PandoraPartyProject

シナリオ詳細

恨み晴らします

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 聞いて下せえよ。瓦版にゃとても書けねえ話で。
 え? 聞いても平気な話かって?
 聞くだけで黙ってりゃ誰にも分かりませんし、万一口を滑らせてもどうせ世迷い事と信じちゃもらえねえですよ。

 で、肝心の話ですがね。
 この前、飯川の長屋が焼けたじゃねえですか。ええ、まぁ噂通り、付け火なんですがね。
 旦那も施療院移転の噂はご存知でしょう? で、綺麗に焼けちまった飯川が、幾つかの候補地の中から本命に躍り出たって訳で。立ち退き交渉もいらねえから、土地の買い上げはとんとん拍子に決まるでしょう。これを見越して、あそこを買い取った地回りの船江組と備前屋は大儲けですよ。

 え、ああ! ち、ちょっと待って下せえよ、旦那。
 ここからが「ありがちな地上げ話じゃあねえとこ」なんで。

 実は焼け残った数軒のうち、ある夫婦だけ居座ったんですよ。立ち退きを断った。
 勿論やくざもんが嫌がらせしたんですがね、元はお武家らしい亭主の方が滅法強い。
 一応十五になる娘だけは危ねえからと言って、女房方の叔父に預けたんだが、この叔父ってのがとんでもねえ男で!
 娘を気に入っちまって、自分のものにしようと企んだ。
 で、船江組に話を持ちかけ、薬を仕込んだ土産を夫婦に持って行って、後はやくざが寝込みをぐさり、ですよ。

 娘は他に身よりもなく、叔父に引き取られ……そこで、手籠めにされそうになったんでしょうな。逃げ出した夜、川に身投げですよ。
「悔しい。許せない」って泣きながらね。
 ……なんで、そんなに詳しいかって。
 ……通りすがりの俺がね、その夜、橋で娘の身投げを一旦は止めたからですよ。娘が酔った叔父から全部聞いて、それを俺がそこで聞かされたんでさ。

 俺だってとんでもねえ話だって思いましたよ!
 で、奉行所に訴えてやろうと高坂って同心にまず話した。
 そしたら……この有様ですよ。腹にぶすり。へへ、とんでもねえ、まさか同心までぐるだったなんてね。
 いや、いい。もういいんです、旦那。
 どうせこの傷じゃ俺ぁもう助からねえ。

 神も仏もねえ世の中だが、どっかに金で晴らせぬ恨みを晴らしてくれる闇の殺し屋がいるって聞いたんですよね。
 いるんですかねえ……本当に。
 もし、いるんなら娘から預かった金に俺の金も足して……たくさんの人の恨みを……晴らしてもらえねえ、もん……で…………

NMコメント

 どうも、かそ犬と申します。
 彼らの無念を晴らせる者はその世界にはいなかったようですが、その想いと頼み料は流れ流れて、境界図書館へと辿り着きました。
 もし許せぬ悪を討つ意思があるのなら、その頼み料を受け取って下さい。

 世界観としては日本の江戸時代に似た異世界。
 シチュエーションは必ず殺すアレです。蝋燭を吹き消したら、あのBGMに乗って闇に溶けましょう。
 的は【悪徳商人備前屋】【船江組組長】【同心高坂】【叔父宜介】の4名。仕置当日夜は備前屋の屋敷に組長と同心高坂が集合し、会合を開いています。
 やくざの若衆数名が警護で屋敷内におり、直接の的ではありませんが、邪魔なら殺して構いません。昔の家屋なので壁を越えて邸内に忍び込むのは簡単ですが、奥座敷に辿り着くまでに見つかったり、的を仕留める音に気付いて若衆が駆け付ける事があります。
 建物を吹っ飛ばしたり、貫通するような派手な攻撃(ビームや爆発など)は、稀に通りがかる通行人や巡回の夜警を巻き込む恐れがあるので控えたほうがいいでしょう。

 叔父宜介は屋敷には呼ばれておらず、やくざに貰った金で酒を飲み、娘を手に入れられなかった憂さを晴らしています。彼を仕置きするには、飲み屋の外へ誘い出さなければなりません。

 必要なら境界案内人が異能でそれらしい服装に見えるようにしてくれますので、装備や外見を気にする必要はありません。


●プレイング
 誰が誰を仕留めるか、相談して決めて下さい。
 基本は1人1殺ですが、戦闘力がないので囮だけして誰かに託す、でも構いません。
 叔父宜介を仕留める役は単独行動になります。それ以外を仕留める3人は屋敷へ行きましょう。
 潜入についてはアバウトに考えますので、樽の中に潜むとか天井に張りつくとかケレン味溢れる登場を期待しています。悪人らしく命乞いをしたりするので、決めの台詞も忘れずに!(勿論無言でも結構です!)

 筆者の傾向としてアドリブ多めとなります。
 ご縁がありましたら宜しくお願いいたします。

  • 恨み晴らします完了
  • NM名かそ犬
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月11日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
エスタ=リーナ(p3p000705)
銀河烈風
ティル・エクスシア(p3p007028)
憐れな子羊
京極・神那(p3p007138)
サブマリン小太刀

リプレイ


 灯りといえば小さな蝋燭だけ。
 その心もとない光が荒や屋の隙間風に揺らぎ、思い思いに腰を下ろした3人の女の翳りを照らし出す。
 微かに気配がして女達がばっと身構えると、闇から現れたのは『遺言代筆業』志屍瑠璃(p3p000416)であった。

「嚇かしっこなしですよ」ほっと息を吐いた『サブマリン小太刀』京極神那(p3p007138)に瑠璃は微笑し、すぐに表情を硬質なものへ変えて、3人の中央へ証文を投げ出した。
「備前屋と船江組が取り分を決めたものです。見つからなければ偽造するつもりでしたが、簡単に見つかりましたよ」

「てことは……間違いなくギルティ!」
「冤罪の可能性はなしね!これで心置きなくやれるゾ☆」
『憐れな子羊』ティル・エクスシア(p3p007028)の言葉に『銀河烈風』エスタ=リーナ(p3p000705)が答え、瑠璃と神那も大きく頷いて、4人は蝋燭の下へと歩み寄った。
 そこに置かれたのは僅かな小銭。
 街で情報収集してきた瑠璃によると、数日分の食費にも満たない額だという。
 だが、それは頼み人の生きた証であり、晴らせぬ無念そのものである。

 まずエスタが何枚かを手にとって消え、ティルと神那が続く。最後に残った数枚を手にした瑠璃が蝋燭を吹き消すと、辺りは静寂と闇に包まれた。



「もう一杯持ってこい!」
 飲み屋の席に突っ伏してくだを巻く男、名を宜介という。
 姪を手に入れられなかった自棄酒の真っ最中、彼は徳利を手にした若い女が目の前に佇んでいるのに気付いた。思わず視線が整った顔と豊かな胸を上下する。

「こんばんは。相席よろしいですか?」
 女はにこにこしながら言った。
 なんだこいつと不審には思ったが、可憐な女を前にしてどうにも身体のほうが疼く。
「ああ、ああ。いいよ座んなよ。……あんた見かけないね。ここらの人?」
「神那、って呼んで下さい。実は……折り入ってお話ししたい事がありまして。ここじゃちょっと話し難い事ですので場所を変えませんか?」
 女の細い指が手の甲にかかり、完全に我を失った宜介が慌てて勘定を済ませると、女は既に店を出て夜の街へと歩き出している。
「待てよ神那ぁ。一体どこまで行くつもりなんだ?」
 柔らかい身体を想像しながら付いてきていた宜介も、遠く離れた船着き場まで歩かされては次第に苛立ってくる。
「おい、もう人なんかいねぇよ! そろそろ、ここらでしようぜ」

 そこで――――くるりと神那が振り向いた。
 いつの間にか何か持っている気がするが、気のせいだろう。
「お楽しみよりも大切な事です。実はですね……貴方の命を狙ってる奴がいるそうなんですよ」
 はぁ、命? という顔を宜介はした。身に覚えも無いという事か。唾棄すべき外道。
 耳打ちでもするように首を傾げた神那が、すっと近付く。宜介は抵抗もなく受け入れ――――己の身体を刃が貫いている事に気付いた。
 広がってゆく赤い滲みに目を落としながら、みるみる表情が強張ってゆく宜介の耳元で、女が囁く。
「まあ、それは私なんですけどね」

 宜介は遅れてやってきた痛みに震え出し、よろめき、尻餅をついた。
「ふ、船江達との事か? あ、あれは脅されて……た、助けて、くれ」
 泣きそうな顔で命乞いする男を、神那は冷たく見下ろした。一撃で仕留めなかったのは、苦痛と恐怖を味わわせる為だ。家族と誇りを奪われた少女の無念を思い知るがいい。
「言い訳は地獄でお待ちの閻魔様に述べて下さいね? 聞いてくれるかは知りませんけど」
「ひ! ……やめ」
 妖刀“不知火”が閃いて、袈裟懸けに血が迸る。
 水路に落ちた死体が沈むのを見届けてから、神那は立ち去った。宜介の死体は見つからなかったという。



 備前屋番頭、船江組組長、同心高坂が一同に会し事の進捗を話し合っていた、その夜。
 3つの影が秘かに屋敷へと忍び込んでいた。
 
 ふっと顔を上げた組長の船江に、同心の高坂が訝し気な目を向ける。
「どうした? 何かあったか?」
「いや……上で音がしませんでしたか、ね?」
 立ち上がり、廊下へ出てゆく船江に、備前屋番頭が猫でもいるのでしょうと言って笑いかけるが、彼にはそれが腹立たしかった。
 気の抜き過ぎだ。奉行所の密偵だったらどうするのだ。
「おい、誰かいねえか」
「親父。どうかしましたか」
「鼠がいるかもしれねえ。警戒しろ。屋根の上や縁の下もだ」
 声を掛けた警備の若衆の背を見送ると廊下を少し歩き、広い庭を改めて見回す。灯りが届く範囲は僅かだ。何処に隠れていやがる――――ん?

 月明かりが庭へ映し出した屋根上の影の違和感に、思わず庭へ下りた船江は振り返る間もなく何者かに飛びつかれ、同体で庭を転がる。蹴り退けて起き上がると、長い青髪の少女がスーパーヒーロー着地の姿勢のままこちらへ不敵な笑みを向けていた。
「誰だ、てめえ!」
「銀河烈風リーナたん」
「ぎ……何? りーなたん?」
「長屋への火付け。夫妻の殺害。多くの人の命を奪いましたね。もはや鬼の所業。人は鬼になれるが、鬼は人にはなれない。鬼は始末するのが世の定め」
 
 名乗りとは一転、ドスの利いた声で口上を述べながらゆっくりと立ち上がるエスタに、ぽかんとしていた船江の表情が極道者らしい鋭さを帯びてゆく。
「ほう、おつむの弱い迷子って訳じゃねえのか。そりゃ、気が咎めねえ」
 懐から取り出したのは白鞘の合口。
 抜き放った刃が月明かりに煌めいた瞬間、両者が動いた。
 一瞬の交錯から、もう一度得物を振り上げようとした船江がぎょっと自分の右手を見る。握っているはずの合口が無かったのだ。
「ふっふ~ん、お探しものはこちらカナ?」
 ソニックエッジで加速して奪い取った武器を玩びながらエスタが言うと、屈辱と無自覚の畏れに初老の極道の顔色がさっと変わる。
「てめえ!!」
 ほとんど反射的といえる彼の攻撃は、ある意味勇敢であり、且つ無謀でもあった。
 相手の踏み込みを利用したエスタ必殺の“傲慢な左”が、背中まで突き抜けんばかりに土手っ腹にめり込む。
「ぶ、はぁっ!!」
「|銀河・応報《ギャラクティカ・リベンジ》。地獄で詫びるがいいゾ」
 
 滝のように血を吐いて絶命した船江が糸の切れた人形のごとく頽れると、静かに見下ろすエスタの後ろでばたばたと何人かの足音がした。
「な……何だてめえ!!」
 庭に駆け下りてきたのは警備のやくざ2人。血相を変えて合口を抜き放ち、組長の亡骸の横に立つ青髪の侵入者へとにじり寄る。
 意味有り気に笑ってから、だっと庭の奥へ駆け出すエスタ。その後を追った2人のうち、遅れた1人が銃声と共に血を吹いて転がった。


 黒い翼を広げ、屋根から舞い下りてきたのは魔凶を齎すという魔導銃を手にしたティルである。
 エスタは加勢せずとも大丈夫だろう。さて、自分の相手は――「何だ、貴様。烏天狗か何かなのか?」
 見れば、同心高坂がゆっくりと抜刀しながら庭へ下りてくるところだった。
「か、烏?」
 妖怪扱いにムッとした残酷な天使は魔導銃で問答無用の一発。銃弾が掠め、驚いてひっくり返った高坂を、ティルは冷たく笑う。

「天使ですよ、能天使! 慈悲深い天使のウチは、あなたの言い分を聞いてあげます」
「そ……そう、ですか! じ、実は私、備前屋とやくざの悪巧みを暴こうと潜入捜査をして、いるところでして!」
 驚くべき武器を前にヘタレた高坂は、大袈裟に平伏してティルの脚に縋りつかんばかりである。悪党なりの誇りすらないのだ。
「なるほど! そうでしたか! では捜査に戻って下さい。気をつけて下さいね!」
 負けじと大袈裟に驚いてみせてから微笑むティル。高坂が安堵の息を吐くと、天使は一変して残酷な笑みを浮かべた。
「あ、やっぱり駄目です。気が変わりました。証文見たんでした、ウチ」
「しょ、証文……!」
 
 最早これまでとばかりに叫びながら高坂が斬りかかった。
 捨て身の抜き打ちは予想外の鋭さでティルの喉へと迫ったが、少女はその翼で飛び退き、空中で上下一回転しながら断罪の一撃を放つ。ひらりと地に下り立った彼女の背後で、脳天から顎まで撃ち抜かれた同心が力なく倒れた。
「……ウチ、天使ですよね?」


「こ、高坂様! 船江様!」
 庭で争う音が止み、恐る恐る声を上げてみた備前屋番頭であったが、返事は返ってこなかった。狙い撃ちされぬよう行灯の火を消し、護身用の短筒を持ち出してはみたものの不安でたまらない。
「ごきげんよう、備前屋さん」
「ひ!」
 声がした方へ慌てて振り向くと、障子戸に人影が浮かび上がっていた。声と身長からして女か。
「商売繁盛めでたいことですね。しかし少々、人を泣かせ過ぎました」
「だ、誰だおまえは! 何の証拠がある?」
 こっそりと短筒の狙いをつけようとすると、人影はふっと消え、今度は別の障子に影が浮かぶ。
「証拠はこれです」
「こ、これは……」
 投げ込まれたのは証文。間違いなく自分と船江らが交わしたものだ。
「火付けは死罪。土地もお召し上げは間違いないでしょう」
 証文を手に備前屋はぶるぶると身を震わせた。ついさっきまで我が世の春だったはずだ。どうして、どうしてこうなったのだ。
「め、目明かしか? 金を好きなだけくれてやる。それでどうだ?」
「外道」
 
 はっと声に気付いて振り向くと、黒ずくめの女・瑠璃が無表情で立ち尽くしていた。その瞳は不動火炎明王の光背が如き赤――――魔眼“瞳法毒眼竜”。
 誰か、と声を上げようとした瞬間、全身を耐え難い激痛が走り抜け、備前屋は声にならぬ悲鳴を上げた。肺が焼けるように熱く、咳をする度に吐血する。
 目を、喉を掻き毟り、恐怖と絶望の中で、備前屋番頭は“悶死”した。



 市中に噂が立った。
 飯川長屋の一件の黒幕どもが全て殺されたと。
 そして、長屋跡と身投げの橋の袂に花を手向けたのはその闇の殺し屋達だと。
 この世の影を消し去るのは光でなく、さらに深い闇なのだと。

成否

成功

状態異常

なし

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