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シナリオ詳細

《狐の嫁入り 第六幕》森のウミガメ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■獅子戦争、坑道での戦いの裏側
「よう、ギルダス。どうしたんだそんな顔して」
「……少々頼みたい事があってな」
 坑道での怪物との戦い。獅子人との戦争。
 それらが起きていた頃、フォレスト家が護る森の中で起きていた小さな出来事。
 フォレスト家の嫡男ギルと猿人の次期族長ギルダスJrは、屋敷の庭で落ち合っていた。いつもならばここから森の中を駆け回ったり、特訓をしたりするのが日課なのだが……。
 ギルダスJrの表情がいつもの三割増しで硬いと感じたギルが、自分から聞き出そうとしたところから話は始まる。
「なんだよ改まって。俺たちの仲だろ?」
「……ああ、そうだな。……昨日、いつもどおりに川へ釣りに出向いたんだが」
 猿人達はこの森で暮らすようになってから、木の加工や世話。或いは釣りをして川魚を街へ売って生活している。
 ギルダスJr達若い衆も例に漏れず、川で魚釣りをして大人たちの手伝いをしていた。
「大きな亀の爺さんがいたんだ」
「亀の爺さん?」
 ギルが首を傾げる。そんな人物がいるなど、両親からも、祖父からも聞いた事はない。森の中にいる者の事なら全て把握しているというのに。
「どうも海からやってきたみたいでな。海へ帰ろうとしたらしいんだが」
「海からって……えらい遠いぞ。よく来たなその爺さん」
「……それなんだ」
 それってなんだ? とギルが再び首を傾げる。一体なぜ、ギルダスJrがギルを尋ねてきたのか。そして亀の爺さんの目的がわからない。
「……疲れたから押して海まで運んでくれ、だと」
「……なんだよそれ」

■不思議な海からの来訪者
「皆お疲れ様。今日も例によって獣人達の世界からのお話なんだけど」
 境界案内人のポルックスが本のページを捲りながら、話を進める。この本のページも大分開かれてきた。
 一部のイレギュラーズはなんとも言えない感慨深さを感じている。
「森の護り人、その跡継ぎになるギル君。覚えている人もいるかしら、その子達がちょっと面倒というか厄介事に巻き込まれる事になったの」
 命の危険はないんだけど……本当、面倒で。と続ける。
「大きな体格の亀のおじいさんが、海から森にやってきたみたいなんだけど。そのおじいさんを海まで運んであげないといけないの」
 命の危険は全くないんだけど、人手がいるらしいから手伝ってあげて。そう締めくくり、ポルックスはイレギュラーズ達を送り出す。

NMコメント

 突然に場面変更しましたが、話の都合です以下略です。
 このお話が獅子戦争や坑道の怪物の話と繋がっていく……かもしれません。
 今回のオーダーは、「亀のおじいさんを海まで連れて行く」です。普通に運ぶととても大変ですが、【飛】系のスキルがあると……?
 以下登場人物概要
■ギル・フォレスト
 着実に魔法剣士、後に勇者となるべく力をつけている少年。しかし勉強は苦手で魔法の素質はあるのに魔法方面は伸び悩んでいる模様。
■ギルダスJr
 冷静沈着。統率にも優れていて猿人の若い衆からはいつでも長になっても大丈夫と思われている程に優秀。しかし本人はまだまだだと思っている。
■亀のお爺さん
 突然森の川岸に現れた、巨大な体躯を持つ亀のお爺さん。身長は三メートル越え。体重も恐ろしくある事が予想されます。
 防技、抵抗、HPがとてつもなく高い反面、他ステータスは0、もしくは0以下です。機動力は1しかありません。まあ攻撃してきませんが。
 攻撃を加えて押し出す。普通に運ぶ。【飛】を持つスキルを当てて吹き飛ばすなどして運んで下さい。
■狐人のメイドと執事
 ギルのお供です。料理、サバイバルなど道中のサポートをしてくれます。必要とあらばお爺さんを運ぶ人員に加えてもOKです。
■猿人の若い衆×5
 猿人の例に漏れず立派な豪腕を持つ若者達です。ギルダスJrを慕っています。彼らもサバイバル能力に長けており、また積極的にお爺さんを運んでくれます。

 海までは数日かかる距離があります。
 道中お爺さんは色々話を聞かせてくれるでしょう。こちらから質問をしても良いかもしれません。

 以上となります。実はこっちが本編だとかいう不思議。よろしくお願いいたします。

  • 《狐の嫁入り 第六幕》森のウミガメ完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月13日 22時45分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
マヤ ハグロ(p3p008008)

リプレイ

■巨大じいさんを運ぼう
「……それにしても、森にウミガメ? なぜこんなところにいるの?」
 ギル率いる執事、メイドと共にギルダスJrの案内で話の亀の元までやってきたイレギュラーズ一行。そこにいたのはどっしりと座り込んでのんびりと空を見上げる、髭の立派なウミガメの獣人であった。
 そんな彼を見上げながら『海賊見習い』マヤ ハグロ(p3p008008)は誰にともなくつぶやく。彼女だけでなく、ここに集った者は皆同じような感想を抱いていた。
「おじいさん、ずいぶん遠くまで来たわね」
 『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)は決して小柄ではない。だが、目の前にいる巨体に比べれば小人のようなものであった。半分ほどしか背丈がないのだから。
「おお、君たちが応援かね。待っておったよ」
「マイペースだな……似たような老人を知っているが、どうにも、共通して性格がのんびりしている気がする」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は大柄な肉体の持ち主だ。それでもこの亀のじいさんよりは小さい。これは骨が折れそうだなと内心呟く。
「しかし、ここまで来たのならまた一人でのんびり帰れば良かったのでは?」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がある意味での正論を口にする。
 確かにここまでは一人で来たらしいこの老人。ならば戻る事もできるであろうはずなのだが……。
「いいからいいから。ほれ、早くせんとどれだけ時間があっても足りんぞ?」
 取り付く島もなし。己のペースを崩さないじいさんであった。
 ひとまず普通に押し出してみようと、ギルとギルダスJr。そしてジョージにマヤと力自慢がじいさんの背にある甲羅に触れ、力を込める。
 ズッ……ズッ……。
 その巨体が示す通りにとんでもない重量であり、四人が力を込めて押し出したというのにほんの僅かしか進んでいない。
「やはり正攻法では厳しいか」
 一端力を抜いたジョージが再びじいさんの顔を見上げる。当の本人は一行の苦労など知らぬ顔でのんびりと水筒から水を飲んでいたが。
「こうなったらとっておきを使うしかないようね。」
 そう言って懐からラム酒を取り出したマヤは一気にその中身を飲み干す。そして次に取り出したるは同じ形をしたボム。爆弾だ。
「少しは痛いかもしれないけど、海へ行くためよ」
 それをじいさんの甲羅より少し離れた地点へ投げつけると、爆音と共に衝撃が辺りに響く!
「……今何かしたかの?」
 しかしじいさんはというと。多少は前に進んだものの衝撃に気づいていなかったのか、小首をかしげている様である。
「呆れるくらい頑丈ね」
 少しばかりの無念さを胸に秘め、肩を竦めるマヤであった。

■知恵を使って
「しかしさっきの爆発でもほんのちょっとしか動いてないなんてなぁ」
 ギルがえぐれた地面を観察しながら呟く。どうしたものかと頭を捻るが彼にいい案はない。
 仕方ないな、と助け舟を出したのはジョージだ。
「では皆で手分けして丸太を用意しよう。その上を転がしていくぞ」
「そうね。私の衝術ならもっと加速できそうだわ」
 セリアが腕まくりをしながらアピールする。普通に力押しができない魔術師たる彼女だが、魔術師だからこそできることがあるのだ。
 それは一人、こっそりとじいさんに飴を差し出している世界とて同じこと。他に手がなければ使うつもりであったのだ。
「わかった……皆、一度良い木を探すぞ」
「俺たちもだ。あんた達はここでじいさんと待っててくれよ!」
 ギルダスJrは猿人の仲間を連れ、ギルは執事とメイドを引き連れ森の中へと姿を消す。森の中で丸太になる木を探すなら現住民に任せた方が良いだろうと考えた一行は、一度腰を下ろす。
「それにしても爺さん。なんでこんなところまで来たんだ?」
 菓子を頬張りながら世界はじいさんに問いかける。じいさんは世界から受け取った飴をなめながら、これまたのんびりと答えた。
「ほっほ。昔なじみのところに生まれた孫がの、魔術の腕があがらんと噂で聞いてのぅ」
「……それってまさか」
 その言葉に反応したのはセリアだ。長くこの世界に関わってきた彼女だからこそ、なんとなく察せる事があった。先程までここにいたギルのことじゃないかと。
「嬢ちゃん、このことは秘密じゃよ?」
 どこか茶目っ気を含んで、じいさんはセリアに目配せする。仕方ないわねと独り言ちて、セリアは頷きを返した。
「私からもいいかしら? あなたはウミガメなのよね、それなのに危険をおかしてまでこんなところに?」
「なぁに、確かにワシはウミガメじゃが……多少、魔術の心得があるもんでな。ここへ来るだけなら危険でもないわい」
「ほう、その魔術で川をさかのぼってきたのか?」
 マヤの問いに答えたじいさん。その言葉尻を捕まえてジョージも話を振る。
 ああ、そうじゃよ。と返し。これまた子どもたちには秘密じゃぞ、と口元にヒレを当てて笑う。
「本来ならワシ一人でも簡単に帰れるんじゃよ」

「おーい丸太見つけてきたぞー」
 秘密の話をしながら待つ事小一時間。ようやくギル達が丸太を運んで戻ってきた。
 流石森の守り人を継ぐものというべきか、見事な丸太を綺麗に切り出してきた。ギルダスJr達も腕力に物を言わせて数本運んできている。
「ではそれを等間隔に並べて……うん、そうだ」
 ジョージが指示を出していき、マヤと猿人達が協力して丸太を並べていく。
 最初に密集して置かれた三本の丸太の上に、じいさんが身体を乗せ。その背中にセリアと世界が手を当てる。
「それじゃいくわよ」
「舌噛むなよ?」
 二人して軽く魔力を放出する。するとじいさんの身体は丸太の上をすっ飛んでいき……。
「お、おぉぉぉ……!」
 ごろごろと丸太ごと転がっていくじいさんの身体は、どんどん加速していき想定外の距離を走っていく。やがてバランスを崩したじいさんの身体が地面に投げ出され、大きな穴を作った。
「ちょっと……派手にいきすぎたわね」
 地面に倒れ伏したじいさんを心配そうに見つめながら、マヤが後に残された丸太を担ぎ上げあとを追いかける。
「確かにこれは予想外だったな……二人同時だったのが悪かったか」
 ジョージも改善点を考えながら後に続く。
 セリアと世界は一瞬顔を見合わせ、頷きあう。次からは交代でやろう、と。
「……やっぱり魔法も覚えなきゃ、駄目か」
 ギルダスJr達も丸太を担いでいき……後に一人残ったギルが、一つの想いを宿した。

■数日後
 丸太と衝術の組み合わせで海への旅路は多少楽になった。
 道中、ギルがセリアと世界に頼み込み魔術の手ほどきを受けたり。ジョージとマヤがギルダスJr達と力比べをしたりと、少しばかりの勉強を交えながら。
 その様子をじいさんは微笑ましく見守り、時折アドバイスを与えながら進んでいく。
「少年よ、魔術はそう難しいものではない。この大地、大気、水。ありとあらゆる自然はそなたの味方なのじゃ」
「……俺の味方……」
「心を研ぎ澄まし、落ち着かせ、耳を澄ませよ。自然の声を聞くのが第一歩じゃ」
 妖精と心通わせる世界、体系は違えど魔術を得意とするセリアにはなんとなくわかる気がする教えであった。
 魔術の心得がないマヤとジョージも、物は試しとギルに付き合い教えに従ってみる。二人共が海に縁のある者だったが為か、水の声が聞こえた……気がした。

 やがて旅は終わりを迎える。夕日に照らされた海へと辿り着いたのだ。
「ほっほ、ご苦労じゃったの皆」
 道中、執事とメイドのサポート、ジョージの食料調達技術もあり栄養はしっかりとっていた一行であったが、流石に疲れが出てきた。
 しかしどこか心地よい疲れである。たまには血なまぐさい争いから離れ、のんびりした旅をするのも悪くはない、と皆が感じていた。
「じいさんも、その、色々ありがとうな」
「うむうむ。そなたの祖父によろしくな。トートが言っておったと言えばわかるだろう」
「トート……って、じいさん……いや、貴方様は!?」
 ギルに言伝ついでに自らの名を明かしたじいさん。その名前に過剰な反応を見せたのはギルダスJrだ。
「どうかしたのか?」
「どうしたも……トートと言えば、大賢人だ……!」
 ジョージの問いに、冷静さを欠きながらも応えるギルダスJr。じいさんことトートは、この世界では有名な人物で。知らぬ者はいないと言われる程の伝説の人物だという。
「……なるほど。その『大賢人』様がこの子達を鍛える為に一芝居うった訳ね」
 ようやく話が繋がったとばかりにマヤが笑みを浮かべる。突然森に現れた理由も、わざわざ子供達に無理難題を与えた理由も。全てはギルとギルダスJrを鍛える為の仕込みだったのだ。
「よくやるぜ、人の為に」
「ほっほ。お主とて見ず知らずのワシに良くしてくれたじゃろ」
 呆れたようにいう世界に対して、道中の彼を思い出しながらトートは笑う。ぶっきらぼうなようでいて、気遣いの細やかな世界のことを。
 照れくさそうに頭を掻く世界が、視線を逸して「うるせぇ」と悪態をつきながらも笑う。

「大賢人、なら……知っているのかしら。あの、黒いもののこととか……」
 別れ際、沈痛な面持ちのセリアが海に入ろうとするトートの背に問いかける。そのトートも、道中見せたことのない、真面目な顔つきで。
「……ああ。知っておるよ。あれはこの世界のものではない……この、心の闇がなかった素晴らしき世界に、心の闇を齎したものじゃ」
 その言葉に、セリアは思い当たる節があった。狂気に満たされた獅子人と、その王の話を。
「……じゃが、ワシは信じておるよ。この世界は、そしてお主達は、そんな闇にも負けんとな」
 また、近いうちに会うこともあろう。そう言い残しトートは海へ潜っていく。

成否

成功

状態異常

なし

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