シナリオ詳細
<幻想蜂起>花開けや、レヴェヨン
オープニング
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幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』――華やかな公演が終了した後に、レガド・イルシオンは不穏な空気に包まれていた。
頻発する猟奇事件、繰り返される惨劇。
悲劇が悲劇を呼ぶかのように連鎖は続いている。
それは燻る火の如く、人々の心に国上層部への怒りへの変貌を遂げてゆく。
サーカスの影響か『何らかの外的要因』がったのか、それは定かではないが――民衆の一部が爆発的に蜂起したのだ。
貴族たちは兵を投入し、その暴挙を止める様にと声をかけた事だろう。
されど、それでは国内への被害は猟奇事件の比ではない。善意の市民たちもが暴動に巻き込まれる可能性さえある。
「だからさ、俺達が居るんだ」
『男子高校生』月原・亮 (p3n000006)はそう言った。彼の隣で沈痛たる面立ちで立っていた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は「まだ暴動は初動状態の物がおおいのです」とそう告げる。
幻想国内の様子をいち早くキャッチすることが生業たる少女の心には重たい事象だったのだろう。
「ヤケになって派遣された兵士とぶつかって罪のない人が巻き込まれるのは嫌なのです。
それで……ローレットの出番、なのですよ。幻想国内で『何でも屋』さんとして、皆さんが活躍してきてくれたからこそなのです。
被害を最小限に止めるためにボク達が貴族さんの派遣する兵士に待ったをかけてるのですよ」
ユリーカは言う。レオンおじさんは『大きな反乱があった時の為に貴族の兵士たちは残しておけと言った』と。
被害者が多数出る前に、クライアントの意向たる反乱阻止をこなす事こそが重要なのだ。
「じゃあさ、俺らが反乱を阻止して、貴族に恩を売って今後につなげていけばOKって訳か」
「そうなのです。それで、皆さんにお願いしたいのはフィッツバルディ領にある小さな街の反乱阻止なのですよ」
曰く、貴族の首を取れ。国を護るのは俺達だと声高に叫ぶ若者たちがいるそうだ。
元は街の小さな自警団であったそうだ。幻想国での市民への扱いは若者たちの中に反乱の意思を芽生えさせたのだろう。
「首謀者は5人。その方たちを中心として、反乱の為の準備が行われているわけですね。
ですので、ええっと……反乱を企てている街に皆さんは潜入して、首謀者達の暗殺をお願いしたいのです」
暗殺はフィッツバルディ公の意向なのだそうだ。『暗殺』いう言葉には僅かに亮の表情が曇ったがこの際、仕方がないだろう。
クライアントのオーダーに応えることがギルドローレットにとって大切な事だ。依頼というものは依頼主がいてこそ成立するものだ。
「首謀者が消えればその反乱自体もなくなってしまうのです。ですので、まずはその首謀者五人の許へと行って欲しいのです」
「街も浮足立ってて他所者には厳しいんだろ……? 『反乱』に加勢しに来たふりをして街に潜入してから暗殺を行うのがベストかな」
小さく頷いたユリーカは傍らの亮と特異運命座標たちの顔を見遣ってから「すごく不穏な空気なのです」と呟いた。
「ですから、お気をつけて……ボクは応援することしかできませんが、皆さんなら最善を掴み取れるはずなのです!」
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頻発する事件はジョークのようなものだった。
隣の家の××さんが××されただとか。幼馴染同士で××しあっただとか、聞けば胸糞悪くなるものばかりだった。
誰もが胸の内に苛立ちを秘めて居た事くらいわかっていた。
貴族たちは甘い蜜を啜り、苦い部分は全て庶民に押し付けられる。
政治と言えばそれまでだと言われるが、それで納得できるものか!
苛立ちと共に拳を振り下ろせば仲間たちは賛同してくれた。誰もが不安の中、立ち上がる者の存在を待って居たのだ。
貴族を滅さなければならない。
反乱分子として処されても構いやしない――誰かの為に、誰かの為に、誰かの為に。
大義名分とはそういうものだろう。
貴族は兵士を此処へと送り込むだろうか。送り込み、そして我々を殺すのだろうか。
お決まりの文句を口にして。
――ばかなことをして!
――おまえたちが立ち上がろうとすぐにその芽は潰されるのだ!
今ならどうだ? お前らの寝首を掻く位容易いほどにもう力はここにあるんだ。
- <幻想蜂起>花開けや、レヴェヨン完了
- GM名夏あかね
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年05月08日 20時55分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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幻想国内に満ち溢れるは、平穏とは遠く離れた激情。果たしてそれがサーカスの一件より始まった事件であるのかは定かではないが……街に敷かれた警戒態勢と緊迫した空気は幼い『玻璃の小鳥』不破・ふわり(p3p002664)にとっても『悪いもの』として認識されていた。
「成程……ここまで警戒されていると余所者(たびびと)では入りにくいですね。
月原君、練達で作られたバイクという事にして乗っていてください。月原君は人間種として振舞ってくださいね」
淡々と指示を発し、『二輪』アルプス・ローダー(p3p000034)は交流アバターのホログラム表示を消した。『男子高校生』月原・亮(p3n000006)はアルプスの言葉に頷き慣れない調子でバイクへと跨った。
「ああ、まだ『免許のない年齢』なんですね。その名前と服装からの推測なんですが日本の出身なんですか?」
「え、ああ……うん。俺は日本の東京から来た旅人で」
同郷ですよ、と告げるアルプスに硬い表情をしていた亮の口元に笑みが浮かぶ。同郷といえど同じ地球であるのか――同じ階層の場所であるのかは分からないが似通った文化圏であることは確かなようだ。
柔らかな空気に安堵したような表情を見せながらも、ゆっくりと『これでも研究職』ソウヤ・アマギ(p3p004663)の背に隠れたふわりは「……もうすぐ潜入なのです」と硬く言う。
「はてさて、反乱分子の暗殺ね。オジサンもこういった仕事には比較的慣れているほうではあると思うんだけど」
科学と魔法の混在する世界からやってきたソウヤにとってこうした仕事は日常的なものであるのかもしれない。だが、国中に溢れる蜂起の声は高らかに――ここまで大規模になれば幾許かの緊張も混ざるというものだ。
じろりとその姿を見る目が追いかける。背に流れるは一筋の汗。幻想種の『フリ』をする『ちょーハンパない』アクア・サンシャイン(p3p000041)は深く息を吐きだして反乱分子たる青年たちの存在する詰め所を目指す。
(『警戒』されているわね……当たり前、かしら)
街に入った時から感じたピリリとした気配はその背中に突き刺さる。不穏の火種は燻り直ぐにでも異分子を炙り出さんとするかのようだった。
ゆっくりと扉に手をかけて深く息を吸い込んだ『揺蕩う魂』幽邏(p3p001188)はちら、と背後に立つ『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)へと目配せする。その外見は旅人と呼ぶに相応しい。二人の姿に視線を巡らせた反乱軍の一員は「なんだ」と低く囁いた。
「……そう警戒するでない。ここで貴族共への反乱を起こすと聞いたのじゃが。一枚噛ませてもらおうとおもっての」
「旅人(よそもの)が何でまた」
その疑問は尤もだと言うようにゲイリーは大きく頷く。言葉数少なくとも、こく、と頷く幽邏はその表情に不快を滲ませている。
圧政に苦しむ民衆としてこの場を訪れた特異運命座標たちとは違う言葉に興味を持ったのか反乱軍の一人はゆっくりと身を乗り出した。
「儂らは傭兵として貴族に雇われた。危険な任務をいくつも請け負った。
戦死した仲間もおった。それなのに奴らめ、事が済んだら儂らへの報酬を踏み倒しおったのじゃ!」
「……服も……新しいものが……買えなかった……」
呟く幽邏は苛立ちを滲ませたかのように声音を低くする。貴族への恨みを十分に滾らせるゲンリーはどん、と地面を鈍い音立てて踏みつけた。
「盛り上がってんなぁ」
からりと笑ったのは『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。反乱の噂を聞き、この場に訪れたのだという彼は「……と言う訳だ、旅人のおっさん達も併せてレジスタンスに加入させて貰えないか?」と門戸を閉ざしている青年たちへと笑い掛ける。
「理由は」
「――何、よくあるつまらない話さ。大体あんたらが想像している通りだろうよ」
「それから、勇気ある憂国の志士達に歌を贈りたいのです。流浪の傭兵について回る旅の歌姫として」
学生服を思わせる衣装に身を包み『銀翼の歌姫』ファリス・リーン(p3p002532)はゆっくりと頭を下げる。アルプスにまたがった亮はそれにつられて頭を下げ、ちら、と自警団の兵士たちを見遣った。
「歌姫……? 戦力にならないだろう。こんな所に居たって『怪我するだけだ』」
ひらりと掌を返したのは室内より顔を出した青年だ。その表情と周囲の雰囲気を見てすぐにアクアは彼がドレアという名の青年であることに気付く。
「女はお呼びじゃないって事かしら……?」
「レジスタンスは遊びじゃないんだ。女子供は街の自警団(おにいさん)が守ってやるから家で待ってな」
噛み付く様な声音にアクアは小さく息を吐きだす。「そうね」と呟き掌に灯すのは焔。
「神秘の扱いには心得があるの。勿論、こんなパーティーを組んで押し掛ける程よ。全員それなりに戦える。
……女って武器にもなるのよ。私に出来る事、あると思うの。手伝わせてもらえないかしら?」
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招き入れられた室内は閑散としていた。元は街の自警団の詰め所であったと言うのに、張り詰めた空気は街を護る人々が過ごした場所とは思えないほどだ。
アルプスを室内の――目立ちはしない場所だが、周囲を見渡せる――静かな場所へと停止させて亮とファリスは周囲をきょろりと見回す。
殿に立っていた幽邏はしっかりとドレアを、主犯格たる存在を見詰め、武器をぎゅっと抱き締める。
周囲に立っていた反乱軍兵士たちが武器の携帯を控える様にと彼女に告げたが、ふるりと首を振り「……触らないで」と低く囁いた。
「この子にも色々あっての。武器の一つぐらい許してくれんか」
ゲイリーの言葉に曖昧に頷いた兵士たちは少女のその身に訪れた不幸を察したかのように口を閉ざす。貴族による圧政は、貧民たちの心に大きな傷を残していたのだろう。椅子に腰かけ、ドレアと向かい合ったアクアははあ、と深く息を吐く。
「政治のせいで庶民が割を食うのは、ある程度は仕方ないと思う。けど限度がある。
お母さんは倒れちゃって……お金がないから私が面倒見てるけど、本当はお医者さんに診せてあげたい。お父さんも働き詰めで元気ないし……もう限界」
唇を噛み締めたアクアの傍らで不安げにふわりが頷く。ぎゅ、とソウヤの衣服を握りしめていた小さな少女の存在に気付いた様に主犯格の一人が「その子は」とソウヤへと問い掛けた。
「……お父さんとお母さんが突然いなくなったんです。
その後、お兄さんやお姉さんたちが助けてくれて……それから一緒に……」
「一人にしておくのも怖いだろう? 何せ、貴族がああだ。連れて歩くしかない。
オジサンもね貴族のやり方は昔から気にくわないの差。一部の特権階級だけが甘い汁を啜るなど、許される訳がないだろう?」
ふわりの背を撫でたソウヤは「この子のように不幸になる存在がいる」と毒吐く。警戒するようにパーティーメンバーの背後に隠れた少女を不憫に思ってかドレアは「何か甘いものでも出してやれ」と後ろ手に指示をした。
「子供にだって被害が及ぶ。それに何が『サーカス』だ。特権階級の奴らの娯楽でしかないじゃないか」
「そうじゃのう。サーカスを見に行く費用が儂達の依頼の成功報酬であったかもしれない――そう思うと」
だん、と机をたたいたゲイリーの言葉にドレア達が大きく頷く。ゲイリーに賛同するように頷いた幽邏の姿を目にして主犯格たる青年たちは『貴族への反抗の意思』が強い同士だと認識したのだろう。安堵した様に背を向けている。
「仕方がない、なんともならない、そんな風に思いたくない。不満を抱いているのは私の周りだけじゃない」
アクアの言葉に、青年たちはそうだそうだ、と声を上げた事だろう。その場にある熱狂は幼いふわりには理解できるものではないし、傍らで見守っているアルプスにとっても『異質』なものとして認識されていたことだろう。
「――現状を変えていくために、行動を起こすべき」
ゆっくりとその言葉と共にドレアに向けられたのは御神体。それがどういう意図なのかを青年たちが分からぬはずもない。
「……なんだ?」
「反乱での戦闘を止めに来ました。一般市民への被害軽減の為です」
ホログラムが映し出される。桃色の髪の少女は丁寧な物腰でドレアへと告げた。
ぐん、と地面を踏み締め一気に肉薄したのはソウヤ。ライフルを手にしたまま繰り出した奇襲の一撃が首謀者の一角のその身を殴りつける。
「この世界の貴族たちの在り方に不満があるのは事実なんだけどね。
でもね、オジサンたちの今回の依頼はキミたちのアンサツなんよ――残念だけどね」
皮肉気に笑ったその言葉に周囲に立っていた反乱軍のメンバーが一斉に特異運命座標へと襲い掛かる。
武器がぶつかり合う音に丸い瞳を向けたふわりが呪印の刻まれたグローブを装着した掌に力を籠める。
小柄な体を生かして至近距離へと間合いを詰めた少女は賛同者たちを凪払うように一気に足元から上へと突き上げる。
「ぐっ……!」
「あ、ごめんなさい。呪いが――」
ふわりのことばに小さく笑ったのはイグナート。ドレアへとちら、と視線を送り、暗殺対象を視認した彼は「タスク」と背後の扉へと視線を送った。
「月原君。……彼らは被害を抑える為の犠牲です。迷わないで。
その迷いは一般市民として正しい感情だと思います。そしてそれが尊い物だとも。けれど今は命を預け合うメンバーだ」
その迷いが仲間を傷つける可能性がある。
アルプスの言葉に亮の表情から色が抜けていく。は、と息を吐きだし首を振る。少年は武器を振るう。その眼前でトンファーを振り翳したホログラムの少女がブレた。
後方の扉を塞ぐ少年の位置を確認しファリスは事前に集めていた首謀者の風貌と一致する人間への攻撃を支持する。穏やかな口調が一転し、厳しさを帯びてゆく。
(――暗殺という行いは、卑怯だ)
ファリスは唇を噛み締める。
(卑怯だけれど、闇から闇へ葬り去れば、彼らの親類縁者を――この街を救えるはず)
己の中にある大義名分は正義だ。国を憂いて行動を起こそうとする彼らの勇気は好ましい。罪(ゆうき)はそこにあると言うのに、ファリスにとってはこれは悪にも等しい大罪だ。
イグナートの拳が宙を掻く。首謀者の一人が攻撃を避ける様に身を乗り出したその瞬間に彼はに、と唇を歪めた。
「ダレカのタメに、シッパイしても、なんて言っちゃダメだよ。ジブンのタメに、絶対に勝つタメに戦わないと」
義勇。掲げた全てが『誰かの為』という大義名分のもとで振り翳されているのならば、貴族たちへの反乱は自分の意思ではないという事なのかとイグナートは彼らと目を合わす。
「そうでなければモクテキを見失う。キミは戦いに勝って何を手に入れたかった?」
首謀者たちの中、アルプスは賛同者たちが皆、敵対行動を示していることに気付いた。
逃げ場をなくし、尚も戦わんと意思を固める者たちに情け容赦を賭けるのは間違いであることをアルプスはよく知っている。
(躊躇う必要はないんです――……大義名分なんて掲げる必要もない)
彼らのように強き意志を持たずとも、クライアントの一声あればこの場に立てることをアルプスはよく知っている。
轢くのはバイクの本懐ではないがこの際、その体を生かした攻撃を行わずにはいられない。駆動音は心地よい、練達製と嘯けば賛同者たちは皆、信じ込んでしまう様な精巧な作りの体を自由自在に動かした。
「お主ら、時機が悪かったの……ドワーフ示現流、受けるがよい」
ゲイリーの低く囁く声がドレアの耳朶を伝った。肉薄したその刹那の一瞬に、その身がぐいんと宙に投げ出される。
「あ」と彼が声を出したのも遠い事のように思い返された――どうして、と呟く声もない。
ドレアの身が宙に舞った事を見逃さぬようにアクアが、ソウヤが攻撃を加える。
逃さぬようにと後方より支援射撃を繰り出す幽邏はその左右の瞳にその命が散る瞬間を映しこむ。
(……あ――)
息を飲めば、誰かが死ぬその瞬間が網膜に焼き付く感覚がした。
抱えた銃は決して重たくは感じられない。幽邏にとっては慣れ親しんだ感覚が、人の命を奪いゆく。
「キゾクを倒すことがモクテキじゃないだろ? その先は?」
イグナートのその言葉に皆、小さく息を飲む。その先は――?
圧政より解放されたその先に何があるのか『そんなものを青年たちは知らない』。
熱に浮かされたように義勇を掲げ、只、邁進していただけだ。
「お願い、投降して。反乱が起ったら、貴族が兵士をよこす。この街が戦場になるわ」
首謀者の中心であったドレアが倒れた事で、人々の間に走った不安をアクアは見逃さない。
カリスマを生かしたファリスの声を姿を活かしながらもアクアは願うように声を張り上げた。
「だから反乱が起こらないよう、私たちが動いた。
一方的な都合だって分かってるわ。でも、ここが戦場になったら、無関係な街の人が巻き込まれるの」
「貴族が抵抗するのが悪いんだ、俺達は何も悪くない! そうだろ!?」
首謀者の一角の声はぐんぐんと迫る激流のように特異運命座標の傍にある。
ふわりは「抵抗はやめてください」と落ち着いた声音で言った。幼い少女のその声に、皆、動きを止めるしかない。
「無駄な血は流したくないです」
淡々と、幼い彼女はそう告げる。反乱を起こした場合、無駄な血が多く流れ被害が拡大していく――それはどうしても避けられない未来だ。
だからこそ、その未来を阻止するために戦っているのだとふわりは小さく告げる。
隙を突かんと放たれる一撃に、ぐっと息を飲んだゲイリーは楽しいと言わんばかりに大声を上げて笑った。
「元気がいい! じゃが、ここまでだのう」
ゲイリーの声に、首謀者があっと声を上げる。一気に無力化され、そして掲げられたオーダーの通りの殺害が進んでいく。
逃走するならば見逃してやると告げた特異運命座標の前に数人は散り散りに走り出した。だが、それでも残り戦う賛同者たちの姿張った。
「キミたちも一緒に死にたいのかい? それならばとめはしないよ。オジサンがとどめを刺してあげよう」
笑ったソウヤの声の後――そこに残ったのは赤い赤い血溜まりだけだった。
●
「無駄な犠牲は必要ありませんよ」
アルプスは淡々という。大丈夫ですか、と亮へと呼びかけ荒れた室内をぼんやりと見下ろした。
「だから、賛同者たちは逃がした。暗殺は終了です」
「『必要な犠牲』はあったけれど、ね」
小さく息を吐き、倒れた椅子を起こしたアクアは敵対行動をとった賛同者達の姿を両眼に移す。この詰め所の中に居たのは賛同者の中でもその意思が強い者たちだったのだろう。
大体の人々は特異運命座標達に刃を向けた。
反乱の意志は強い。己らは『反乱を起こすのではない』。正すのだと、声高に告げ乍ら――
「……全く、戦場に立ったものはいつもこうじゃ」
肩を回しゲンリーは深く息を吐く。ぼんやりと虚空を見詰めていた幽邏は依頼を達成したことに安堵した様に目を伏せた。
この場所はゲンリーや幽邏にとっての戦場だった。最初に彼らは言っていた――『危険な任務をいくつも請け負った』のだと。それが、そのうちのひとつだったのだ。
イグナートは「聞けなかった」と小さく笑う。
「聞いたよね。キゾクを倒してからその先はどうなのかって。……コタエられるやつはいなかった」
イグナートは深く息をつく。その先はない、先行きに暗雲立ち込めていたとしても、彼らはこの動乱に乗じて反旗を翻したのだろう。
イグナートは肩を竦める。固めた拳に力を込めれば、彼の眼前で『勇気』を湛えたファリスはその両眼に不安を乗せる。
ファリスは憂う。この国を、この世界を、そして、花開く事なかった彼らの事を。
「謳いましょう――約束だったでしょう?」
反乱の花は可憐だ。
しかし、その蕾は花開く時を知らない――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様です、イレギュラーズ!
反乱を起こす異端児の討伐お疲れさまでした。
それらに対する思惑はそれぞれあれど、オーダーをばっちりこなしていただけました。
これにて一件落着です。
GMコメント
季節は廻れど、夏あかねです。よろしくお願いいたします。
反乱分子の主犯格の暗殺をお願いします。
●フィッツバルディ領の街『イレージア』
煉瓦造りの街並みが並んでいるこじんまりとした街です。
決して裕福とは言えない街です。貴族に対する反抗意識は強いように見受けられます。
今回は情報のキャッチが早かった為、主犯格を潰せば反乱は未然に防げると考えられます。
●反乱分子主犯格*5名
ドレアという青年を中心とした主犯格です。街の自警団であったため声が大きいそうです。
根城としているのは街の中の自警団詰め所。広くはありませんがドレアを中心に10名程がこの自警団詰め所にいます。
主犯格は何れも自警団の揃いの制服を身に着けています。半数が主犯格の指導者たる青年たち。半数は偶然居合わせた賛同者です。
戦闘能力はそこそこですがドレアだけ頭一つ抜けた戦闘能力を所有しています。前線で戦うファイタータイプです。
賛同者たちも参戦しますが、処遇に関しては一任されています。
フィッツバルディ公のオーダーはあくまで『主犯格の暗殺』です。
●同行NPC
月原・亮が同行します。指示が無ければ本人なりの最善を。
指示があれば、無茶でない範囲のみ従わせていただきます。オールラウンダー。がんばります。
皆さまの冒険をお待ちしております。
どうぞ、よろしくおねがいします。
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