PandoraPartyProject

シナリオ詳細

温泉旅館と妖精とお月見ゴブリン

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■毎年恒例の事であった
「今年の夏も忙しかったな……」
 8月も終わり9月に変わろうとしている頃。とある世界の温泉旅館、その支配人は思い出に意識を委ねていた。
 夏のはじめには、毎年観光客を恐怖に陥れていた幽霊二人が。どこからともなく現れた傭兵達のおかげで心を入れ替え、今では心強い自警団の一員である。
 最盛期には台風が連れてきた巨大な魔物タコが現れ、今年の夏はもう終わったと悲観したものだが。これまた傭兵達が颯爽と現れ、退治してくれた。
「幸運に恵まれておったな今年は……」
 しかし気を抜く訳にはいかない。9月、この観光地はまた別の側面を見せる。
 十五夜。つまりはお月見である。温泉街の裏手には小高い丘があり、周りに障害物もない事で綺麗に月を見上げる事のできるスポットなのである。
 満月が近づくと出店も集まり、一種の祭りのようなものだ。
 しかし……問題もあった。
「支配人、今年もいるようです」
「やっぱりか……」
 基本平和な温泉街だが、街を少し離れると魔物達が暮らしている地もある。そのために自警団を編成し、観光客の安全を守っているのだ。
 その自警団が手を焼く相手が、この9月には現れる。
「懲りん奴らだな、あのゴブリン達は」
 ゴブリン。小鬼とも、悪妖精とも呼ばれる小柄な魔物だ。そんなに力は強くないのが大半だが、たまにずる賢い個体も混ざっている。
 そしてそんなゴブリン達を扇動しているいたずら妖精達。悪意はなく、人々にイタズラをして遊んでいるだけなのだが……それはそれでタチが悪い。
 この両者が手を組んで、月見をしている人々を脅かしては場所を占拠し、騒ぎ立てるのが毎年の悩みの種である。
「しかし今年は違う。今年の我らは運に恵まれているのだから!」
「……それって他力本願と言うのでは?」

■他力=イレギュラーズ
「……ということらしいんだよ」
 本の一節を読み上げたカストルが、イレギュラーズの表情を見回す。一部、「ああ、またあの旅館か」みたいな顔をしている者もいるが。
「普段は地元の自警団の人たちだけでなんとかなってるって事だから力は強くないみたいだね。それに……時折人語を理解する個体もいるみたい」
 もしかしたら、話が通じる可能性があるかも?
 少し首をかしげるカストル。その辺りは確実性がないので、現地に向かうイレギュラーズが試みるかどうか一任するようだ。
「退治するか対話するかは皆が選べばいいよ。難しい依頼じゃないし、さっくり終わらせてのんびりお月見、いいんじゃない?」

NMコメント

 気づけばもう9月ですよ以下略です。
 ということで9月なのでお月見です。お月見と関係ないゴブリン+妖精退治がメインですが、終わればお月見もできます、きっと。
 以下敵詳細と味方NPC
■お月見ゴブリン×6
 よくあるファンタジー世界のゴブリンイメージそのままです。小柄で大した腕力はないですが、たまに妙に賢い個体がいます。その個体は特定スキルを持つ者ならば対話できるようです。
 お月見をしている人を優先的に襲う性質があります。
■いたずら妖精×4
 ファンタジー世界によくあるフェアリーそのままなイメージな外見の、イタズラ好きな妖精です。魔法の弾丸を放ったり多少の時間なら幻覚を見せる事もできるようです。
 ゴブリン達を凶悪な魔物に見せかけて人々を驚かせ、その様子を見て楽しんでいるようです。大して強くはありません。また特定スキルを持つ者ならば対話も可能です。

■特定スキル:精霊疎通、精霊操作、肉体言語、調教、動物疎通、説得など。他にも有効そうなスキルの使い方を示して下されば採用します。

■自警団×4
 味方NPCです。一般人よりは強いですがイレギュラーズよりは実力は下です。イレギュラーズの指示に従ってくれます。
 なお幽霊夫妻ですが今回は別件の対応に向かっているので不参加です。普通の人間のNPCです。

 以上となります。
 どのような手段を取るかは皆様次第。結果どのような結末になるかも皆様次第でございます。
 しかし基本的にお気楽シナリオなので、存分に楽しんで下さいませ。

  • 温泉旅館と妖精とお月見ゴブリン完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月08日 22時01分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
鮫島 和真(p3p008994)
電子の蒼海

リプレイ

■月明かりの下で
「この温泉街、呪われてたりしないか?」
 仕込みの為にという名目で菓子を両手に抱える程に購入した『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が、訝しむように口にする。
 というのも度々騒ぎが巻き起こって、その都度イレギュラーズが解決に奔走しているからだ。過去に何か魔物の恨みを買ったりしていないだろうかと考えるのも仕方ない。
「でも、この世界は魔物の数が多いみたいだし……普通なのかも?」
 夜になる前に資料を読んでいた『電子の蒼海』鮫島 和真(p3p008994)が世界の独り言に反応する。彼の言う通りこの世界には魔物が多く、それ故に傭兵という職業が成り立っている。イレギュラーズ達が違和感なく溶け込めるのもそういった背景があってこそだ。
「話を聞く限りじゃ、この街の近くは平和な方らしいし」
「……そりゃあ他の街には行きたくないな、俺は」
 これだけ度々問題が起きるこの街で平和と言われれば、どれだけ他方は混沌としているのか想像もし難い。なるべく平凡に生きたいと思う世界にとっては、避けたいところである。
 実際目の前にすれば手を差し伸べずにいられないのが世界という男なのだが。

「あの支配人さんもようやく諦めてくれたかしら」
 『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)が浴衣姿で歩きつつ、ぼやく。彼女の言い分はすっかり顔なじみとなった旅館の支配人に対するものだ。
 事あるごとに彼女の大切な人を引き入れようとするのは勘弁して欲しいというのが、素直な考えである。
「そりゃあ珠緒さんが可愛くて有能でお淑やかで美人で可愛くて愛らしくて可愛いから、ぜひっていうのはわかるけど……」
 魅力がわかってくれる人がいるのは嬉しいけど、それとこれとは話が別なのだ。
 照れ笑いを浮かべる『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)が、まあまあと蛍をなだめる。
「今回は何も言ってこなかったですし……」
「……そうね」
 蛍の滲み出る威嚇に気圧されただけかもしれないけど、とこっそり考える珠緒であった。

「さて、この辺でいいか」
 四人は話に聞いた丘にやってくる。見晴らしはよく、空に雲はなく月が輝いている。そよ風が肌を撫でるのもまた心地よい。
「ここで待っていればいいのかな?」
「恐らくそうか、と」
 世界が用意したお菓子を四人で分けつつ、和真がどこからともなく出したビニールシートに座り込み月を眺める。
 背後に目をやると、支配人が手配した自警団がきちんと配置についている。彼らも一応月見客の紛争をして、だ。和真の用意した式も囮として紛れ込んでいる。
「こうしてのんびり過ごすだけ、なら良かったんだけどなぁ」
 和真の独り言に、三人が静かに頷く。風と虫の微かな音だけを耳に、天に昇る月を眺める。慌ただしい毎日の中ではなかなかにない機会だ。
 休暇としてこれればよかったのに。そう皆が考えた頃、周囲がざわめき始める。
「きたようですね」
「月明かりのおかげでOHANASHIには支障ないから……存分にHANASHIAIしましょ」
 穏やかな笑みを浮かべる蛍だが、その言葉には怒りが含まれているのはきっと気の所為ではない。

■月下争話
「なるほど、これが妖精の幻術か」
 世界の前に現れたのは、1つ目で巨体を持つ怪物。サイクロプスという名で通っている化け物だ。しかしこれは本物のサイクロプスではない。
「これ以上悪さをするなら、痛い目見てもらうことになるわよ!」
 声とともにテレパスを送信する蛍。彼女の声に反応を示す者が一体いるのを見つけ、目標を定める。
「あいつか。じゃあオレが他を相手するよ」
 手のひらに光る魔法陣を浮かび上がらせた和真が、自身の体にソレの力を纏わせて走り出す。
「それでは私も……あ、世界さん」
「うん?」
 和真に引き続き戦闘態勢に入ろうとした珠緒が、何かを思い出したかのように世界に話しかける。
 珠緒は周囲に赤い画面を浮かび上がらせ、一点を指し示す。
「この辺りから小さな声が聞こえました。恐らく妖精のものかと思います」
「サンキュ、それじゃあ行ってみる」
 珠緒の情報をもとに、世界もまた駆け出す。妖精の対応ならば一番の適任者であるのを自他ともに認めているからだ。
「お気をつけて。……では、襲ってくるなら、ある程度は応報せざるを得ないのです」
 柔らかな笑みで世界を見送った珠緒だが、次の瞬間には鋭い目つきに変わり、その細い体だから光の帯を乱射し始める。
 あくまでも本人としては威嚇射撃なので、わざと外しているのだが。サイクロプス……の幻を纏ったゴブリン達には十分に驚異と映ったようだ。既に狼狽えている個体が複数いる。
「どうする? このまま戦ってもボク達には勝てないよ?」
 破れかぶれにと突撃してきたゴブリンの腕を捕まえ、蛍はにこやかに宣言する。彼女としても友好的に、と振る舞っているのだが……そこまで強くないゴブリンには十分に恐怖を与える事に成功した。
「やるなぁあの二人。オレも負けちゃいられない、か!」
 魔力を纏った拳をゴブリンに叩きつけ、気絶させていく和真。蛍と珠緒の強さに感化され、気合を入れ直す。
「さあ、かかってくるならかかってきなよ!」

「いたな。お前達がいたずら妖精か」
 珠緒からの情報をもとに、聞き耳を立てながら妖精を探していた世界が、いつもと違う展開におろおろしている妖精を見つけ出す。
 突然話しかけられ驚く妖精たちは、世界に向けて魔法弾を放つが彼はびくともしない。
「少しは痛いが……そんなに警戒するな。俺はお前たちに危害を加えるつもりはない」
 落ち着かせるように話しかける世界。反撃してこない彼の姿を見て妖精達も落ち着いたらしく、世界の近くを攻撃せずに漂う。
「なあお前達。その力をいたずらじゃなくて他の事に使ってみる気はないか?」
「他の事?」
 世界の言葉に反応を示す妖精。手応えを感じた彼は一つ頷き言葉を続ける。
「そうだ。幻覚を使えるなら……ミュージアムみたいな事ができるんじゃないのか? 幸いここは温泉街、客は沢山いる。もうすぐハロウィンの季節だし……あ、ハロウィンは知ってるか?」
「知ってる。人間達の祭り」
「なら話が早い。お前達の力を貸してやってくれれば大いに盛り上がるだろうぜ。きっと大感謝されるぞ」
 世界の話にだんだんと興味を示してきた妖精達。
 これはいけそうだな、と笑みを浮かべる世界であった。

「どう? まだやるっていうなら手加減しないよ?」
 ゴブリン達の攻撃をいなしてしまい、戦意を折った蛍が最後の通告を口にする。珠緒も、和真も殆どダメージを負っていない。
「グギ……コノォ!」
 破れかぶれになった一体のゴブリンが、和真に向けてナイフを投げる。予想外に早く、正確に飛ぶナイフは和真の右腕に刺さり、傷を作る。
「っつ!」
「和真さん!?」
 僅かに血を流す和真に、珠緒が即座に回復を施す。傷は深くないためにすぐに塞がり、大事には至らない。
 しかしその行為は蛍の通告を蹴ったという事であり……。
「そう、仕方ないね。それじゃあ……」
「ああ、いや待った」
 再び戦闘態勢を取ろうとする蛍を、和真が呼び止める。その声に力を抜いた蛍。
「今のはいい狙いだったじゃないか。もしかしてお前達、結構器用なのか?」
「グギ……?」
「そういえば、戦ってる間も宙返りしているゴブリンもいましたね」
「お手玉のような事してるのもいたね」
 戦闘中の光景を思い出す三人。そう、力はてんでないゴブリン達だが身軽で器用だったのだ。まるで曲芸をしているかのように。
「だったら、妖精達と協力してサーカス、なんてのも良いんじゃないか?」
 そこへ妖精達の説得を終えた世界も加わる。彼の周囲には妖精たちが浮かんでいた。
「そちらは終わりました?」
「ああ、珠緒さんのおかげでね」
「サーカスかぁ。いいんじゃないか?」
「そうだね。血を流すよりも、平和にいくほうがいいし」
「グギギ……?」

■月より団子……よりも
「なんとか話し合いがうまくいったな」
 ゴブリンと妖精を引き連れて、件の旅館へ向かった世界と和真は支配人に事の次第を説明する。
 最初は渋っていた支配人だが、人間に危害を加えないとゴブリン達に約束させ。それでなら、と自警団の一部が監督のもと、サーカス団を開く事になった。
「ゴブリンサーカス、かぁ。うまくいくといいな」
「俺はそれよりも菓子の方がいいんだけどな」
 ゴブリン達がどんなものを見せてくれるのか、少し心が踊る和真と。もしかしたら器用なんだから菓子作りもいけたんじゃないかと思う世界は、改めて月見の丘へと向かう。

「お店ごとの、様々な月ですね……こうして見るのは同じですのに、面白いものです」
 珠緒と蛍は二人連れ立って屋台を回る。ゴブリン達の驚異が去ったので活気が戻ってきたのだ。色々な屋台が団子を出しているが、微妙に違いもあったりして飽きない。
「蛍さんは、どんなものがお好みですか?」
「うーん、そうだなぁ」
 お団子は好きだし、月見もいいものだけれども。それよりも。
 少し考えて一つの結論に至った蛍は、隣の愛しい人の顔を見つめる。
「珠緒さんと一緒に食べるお団子、かな」
「……もう、答えになってないですよ」
 月より団子というけれど。それよりも大切な、大好きな『もの』があるから。

成否

成功

状態異常

なし

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