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シナリオ詳細

<Bloom*Bloom>夢と散る

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ――ねえ、きこえる?

●助けての声は消えて
 乗り心地の悪いぼろい馬車の荷台。
 二人はそこに商品のようにして並べられていた。
 逃げる方法などないのだろうか。フローラは床に目を落とす。
 そこに広がるは長い若草の髪。
 大切に伸ばしていた、髪。
(……また伸ばせばいいもの。二人ともここで死ぬわけにはいかないわ。
 絶対に。レオだけでも、生かして帰して見せる)
 はちみつ色の瞳は諦めることを知らない。
 護身用に忍ばせていたナイフ。ふとももにホルダーと共に忍ばせておいたそれで、髪を。
 切る。
 レオ――レオナルドに、切るように刃を託す。
「……っ、」
「?!!!」
 頷き、髪を切るように示す。
(……できない)
 首を横に振るレオナルド。直後の脛蹴り。
 フローラの目は本気だった。
「……」
 ならば。
 それに応えるしか、ないじゃないか。

 じょき。
 じょき。
 じょき。

 後ろに束ねられた手を使い、切る。
 猿轡を噛み、悔し気に。そうするしかない事実に、怒りさえ覚えながら。
 切ったその髪を、フローラは勢いよく外へとぶちまける。
 レオナルドもそれに従って、髪を外へ。
 長かった髪は見る影もなく、セミロングへ。
「……」
 あら、だいぶ軽くなったわ。なんて言いたげにはにかんだフローラ。
 そんな彼女が痛々しくて、レオナルドは思わず拳を握った。
(すまない、グレイシア。せめて彼女だけは、無事に帰して見せる……)
 揺れる馬車の荷台。牢越しに眺めた空は、曇っていた。

●君を待つ
「フローラの切られた髪には魔力が込められていたっす。
 この魔力はきっとレオナルドのもの。だから、これら二つの先に、二人はいると考えられるっす」
 あわただしく告げるガトゥ。無数の羊皮紙と目の下の隈を見る限り、昨夜も遅くまで頑張っていてくれたらしい。
 そこへきらめく星屑が瞬いた。
 瞬く間にフィスが現れ、本のページをあわただしく捲っていく。
「ええと、ここじゃなくて、もう少し後で……嗚呼、行き過ぎた」
「そこの三ページ前っす」
「お、そうだったね。……よし、ここだ。フローラとレオナルドの居場所がわかったよ」
 指し示し開かれる頁。魔物巣食う森の奥。
 そこに閉じ込められた二人の姿。
「さあ。出番だよ、冒険者」
「勇者と呼ばれる日が来るかもっすね」
 頁は開かれた。
 あとは飛び込むのを待つのみだ。

 フローラが。レオナルドが。
 あなたの助けを、待っている。
 

NMコメント

 心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
 二人の命を救いましょう。
 それでは今回のシナリオの説明に入ります。

●依頼内容
 二人の救助

 森の奥のアジトに閉じ込められています。
 救出しましょう。

●アジト
 一直線に進んでいけばいいようです。構造は単純。
 四つある部屋のどこかに二人がいるようです。探し出しましょう。

●敵
 構成員×10人
 誘拐犯×1人

 誘拐犯の捕縛までできればパーフェクトですが、できなくても構いません。

●世界観
 魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
 花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
 基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
 また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。

●フルールについて
 フルールとは、花冠師のこと。
 魔法や魔術を使う人々のことを指し、この世界に住まう人々の半分は花冠師です。
 現地の人々はもちろん、異世界から来た人がフルールと呼ばれる場合もあります。
 また、フルールにはギルドがあり、各々所属している団体があるようです。

●妖精たち
 たくさんいます。
 賑やかで楽しいことが大好きです。
 幼い子供のような見た目で、とても小さく手のひらのほどの背丈です。
 また、後ろからきらめく羽が生えています。
 今回は登場予定はありません。

●NPC
・フローラ(ティターニア)
 妖精女王、花の妖精。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴で、桜色の髪留めが宝物。
 エルフのような長耳と少女のような凹凸の少ない身体。性格はお茶目でお転婆、然しながら王としての自覚も芽生えつつあります。

 誘拐されたようで、その安否は不明です。
 
・カナタ
 花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。
 トップクラスの実力を持つ温厚な青年です。
 剣術を得意とし、フローラ達の護衛として腕を買われています。

 皆さんと共に戦場へ向かいます。

・レオナルド・フラウ・ブルーム(レオ)
 地上、つまりは人間界の王でありフローラの幼馴染です。剣術のプロでもあります。
 フローラから最上の祝福を送られた彼は、人間よりも寿命が長く、不老に近いようです。
 金髪碧眼、人の目を引くイケメンです。その性格は計算高いものの温和。

 誘拐されたようで、安否は不明です。

 それでは、皆さんの参加をお待ちしております。

  • <Bloom*Bloom>夢と散る完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月20日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)

リプレイ


「ん、こういった依頼は良いね。後腐れなく誰かを助けられる。
 さーてと……女の子の髪を奪ったんだ。遠慮無く奴らの計画ご破算にしてやろうか」
 ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)は拳を握り、笑みを浮かべ。
 風になびくブロンド。長い長い髪。
 女は髪が命、とは言うが、しかしてそれを望まずに失うのは酷く心が痛むというもの。
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)も同様に銀糸を靡かせて口元に弧を描く。
「ヒヒ……隣人たちの頼みだからねえ。断らない理由もないさね」
「落ち込んでるカナタや皆の為にも絶対にティターニア達を助けてやらないと……」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は頷き。
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は馬車を走らせる兵へと指示を出す。
「もう少し急げるだろうか。一刻も早く辿り着きたいのだ」
「はっ!」
 鞭鳴らし。馬は駆ける。
 暗い暗い森の奥へと。ひかりを、希望を探して。

 たすけての、声が。したから。

●こだま
 ノアが指を噛み千切り、その血を持って疾風の術を仲間へと付与する。
 風の如く。光の如く。
 この身体は貴女の元へ。
 念入りに罠がないかを確認してから仲間を呼び、アジトへの潜入を開始した。
 ジョージは散った若草の髪を頼りに、フローラを探す。
 世界も同様に、己への敵対心を頼りに奥へ奥へと進んでいった。
 無駄な行動は不要。なぜなら、命がかかっているから。
「ねぇ、世界」
「なんだ?」
「……フローラ様やレオナルド様は、無事だろうか」
「……」
 なよっと。珍しく落ち込んでいるカナタの背を、
「!? っ……たぃ」
「大きな声を出すな、気付かれるだろう?」
「あのなあ、お前が叩いたから……」
「……それくらいの気持ちで行こう。俺も不安だが今できるのは二人を助け出すために全力を尽くすことだけだ」
「……はは。そうだね。ありがとう、世界」
 頷いて。世界に笑みを向けると、カナタもまた手掛かりを探し始めた。
 奥から出てきた敵は黙らせて、眠らせて、拘束して。
 そうして少しずつ進んでいく内にたどり着いた、四つの扉の前。
(――アジト突入の際、私の役割はフローラとレオの探知、そして救助をすること)
 ノアはそっと目を伏せる。
 集中して。息を吸おう。嗚呼、聞こえる。呼吸音。拍動。
 耳をすませば、聞こえるはずだ。
 仲間を呼ぶ声が。
 助けての、声が。

(……遠い、か?)

 ――…………け、て

 ――――たすけて!!!

「向こうだ!」
 ノアが駆け寄り施錠を解く。
 開いた扉の先。
「みんな!!!?」
「逃げろッ……!!!」

 飛び出してきたのは、弾丸だった。

●まやかし
「くっ……?!」
 すんでのところでかわしたノア。事前に施した術が功を成したか。
「もう大丈夫だ二人とも! 私達が助けに来た!」
(この世界が善であろうと悪であろうと、光が射せば闇が落ちる。
 ――俺自身、大別するなら悪の側だ
 善であろうとするか、悪に染まるか、併せ呑むか。ただ、それだけだ。
 王であるなら、いずれ、フローラも清濁併せ呑む事を求められるやもしれんな)
「だが、」
 ジョージが先陣を切る。
「悪夢を見るには、まだ早いッ!!!!」
 轟く豪声。
 迸る怒り。
 逆鱗に触れた、とは正にこのこと。
 素早く駆けつけたジョージが二人を庇い、鋭い眼光で敵を制す。いなす。
 それに続きノアも二人の元へ駆け、縛っていた縄をほどく。
「は、は。こりゃあ驚いた。ヒーローか。
 だがな。こいつらはここで死んでもらうんだ。逃がしやしねえぜ?」
 ナイフに舌なめずりをして。
 誘拐犯は世界へと距離を詰める。
「おっと、そうはさせないぞ……俺が、今度こそ護るんだ」
「はは。頼りにしてるぜ、妖精鎌!!」
 がきぃん。
 金属音。デス・サイズ。
 死の鎌は真っすぐに敵の首を狙い、呪う。
「残念ながら『コイツ』がフローラのところに行けなくて地団駄を踏みかねない勢いだったんでね……今回は俺も手加減しないぞ」
 振った鎌で描くは巨大な白蛇の陣。蠢く呪い。
 祝福(のろい)を。怨念(さいわい)を。
 苦痛のみを与え、地獄へと落としてやろう。
 死なせてなど、堪るものか!
「貴様が何者だろうが、俺には関係ない事だ……奪われたなら、奪い返す。善も悪もない。俺がやりたいようにやるだけだ!
 貴様もそうだろう?」
「ああ、そうだ。だからお前たちを、その命を。ここで、奪う!」
 潮の香。外へと逃げる二人を横目に、敵の腹へと怒りを、轟音鳴らす一撃を打ち込む。
「貴様の相手は、俺達だ!!」
「ぐはっ……だが、そうは、いかねえぞ?」
 逃げようとした二人を、逃がそうとしたカナタを構成員たちが取り囲む。
「行かせない。お前たちはここで終わりだ」
 ノアの拳が顎へと埋まる。
 昏倒。
 倒れていく敵をものともせず、次から次へと敵へと殴り掛かるノア。
 つられてカナタもその剣をふるう。
 追い詰められた誘拐犯。その現実を受け止めようとはしない。
 けれど、嗚呼。生きている。
 生きているのならば、逃がしはしない。
 それが怨念。それが呪い。クロユリに忍ばせた呪いである。
「逃がさない!!」
「それは俺達も同じだ。二度目は逃がさん」
 後を追おうとする誘拐犯の道を三人がふさぐ。
「ク、そ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
 乱裂き。切り裂き。
 我儘に短剣を振り回し。
 けれども軌道の読めるそれが、肉を切ることはない。
「見えるものだけが全てではない。……今から俺が与える一撃は、ティターニア達に関わった人全ての想いを乗せた一撃と知れっ!!」

 鎌が振るわれる。

 聖なるひかりに包まれた誘拐犯はその意識を、手放した。

●序章
 馬車に乗り、街へと帰る。
 疲れてすやすや眠ってしまった二人を横目に、五人は話を続ける。
 今後の策を。今回の理由を。
「しっかしまあ……よくもこんなことができるもんだな。
 こんな祭の最中に、俺なら絶対もっと安全な方法で誘拐なりするのに」
 やれやれと肩を竦め。疲れたとぼやく世界をカナタが小突く。
「まったく、君ってやつは……でも、俺、思うんだよ。
 これが何かの始まりなんじゃないかって」
 短くなったフローラの髪が、風に揺れる。
 どことなく空気が悪くなったのを察した世界は、まぁ、と話を続けて。
「……それにしても、やっぱり俺には肉体労働は合わないぜ。今後はもう絶対こんなことしないからな」
「まぁ、そういわずに。俺達はまたいつでも手を貸そう」
「ジョージ?!」
「ああ、そうだな。私達をいつでも頼ってくれ」
「ノアまで……はぁ。何か美味しい食べ物でも用意してくれるんなら、考えてやってもいいぞ」
「ヒヒ、現金だねえ……我(アタシ)も、もちろん。いつでも来るさ」
 がたごとと馬車が揺れる。揺れる。
 屹度この物語は、これで終幕するわけではない。
 だけど、今だけは浮かれよう。
 こんな素敵な日には、優しい夢を見るのがいい。
 木漏れ日を落とす森を駆ける馬車には、楽し気な声が響く。
 ああ。なんて素敵なハッピーエンド!


「……そうか、あいつは捕まったか」
「まあ期待はしてなかったからねぇ……おれにとっても、結構誤算じゃなかったって言ったら、どうする?」
「……構わない。それくらい、俺も検討していた範囲だからな」
「そっか。酷いお兄ちゃんだよね、きみも。フーちゃん泣いちゃうよ?
「それならお前は酷い幼馴染だな?」
「あは。よくわかんない」

 物語は、終わらない。

成否

成功

状態異常

なし

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