PandoraPartyProject

シナリオ詳細

全ての不正義を赦したもう符

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●新たに発せられた『赦免符』
「おお、これで私の罪が許されるのですね……!」
 天義の地方都市ノシーナ。その聖堂で、司祭から渡された金色の符を手に、男が感極まったように叫んだ。司祭が渡したのは、『赦免符』と名付けられた「あらゆる不正義の烙印を免れる符」だ。
(ククク……ちょっと赦しを出してやるだけで、儂の懐がまた潤ったわ。
 これだから、『赦免符』は止められぬ)
 司祭は厳めしい表情を保ちながらも、その内心でほくそ笑み、狂気の高笑いを発していた。

 人間の心は弱い。それは天義においても同様――いや、「正義」が重んじられる天義だからこそ、『赦免符』の存在は人々の心に響いた。故に、ノシーナの司祭の宗教的権威も相まって、この符の発行を求める者は多くはないものの跡を絶たなかった。それこそ、「不正義」に手を染めてでも――。
 そして、一度『赦免符』を手にした者の多くが、これで如何なる罪も赦されるとばかりに「不正義」を行っていく。その被害を被った善良なノシーナの住民がいくら訴え出ようとも、『赦免符』を持つ者が正義の名の下に断罪されることは無かった。何故なら、ノシーナの司祭は領主も兼ねていたからである。結果、ノシーナやその周辺地域では天義の国内とは思えないほどに不正義が幅を利かせ、善良なる民衆が苦しむこととなった。

●ノシーナ住民の訴え
「……こんなものであらゆる罪が許されるなんて、信じる気になれますか?」
 『赦免符』をひらひらとはためかせながら、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は呆れたように眼前のイレギュラーズ達に話を振った。
「今回の依頼ですが、天義のノシーナでこの『赦免符』を発行している司祭兼領主を捕縛して下さい。なお、生死は問いません」
 そうして勘蔵は、『赦免符』によってノシーナ周辺の住民の安寧が脅かされていること、たまりかねた住民達によって司祭兼領主を排斥する動きが起こったこと、その結果ローレットに依頼が来たことを告げた。
「だが、何故こっちに? 普通、そう言うのは聖騎士団の仕事じゃないのか?」
「それは、ノシーナからネメシスまでが遠いからだそうです。
 事態を報せる使者は既に出していますが、到着した使者からの報せを受けて聖騎士団の派遣を待ってでは時間がかかり過ぎるから、一刻も早く領主を捕縛するためにこちらに依頼を出したとのことです」
 勘蔵はイレギュラーズの一人からの問いに答えると、よほど耐えかねているんでしょうね、と続けた。
「まぁ、そう言うわけでどうか一つ、この『赦免符』に苦しめられている人々のためにもよろしくお願いします」
「わかった。何にしても、依頼があるならやるだけだ」
 依頼を快諾したイレギュラーズに向けて、勘蔵は深々と頭を下げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は天義の地方都市で『赦免符』なるものを発行して私腹を肥やす、悪徳司祭兼領主の捕縛をお願いします。

●成功条件
 司祭兼領主の捕縛(生死不問)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●ロケーション
 領主の館or聖堂。司祭兼領主は基本的にこのどちらかを行き来しています。司祭兼領主がどちらにいるかは、協力者の住民の監視によって必ず判明します。
 どちらに、どの時間帯に仕掛けるかはイレギュラーズ達に一任されています。
 傾向として、領主の館の方は細々とした部屋が多く、聖堂はがらんと広い造りになっています。

●司祭兼領主 ✕1
 初老の男性です。
 イレギュラーズ達の仕掛け方によって装備、ひいてはステータスや攻撃手段が変わってきます。
 かつて騎士の訓練を受けていたことがあるせいかそれなりに腕は立ち、一方で司祭でもあることから神秘攻撃にも優れていると見られています。

●護衛or神官 ✕?
 司祭兼領主に仕える護衛、神官です。
 これもイレギュラーズ達の仕掛け方によって、出現数や出現タイミング、装備が変動します。
 護衛は物理攻撃と防御力、神官は神秘攻撃と回復力に長けています。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。

  • 全ての不正義を赦したもう符完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
ランデルブルク・クルーガー(p3p008748)
遍歴の

リプレイ

●腐敗許すまじ
「これも試練か……天義の腐敗を、断ち切ろう」
 ノシーナの街を前にして、『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は呻くようにつぶやいた。天義に生まれ育ち、枢機卿アストリアのクーデターや冠位魔種の侵攻を経て荒廃した天義の復興を願うリゲルとしては、金によって発行される赦免符などというものは許すべからざる腐敗であった。
「……そうだね。人々の心の隙に付け込んで、天義を腐敗させる司祭兼領主を放っておくわけには行かない。捕えて、然るべき場所で裁いて貰おう」
 『ハニーゴールドの温もり』ポテト=アークライト(p3p000294)が、リゲルに応じる。リゲルの妻として、そして自身の感情として、天義を腐敗させる存在は許しがたかった。
(本当に、善なる信仰を踏みにじる行為だね……捨て置け無いな)
 アークライト夫妻のやりとりを横に聞きつつ、マルク・シリング(p3p001309)は内心で独り言ちる。生まれ故郷の村が貧困により廃村となったため貧困の根絶を願うマルクとしては、信仰を踏みにじる事それ自体もそうだが、「金を積めば」と言う辺りがより嫌悪感を抱かされた。
「紙一枚買うだけで悪いことが許されちゃうって、わたしには全然わからないわ。
 こんなことで誤魔化したって、あとで痛い目を見るだけよ。この依頼がその証拠でしょう?」
 『揺蕩』タイム(p3p007854)は赦免符への怒りを隠すことなく、露わにしている。その指摘は、正鵠を射ていた。天網恢々疎にして漏らさず。今回の依頼で司祭兼領主が排除されれば、赦免符を買った者もその行いを洗い出されることになるだろう。
「免罪符を悪用するなんて許せないね……ちゃんと償ってもらうよ。
 赦免符だかなんだか知らないけど、免罪符はそんな事に使うものじゃないんだよ」
 好きなものが免罪符であると言う『神託の冒険者』楊枝 茄子子(p3p008356)も、赦免符の存在に憤りを隠せない。
「ふーん、これで罪がねえ……。
 もし本当にそうならオジサンも欲しいけど…そう都合の良い物はありはしないってな」
 情報屋から受け取った赦免符をひらひらとさせながら、『特異運命座標』ランデルブルク・クルーガー(p3p008748)は呆れたようにつぶやいてから、ふぅ、と息を吐いた。
「そんなにお金が欲しいもんなんですかね……簡単に稼げると欲が深くなるのかなぁ」
 『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)も、ランデンブルク同様に呆れた様子だった。こちらは司祭兼領主の金への執着に対してであったが。しかし、金にそれだけの魔力があるのも、執着する者がいるのも否定し得ない事実だ。
 その実例が、拝金主義者である『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)と言えるだろう。
(赦免符……ううん、ボロい商売です。だからこそ、もう少し慎重に商売すればよかったですのに。全く、勿体ないですねぇ)
 流石に空気を読んでか声に出したりはしないものの、赦免符に否定的な他のイレギュラーズ達とは違って、カイロは赦免符自体は好意的に捉えていた。カイロが否定するのは、ローレットに依頼が来るほどの事件にまで発展させてしまった司祭兼領主の軽率さだった。

●突入!
 ノシーナに到着したイレギュラーズ達は、依頼主の協力者から情報を収集したり、精霊やファミリアーによる偵察を行ったりして、依頼遂行の作戦を練る。隣り合っている領主の館と聖堂。どちらにいつ仕掛けるかは、イレギュラーズ達の裁量に任されていた。
 結果、イレギュラーズ達は一般の信徒が少ないであろう夕方、閉まる直前の聖堂に、予め聖堂に潜入する者と正面から堂々と突入する者にわかれて仕掛けることにした。

「……、……」
 聖堂に潜り込んだウィズィと茄子子は、司祭兼領主の説教を聞いている。もちろん、心から聞いているわけではない。礼拝に来ている一般の信徒は、時間も時間故か五名程度だった。いずれも老人や女性ばかりで、護衛の可能性は極めて低い。司祭兼領主の横には、神官が左右に五名ずつ控えていた。
 この間に、外で待機しているマルクのファミリアーである鼠がウィズィと共に聖堂に潜入し、聖堂内部の構造を把握にかかる。入口から領主兼司祭のいる奥までは距離があり、奥には左右にさらにその奥に繋がる扉があった。領主兼司祭が逃げるとすれば、このどちらかを経て、イレギュラーズ達が予め見つけていた裏口からとなるだろう。
 一通り聖堂の内部を把握して他のメンバーと情報を共有したマルクは、ファミリアーを通じてウィズィと茄子子に突入の合図を送った。

 バン! と聖堂の扉が勢いよく開かれ、ウィズィと茄子子以外のイレギュラーズが中に突入した。
「『赦免符』なるものを無限に発行し天義の治安を乱すのは、神のご意思に反する行為だ!
 その不正義を、糺させてもらう!」
 先頭を切ったリゲルが、免罪符を光輝のギフトで光らせつつ掲げながら、高らかに告げる。リゲルの免罪符は、司祭兼領主が私的に発行した赦免符と違い、ネメシスの正教会が発行した正式なものだ。
「困りますな……アークライト卿。神聖なる説教の最中に、言いがかりを付けて邪魔をされては……!」
 表面は冷静を装いながらも、内心は憤怒と同様に満ちている司祭兼領主は、リゲルの言を否定する。
「赦免符の件は既に王都に伝わっている! もう間もなく騎士団も派遣されるだろう!」
 だが、続けて放たれたマルクの言には明らかに狼狽した様子を見せた。神官達も、顔を見合わせてざわめいている。
「大人しく赦免符を渡して、お縄に付きなさい」
 畳みかけるように、カイロも続ける。もっとも、カイロは正義感で司祭兼領主を捕縛したいわけではなく、赦免符を記念に……否、どうにかして商売に利用するために持ち帰りたかったのだ。
「そら、司祭様の赦免符が紙クズになるか否かの瀬戸際に、ボーッとしてていいのか?」
 ランデンブルクは、司祭の左側に侍る神官達に向けて挑発を試みた。ざわめいていた神官達の視線が、一気にランデンブルクに集中する。
 リゲル達の口上の間に、ポテトは聖堂に対して保護結界を展開する。ノシーナの人々の、信仰の拠り所を壊してしまうわけにはいかないのだ。

「皆落ち着いて! こちらに逃げましょう!」
「私達に付いてくれば、大丈夫だよ!」
 ウィズィと茄子子は、何事かと慌てふためく一般の信徒を落ち着かせ、その手を取りながら聖堂の外へと避難させる。特に問題もなく、信徒達は聖堂の外へと逃れていった。

●覆し得ぬ戦力格差
 イレギュラーズ達と司祭兼領主達の戦闘は、イレギュラーズ達の有利に進んだ。それも当然の話である。
 イレギュラーズ達のうち半数は、ローレットの中でも最高峰の実力の持ち主なのだ。また、残り半数も侮れない実力の持ち主である。一方、司祭兼領主は腕は立つとは言ってもイレギュラーズ達のトップレベルにははるかに及ばない。さらに言えば、説教の最中であったため装備も万全ではない。そして、神官達も荒事慣れはしていない。双方の戦力には、明らかすぎるほどに大きな隔たりがあった。

 司祭兼領主は神官に、隣の館にいる護衛を呼ばせようとするが、神官達の大半はランデンブルクかウィズィの挑発により、頭に血を上らせていた。平常心を失わなかったごく少数が奥の扉から裏口を抜けて救援を呼ぼうとするも、奥の扉の前にはポテトと茄子子がそれぞれ立ちはだかって通ることを許さない。そして、神官にはポテトも茄子子も突破する実力はなかった。
 リゲルとウィズィは、司祭兼領主に次々とダメージを負わせていく。リゲルだけでも司祭兼領主の手には負えないのに、ウィズィまで相手にせねばならないとあっては、司祭兼領主に勝ち目があるはずはない。おまけに、カイロの金色の光とポテトの命によって二人は強化されている。司祭兼領主は精神力を衝撃波に変えて周囲のイレギュラーズに反撃を行うも、負わせた傷はポテトか茄子子によってすぐさま回復されていった。
 神官達は、ポテトや茄子子によって足止めされた者を除けば、ランデンブルクとウィズィに集っていた。次々と衝撃波を浴びせかけるものの、ウィズィにはほとんどまともに当たらず、ランデンブルクへの攻撃はカイロが身を盾にして庇った。カイロに衝撃波を当てた者は、その威力に応じてカイロからダメージを返された。もちろん、ウィズィやカイロが受けたダメージはポテトと茄子子によってすぐに回復されている。
 マルクの放つ聖なる光が、タイムの放つ雷撃が、神官達に次々とダメージを与えていく。弱った神官を、ランデンブルクが拳で殴りつけ、殺めることのないように気絶させていった。

「そこを……退けッ!」
「うぐっ……!」
 ウィズィの気魄が、司祭兼領主の戦意を挫く。司祭兼領主は既に満身創痍となっており、倒されるのも時間の問題となっていた。
「……無駄だと、わかりませんか」
「がっ!」
 神官の一人がランデンブルクに衝撃波を放つも、カイロに阻まれる。カイロに与えられたダメージの、半ばほどが神官へと跳ね返った。
「これ以上、させないんだから!」
 タイムの雷撃が、別の神官に直撃する。まだ倒れこそしないものの、ダメージはかなり大きいようだった。もっとも、タイムにとってはこれで良かった。何故なら、雷撃で倒してしまっては、死なせてしまう危険があったからだ。
「……おのれ、おのれおのれおのれえぇ!」
 司祭兼領主は、最期の力を振り絞って衝撃波を放つ。これが最期と思い定めたからか、その威力は一段と凄まじい。
「くっ!」
「うっ!」
 リゲルもウィズィも、避けきれずにまともに食らってしまう。だが、司祭兼領主の足掻きはそこまでだった。
「大丈夫!? ウィズィくん!」
「リゲル。今、回復させる!」
 茄子子がウィズィを、ポテトがリゲルを、それぞれ即座に癒やす。二人のダメージは、ほぼ完全に消え去った。
「これで、寝てくれ」
「うぐっ……ぁ……」
 タイムの雷撃を受けて弱っている神官の鳩尾に、ランデンブルクの拳が突き刺さる。神官は前のめりにつんのめると、そのままどう、と地に伏した。
 流星の如きリゲルの横薙ぎの一閃が、司祭兼領主の胴を捉える。司祭兼領主は派手に吹きとばされた後、立ち上がることはなかった。
「貴方達の悪事は、既に聖騎士団にも通達済みです。
 大人しく投降するのであれば、必要以上に罪を重くせぬよう提言致しましょう。
 但しこれ以上足掻くようであれば……残念ですが、命の保証は致しかねます」
「これ以上の抵抗は無意味だ! 命までは取らない、降伏するんだ!」
 司祭兼領主を倒したリゲルは、残りの神官達――と言っても二名ほどだが――に、降伏勧告を行う。マルクもリゲルに合わせるようにして、神官達に降伏を呼びかける。
 司祭兼領主を倒された神官達は、もはやこれまでと床に跪き、両手を広げて上に上げて、降伏の意を示した――。

●新しき天義、これからのノシーナ
「免罪符は、免罪符は自分の私腹を肥やすための道具じゃないんだよ!ㅤ免罪符は不正義を許すものじゃなくて、正義を後押しするためのものなんだ!
 それを、それを何だと思ってるんだよ!
 ――免罪符で自分の行いを正当化するだなんて、あっちゃいけないんだよ……いけないんだよ……」
 捕縛された司祭兼領主が気付くと、茄子子は司祭兼領主に向かって抑えきれない憤りをぶつけるように叫んだ。最後の方は、切々とした訴えに変わっていたが。
「これ以上『赦免符』なんてもので天義をかき乱させはしない。
 天義を腐敗させようとしたその行為、然るべき場所で裁かれるが良い」
 ポテトが、厳しい調子で告げる。がっくりと、司祭兼領主と神官達は項垂れた。
「――殺して芽を摘むやり方は、過去の天義のやり方そのものだ。
 罪を償い、やり直してください。貴方達も、他ならぬ新しい天義の民の一員なのですから」
 一方リゲルは、片膝を突いて目線を低くした上で、柔らかい口調で生きての贖罪を解く。図らずも鞭と飴という対応になったが、この対応はポテトとリゲルが考える以上に彼らの心に染みた。
 断罪は間違いないと思っていたところに、生きる道が残されたのだ。その安堵は、如何ばかりだろうか。
(司祭さんの犯した罪は赦免符やお金があっても無かったことにならないの。
 でも、そんな符なんか無くたって司祭さんが心から罪を償う気持ちがあればいつかきっと許して貰えると思う。
 言うほど簡単な事じゃないけど……人の心の弱さは司祭さん本人が一番分かっているはずだもの)
 司祭兼領主達が安堵した様子を見て、そんな風に思うのは自分の願望に過ぎないかも知れないと思いつつも、タイムは思った。

 聖堂の前は、ちょっとした騒ぎになっていた。聖堂から逃げた信徒達の口から事情が伝わり、多くはないものの人が集まっていたのだ。
 マルクは、リゲルを伴い集まっていた人々に告げる。
「こちらはベアトリーチェ・ラ・レーテを斬った、リゲル・アークライト卿です。
 ノシーナの正義は、彼の剣によって守られました。後の事はご安心ください。
 この街は、正しい形に戻ります」
 おお、と人々の間から賞賛の声が少しずつ湧き起こった。
 その後、事態を知った護衛の騎士達が武装して領主の館から飛び出してきたが、民衆の賞賛の中で迂闊には動けないところに、縛り上げられた領主を見せられれば、為す術も無く引き上げていった。

 後に領主の館の護衛達も武装解除させられたところで、ウィズィは司祭兼領主の司祭としての執務室と領主としての執務室から、不正の証拠を確保する。
「ノシーナの皆さんに、彼の犯した不正を教えてあげて下さい。これが証拠です」
 そして、ウィズィは協力者達にそう要請した。
(紙きれ一枚に全部押し付けて、自分の罪に向き合おうともしない。
 そんな人間に赦しなんて訪れるわけもないってのが、何でわからないんだろうな……)
 ウィズィの証拠集めに協力していたランデンブルクは、一段落付いたところで、赦免符を買った者達に対して内心で独り言ちた。彼らに対しても聖騎士団の調査は及び、その行いによって裁かれることになるだろう。

「これで、ノシーナの聖堂が本来あるべき姿に戻ると良いな」
 戦後処理も終わり、ノシーナを発つイレギュラーズ達。ポテトは、ノシーナを振り返りそうつぶやいた。それは、ポテトの希望であり確信でもあった――。

●円満の影にて
(……しかし、こんなただの紙が富を生み出すとはね。
 彼は終わりでしょうが、上手い商売を考えたものですよ。
 一枚当たり、どの程度で売ればいいでしょうね?)
 カイロは、証拠集めに協力しつつ――少なくとも、その素振りを見せつつ――赦免符を回収出来るだけ回収していた。あとは、依頼遂行を報告し解散するまで見つからないようにするだけである。
 そして赦免符を利用しての商売に想いを馳せたが――問題は、商売になるかどうかは赦免符を発行する者、つまりカイロがどれだけの宗教的権威を持っているかだ。そのことを知ってか知らずか、カイロは赦免符の対価について楽しく頭を巡らせるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加、どうもありがとうございました。司祭兼領主が悔い改めるかは神のみぞ知るところですが、彼を捕縛したことによってノシーナからは腐敗が一掃され、平穏が戻ることになりました。
 皆さんの仕掛け方で状況が変わるというわけである程度のパターンを想定していましたが、それらの予想以上に今回の仕掛け方は最適解だったと思います。お見事でした。

PAGETOPPAGEBOTTOM