア・レイシス(p3p006685)
神鳴る鮮紅
ソア(p3p007025)
雷虎
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
リズリー・クレイグ(p3p008130)
C級アニマル
アルテラ・サン(p3p008555)
晋 飛(p3p008588)
朱の願い

リプレイ


 しんと、張り詰めた空気だけがテントの中を包んでいた。
(戦争になれば、関係ない人たちが巻き込まれ、飢える。
 冬を迎える前に、和平を実現したいね)
 故郷のような悲劇を繰り返さぬためにも。
 そう心に決めるマルク・シリング(p3p001309)は、外で待機している10人ほどの銃兵をファミリアーとの視界共有で抑えていた。
 その一方で、視線はもう一つ、依頼人のユリアーナと向かい合う3人の内、両脇を固める男女からも目を離さない。
「交渉の前に良いかな?」
 静かに向かいの3人に視線を送る『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)を、中央の男が見上げてきた。
 たっぷりとした茶鬚をした男だ。
「私達は彼女の護衛役でもある。
 彼女を害そうとした時点で交渉は決裂、そちらの要求は通らなくなる可能性が高まる」
 マリアの言葉にユリアーナがうなずいてくれた。
「あぁ、要求があれば精査し可能な限り尊重する。
 少なくとも一方的にこちらの要求だけを押し付けることはしないさ」
「彼女もこう言ってくれている。
 交渉とはお互いのメリットデメリットの程よい落しどころを見つける為の場であり、
 そちらの要求を聞かない事には何も始まらない。
 決して今よりは悪い事にはならないから、要求があるなら言って欲しい」
「アタシからもいいかい?」
 続けるように声を出したのは『C級アニマル』リズリー・クレイグ(p3p008130)だった。
「……トール・オールストレーム、雷神の末裔よ。”名に相応しき”振る舞いを望む」
 同じヴィーザル地方を出身に持つリズリーの言葉に、トールも微かな反応を示す。
「うん。条件とか内応とかボクには難しいけれど、雷神の名前に恥ずかしくない誇りのある道を選んで欲しいな」
 同じように頷いた『雷虎』ソア(p3p007025)がそれに続ければ、暫しの沈黙が訪れた。
 静かに開始された講和交渉を聞きながら、アルテラ・サン(p3p008555)は入り口付近に立つ護衛らしき者達に視線を向けている。
「ふふふ、そうは言うけれど、そちらが無下にしない証拠がないでしょう? ねえ、トール様」
 流し目でトールに視線を向けたのは女だ。
「……ベイセル、何かあるか」
「私は……兄を、フィリベルトを解放してほしい」
「構わない。この交渉が終わったらすぐにでも解放しよう」
「あら? 一人ぐらい送って連れてくればいいのではないですか?」
「口を挟む必要があるのかい? 頑なに否定する必要はないと思うけど」
「そうです。まずは言ってみてくれませんか?」
 マリアの言葉にマルクが続けた。
「会議せずに個々人に色々提案するやつとか。
 英雄譚ではそういうのが怪しいんだぜ!」
 割って入るように言ったのは『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)だった。
「そもそも、この講和もまさに最大限の『譲歩』のはず。
 貴方について来た者達、戦える者達だけではないでしょう」
 反応を示したベルガを横目にサンは静かに声を出した。
「これ以上長引かせてもそれが長として本当に正しいのか……えぇ、よく考えてよくお決めください。
 当初の目的と今の悪戯に長引かせるこの状況を、本当に貴方は望んでいるのでしょうか?
 そこまで言って、サンは明確にベルガを見据えた。
「交渉で解決出来ればいいですが。
 中々どうして……貴方のお仲間、
 特に信頼を置いている者ほどこの講和をお望みではないようです……」
「そう、そうですか……では、私は退席しておきますね」
 そう言うと、ベルガがその場で立ち上がって、テントの外へと歩いていく。
 それに続く様に護衛兵も動いていった。


 テントの外にいる『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)と『朱の願い』晋 飛(p3p008588)は情報を聞き出すべく砦側の兵士達の下へ訪れていた。
「俺はローレットの者だ。この世界は自分の故郷と違いすぎてなんでも珍しくてね。
 良かったら話を聞かせてくれないかな?」
 修也の時翔けに直立していた兵士の一人がちらりと視線を向けてくる。
 それを皮切りに、その兵士と修也は雑談しながら相手の事を聞きだそうと試みる。
 一方の晋 飛は若干ながら砦側に同情の意思を見せる。
 表向きの演技を続ける晋 飛はAGを呼び出している。
「交渉なんざ面倒だ、戦って勝ち取るのが信条にも合うだろ? お互いによ」
 肩を竦めながら、そんな文句を述べてみる。
「ああそうだな。講和には反対だ」
 ディーターがこくりと頷いた。
「そういえば、最近おたくらの所は景気が悪いらしいな、あれこれやってんのはそのせいかい?」
「さぁな。俺にはよく分からん」
 肩を竦めたディーターがそのまま踵を返す。

 入り口から死角になる位置へとディーターが消えていくのを修也は超視力と超聴覚で聞き耳立てていた。
「そう、そうですか……では、私は退席しておきますね」
 テントの内側から聞こえてきたベルガの声がして、護衛兵2人を連れて現れた。
 護衛兵を入り口に待機させたベルガは死角になる方向へと消えていく。
 片耳に話しかけた砦側の兵士達と雑談を交わしつつ、意識は常に敵を見ていた。
 不意に、銃声がした。思わず振り返る。
 空――一羽の鳥が銃弾を受けてテントの上へと落ちていった。
 拙い、そう思って動こうとしたその時だった。
「少しお待ちください。お話がまだ済んでませんよ」
 テントの方へと回り込んできたのは先程まで話していた兵士だ。
「話してる場合じゃないんだ」
 黒蓮之祓の呪文を媒介として魔術を放つ。
 打ち据えた一撃に対して、その兵士が蹲る。
 そのままその場を離れようとして、背中に確かな圧を感じた。
 兵士達が動く。晋 飛はそれを知るや一気に走り出していた。
「あらあら。ちょっとお待ちくださいな。お兄さん」
 穏やかに笑うその声は、ベルガのもの。
「邪魔だァ!」
「あなた、うちの味方じゃないでしょう? だって――見たことないものね」
 女の両手に術式が浮かび上がる。すぅと細められた双眸に殺意がこもっていた。
 その後ろで、テントを囲うように敵兵たちが動いていく。


「――ッ!」
 一瞬、腹部に痛みが走る。ベルガとディーターが立ち話をした直後の事だ。
 シャットアウトされる共有される五感。拙いと、そう声を上げようと口を開いた。
「殺意――」
 リックの感情探査にそれが引っ掛かる。
「来るよ!」
 ソアは透視の向こうに見える銃を携えた敵兵がテントを囲おうとしているのを見て、雷光の如く駆けた。
 透視で敵の様子は見えるが攻撃するにはテントが邪魔だった。
 何より微かな動揺を見せるトールとベイセルの様子に、これが彼らさえすら知らないことであると見て取れた。
 びりびりと、テントの幕が破られ、銃身が、眼が覗き。
 テントの入り口から一人の護衛兵が姿を見せて――火を噴いた。
「屈みな!!」
 リズリーはユリアーナを突き飛ばすように屈ませる。
 あらん限りの銃弾がイレギュラーズを、ベイセルを、文字通りの弾幕を以って貫いた。
 もちろん、それだけで潰れるほどやわじゃない。
「――お前たち、やってくれたな!」
 マリアの正確な回避により、その傷は浅い。
 蒼雷を纏い、テントの入り口から入ってきて銃を構えていた一人へと流星の如く爆ぜ一撃を叩き込む。
 精密な弾丸となった自身を、その兵士めがけて叩き込む。
 サンは魔術具の魔力を元手に黙示禄を詠唱する。
 破壊を肯定する重く低い詩が仲間たちに気力を与えていく。
 リックはタクト・オブ・グレイゴーストを振るう。
 奏でるは戦いに高鳴る鼓動を齎す赤き彩り。
 戦場の熱気が辺りを包み込む。
 マルクはアムネジアワンドより強烈なる聖なる光を放つ。
 自らを中心とした広域に広がる聖域の祝福がリズリーの傷を癒していく。


 テントの外側から切り裂いて視界を確保、一斉に内側に向けて放たれた弾幕。
 その被害は消して無視できるものではなかった。
 初手の行動のうち、透視で警戒していたソアが早期にトールを庇うように動いたこと、リズリーが無事にユリアーナを庇えたことも問題はなかった。
 損害が増えざるを得なかった理由の一番大きいのは、テント内外における戦力配分という他ない。
 修也が、晋 飛がそれぞれ敵側に動きを止められたことでそれ以外が全てテント内への攻撃を行なうことになった。
 それだけで削り落とされるほど柔なイレギュラーズではないが、その初手による攻撃が尾を引いている。
 テントの内外にいる者達の配分が変わっていれば、あるいはもっと各々の動きの連携が取れていれば、結果は変わったかもしれない。
 強襲となった敵の砲檄を潜り抜けたイレギュラーズは、テントの外へと出ていた。
 緑色の眸がより鮮やかに輝く。
 黒髪を逆立て、その身に宿る熊の血を、可能性を活性化させるリズリーはその背にユリアーナを庇い続けていた。
 飛来する銃弾を、一族に伝わる宝剣ベアヴォロスで叩き割りながら、増える傷を物ともせずに女傑は立ち続けていた。
 結果として負う傷は深いものも多いが、護衛任務でもある以上、倒れるわけにはいかなかった。
 トールとベイセルから射線を切れるように立ち、ソアは自らの持つ雷の因子を振り絞る。
 向けるはこちらに銃弾を雨あられと叩き込んでくるディーターへ。
 突如として立ち込めた雷雲より降り注いだ雷霆が轟音と共に真っすぐにその身を焼き付けていく。
 マリアも蒼き雷を身に纏うや爆ぜるように駆けだした。
 そのまま跳躍すると、空へと舞い上がり、蒼き落雷のように一人の兵士へと蹴りを叩き込む。
 留まること無き連撃が何度も叩きつけられていく。
 リックがタクトを振れば、波もに揺れる黒い影のようにどこからともなく出現したブラックドッグが走り抜ける。
 魔術具を媒介とした魔力を練り上げたサンはそれを歌にのせて歌う。
 鮮やかな音色の歌は神聖なる救済の色である。
 マルクはアムネジアワンドを握る手に力を籠める。
 奮い立たせた魔力を収束させて、戦場に照らし出す神聖なる閃光が、銃兵の動きをかき乱す。
 お返しとばかりに、敵陣の方からいくつもの弾幕がイレギュラーズへと襲い掛かる。
 AGの内側、晋 飛は武骨な鋼の拳を眼前に立つ女に叩きつける。
 強かに打ち据えた一撃がベルガの魔力障壁に威力を殺されながらもその身体に到達する。
「うふふ、怖いわ、お兄さん。そんなに怖い声で言われると昂ってしまうわ」
 返すように放たれた爆炎を持ち前の防御技術で防ぎきる。
「……まぁ、でも。今回は痛み分けかしら?
 私たちも目的は果たせなかったけど、そちらも目的は果たせないでしょうし?」
 ベルガが色っぽく笑む。
 口元に人差し指を持って行って、投げキスでもするような仕草と共にウインクした女はくるりと身を翻す。
「また会えたら嬉しいわ。貴方のその武器、すごく素敵だもの」
 手を振って立ち去る女の姿は無防備のようでいて隙が見当たらなかった。
「さぁ、撤退よ! 誇りを失い恥ずかしくも鉄帝に屈するような男はここで退場よ!」
 ベルガが叫ぶ。それに対応するようにディーターが撤退の号令をかける声がする。
 銃声の音が消え、敵が粛々と撤退していく。


 敵の撤退の後、イレギュラーズは応急処置を行っていた。
「ユリアーナさんよ、アンタ実の所内通者について結構知ってたろ?
 晋 飛の言葉に、ユリアーナは首を振った。
「鉄帝側にいる内通者の位置ならば、分かってる。
 だが、そこが内通しているという物的証拠がない。
 だから砦の内側にいる内通者をあぶりだして捕えらたかったのだ。
 ……もちろん、講和自体もここならいけるかと思ったが」
 かすり傷の銃痕を包帯でぐるぐる巻きにしたユリアーナが申し訳なさそうに視線を下げた。
「私の読みが悪かった。すまないな、諸君」
「では、ユリアーナさん。今回の騒動に目をつぶってもらえませんか?
 戦いが続けば大勢が、飢えや恐怖に苦しむ事になる……もう、これまでにしましょう。
 撤退していった彼女たちはどうにかしないといけない。でも……」
 そう言って視線をトールの方へ向ける。
 これはほとんどユリアーナと当初からすり合わせていた譲歩だ。
「……俺はよ、もう長じゃなくなっちまったらしい。
 だから、今は何とも言えねえ。ベイセル、お前個人はどうだ?」
「私の願いは交渉の場で申しました。フィリベルトの解放を」
「彼なら無事だ。いつでも釈放しよう。というか、いつどこに行ってくれても構わないのだ」
 ユリアーナはぽつりと呟いた。
「ハイエスタの総意は知らぬ。
 だが、俺達はただ困窮して這う這うの体で逃げてきて、都合が良かった砦に入って――この様さ。
 鉄帝にはくみしたくなかった。けどよ……あの女、誑かされたとしたら、そうだ。あの女に」
 トールが悔しそうにぎりりと歯ぎしりしながら声を上げる。
「もう一度言うよ。トール・オールストレーム、雷神の末裔よ。
 ”名に相応しき”振る舞いを望む。ってね」
 リズリーの言葉にトールが目を見開いて、小さく笑った。
「全くだ……なにもかんも失った俺に何の誇りが残ってるか分からないが……」
 少しばかり哀愁の漂う声音の――けれど、気迫も微かに滲む声がした。

成否

失敗

MVP

リズリー・クレイグ(p3p008130)
C級アニマル

状態異常

リズリー・クレイグ(p3p008130) [重傷]
C級アニマル
晋 飛(p3p008588) [重傷]
朱の願い

あとがき

お疲れ様です、イレギュラーズ。
残念ながらこのような結果となってしまいました。
ユリアーナ自身は生存していますが、
交渉に関して無事に終わったとは言えません。

その代わり、鉄帝側にトールとベイセルが降伏しました。
来る次回以降に彼らの存在は役に立つ――と思われます。

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