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シナリオ詳細

私を夢の世界へ連れてって

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある少女のお話
 ゴミ箱へ散らばる教科書、黒にまみれた下駄箱、異臭を放つカバン、どこかへ行ってしまったペンケース
 お気に入りだったキーホルダーはばらばらになって、机の上に置かれていた。
 目障りだからと乱雑に切り刻まれた髪の毛、どんくさいからと背中に押し付けられたのは火のついたタバコ。
 私は、ここに居てはいけないらしい。
 そっと、私は、瞳を閉じた。

 向かうのは学校近くの林。ここにはとある伝説があった。夜中の2時、鬼がここに迷い込んだ人間をあの世へ浚うのだと。
 …そんなの嘘。本当はここに、妖精さんが居るの。妖精さんが夢の世界へ連れていってくれるの。
 夢の世界、なんて心地良い響き。私はもう、この世界に居なくていいのよ。
 穏やかな夢の世界で、妖精さんと一緒に暮らすの。


●猫の話
「…神隠しって知ってる?そう、人間がある日忽然と消え失せる現象のこと。とある町にその、神隠しに似てる伝承があってさ」
 集まったイレギュラーズ達に机に上った子猫、ラビ・ミャウは傍らの本を尻尾でぺしぺし叩いた。
 説明する。その町にある林へと迷い込んだものは鬼に攫われてしまうのだ、と。きっとそれは子供たちが林へ近づかないようにと作られた話だった。
 しかし、語られる話は力を宿す。いつしかその話は本物になってしまった。
「鬼なんていない。帰りたくない、その気持ちが林を迷路へと変えてしまうんだ」
 少しでも帰りたくない、そう思ったら最後。林が意志を持つ。
「…今回は、その林に迷い込んだ女の子を助けてもらいたい。…彼女はひどい目にあってる。だから帰りたくないんだ」
 だが、それで林の迷路に呑まれ迷い続け息絶える…それで良いのだろうか?ラビにはわからなかった。
 生きれるのなら、その命はしっかり使わなければ。
「…林の迷路を通り、彼女の説得をしてほしい。林の奥にある祠へ何かお供えをすれば迷路は無くなるだろう」
 迷路の攻略方法、彼女の説得方法はイレギュラーズ達に任せる。まぁ、悪いことにはならないだろう。
「…彼女は、林に入れば妖精が迎えにきてくれると信じている。現実を見せるか、夢を見せるかは…おまえたち次第だ」
 がんばれ、そう言ってラビは彼らを見送った。

NMコメント

こんにちは、笹山ぱんだです。
今回の世界は前回と同様、現実世界に似た世界です。
少し、田舎な町。閉鎖的な雰囲気のする場所です。

行ってもらうことは2つ(+α)
林の迷宮の攻略。足を踏み入れればそこは迷路になっています。
何かしらの対策をしなければ迷ってどこにも行けなくなってしまうでしょう。
少女の説得 迷路の出口に居る少女を説得し、この林から一緒に脱出してください。
説得の仕方はお任せします。物理で気絶させて林から出ても起きたら同じことになるので、説得するのが良きだと思います。
説得が終われば少女の傍にある祠にお供えものをしてください。なんでも構いません。
そうすれば迷路が解除されます。皆で帰りましょう。

●少女【深山 利都子】
夢見がちな少女。ふわふわしている雰囲気がクラスメイトから疎まれる原因となった。
中学1年。妖精さんのお迎えを心待ちにしている。

それでは、良きお話を。

  • 私を夢の世界へ連れてって完了
  • NM名笹山ぱんだ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月12日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
マヤ ハグロ(p3p008008)
只野・黒子(p3p008597)
群鱗

リプレイ

 ●プロローグ
 現代世界に似た、どこかの異世界のお話。
 とある少女が世を憂い、神隠しがあると噂される地元の林へと入ったことが始まりだ。
 この世界へと飛ばされたイレギュラーズ達は少女を助ける為、それぞれ動き始めたのだった。

「これは説得の他に、ちょいと周りでやることがあるなこれは。「大人」の仕事なのでやるか……」
 『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は少女を説得する前に環境を変えるしかないと思い立ち、各方面へと連絡を行う。
 失踪しているのなら、保護してもらうために。学校への連絡は…あまり期待しない方がいいかもしれない。何せ少女がこうなるまで放置していたのだから。
 少女がどうしてそこまで思いつめたのかは黒子にはわからなかったが、それを理由に安易に責めることはない。
 各方面からの言い分は聞く。だがその作業は粛々と行われた。
 出身世界では地方公務員として勤務していた黒子はその経験を生かして方々へと手を広げる。
 学校への交渉、その他、見つけ出した後の少女が無事保護されるように、そしてその後平和に過ごせるように証拠回収を行う。
 調べたところ、ネグレストの可能性は無い事は解った。しかし両親には少女の気持ちを汲み取ることが出来なかったのだろう。
 弁護士やらが必要になればいつでも探せるように準備はしておく。
 だが、これは本人の意向があればこそ。会って、直接話をしなければいけない。そう思い黒子は林へと向かった。

「イジメか…。なんとも有りがちで、度し難い話だ。少女の性格にも起因するのだろうが、それを理由に世を儚むのも、考えものだな」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は林の前で一つ、息をついた。少女の悩みはちっぽけで世界には何の影響も与えない。
 だが少女の世界にとっては学校が全てであり、そこで生きていけなくなったなら、終わってしまうのだ。だからこそ少女は『逃避』を選んだ。
 己のギフトを使いコウテイペンギンに変化する。その大きさは元の身長に起因するため少々大きいが…この世界の物から見れば妖精と言われるものに近いだろう。

「今回も厄介な仕事ね。神隠しとはとある書物で知ってるけど、まさか現実に自分の目の前に現れるとはね」
 『海賊見習い』マヤ ハグロ(p3p008008)は林の前に立ち、呟いた。神隠し―。古来からあらゆる世界で見られる現象。
 実際はただの行方不明者や家出、拉致やその他の人為的要因がある場合もそう呼ばれているが…。人間が突然居なくなるのは昔も今も、人ならざる物の仕業と考えたくなるのは一緒なのだろう。
 しかしこの林の怪異は本物だった。噂話が林に力を持たせ、人を帰さなくなった。偶々察知された少女を助ける為に呼ばれたのがイレギュラーズということだ。
(まぁいいわ。今回もやるべきことをやるだけよ。必ず少女を助けて戻ってくるわ)
 ざわざわと、林が風を拾い騒ぎ始めた。

「元の世界に連れ帰す…ね。彼女の状況を考えるとこのままこの林で朽ちていくってのも一つの選択肢だと思うが」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はため息をつく。少女がここに入って、それっきり出たくないのならそれもまた、少女の選択だろう
「まあそれはそれとして、救える命があるのならば手を伸ばさない理由もない。なに、少女をさっさと林から出すだけの簡単な仕事だ。気楽にやるさ」
 今はまだ――。少女は生きていて、林をさ迷っているのだろう。ならば助けない理由はない。世界は林を見つめた後、ゆっくりと足を踏み入れた。

●迷宮と少女

「迷宮ね…。こんなものは暗闇の中の荒ぶる海を航海すると思えばなんてことないわ」
 景気づけにポケットから出したラム酒を一気に飲み干したマヤは余裕の表情で迷宮へと飛び込む。辺りは林。道は獣道しかなく、周りを見ても同じような木しか並んでいない。
 あたりをくまなく散策しつつも、敵が現れた時のことを想定し銃とカトラスを構えておく。もしかすれば野犬でもいるかもしれない。
 前に進み、右へ進み、左へ進み…マヤは気付いた。同じところをぐるぐる回っているようだ、と。
「中々楽しませてくれる迷宮ね、あっけないのも面白くないから、暇つぶしにはちょうどいいわ」
 そして少女の名を呼びながら進む。利都子…リツコ、と。そうすれば前方から返事の声が聞こえた。可愛らしい、少女の声だ。
 持っていた武器をしまい、その声の方向へ進めば、黒髪の少女の姿が林の中にあった。
「…あなたは、だれ?何で私の名前をしっているの?もしかして、妖精さん?」
「私はマヤ・ハグロ。見ての通りの海賊よ。ここまで来るのにかなりの時間がかかったけど、貴方が無事で良かったわ」
 その名乗りに少女、利都子は目を丸くする。
「海賊?海じゃないのに?ふふ、面白いことを言うひとね」
 
「俺たちは、君をこの林の迷宮から助けに来た」
 世界の言葉に利都子は首を傾げる。
「助けに…?」
「あぁ。…君がどうしてここに来たのか、教えてほしい」
 ペンギンの姿をしたジョージにすごい!という顔をした後利都子は瞳を伏せる。
「…もう、いいの。いいのよ。だって、学校の皆は私のことをいらないって言うの。だったら、私だって皆はいらない。妖精さんがここに迎えに来てくれるんだって」
「…本当に、それでいいのか」
 ジョージが少女の本心を聞く。上っ面のことじゃない。彼女の奥底の、本当の心を。
「………いいの」
「本当に?…君の家族は、悲しむんじゃないか?」
 その言葉に利都子は目を見開く。その事に初めて気づいたかのような顔だった。
「……私…お母さんたちに、何も言えてない…」
 イレギュラーズ達は静かに少女の言葉を聞く。
「でも…行きたくない…、いやなの、もう聞きたくない言葉を聞くのも、痛いのも、物を壊されるのも!」
 叫びだった。両親に心配させないために心の中にしまい込んでいたこと。空想の世界を妄想し、作っていた壁も壊れた。ぽろぽろとこぼれ出す涙は地面へと落ちていく。
 ジョージが利都子を引き寄せ、もふもふの毛皮へと顔を埋めさせた。その温かさに、利都子はさらに涙が止まらなくなり、暫く顔を上げることはなかった。

「自分の居場所がどこにもないなんて考えてそうだが、それならいっそ作ってみたらどうだ?」
 世界の言葉にようやく涙が落ち着いた利都子は顔を上げて首を傾げる。
「誰かの隣とか友達や家族の輪の中みたいな人の関りのある所じゃなくていい。自分がここにいても良いと思える場所……なんならこの林でもいいから、そういう場所を作ってみろ」
「居場所を、作る…考えたこと、なかった…」
「そして、暇な時や嫌な気分になった時にそこで思う存分だらけたり好きな事をやってみたりするんだ。割と自分がこの世界にいてもいいなって思えるようになるかもな」
「…そういうの、っていいのかな…ちょっと…楽しそう、だけど…」
 少し落ち着いた様子の利都子は、首を傾げつつも、羨ましげに笑った。そういう選択肢があるのだ、と世界は少しだけその一端を見せたのだ。

 黒子は自分がした前準備のことを利都子へと言えば瞳を丸くし慌てた。まさかそんな大問題になってるなんて思っていなかったのだ。
「立ち向かえ、とは言わない。引くの勇気だ。無謀との違いはそこだしな」
「で、でも…他の人に迷惑をかけちゃう」
 両親にも心配をかけたくないからずっと黙っていたのに、たくさんの人の迷惑にならないだろうか。申し訳なさそうに瞳を伏せる。
「まあ、本来ならこうなる前に何とかするのが大人の仕事なんだがな……」
「…大人の…仕事?」
「あぁ。…ただ、悩む時間は要るだろう。その時間は稼ぐ。やるなら助ける。やらないならちょいと遠いかもしれないが別の場所は提示できる。ただ、『選ぶ』のは君だけしか出来ない」
 この人は、自分のことを心配して動いてくれたのだ。そう利都子は感じた。だとしたら、真面目に考えるのが誠意になるのかもしれない。

「お前さんはここで、どうしたい。あいにく、ここにいて起こるのは、自然現象だ。腹が減り、衰弱し、やがて誰にも知られずに消える」
 ジョージは言う。妖精は迎えにこない、と。ここに居れば起こる未来の話を。
「消えてしまえば、楽だろう。だが、苦しんで死にたいわけではないだろう。それに、勿体ないな」
「…勿体ない…?」
 利都子が首を傾げれば、ジョージは大きく頷いた。逃げる場所の提示や、居場所の作り方はもうすでに他のイレギュラーズ達が伝えた。なら、ジョージのすべきことは――。
「お前の行く先には、お前が目を瞑っているだけで、道は幾らでもある。お前は、選んでいいのだ。ここで消えること。立ち向かうこと。逃げること」
 少女には数多の選択肢があることを、伝えなくてはいけない。
「一度死んだつもりで、思いっきり、喧嘩するのも一つだろうな。何。喧嘩するくらい。ここで死ぬより、マシな道だろう?」
 喧嘩は出来なくとも、何かを行うきっかけになればいい。

「随分と嫌なことがあったのだろうけど、ここにいては危ないわ。私が守ってあげるから、一緒に帰りましょう。今後嫌なことがあったら、いつでも私が助けに来てあげる。私は妖精じゃないけどね」
 マヤは手を差し伸べる。いつでも助けが来るのだと。こんな無謀な逃避なんて、する必要ないのだ、と。
 その手に、利都子は震える手を乗せた。

 迷宮を出る為に、祠にラム酒を供えた後、林を抜けるイレギュラーズ達と利都子。
「…そういえば、なんで私のことを知ってるの?」
「…………まあ妖精だからって、そういう事にしといてくれ」
 世界の言葉に、利都子は小さく微笑んだ。

成否

成功

状態異常

なし

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