シナリオ詳細
来たれ夏の雪合戦!
オープニング
●雪の山
ここは現実世界によく似た異世界。しかし妖怪や、怪物、それ以外の何かが居る。それと戦う人間が暗躍し、日常を守っている。そんな世界。
季節は夏真っ盛り。しかしとある山には雪が降っていた。この季節にありえない、異常気象だ。
その雪を降らせている存在が居る。
「…夏なんてだーいきらい!いーっぱい、雪降らせちゃうんだから!」
雪のように白い銀の髪、白い肌。白い瞳。雪の妖怪、雪女だ。生まれて間もない彼女は、夏が大嫌いだった。
本来、夏を嫌う種族である彼女達は、この季節山の上の方へ引きこもり冬を待つのだが…。
好奇心により出てきてしまい、夏の暑さに耐えきれずこの山を夏の雪山にしてしまったようだ。
「ふふーん、気持ちいいー。やっぱり雪が一番だよね!…なぁに?人が来るの?……いいわ、いっぱい遊んであげる!」
しかしこの異常気象に興味を持った人々が山登りを始めるのだという。
好奇心を胸に、山登りをする人々に勝負を挑むのだ。そう、雪合戦という名の勝負を。
「負けたら、氷漬けにしてあげるわ。一生私と一緒に暮らすの!幸せでしょ?」
子供の無邪気な笑顔で、雪女は言うのだった。
●猫の話
「…ということで、おまえたちには夏の雪山に行ってもらう」
集まったイレギュラーズ達に、ラビ・ミャウはボールで遊びながら告げる。
「寒いのは雪山とその周辺の町だけ。他は真夏だ。だから登る時にそれなりの恰好しないとさむいぞ」
がじり、とボールを噛む。
「…雪女は、遊ぶやつを探してる。同じ年代の同種族が居ないから、寂しいんだと思う。…だからと言って、普通の人に勝負をさせたら…確実に死ぬだろ」
雪女相手に、一般人が雪合戦で勝てることなど、ありやしないのだ。だからラビはイレギュラーズ達に頼んでいる。
「作戦とか、そういうのはおまえたちに任せる。なんとかなるだろ、たぶん」
ふわぁ、と大きく欠伸をした。
「…雪女との勝負に勝てば、山の上の方へ戻ってくれるだろ。…終わったら、雪が残ってるうちに、遊べばいい」
スキーやスノボー、かまくらを作ったり…。数日たてば夏の暑さに全て溶けてしまうだろう。少しばかりの涼をとればいい。
「じゃ、宜しく頼むぜ」
ラビはぺしり、と机を尻尾で叩いた。
- 来たれ夏の雪合戦!完了
- NM名笹山ぱんだ
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年08月20日 22時20分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●夏の匂い
蝉の声、照り付ける太陽、身体を冷ますことのない風はじわりと肌を痛めつける。
そんな夏の日の一日だった。―――はず。
山は白く染まり、雪が降っていることを示していた。周りの町の住人はびっくり仰天。季節外れの雪に異常気象か、と騒ぎが起こり始めていた。
そんな山に、イレギュラーズ達は訪れた。この山に居るという雪の原因である少女と、戦う為に――。
●邂逅
「今年も暑いな、溶けそうだよ。そんな折に受けたこの依頼、雪山に行けるのは望むところだ。楽しく涼ませてもらうとしよう」
いつもの剣と鎧は外し、マフラー、手袋等の防寒具を身に着けた『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は雪山へと足を踏み入れる。
「俺は寒いの得意じゃないですけどこれは仕事なのでしっかりやり遂げるのです!!」
白薔薇の眼帯が特徴的なハーモニアの青年、『冷たい薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)も防寒具を着つつも寒さに身を震わせる。
「暑いのは寒いのより嫌なので、いっそこのままでもいいんじゃないかなと思ったり思わなかったり…」
夏の暑さにぐったりしていた『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はついそんなことを呟いた。だが近隣の町に迷惑をかけている現状、何が起こるかわからないのでそうは言っていられない。もちろん、世界自身もそんなことは理解していた。
「暑い日が続いて、エルもへろへろです。だからエルは、早く冬になって欲しいと思っていました」
皆の暑いアピールにこくこく頷いた『ふゆのいろ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)は雪山の心地良い寒さに思わず口元を綻ばせる。
「誰よりも早く冬に出会えるなんて、素敵だとエルは思います。雪女さんと仲良く出来たら、エルは嬉しいです」
この真夏に冬を味わうことなんて滅多にない。ならば堪能しなければ。そして雪の原因である雪女と仲良くできたら、尚更嬉しい。エルはご機嫌顔で雪山を歩いて行った。
4人が少し雪山を歩けば、ラビが言っていた小屋を見つけた。その横でひとり寂し気に雪だるまを作っている少女のことも。
現れた4人に気付いた雪女はぱぁ、っと顔を明るくさせて。
「貴方達が私といっぱい遊んでくれるのね!ふふ、いいわっ 負けたら氷漬けにしてあげる!」
遊び相手を見つけた、と少女は楽し気に勝負を持ち出した。
「雪女さん、初めまして。エルです。エル達と楽しく雪合戦しましょう」
ぺこりとエルがお辞儀をすれば、他のイレギュラーズ達も名前を名乗る。
「地の利は貴方にあるのだろう。だがやるからには、負けはしないよ。勝負させて頂こう!」
リゲルは騎士らしく凛々しい挨拶をした後に、宣戦布告を行った。
「ところで死人が出る雪合戦とか恐ろしすぎるんだけど俺たちは五体満足でいられるんだろうか……不安だ」
世界は憂鬱げに楽し気な他のメンバーを見やる。不安だ。負けたら氷漬けにされてしまう。
「…雪女さんと本気と書いてマジと読む雪合戦でしたよね。普通に考えて雪を扱う雪女に勝てるわけがねぇと思うのですが…」
ラクリマも同意するように呟いた後、勝機を探すために考える。
「雪合戦はただ雪を投げ合うだけではない……そう雪合戦は戦略・戦術・大人の駆け引きなのです!こっちは戦い慣れたイレギュラーズ!力を合わせればきっと勝利できる、きっと…たぶん!!」
「いや、多分かよ」
戦いに慣れたイレギュラーズ達なら大丈夫だろう、とこの話は持ってこられた。ならばその期待にも答えなければならない。きっと勝てる!世界の突っ込みは聞かないことにした。
●雪合戦開始!
「手加減が必要かしら?…そうね、30秒待ってあげるわ!」
雪の椅子に座った少女は、余裕そうにイレギュラーズ達を見ている。その余裕を無くすようにしなければ…!
雪だるまを素早く作ったリゲルはそれをバリケード代わりにして持っている盾一杯に雪玉を作る。そんなリゲルの雪だるまに一緒に隠れていたのはラクリマだ。
無暗に雪のプロの前に進んでもきっとやられてしまう…。ならば誰かを壁役にしよう、というのが作戦だ。ついでにせっせと一緒に雪玉を作る。
簡易召喚陣を使って雪の精霊を呼び出すのは世界だ。戦いにおいて重要なのは兵力の差。味方が多ければ多いほど良い。精霊たちは雪降る山に楽しげに世界の周りを回った。
岩陰に隠れて雪玉を作るお手伝いをしているのはエルだ。自分の力量不足を感じ、それならば誰かの雪玉を作ろうという想い付きだ。
「それじゃ、行くよ!」
周りにある雪をその力で浮遊させ、雪玉にすれば雪玉の雨の矢のように、イレギュラーズ達の方へと放つ。
雪だるまの後ろから抜け出したリゲルは雪玉をたくさん乗せた盾をソリのように押し出して接近し、雪玉を投げつける。
「わ、貴方…やるわねっ」
投げつけた雪玉は雪女が浮かせていた雪玉とぶつかり消えていく。気にせず再び雪玉を作り出せばリゲルへと大量に雪玉を向けた。
降り注ぐそれを避けながら岩陰へと隠れやり過ごす。
壁…もといリゲルが前に行ってしまったが、そのお陰で隙が出来た雪女に接近し、雪玉を投げるのはラクリマだ。
「ははっ!これで雪玉も怖くないし冷たくないのです!!俺は天才ですね!!」
だが雪女もそんな大声で来られれば吹雪を起こし、ラクリマへと雪と風を送る。
「ぎゃー俺を狙うんじゃないのです!!雪冷たいから嫌なのです!!!!」
防寒具を着ていても、脅威の寒さ。耐久力の低いラクリマには堪ったものではない。
「うっ……俺の仇は任せたぞ……」
ぱたりと雪の上へと倒れてしまったラクリマの手を引っ張り回収するのはエルだ。
「だいじょうぶです?」
岩陰に隠れていたエルも、仲間が倒れてしまったら出ざるを得ない。ギフトで吹雪の幻を作り世界と雪の精霊が攻撃を行っている間を縫って、再び岩陰へと戻った。
引っ張って移動した時に木や岩にぶつかって凄い音がした気がするけど、些末事にしておこう。
世界の呼び出した雪の精霊達は雪合戦を続けている。一体だけ――、雪女の死角になるよう移動させている精霊が居る。その場所につくまでは時間稼ぎだ。
「これ、使ってもいいかな」
木や岩陰に隠れながら、エルの近くに来たリゲルはエルが作った雪玉を指さして首を傾げる。
「そのために、つくったのです」
いっぱい、いっぱい。皆の力になるために。エルは大きく頷いた。
「ありがとう」
その雪玉を持って、再びリゲルは雪女へと飛び出し、受け身を取りながら回転し雪玉を投げる。
「あなた、まだ倒れないのね」
「そう簡単にはやられはしないぞ」
精霊たちへと向いていた雪玉はリゲルへと狙いを変え、襲い掛かった。マントで雪玉をガードしつつも雪玉投げ再び岩陰に隠れる。
世界の目には、死角へ動いていた精霊がその場所へ着いたことが見えた。頷いて精霊へと合図をする。雪女の死角から雪の精霊は雪玉を投げつけ、その白い体へとぶつける。
「きゃあ!」
今までその場から動いていなかった雪女はその勢いにぽてん、と雪の上へと転がった。驚いた瞳でいた彼女は、次にくすくすと笑う。
「ふふ、楽しかったー!いいわ、私の負けね!貴方達、強いのねっ」
雪女のこの言葉で、雪合戦は終わったのだった。
●雪遊び!
「良い運動になって面白いな!」
動き回ったリゲルは伸びをし、身体をほぐす。そして仲間の元へと戻ろうとする雪女へと話しかける。
「まだ時間があるのなら、他にも雪遊びを楽しんでみないかい?」
「一緒に雪だるまを作って、雪ウサギも沢山作って。雪女さんと楽しい思い出を作りたいって、エルは思います」
エルもその言葉に続き、こくこく頷きながら雪女へと声をかけた。きょとんとした雪女は首を傾げる。
「…一緒に遊んでもいいの?」
勿論――。イレギュラーズ達は頷いた。
「雪合戦って一応遊びだよな?まだ遊ぶのか?」
雪遊びをしている皆を眺めながら世界は雪の精霊たちと大きいかまくらを作った。ふと、思いついてふらりとその場を離れる。
「かまくらを作ろうとしたらもうすでにかまくらが出来ていた…?いや、早速だから自分でも作りたいですね!!」
世界達が作ったかまくらを見てラクリマは驚きながらも、精霊たちに手伝ってもらいながら自分ひとり用のかまくらを作り始めた。
「寒いからじゃないですよ!!」
えぇ、そんなわけないじゃないですか。
「こ、これ…危なくないの?」
雪山斜面の上の方、リゲルの盾に座った雪女は首を傾げる。リゲルは下方で頷いた。
「俺が受け止めるから、大丈夫だよ」
「がんばるです」
雪女の隣でエルは大きく頷く。その言葉に雪女も決心したらしくそのまま、斜面を滑り始める。盾をソリのようにし、加速していく。
「きゃ、…わっ」
一気に滑り落ちればリゲルは彼女の身体を受け止めた。小さな身体の為負担は無い。
「す、すごい、こんな事初めて!」
楽しい、そんな気持ちを表情に込め雪女はきらきらとした瞳でリゲルを見上げた。
「雪山で滑走するのは独特の爽快感があるよな!」
「えぇ、楽しいわ!」
「…エルも、するです」
盾ソリをした後はエルと雪女は雪だるまや雪ウサギを作った。かまくらでのんびりしていたラクリマも呼び寄せ一緒に作りかまくらの周りを雪うさぎと雪だるまで飾る。
そんなことをしていれば、世界が帰ってきた。下の町まで行き食材や器具を揃えもってきてくれたのだ。
「疲れただろ。飯でも食おう」
そしてイレギュラーズ達と雪女はかまくらのなかで食事を食べた。温かい鍋に雪女は終始驚いていたが、とても楽し気だった。
「寂しくなったら、またいつでもくるといい。俺で良ければ相手になるよ!」
イレギュラーズ達が雪山を去る直前、リゲルの言葉に寂しそうな雪女の表情は笑顔になる。
「…うん、約束よ――!」
数日後には、元通りとなった山が、そこにあるのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
こんにちは、笹山ぱんだです。
今回は夏の雪合戦となります。
よろしくお願いします。
●戦場
雪山。山に登って30分程、小さな山小屋の傍に雪女は居ます。
傍には大きな木や、大きな岩があり、隠れるところもあります。
雪女が満足すれば勝負は終わります。
●雪女
10歳ほどの少女の姿をしています。
生まれて20年程の若い雪女で他の同種族は同年代が居ません。
その為遊び仲間がおらず、日々寂しい思いをしていました。
今回好奇心に負け、夏の山を雪山に訪れる登山客に雪合戦を挑もうとしています。
楽しいこと、面白いことが大好きな少女です。また、暑くなると溶けます。なので暑い夏は苦手です。
手を使わず雪玉を作り出し投げる能力と、吹雪を起こす力を持っています。
それでは、良き戦いを。
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