シナリオ詳細
再現性東京2010:イライザさんは同士討ちがお好き
オープニング
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噂は、文字データになっても変わらない。軽率さと憶測と考察とこじつけと申そうと破壊衝動でできている。
「イライザさんってしってる?」
「お話してくれるの」
「いつの間にか話が自分のことになってるの」
「何でも知ってるし、ぴったりのアドバイスをくれる」
「いうことを言うと幸せになれるって」
「でもね、一度アドバイスに従ったら、その後は全部いうことを聞かないと死んじゃうの」
貴方の足元には雑草が生えていて、とても歩きにくいわね。取り除いたらいいんじゃないかしら。
毎日鳥が鳴いているのね。そのくちばしをふさいだしまったらどうかしら。
イライザさんはためになることを言ってくれるの。雑草を取り除いただけよ。まとわりついてとても邪魔だったから。これは雑草なの。
イライザさんは、親身になってくれるの。おしゃべりな鳥は本当に邪魔だった。ええ、そうよ。これはおしゃべりな鳥。
人間なわけがないでしょう。
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「いや~、来るまでマジかよ。と思ってたけど、マジでこんなとこで暮らしてんだ」
骨の髄が旅人の『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、「こんなとこ」まで来るのだ。
練達の一区画に存在する再現性東京。さらにその一区画には希望ヶ浜と呼ばれる地域が存在する。
それは嘗て異世界『地球』よりこの世界に召喚され、変化を受け入れなかった――受け入れられなかった――者達の聖域である。
「割と色々馴染める俺だって、ここはなんか肌が合わねえと思ってんだから適応できなくて当たり前というか。無差別かつヨソとつながりやすい割にそういう心構えは教えられていないというか、そういうことが起こるわけがないってとこから来たら気も狂うよね」
帰り道さえ示されぬ行き止まりの様な人生に、息の詰まった環境に、悍ましくも目を向ければ微笑を返してくる魔に、彼らは背を向けた。そうして作り上げられたのは高層建築物に囲まれ、迷路のように入り組んだ路地の向こうに存在する聖域だ。
「ま、いいや。ひきこもるのはいいよ。ただ、なんでそんな空間構築出来てんの? 一般人じゃなかったの? 火事場の馬鹿力なの? わかんねーわ。そういうことができるから召喚されたの? わかんねーわ」
コンクリートに囲まれ、目緒を閉じ、耳を覆って――有り得やしない。有り得やしない。世界と言うのは不変だ。澱みもなく、単調な毎日をルーティンのように繰り返す。それが何だというのか。在り来たりな平凡こそが自身らにとっての一番の事であるなどと、変化を得てから気付くなど愚かと呼ぶ他にはない――だが、そうでもしなければ心は、安定する事さえできない。だからこそ、街は今日も偽りの安寧を享受しているのだった。
まあ、そういうもんならそうとするよ。で、締めくくれる情報屋は、結局は順応力抜群のウォーカーなのだ。
「――女子高生っていうの? えっと、その人達はなんですぐ死ぬ噂立てちゃうの? こんなあほみたいに平和なところにいるのに。武装してないとか、正気? 俺でもナイフに薬に吹き矢は常備だよ?」
それ以上はいけない。
謎のインド人――インド人ではない。どちらかというと『地球』では中央アジア人っぽい民族衣装だが、顔が濃い外国人はみなインド人である。というか、インドって何。――メクレオは、外国語チューターということにしておいてくれ。と言った。崩れぬバベル? 『東京』にそんなものはない!
「で、イライザさんなんですけど――脳みそです」
情報屋はこれっ位のと、手で示した。ヒトの脳みそは2~3キロある。
「ホルマリン液に漬かった脳みそです。都市伝説がそうなので」
イライザさんは、ホントは茨田さんていう女学生で、頭のおかしいマッドサイエンティストの非常勤講師に首ちょんぱにされて生首をコンピューターにつながれたんだって。
でも、その講師が任期の更新されなくて、隠していた生首から脳を取り出して隠したんだって。
今でもコンピューターにつながれた脳みそが話しかけてくるんだって。
「――で、話しかけると、死に至る呪いをかけられるって感じで」
つまり、呪いの元を叩くということだな。本当にあるのか。
「あります。旧理科準備室に」
どこ? ――ある。学校の案内板に生えてる。
「で、まあ。イライザさんはみんなに『予言』をしてくる。最初は有利なやつ。次にちょっと不吉なやつ。最後、致命的にやばい奴――例えば、自分が死ぬとか」
じゃあ、アドバイスを聞かなきゃいいんじゃないか?
「全部自分の予言にこじつけるんだよ。『いい攻撃ね。私の言った通り『流星が通り過ぎた』でしょう?』 みたいな」
意味不明の言葉の羅列が、状況をこじつけ、不利な未来に導いていく。
「だから最悪、同士討ちにならないように相談しといてくれ。イライザさんに直接攻撃手段はないが、一緒にほおりこまれてる人体模型クンと骨格模型クンが準備室おく隠し部屋の姫をガードしてるからな。あ、人体模型クンは彩色に本物の血が使われてるという噂で、骨格模型クンは本物の人骨が使われてるって噂の産物だ。学校の備品に登録されてないから気にするな。というか、旧理科準備室なるものは当校に存在しない」
噂の産物、滅すべし。
「旧理科準備室のスチール棚を動かした向こうの隠し部屋にあるホルマリン漬け脳みそを地面に埋めて、アイスキャンディの棒で墓標を立てて」
アイスキャンディの棒?
「学校の敷地内で死んだ生き物を非公式に葬るときに立てる物だって聞いたけどな」
それが本来実体を伴わないはずの学校の怪談由来でも。
「棒は支給しとくね。洗ってあるからね。あ、購買でアイス買うチャラ銭の方がいい?」
- 再現性東京2010:イライザさんは同士討ちがお好き完了
- GM名田奈アガサ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月17日 23時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「予言ってなんだよぅ!ㅤその辺探したら10人は居そうな怪しい宗教家みたいなのより羽衣教会の方が優秀だし!」
違う。そこじゃない。
『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)は、廊下を歩きながらじたじたしている。
「だからみんな羽衣教会入ろうぜ!ㅤきっと会長のほうがこじつけるの上手いし!」
「インチキ予言なんてメイは信じないのですよ」
『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)は、するっと言う。
ふぎゅうと茄子子は黙った。メイは「イライザさん」の予言について発言したのだが、茄子子は流れから自分の予言について言われたと解釈した。
それが、イライザ・エフェクト。全くつながっていない情報が意味のあるように「こじつけられ」、「解釈」されることによって事象が生成される。
「茨田さんの伝承か……なんていうか耳に痛いね。教員職としても研究職としても外道に落ちた場合の自分を想像してしまうよ」
『精霊教師』ロト(p3p008480)は、少々過去をえぐられている。
白衣、柔和な印象の若い男性、理系教師。うっかり再現フィルムでシルエット拝借されて、あくまでイメージですとかテロップが入りかねない。犯人はロト先とか噂が流れたら――。
「難しいことは考えない! とりあえず怪しいキモいのを2人? 2体? 倒しつつ裏で操ってるやつをぶっ飛ばすにゃ!」
人生に影とか陰とか闇とかない『ニャー!』秋野 雪見(p3p008507)みたいな光の民はこういう時強い。
ちゃんと骨子を把握している。要は、そういうことだ。
「おばけこわい……」
『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)、ぷしゅんとしちゃう。10才のうさぎのおんなのこだもの。
「でも学校のみんながこまってるから、力になりたいな!」
もう、息してるだけで花丸上げたい。
「理科室に秘密基地、ワクワクするな!」
海洋生まれの鷹獣人、『水神の加護』カイト・シャルラハ(p3p000684)、男子は秘密基地が好きな生き物である。
「都市伝説的な怪異は何度か倒したけれど、ここまで荒唐無稽なモノまで現実に現れるとはね……しかしまあ、噂の産物とは言え、あまり気分の良いモノではないね」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は、小さく唸った。
実際に本当に「イライザさん」によって死んだ誰かは存在しない。あくまで噂だ。だが、この先にその「噂」の実体があり、下手を打ったら自分たちは同士討ちして死ぬのだ。理不尽極まりない。
大体、こんな廊下は学園に存在しない。教師として在籍しているゼフィラが言うのだから間違いない。さっき曲がってきた角はただの壁だった。
「部屋が狭すぎるし、余計に動くと仲間の行動阻害しちゃいそうだから注意だね」
『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)は、引き戸についたガラスから素早く部屋の隅々に目を走らせた。幼少時より仕込まれた技術が異世界に召喚されたの命を今日も永らえさせている。狂気は敵だった。では、噂の産物は何になるのだろう。
午後の光に照り返す人体模型と骨格標本。彩色に人血。骨は本当のヒトの骨。
「いや、うちの学校の備品にこの人体模型と骨格標本は存在しないんだよ」
ロトは言った。全てはマガイモノ。本当にまがまがしいものになる前にどうにかするのが仕事だ。
15:48。ローレット・イレギュラーズ、作戦領域に突入。
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『味方の動きをよく見ていた方がいいわ』
はたはたとはばたきで宙を舞うカイトの羽毛が、建物や備品を守る。何もなかった。を維持することは再現性東京ではとても重要だ。
えくれあが、甘く切ないバラードを披露し、ローレットイレギュラーズにちょっとやそっとではおかしくならない抵抗力を植え付ける。10歳ノウサギの女の子が歌うバラードの意外性に勝る何かってなかなかない。
天十里は、スチール棚までの最短距離を天井に見出した。
(連続行動してぱぱぱぱーって動ければ、スチール棚が重くたってあっという間だ! 気合入れてやる!)
明日の踏み場のない密集状態。天井にワイヤーを射出して、ガラクタを飛び越えスチール棚前に着地する。
青い彗星が軌跡を残す。メイの背中の羊さんのぬいぐるみの中身がスラスターなんて、隣の席の子はなんていうだろう。
推進力は加速を促し、速度はイコール破壊力だ。
人体模型クンのみぞおちにえぐり込まれる一撃に胃も床に落ちる。
緋色の翼が広げられ、鼻先で上がる爆裂赤羽毛。
骨格標本クンがカタカタと関節を鳴らしながら、動き出す。
カイトに向かって大腿骨を投げつけた。脇腹を痛烈にえぐり、ひゅんひゅんと旋回し、正しい位置にはまり直した。
「――遊びたいなら一緒に遊んでやるよ!」
まき散らされた羽根を炎が飲み込み伝播する。そのたびに巻き起こる火災旋風。すぐ横のメイのスカートのすそを焦がしかねない一撃が骨格標本クンを飲み込んだ。
炎のダメージもさることながら、急激に炙られることで組成がもろくなっているのが目に見えてわかる。
人体模型クンと骨格標本クンの抑え。ゼフィラは、彼女の「生徒」と「同僚」に大賢者が発する最高の指示が届く位置を意識して動いていた。
「みんな、気を確かに持つんだよ! 自分の持ち場を的確に!」
極端な閉所での戦闘。一歩間違えば地獄のドミノ倒しになりかねない状況で、ゼフィラはローレット・イレギュラーズのの状態を維持することを第一に指示を出した。
天十里が懸命に足を踏ん張り、スチール棚を押している。なんとも開き難い。おそらく経年劣化。おそらく噂の中にしか存在しないマッドサイエンティストの講師の執念。
天十里の背後では、骨格標本君にやられたカイトの脇腹に茄子子が調和の波動を賦活の力に変換していく。
「天十里くん、ごーごーごーごー。会長、今が押し時と思うな。行っちゃえ、行っちゃえ!」
実際、全体の作戦進行を見ていたのは、レイザータクトである茄子子だった。
もう一踏ん張り。ここでもたついているとめんどくさいことになる。
「カイト君、メイも天十里君の手伝い行って来るっ!」
ブースターシールドがうなりを上げ、メイの突進のインパクトを上乗せする。
ドッカンという音がして、スチール棚が瞬間たわんだ。
天十里は、とっさに受け身を取って、無傷だった。
『味方の動きをよく見ていた方がいいわ』
即りと、天十里の首のあたりが泡立った。今のが、そうか?
「天十里おにーちゃん、メイおねーちゃん、棚すぐ動かしてすごーい!」
えくれあが、はなまるー! と、もふもふのおててで拍手している。かわいーい。なんか、こう、こんなかわいいものに手ばなしでほめられる自分最高という高揚感がわいてきた。
「メイ、なんか、今、全部うまくできる気がする」
「奇遇だね、僕もだよ」
スチール棚の向こう。黒々とした空間で何かがうごめいていた。
「こっちは任せろ。中に行け!」
半壊した人体模型クンと骨格標本クンの前に、ゼフィラが立ちはだかった。
「すまないが、うちの生徒は次のカリキュラムが始まるところだ。後は、私が請け負おう。どちらが先にガラクタになりたい?」
時間さえ置き去りにする光の奔流。
背後は、先生に任せておきなさい。
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学園の校内案内図にこんな空間は書きこまれていない、物理的にあり得ない。
「インチキな予言なんてメイは絶対に信じないのですよ!」
空間の中にいち早く踊り込んできたメイの指は自分の下まぶたにかかっている。
「悔しかったらメイに予言してみるのですよ、べーだ!」
見事なあっかんべーである。絵にかいたような挑発行為。
「一番乗り目指してたんだけどな」
カイトが飛び込んできた。
「骨格標本君の相手、お疲れ様」
『守っているばかりではいけないわ』
「イライザさんも遊ぼうぜっ!」
「にゃーっ!」
『イライザさん』目掛けてまっしぐらの雪見の前にコンピューターケーブルが迫る。古びて飛膜のあちこちから金属線が露出しているのは噂が「ケッコー前」ということになっているからかもしれない。
「本体を叩けば全て終わる! ストーリーとはそういうふうにできてる! そうに違いない!」
飛び掛かる雪見。鎮座するホルマリン漬けの脳みそ。
情報屋は言った。
『ホルマリン漬け脳みそを地面に埋めて、アイスキャンディの棒で墓標を立てて』
「二人とも、攻撃はいいけど、割るのはなしだよ」
天十里が、攻撃モーションに入っている二人に言った。
容器ぶっ壊す。露出する脳みそ。めっちゃ柔らかい。ぶっ飛ばして飛び散ったら、回収は雑巾でふきふきして絞るしかない。特殊空間で。気まずい。いつもなら掃除屋さんがやってくれるが、今回は埋めるまでしなくちゃいけないから、自分たちでやらなくてはならない。もはや、ローレット・イレギュラーズは討伐という名の鎮圧儀礼に組み込まれている。「イライザさん」を「茨田さん」として葬らなくては、第二、第三のイライザさんが出現してしまうのだ。
「コンピューターに生かされてるんだから、コンピューターを壊すか、繋がっているケーブルを全部ぶっちぎれば、死ぬんじゃない?」
「なら、このケーブルが本体なんだっ!? ていうか、火力はぺーぺーだから」
攻撃目標としての意味なら合ってる。
「そんな感じでいこうよ」
そう言いながら、天十里はゼロ距離で重心を真っ赤にオーバーヒートさせながら銃弾を意志の力でホットロードに変質させて叩き込む。ぼつぼつとケーブルがあらぬ方向に吹き飛んでどこでもない虚空に落ちていった。
「おっしゃ―っ、ズンバラリンと行くぜ!」
多少のラグが何だというのか。カイトの溜めにため込んだ慣性が槍の穂先に乗り、コンピューターケーブルをずたずたに引き裂く。
「友達を攻撃なんてしないというメイの抵抗力と、イライザさんの予言の勝負なのですよ!」
『自分を大事にするのはとても素晴らしいことだと思うの』
「会長が後で回復するから安心して盾になってくれ!」
どうどうと言い放てるところが茄子子のいいところということにしておこう。
実際、茄子子が調律している救いの音色は確実に効いているのだ。胸に染み入る。アルシュ・アンジュの名は伊達ではない。「ある種エンジェル」ではなかろうかとも思えるが。
ロトは、スチール棚が有った場所へ陣取る。
模型夜妖が生存した場合でも障害として壁となり、生徒達が僕以外を殴るなんて事を止める為にだ。
生徒同士の殺し合いなんて見たくない。重ねられた防御術式がロトを守る。
「――だからこそ、生徒を守る為に全力を尽くそう。希望ヶ浜学園の教師として、ね?」
『とても気づきにくいことだけど、障害はいつもすぐそばにあるモノなの。これが障害と思う意外なものがそうなのよ』
「さぁさぁ、遠慮なく攻撃して大丈夫だよ。なんたって、ほら、教師は生徒を守るものだからね」
「うわぁ!ㅤロト先生ごめん!」
スキルないからぺちぺちだけど、でもごめんと茄子子がわめいた。
「ロトおにーさん、あのねー! まっすぐ火をだすからよけてよけてー! あついからー!」
大丈夫と頷き、えくれあの射出タイミングに合わせて、マフに封じ込められていた精霊の力がロトの体内を網羅する。堅実かつ正確な、教本通りであるがゆえに抜けがない綺麗な属性移行。ゆえに、大事には至らない。ほ。と、それぞれの口から吐息が漏れる。
ロト本人は気が付いていないかもしれない。
「誰かを攻撃しなくては死んでしまう」からに付きまとう罪悪感から「攻撃は自分が受ける」と指定したことで解き放ったことを。それが『イライザさん』の案時から解放されるきっかけだったことを。
そうなっちしまえば、ケーブルを引きちぎられた『イライザさん』は、脳みそに直接話しかけてくる脳みそに他ならない。
こんないい先生嵌めた奴、一生毎日箪笥の角で小指の骨折り続ければいいのに。
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校舎から出てみれば、夕暮れのどしりと重たい熱気がうらうらとしている。まだ地面が熱い。
幸い、購買はアイスが溶けない距離にあった。
こんな場所あっただろうか。校舎裏なのか? 放置された花壇がある。
穴を掘って、容器ごとホルマリン漬け脳みそを埋めた。
「みんな、頑張って食べてください」
メイは、さあさあと皆に迫る。メイ自身はすでにスッキリスパイシーレモンを確保済みだ。辛党ゆえ。
「ぼく、バニラ―!」
えくれあが、バニラバーを引っ張り出してにこにこしている。おつかい行ってきてえらーい。
「なんでアイスの棒を墓標にするのかわかんないけど」
天十里は、袋の中を物色しながら言った。
その辺については、『再現性東京』が属する宗教観から卒塔婆についての概念の講義がいるが割愛する。知りたければ、図書室に行きなさい。検索ワードが思いつかない時、コンピューター検索はあまり役に立たない。
「棒だけじゃなんか寂しいし、アイス付きのにする!」
モノリスのように地面に立ったソーダアイス。墓標のようだ。すぐに溶けるがそのくらいでちょうどいい。
「埋葬する訳だし、お供え代わりってとこかな」
「お墓にさしてあげるなら、できれば当たり棒を使ってあげたいのですよ」
別に指すアイスの棒は一本でなくていい。
「いっぱい刺そう!」
茄子子の手にはアイスの棒が何本も握られている。
「これで、天国でアイスキャンディを交換してもらって、食べるといいのですよ
メイからの選別なのですよ!」
「……えっと」
エクレアは、そろそろバニラバーを食べ終わる。残念ながら当たりじゃなかった。
「イライザさん、いっぱいがんばりました。えらーい!」
噂をきちんと全うしたというなら、そうなのだろう。だれも責任を持たない戯言から発生してしまった都市伝説だ。
「ゆっくりやすんでね」
もう、誰ともおしゃべりしないで済むように。
「悪いね、埋め合わせは後で」
「生徒」達が去った後、ゼフィラはロトに言った。
「ははは。ちゃんとフォローしてもらったよ」
ロトは、小さく笑った。
地面には、溶けたアイスがしみこんでいる。
たくさん刺さったアイスの棒。
ここなら、噂の産物も静かに眠れるだろう。現実の学園にはこんな場所はないのだから。
「お休みなさい、茨田さん」
教師は、世界のどこにもいたことのない生徒の名前を呼ぶ。イライザさんが葬られるなら、茨田さんも葬られる。これで完璧。
始末屋達が校舎に入ったら、もう誰もここには来られない。
アイスキャンディ―の墓標が必要な存在が現れるまでは。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様です。『イライザさん』の噂は、じきに誰も口にしなくなるでしょう。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。
GMコメント
田奈です。
都市伝説を葬るシナリオを出して行きたいと思っております。
さあ、どんどんアイス棒の墓標を立てていきましょうね!
人体模型クンと骨格模型クン。
*もとは一人の人間(という噂)なので、連携してきます。
*人体模型クンは近接攻撃、骨格模型クンは遠距離攻撃してきます。
イライザさんとコンピューターケーブル。
*コンピューターにつながれたホルマリン漬け脳みそ。『予言』をしてきます。
*コンピューターのケーブルがイライザさんをかばいます。一定ダメージを与えるとかばうケーブルが減ってきます。
「友達を殺さないと、お前が死ぬ」という呪いをかけてきます。BS扱いです。抵抗できなかった時、誰を攻撃するかくらいは自分で選べますので、相談しておくといいですね。攻撃で使われる手段は、直前に使おうとしていたスキルになります。
旧理科準備室(と、物理的にありえない隠し部屋)
旧理科準備室にはスチール棚があり、そこから隠し部屋に入れます。
旧理科準備室はせいぜい六畳。非常に狭く、近距離に人体模型クン、中距離に骨格模型クンがいます。
スチール棚に移動、ずらすまで、最低一人が通常動作を最低2つ分消費します。動かされなくなったスチール棚は非常に重く、ずらすのに腕力が要ります。素手による攻撃力で判定します。複数人でやれば、ずらしやすくなりますが時間は最低値かかります。
隠し部屋は異空間です。真っ暗な空間に「イライザさん」が段ボールの上に鎮座しています。どこまで広がっているのか不明ですがあまり離れると期間が難しくなるでしょう。お勧めしません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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