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シナリオ詳細

<夏の夢の終わりに>ひんやり氷結スライムの脅威!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●現れた氷結ストロングスライム
 妖精郷アルヴィオンの夏は、氷で閉ざされた――。
 夏が訪れる前に、極寒の真冬がやってきたのだ。
 かつて、この地には『冬の王』と呼ばれる強力な邪妖精が封印されていた。
 妖精たちの昔話では、勇者アイオンの仲間たちと妖精の英雄ロスローリエンとエイレンの活躍によるものだと語り継がれてきた。
 しかし、その『冬の王』の力が、クオン=フユツキによって奪われてしまったのだ。
 花々が咲き誇り、緑が生い茂った美しい妖精郷の光景は消え去った。
 今は、すべてを覆う白い吹雪が吹き荒れるのみ。

「くそ、妖精郷がこんな光景に……」
「黙ってろ、体力を消費するだけだぞ」

 探索隊は、身を極寒の中に晒しながら進んでいた。
 彼らは、妖精郷を救うべく結成された兵士たちによる探索隊であった。
 この一面氷と雪の地獄と化した妖精郷を救うためには、魔種に占拠された妖精城アヴァル=ケインを解放しなければならない。
 しかし、その道もまた困難なものである。
 寒冷というのは、それだけで体力を奪う。
 さらには、恐るべきものが待ち受けていた。
 
 じゅる、じゅるるるるる……。

 目に痛いほどの緑の液体が、探索隊に迫っていた。
 そいつは、意思があるかのように忍び寄り、襲いかかる。

「うわあああっ!? なんだこりゃああっ!」
「誰か取ってくれ! こいつ、絡みついてきやがる」
「ああ、ひんやりする……! なんだこれ?」
「本当だ、ひんやりして気持ちいい……」


 極度の低温にもかかわらず、まるで真夏に氷に触れたような感触であった。その粘液質のものが、防寒着の隙間から侵入し、背筋に張り付いてくる。
 爽やかなライムの香りまで漂っている。

「なんだ、暑くないか?」
「暑い、真夏みたいだ……」
「でも、こいつに触られると、ひんやりする」

 探索隊の兵士たちは、次々に防寒着を脱ぎ捨て、その鮮やかな緑色の粘液にみずから身体を触れさせていく。
 矛盾脱衣という言葉をご存知であろうか?
 凍死者の中には、猛烈な寒さに晒されているというのに衣服や防寒着を脱ぎ捨てた状態で発見されることがあるだという。
 体温の熱量が奪われた結果、身体は生命の維持のために熱を発生させようとするのだ。そのため、体感温度と外気温の差によって暑く感じてしまう。

「ああ、ひんやりするぅ……」

 だんだん、彼らの目の焦点が合わなくなってくる。
 まるで強いアルコールに酔ったようだ。
 過酷な状況に置かれているのに、まるで幸せに包まれているような表情のまま、捕食されていくのであった。

●妖精城までの道
「アヴァル=ケイン城までの道は、完全に氷に閉ざされたっす……」

 そのアルベドは言う。彼女は、エミリア・カーライル(p3p008375)のアルベドであった。
 その核となった妖精は、イレギュラーズの拳によって正気に目覚め、故郷である妖精郷を救おうとしている。

「でも、氷結スライムがその道に立ち塞がっているっす」

 氷結スライム――。
 極寒の道となった妖精城までの道に現われ、やって来る者をその特殊な感触でまるで酔っ払ったように身体をカッカさせ、心地よい幻覚を与える合成生物だ。
 製造の過程によるものか、その粘液質の液体生物は、まるでライムのような人工的な香りも漂わせているらしい。
 犠牲者は、防寒具を脱ぎ捨てて粘液に包まれたまま発見されており、その恐ろしさの一端が伝わってくる。

「氷結スライムを倒して、アヴァル=ケイン城までの道のりを確保するっす!」

 エミリアのアルベドは言った。
 恐怖の氷結スライムを退け、攻城の一歩にできるだろうか?

GMコメント

■シナリオについて
 みなさんこんちわ、解谷アキラです。
 美しかった妖精郷は、ご覧のように氷に覆われてしまいました。
 正気に戻ったアルベドも、故郷を救う気持ちに目覚めたようです。
 魔種に占拠された妖精城アヴァル=ケインを攻略しなくてはならないのですが、その道は極寒地獄となったうえに途中に氷結スライムが出現します。これを倒すのが今回の目的となります。

・氷結スライム
 錬金術で生まれた合成魔法生物です。
 その全身は粘液状ですが、バナナで釘が打てるような寒冷地でもこおりません。
 よく冷えており、触れるとひんやりします。
 しかし、ひんやりして気持ちいいのは、周囲の寒冷状況と合わせての幻覚です。実際はダメージを受けるほどの冷気によって対象を氷結するというストロングなスライムです。しかも、体温と外気の差もあって、寒くても防寒着、衣服の類を脱衣までしてしまう可能性があります。
 氷結スライムは1体ですが、その容量は大きく、ドラム缶8本分はあると推測されます。
 製造の過程によるものか、ライムのような香りがついており、蛍光色に近い緑色なので発見はそれほど難しくはありません。
 倒すことができれば、妖精城の攻略に幾ばくか貢献できるでしょう。

・アルペド
 かつてスライムを引き連れて妖精の町エウィンを襲いましたが、イレギュラーズの肉体言語による説得を受け、正気を取り戻しました。
 スライムに関する知識、情報を持っているようです。
 氷結スライムの情報は、彼女がもたらしてくれました。
 望めば同行し、戦闘では囮を引き受けるくらいはしますが、メインで討伐するのは皆さんイレギュラーズの役割となります。

 事前情報は以上となります。
 それでは、どーんといらしてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <夏の夢の終わりに>ひんやり氷結スライムの脅威!完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月30日 23時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
主人=公(p3p000578)
ハム子
ブーケ ガルニ(p3p002361)
兎身創痍
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
観音打 至東(p3p008495)

リプレイ

●吹雪の中のスライム
 外気温は氷点下にまで下がっている。妖精卿アルヴィオンのうららかな光景は、あっと間に極寒地獄への一変している。
 美しい緑は一面の白い雪に覆われ、猛烈な吹雪が吹き付けて花々は凍りついた。
 夏の終わりだと、誰が信じようか。

「ついこの間まで水着着てた気がするんですけど、もう冬ですか早いですね……ってそんな訳あるかーい!」

 あまりの異常事態に、『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)は一人ボケツッコミをしていた。
 水着で夏を満喫しようとしていた浮かれ気分はもうぶっ飛んでいる。季節感はどうあれ、目の前の光景は冬そのものだ。夏が終わり、秋を飛ばして冬が来たのである。

「どうしてここまで寒くなってるんですか……寒暖差で風邪ひきますよ……。着込んで家出ようとしたら『暑さで頭やられたか…?』とか言われますし……しにゃ寒いの苦手なんですよ! 暖かい地方生まれなんで!!」

 今度はぼやき始める。
 それほど、ひどい急転直下の冬であった。
 しかし、理由があれど防寒着がない、というのはかなり致命的なのではないか? そう思える。

「もう少しの辛抱っす!」

 励ますのは、アルベド・エミリアである。
 彼女も防寒着どころか露出の多い格好なのだが、錬金術で造らたという性質のためか、凍えることはないらしい。

「氷結スライムは、この先で行く手を塞いでいるっす!」

 今回、しにゃこたちローレットのメンバーが挑むのは、この冬の訪れと同時に妖精城アヴァル=ケインへの道を塞ぐ氷結スライムである。
 『冬の王』の力を奪ったクオン=フユツキがこもる妖精城を攻略するためにも、その道を超えねばならない。

「防寒具や暖を取れそうな場所は大丈夫?」

 アルベド・エミリアに対し、『ハム子』主人=公(p3p000578)が確認を取った。
 寒冷地では、装備は重要である。氷結スライムとバトルとなる前に遭難となってしまっては目も当てられない。

「大丈夫っす、防寒着とカイロを持ってきているっす」

 アルベド・エミリアは健気に答えた。
 低体温症というのは、慣れた登山家でも活動不能に追い込んでしまう恐ろしいものである。万端な準備が必要なのだ。

「それに、リディアさんのおかげでかなり助かっているっす」
「妖精城攻略のために氷結スライムを倒す……目的がはっきりしてるからわかりやすいですね。私も寒いの嫌いですから、少しでも攻略のお役に立ちたいです」

 雪の中を進みながら、『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は呟いた。
 妖精城攻略は、ローレットのイレギュラーたちが大勢参加するだろう。そのためにも、攻略ルートをこうして開いておかねばならない。

「皆さん、温かいですか?」

 リディアのギフトは、ひだまりのかおりだ。
 毛皮や服などの一部を温かく託してくれる。
 その効果は、今回の行軍では絶大なものである。

「ばっちりですよ、リディアさん!」
「うん、助かっているよ」
「自分も、ほっかほかっす!」

 この真冬のような環境でも、アルペド・エミリアはビキニ的な格好なのだが、その恩恵は大きいようだ。
 凍えることはないといっても、温かいことで精神的に救われている。何より、その心遣いが嬉しかったのだ。

「リディアさん、氷結スライム攻略のために力を貸していただけませんか?」
「もちろんっす。元になった素体も、スライムとは戦っているので、習性や特徴についても少しは知識もあるっす」

 氷結スライムの習性については、出撃前にもイレギュラーズたちから聞かれたことでもあった。
 冷気に強く打撃や刺突には強い半面、熱や電撃といった特殊攻撃への耐性はさほどでもない。この点を突けは、勝利の可能性も高い。

「幻覚が見えるほど冷たいなんて恐ろしいスライムなのですよ。しかも、通行の邪魔になるほど大きいのですか!? はぇー……都会のスライムはすごいのですよ」

 アルペド・エミリアが語ったスライムの特性について、『駄菓子屋さんの看板娘』メイ=ルゥ(p3p007582)も驚嘆するしかなかった。
 どこぞの田舎では、スライムというのは、勇者を自称する低レベルの少年少女にいじめられてレベルアップの糧となるような存在とも言われる。
 まさか、相手を氷結させるほどのスライム、しかも巨大なものとなると聞いただけで脅威である。

「くひひ、此度は轡を並べての戦場でござるな、アルベド殿。ならば拙者の背中、時々お預けするかもしれぬがよろしいか?」
「わ、わかったっす……」

 アルペド・エミリアに寄り添うようにして同行するのは、『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)である。何かを含んだような笑みに、アルペド・エミリアは頼もしく思いつつも、どこか引き気味である。

「――なに、こういうのは得てしてvice versaに候。共に生きて、明日の朝日を拝むでござるヨー♪」
「そうっすね……!」

 しかし、なんとなく楽しくなってきたアルベド・エミリアは相槌とともに気合を入れた。
 いろいろあるが、今はスライムと戦う同志なのだ。
 一行は、氷結スライムとの戦いに思いを巡らせつつ、雪中を進む。

●出現、緑の魔物!?
「一悟さん、足元です!」
「うおっ……!?」

 『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)が警告を発した途端、『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)が飛び退いた。コゼットは危機回避能力と、その本能から不意打ちを受けない。
 その足元から、粘性の何かが絡みつこうとしていた。
 真っ白の雪の中で、目に痛いほどの緑色は毒々しい。
 だが、それは氷結スライムのほんの一部でしかなかった。全身を揺さぶり、雪の中から大蛇のように鎌首をもたげる。

「やたらでけぇスライムだな……」

 唖然としながらも、その巨体を見上げていた。
 オニナラタケというキノコは、個体として600トン以上にも成長するという。この氷結スライムがいかなる種の生命体なのか分類はできないが、分裂と増殖を繰り返せば、際限なく大きくなるのかもしれない。
 ほのかにライムのような柑橘系の香りが漂う。
 この香りによって、コゼットはスライムの襲撃を察知できた。
 しかし、いい香りだと惹かれるわけにはいかない。
 惑わされたら、この極寒の地獄でも脱衣してしまうのかもしれないのだ。

「んええ、ひんやりたっぷりのスライムさん! 空気をたっぷり含んでふんわりモコモコのウサちゃんの毛皮であろうと遠慮なく侵してくるんやろ、このケダモノ!」

 などと、『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)と悪態をついた。

「つめたいスライム……暑いときに出てくれたら、よかったのにね」

 コゼットは、残念そうに言う。
 今は、対策としてぴっちりとした服を着込んでいる。さらにあちこちピンで止め、脱衣をさせられないよう備えてもいる。
 真夏ならば、ひんやり冷たい氷結スライムは歓迎されたかもしれない。
 いや、時節としては真夏である。冬の力によって無理やり冬になっているだけなのだ。
 冬の力が溢れていなければ、夏の暑さから妖精たちを守る生き物だったのかもしれない。
 それを思うと、コゼットもこのスライムを少々不憫に思う。

「戦闘になるっすよ! 皆さん、気をつけるっす」

 アルベド・エミリアが言う。
 この異様な生物の排除こそが、今回の目的である。

「ダメ元で精神無効つけたけど、効かなくてもプラシーボ効果くらいはあるかもしれへん」
 
 ブーケは、携帯したディープブルー・レコードに触れる。この氷結スライムに対し、どれほどの効果があるかは未知数だが、ないよりはましだという判断である。
 しかし、それにしても、である――。
 真っ白い雪の上で人工的な黄緑色の発色は、どれだけ人の好奇心を誘うのだろうか? それがいい香りがして、ぷるんぷるんとなると、ちょっとくらいは触れたくなってしまう。

「スライム、ダメ、ゼッタイ。タプタプで遊ばない。自戒。……フラグやないからねえ!」

 自分に言い聞かせつつも、ノリツッコミをするブーケであった。
 触れたくなっても触れずに済んだのは、幻覚の影響から守られたということかもしれない。

「危ないよっ!」

 コゼットが撹乱するように雪の上を跳ね、その耳をゆらゆら揺らして惹きつけながら反撃する。
 いくつものスライムの触手が掠めていく。

「……あ、あつい」

 わずかに掠めただけであったが、スライムの触手はコゼットを氷結させた。
 急激に襲う冷気と、まるで酔ったようになる感覚。

「あ、暑いのは気のせい……!」

 念じながら、コゼットは脱衣への欲求を抑える。
 このまま脱いでしまっては、大変なことになってしまう。

「いけないっす!? 冷気に気をつけるっす!」

 アルべト・エミリアが冷気への警戒を促す。

「むう、いくのですよ!」

 まず、防寒着を装備したメイが決意すると、背負ったひつじさんバックに搭載されたスラスターが火を吹いた。その勢いで一気に氷結スライムに接近し、蹴りをかます。
 ぐちゃっ! という凍りかけた雑巾を蹴ったような感覚が伝わる。
 その途端、メイの身体にも悪寒が走った。

「ふぇ……!? さ、さむい? うっ、あ、暑い……!」

 強烈な冷気は、外気温の差を体感させる。
 アイスクリームを、より低い外気温のところで食べると阿多卓感じるという。それと同じなのだ。
 いたいけな少女すら、矛盾脱衣の幻覚にかけようとする氷結スライムには、血も涙も流れていない。

「おりゃー燃えろー!」
「溶けやがれっ!」

 しにゃこと一悟のフレイムバスターが、たちまちにその気温を上昇させ、氷結スライムを一気に沸騰させる。
 火炎の攻撃により、触手は大半が蒸発した。
 それでも、その再生能力は凄まじい。見る間に修復されていく。

「こいつ、生きてるかもよくわらないモノだけど……殺していいよね?」

 今まで人のよさそうだった公の瞳に鋭い殺意が宿る。
 強靭な生命力によって再生を始める氷結スライムに、その再生を上回る威力の攻撃を与えていく。
 冷気を無効化する盾ルスト・ウィッシュを展開し、氷結スライムからの反撃を抑え込む。
 しかし、弾け飛ぶ破片のひとつひとつが、体温を奪う氷結スライムの武器でもあるのだ。

「なんだよ、この香り……!」
「も、もっとひんやりしたい、かも……」

 瞬間的に氷結させ、今解き放ったばかりのような爽やかなライムの香り、そして酔ったような心地に引き込むストロングな幻覚が一悟としにゃこを襲う――。
 つらいこと、寒いこと、それをスカッと忘れさせるような感覚である。
 氷結されていくことが、どこか気持ちいい。
 もっとよく冷えたい、そんな境地に引き込んでいく。

「自由を奪うのはいい。快楽に囚えるのもいい。だが――その先が停滞と静かな死ってのはないんじゃないかなアござる!」

 至東は怒っていた。
 スライム道に反した、この氷結スライムの有り様を。

「もっとこう生命力が生命力で暴走して堕として増やさせてもらって地に満ちるのがスライム道ではござらんかなあッッッッッござるっっっっっっ!」

 想像していたスライムとは、まるで違う。
 この前戦ったスライムは、溢れる生命と生命がくんずほぐれつ絡み合い、敵ながら生きているという息吹を感じさせるものであるべきなのだ
 だが、こいつは違う。まるでなっていない。
 もっと獲物を抵抗させるべきであろう。そうじゃないと、スライムの醍醐味がない。

「ゆえ貴様らはスライムじゃアない! ただの下等軟体生物にて、ならば拙者が斬り捨てるのみと知れイ!」

 常人ならば訳がわからぬ理屈であるが、ここに共感を示した者がいた。

「わかる! わかるっすよ! もっとこう、塗れるってことっすよね!」

 アルペド・エミリアである。
 本体は別として、彼女はスライムのエキスパート。
 スライム道には通じていた。

「アルペド殿! こやつの対策は?」

「基本的に熱で大丈夫っす! 寒冷地でも凍らないよう、体液にはアルコール成分が9%以上あるっす!」
「なるほど!」

 水が氷になる凝固点は0℃であるが、アルコールの凝固点はもっと低い。マイナス100℃まで凍らない(もっとも、度数によるが)。
 その代わり、沸点も低くすぐに気化してしまう。
 氷結スライムが酔ったような幻覚を見せるのは、寒冷地でも凍らないために体液のアルコール成分が不凍剤の役目を果たしているからだ。
 ゆえに、炎に弱い。
 これまで、感覚や経験で炎による攻撃が有効だと判断していたが、裏づけがあれば確信をもって攻撃できる。

「くひひ、このひよこちゃんが拙者を守ってくれるのでござるよな!」

 至東は、お腹に潜めたひよこちゃんに触れ、絡みついてきた氷結スライムに対して泥転陽炎の暗殺剣を放った。
 彼女なりに解釈した、音速の暗殺剣である。
 泥濘のようにまとわりつく氷結スライムを振り払いながら、斬りつける。

「こない寒いのに、ひんやりなんて求めてへんの。骨身を焼き尽くす業炎と不吉を呼び込むステップこそ、俺の本懐やんな」

 ブーケは、氷結スライムをステップを踏みながら躱し、流れた血を振りかける。狡兎三蹴の効果だ。
 そして、ノーモーションで衝撃を放つ。
 その効果によって、氷結スライムは四散した。

「これで、動かなくなったっすよ!」

 アルペド・エミリアは、スライムの活動停止を確認する。
 これで、雪の中の脅威は去った。

●戦い終えて
「さっ、また動き出さないように片づけておくのですよ」

 氷結スライムが与える冷気は、まだイレギュラーズたちを苛んでいる。破片を片づけた後、メイはしにゃこや至東たちを温めた。

「あ、寒い人はメイをもふもふしてくださいですよ! メイが暖めるのですよ!」
「これは、あったかいですよ……!」
「おおう、これはこれで」

 メイをもふもふしながら、ふたりはその温かさに身を寄せた。
 特に氷結しかけ、なんとか矛盾脱衣に耐えた死にゃこにとって、メイの高い体温はまるでカイロのようである。
 ブルーブラットであるメイには尻尾があるのだが、その尻尾が特に温かくもふもふなのだ。雪合戦の後に炬燵に潜り込むかのような安心感がある。

「ライムゼリーなんて夏にはぴったりのデザートだけど……めちゃんこ寒いんだよな、いま」

 散らばった氷結スライムの破片をメイが集めたわけだが、一悟は何故か食への好奇心をそそられていた。
 前述したとおり、氷結スライムはアルコールを体液に含んでいる。そして人を誘うような人工的なライムの香り……。
 これはもしかして、食えるのではないか? そう思う。

「スライム、せっかくやし一度くらいは触ってみたいよね」

 ブーケ=ガルニもまた惹かれるのだった。

「ちょっとくらい触ってもええかなあ?」

 ウサギ種のブルーブラッドであるブーケは、矛盾脱衣にかかろうと毛皮を脱ぎ捨てるわけではない。冬毛から夏毛に代わることはあるかもしれないが。
 ともかく触ってみると、ぶるんとしたなんともいえぬ感触と、ひんやりとした冷却を感じる。枕の下に入れたら、さぞ夏は涼しいだろうなと。

「あー、あまりスライムで遊ばないほうがいいっすよ」

 アルペド・ファミリアも、少々心配げな表情である。
 遊んだり氷結スライムを食した者がどうなったかは、またいずれの機会に語るとしよう――。

成否

成功

MVP

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬

状態異常

奥州 一悟(p3p000194)[重傷]
彷徨う駿馬
ブーケ ガルニ(p3p002361)[重傷]
兎身創痍
コゼット(p3p002755)[重傷]
ひだまりうさぎ
しにゃこ(p3p008456)[重傷]
可愛いもの好き
観音打 至東(p3p008495)[重傷]

あとがき

というわけで、氷結スライムは見事退治されました。
寒いのに暑い、暑いのに寒い。そういう夏の終わりを楽しんでいただければ幸いです。
今回、かろうじて脱衣は食い止められました。ほっとしてていたり残念だったり、いろいろあろうかと思いますが、結果はリプレイをご確認ください。
アルペド・エミリアには、いろいろ頑張ってもらいました。
では、またの機会にお会いしましょう!

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