シナリオ詳細
Emperor = TAI / NIN / NIN
オープニング
●たーいにーんにーん
地獄味溢れるスライム――『対忍々』
それはかつて一部のイレギュラーズ達を襲った脅威であった。
奴は服を喰らう。
より厳密には服の繊維を好むスライムであり、それはもう襲われれば大変な事になる。
文字通り『身ぐるみ剥がされる』のだ。リウィルディア=エスカ=ノルン (p3p006761)さんの身ぐるみ全部剥がすまでもう少しだったのですが、残念ですね、ちくしょう!! いやゼファー (p3p007625)さんやアリス (p3p002021)さんはもう色々放送できない様なアレで、喜々とアレでしたが……まぁそれはともかく!
閑話休題。
ともあれその時は色々あってなんとか討伐に成功した。
最終的にラズワルド (p3p000622)と錫蘭 ルフナ (p3p004350)の驚天動地たる奮闘によって。
が、討伐したはいいのだが――その討伐戦にも参加していた黒影 鬼灯 (p3p007949)の耳に、後日とんでもない情報が届く。
――『対忍々には王がいる』
飲んでいたお茶を噴き出す所であった。対忍々に、王がいる?
落ち着いて鬼灯君! といつも手元に一緒にいる嫁殿に顔をばしばしされる事数回。ともあれこれは確認せねばならぬ情報だと――真偽を明らかにする為に暦が一員、睦月はアマゾンの奥地――違う。カムイグラの奥地へと足を運んだ。
「なぜ? なぜ私が? なんかおかしくないかな……?」
聞いた話によると、王がいる噂なのはカムイグラであるらしい。
なんでも王はバグ召喚されてカムイグラに跳んだとか――或いは、偶々名前が似ているだけで、カムイグラ原産のスライムなだけなのか――真相は今一つ分からないが逢華 (p3p008367)にも見送られ、睦月はカムイグラの大地へと。
調査する事暫く。
とある村の住人より聞いた話では、ある城を占拠しているスライムがいるのだとか。
そしてそのスライムは――服を喰らうのだと――
「……情報は一致するけれど、万一の為確認が必要かなぁ」
こんな特徴のスライムがそう何匹もいてたまるかとは思うのだけど。
頭領に情報を献上する以上、不手際があってはならない。
生真面目な気質。故に暦での会計を担当している睦月の性は半端を許さなかった。
――それが、結果としてあんな悲劇を生み出すだなんて――
●
「――で、帰ってこないと?」
「うむ……数日前の報告を最後に、連絡が途絶えたようで……」
心配だと紡ぐ鬼灯の顔を見るは、伏見 行人 (p3p000858)である。
なんかもう大体オチが読めている気がするのだが、もしや。
「で! ここが『対忍々』のハウスなのね!!」
「まさか海向こうにまでいるなんてねぇ。いや同一かまだ分からないだろうけど」
アリス――ゼファー――以前の対忍々討伐の面々も集った地は、カムイグラ。
眼前に聳え立っているは一つの小城。なんでもここはめっちゃ前に凶悪な妖――つまりスライムなのだそうが――に占拠された場所であるらしい。僻地であるが故に、別に周辺住民は困ってる訳では無いそうで、長年放置気味。討伐もされていないらしいのだが……
「……睦月お兄ちゃん大丈夫かな」
そのような場所に行って、帰ってこないと成れば逢華 (p3p008367)も心配する。
大丈夫――すぐ帰ってきますよ――
親指を立てながらそんなフラグ……もとい、そんな事を言っていたのに。
「聞いた限り確実に『対忍々』な気がするんだけど」
「どうしてそんな所に人をやったのかなぁ……」
ルフナやラズワルドの言も尤もだが、気になったのだから仕方ない。だって対忍々だよ?
まぁ一度は討伐した種族だ。奴はやたら強い力を持っているので、スライムと侮ると痛い目を見る事になる――が。いざとなればもう一度同じ手段を用いれば……待て、同じ手段もう一度使えるか……? 温泉、湧く……?
「……まぁとりあえず進んでみないと何とも言えないね」
リウィルディアは言葉を紡ぐ。
まさかもう一度会うとは思っていなかったと吐息も一つ、混ぜながら。
城の中へと歩を進めるのだ。
この後――彼らは思わぬ事態へと遭遇する事と成る。
各所が古ぼけた城の中を突き進み、そしてその深奥で出会ったのは。
――前回の『対忍々』の大体三倍ぐらいデカい『エンペラー・TNN』
『対忍々』の、王であった。
- Emperor = TAI / NIN / NIN完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年08月14日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「いたもん、ねー嫁殿! わたし見たもん、線のほっそいイケメン居たもん!」
『そうよ! 弥生さんいたのだわ! 絶対いたもん!』
はいはいそれはト●ロですよ! 気のせいです気のせい! 『J( 'ー`)し』アリス(p3p002021)と『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)の嫁殿が顔を見合わせ妙な言を繰り返すが――幻覚だ! 此処にいるのは睦月さんです!
「いやおかしい……たしかにさっき弥生さんがいた気が……
とても幻覚だったとは思えないのだけれど……」
「見間違い? いいやそんなはずがない! 間違いなく弥生さんの姿があった! 僕たちの眼には見えていたんだ! 弥生さーん! どこ――!! 手伝って――!!」
ええい『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)さんに『銀なる者』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)さんもそんな事を言うだなんて! これは集団幻覚の疑いが出てきますね!!
ですが幻覚になどに掛かっている暇はないんですよ、なぜなら――
「多分本当に幻覚見て現実逃避したくなるのは此れからだと思うんですけど!」
『never miss you』ゼファー(p3p007625)の言う通り、そう。
この先に奴がいる――『対忍々』の――『王』が――
見据えた先にあるのは一つの城。想起するのは少し前の対忍々との死闘。思わず誰かが固唾を呑んで。
「ううん、でも睦月お兄ちゃんを助けなきゃ……! 弥生お兄ちゃんもいるみたいだし……!」
「ああ。前回は大分悪い事をしたからね……皆への借りを返す為にも全力を尽くすさ」
されど『Felicia』逢華(p3p008367)と『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)の二人は意を決す。この先にどれ程の困難が待ち受けていようと、退く訳にはいかないのだ――でも弥生お兄ちゃんの件は幻覚なので。え、なんです行人さん。鬼灯たちが暦を見間違えるわけがないって……?
成程、至極もっともな正論なので聞き流す事にしますッ!
「とにかく――何? えんぺらー? なにいってんのかよくわかんないねぇ?」
しかも増えるってどうやって増えてんの? と『流転の綿雲』ラズワルド(p3p000622)は頭の上に幾つもの疑問符を。
オスメスいるのか或いは分裂か。百歩譲って王だけならいいが、子供がワラワラ出てきたら無理である。画面的にも。年齢制限的にも。ともあれあらゆる意味で無事である事を願って――あっ、万が一の為に帰りの服はその辺りに隠しておいて――進む。
古びた城へ。TNN住まう、暗黒の地へ。
「……まったく睦月め。この様な所へ来るとは何たることを……些か防犯意識が足りないんじゃないか?」
一体誰が睦月をこんな危険な所へやったんですかね頭領。頭領! くっ、とにかく睦月さんははたして一体どこにいるのか……探す一手と成るのはラズワルド。
彼の耳は他者の心音を捉える。どうにかここにいるメンバー以外の音を捉える事が出来ればそれが睦月の居場所と見て良い筈だ。潜んでいるのなら緊張なりしている筈で。
「行き止まりだけは嫌だよねぇ。なんとか道が広がっている所から探していきたいねぇ」
「とにもかくにも先に睦月さんをね。だって早い所みつけないともしかしたらあ~んなことや、こん、な……こと、そんなッ! 事! になってるかもしれないしね」
まぁ暦のメンバーなら見られて恥ずかしい身体ではないだろうと、ルフナは周囲を風の精霊を頼りに。風の流れで行き止まりの有無を確認しながら歩を進める――大丈夫だよ睦月さん。ちゃんと鍛えてあるし、励ましてあげる。心の傷は気合一つさ。
「睦月さーん! 霜月さんがお弁当作ってくれたから、一緒に食べないかい!?
ほら絶品だよ――! 霜月お母さんの愛の真心が詰まった一品さ――!!」
次いでリウィルディアの大きな言が周囲に響く様に。
手に持つのは暦が一員、霜月さんのお弁当だ――母上――いや男なんだけれども――とにかく丁寧に作り上げたソレを手に。甘めの卵焼きを一口はむりと。んっ、絶品で美味しい!
「すごいな、甘くすると焦げやすくなるのに、こんなに綺麗に焼けるなんて……流石だ……はっ、違った。味を堪能している場合じゃない……! 睦月さーん! 一緒に卵焼きを食べないかーい!!」
頭を振って匂いをあちこちへ。
風に乗って城へと美味しそうな匂いが充満していく――
故にか。リウィルディアは眼前に集中していて気付かなかった。
背後から……声にも反応して、大きな『粘着性水塊』が迫っている事に。
●
「睦月お兄ちゃ~ん。どこ~? 出てこないと頭領さまと神無月班が支出を増やしちゃいますよ~? 増やしちゃいましたよ~?」
大声で呼びかける逢華――暦の会計係を担当する睦月にとっては聞き逃せぬ単語の筈だ。
だが無論ここに潜んでいるのは睦月だけではない……あのスライムもだ。故にいつでも逃走出来る用に警戒しつつ進むことを忘れない。油断すればあれは一瞬で距離を詰めてこよう。
一刻も早い睦月を見つけたい所なのだが――しかし――
「うーむ……精霊たちが何か怖がっている……これが、TNNの影響……?」
逢華は霊を探し、行人は近くの精霊達の力を借りようとするのだが。
何故か異常にそれらの数が少ない。辛うじて見つかった精霊達もそそくさと場を離れる様な仕草を見せて……これはまさか、ここを根城にしているTNNの存在が故……?
「この建物に俺たち以外の人がいたら教えてほしいんだけどね――うーん。
……ま、これからもっと派手に動くから、それでまた色々と変化があるかな?」
「うん。日数も経ってるみたいだし、睦月さんもお腹空いてるだろうし……お腹の音で見つからないかなーなんて」
そしてラズワルドが引き続き周囲の音を探りながら――後ろを振り向いた時気付いた。
リウィルディアがいない。
おかしい。皆一緒に行動していた筈だ。どこかで別れたりなんてしなかった。
だが何度確認してもリウィルディアだけがいない――一体どこへ――
「――上よッ!!」
瞬間。ゼファーの叫びが鳴り響いたと同時。
皆の視線が天井へ。さすればそこに居たのは蠢く『粘着性水塊』……
そう。
「あれがエンペラー・TNN!?」
『対忍々には王がいる』と言われたソレそのもの。
エンペラー・TNN。対忍々を統べし、一族の長――
その中にリウィルディアが取り込まれている。口を塞がれ声が漏れないようにされつつ、三倍の速度でその服を剥いて、違う。捕食していて……
「んぐ、もごご……! こ、こいつ……知能が……!」
もがくリウィルディア。しかしやたら力が強くてとても脱出できない。
以前同様に大量の着替えを着込んでいた故かまだその肌が露出する事はないが――なぜか物凄く危険を感じている。このままではとても青少年に不健全な影響を齎しそうな……だってコイツだけエロいとか付け足されて……あっやばい! TNNがこっち向いた!
瞬時に降り立つエンペラー。目を輝かせる捕食対象――衣類の数々。
「ハッ上等よ……! とりあえずね、やっぱりこいつも服を溶かすスライムって訳じゃない? なら思うんだけどね……もう服なんて着てても着てなくても一緒じゃない?」
後で0になる事。今0になる事。
それに如何なる違いがあるのかとゼファーは言う。こーんな事もあろうかと『とけるもん、にんげんだもの』とやたらポジティブ? なコメントがプリントされたTシャツを着込んでいるのだ――あっ? どうせ溶かされるならてけとなおべべの方がマシでしょ!
「っていう訳でもう私最初から脱ぎ……っ……こらっ! 脱がせろ! 合法的に全裸になれる場面でしょーが!!」
「いやいやそれは流石にまずい、脱ぐな頼むから!!」
服に手を掛けたのを紳士的に行人が止めた。駄目ですダメダメ絶対ダメ。
最悪この一連の流れを記した事後報告書が闇に消される可能性もあるのだ――正気に戻るんだ!
「とにかくこれをどうするんだ。大きすぎやしないか」
「えええええ、こ、こんなに大きいし早いなんて聞いてないよ!? それに睦月お兄ちゃんだってまだ……!」
武器を構える行人――驚愕する逢華――逃げるか戦うか。いずれにせよ判断は即決に。
でなくば飲み込まれよう。呆ければ絡み取られてすぐ全裸だ。
そもそも一連のTNNとの因縁は己にあると行人は前へ。身体を張って――奴を止める! だが逢華の懸念通り、睦月を見つけねばジリ貧だ。奴はとてもつもなく巨大な気配を醸し出していて……
「ええい。睦月は一体どこに……しからばッ!」
一刻の猶予もないと、鬼灯は息を吸い込んで。
「――また、嫁殿のドレスや家具に化粧道具etcを勝手に発注してしまったがまあいいか!!」
天に響く程に声を荒げた。
もはやTNNにも見つかったのであれば小声だろうが大声だろうが関係ない。
睦月よ気付けと……さすれば。
「頭領。奥方様の御為とは言え勝手は困りますな」
いつの間にやら。その首筋に刃を添えられていた――ひぇ、睦月さんいつの間に後ろに。
「……冗談だぞ? 冗談ですってば、睦月=サン。いやしかし無事でなによりだ」
「ええ本当に冗談かは帰った後の帳簿を確認してからにしましょう――それより」
ああ。と二人して振り返った先。
そこにいたのは――進軍せしTNN!!
リウィルディアを喜々として剥きつつ、行人を取り込まんとしていて。わぁわぁもう大惨事! 伸びる触手が逢華やラズワルドにも。やばい逃げないといけないがこれは救出も必要になるのでは――!?
「――たけし?」
だが。
その時戦場に響いた声が一つ。
縦横無尽に暴れんとするエンペラーの下へ、歩みを進めたのは――アリスであった。
●
紡いだ名は――なんだろう。
マジで……なんだろう。だがアリスの脳内には図式が出来上がっていた。
TAI / NIN / NIN――
つまり、略してたけし。
?
「思い出した、あなたはわたしが産んだ子……ッ! たけし、たけしッ! カーチャンよ!」
?????
どこからともなく流れ出す讃美歌――アリスの背に咲く後光――鳴り響く鐘はどこまでも。それはこの世全てのカーチャンの如く。讃美歌がどこから流れているとか考えてはいけない。カーチャンを感じろ!
ゆっくりと歩を進めるアリス。意味不明過ぎて足を止めるエンペラー。
「嗚呼、嗚呼、たけし……カーチャン悲しいわ。
今のあなたは繊維質のものを根こそぎ奪うだけ。
……良いこと、坊や。お洋服と云うのはね、作り手の魂と汗の結晶――
想いが詰まった、大切なものなの、判る?」
優しく諭すように。アリスは手を伸ばして想起する――
かつての過去を。エンペラーが、いやたけしまだ小さかった頃……あの頃のたけしはアリスに背負われる程に小さい、まだ『小たけし』であった。ごはんが無くて小さく鳴くのもしょっちゅうであった。
おべべ代を稼ぐ為に街角で歌を歌っていた――ああ、覚えているでしょう?
「あの頃のわたしは随分と歌が下手でね。
路銀もちっとも稼げなくて……随分と、幼心乍ら苦労させてしまったでしょう」
それでも。カーチャンを励ます為に。
無邪気に笑って見せるあなたに――どれだけ救われたか。
あの冬景色の中で。カーチャンは確かに暖かいものを感じていたのよ……
「むぅ、あの語り口……まさかアリス殿はカーチャンとして! 母親としてエンペラーを諭そうというのか!! 成程、確かにTNNと話が通じないとは聞いていない! 正に盲点であった!!」
「頭領? 頭領? 控えめに申し上げますが――どこか頭を打ちましたか?」
手を打ち感心する鬼灯――倒すか逃げるかだけを考えていた己の有り様を恥じる勢いだ。正気を保っている睦月から容赦ないツッコミを貰っているが。
ともあれ。そう。見て、たけし。これを。
「ねぇ。昔、手袋を作ってあげたの、覚えてる?」
小さな小さな手作りの。
もしかして覚えてないかしら――ふふっ、小さい頃の事だもんね。
でもカーチャンは覚えてるのよ。
昔のあなたを思い出して欲しくて、手袋を夜なべして編んで来たの。
随分と大きくなってるものだから、サイズが合うか判らないけど。
それでもその手の中にあったのは――アリスの記憶の中にあるかつての手袋――
食す。
口……足、いや手……? とにかくたけしはそれを一口。
咀嚼する様に口に含んで……
「――ええ、美味しい?」
此れが『想い』よ。
アリスの頬を伝うのは一筋の――涙。
後光の輝きが昇華され、1680万色の其の先へと至る。
これがカーチャンの輝き。
今日のわたしの股間は遍く生命を照らす太陽の如く!
――だから近付いたその隙に火炎瓶をフルスイングしました。
「こんな所で燻ってるあなたじゃないでしょう! たけし!! たけしッ――!!」
「えっ、お母、さん……? そんな、母の愛は偉大なんだね、こうしてすぐ分かるなんて!
うっ、涙なしには語れない感動秘話じゃないか――よし逃げようか」
「ばーかばーか! だから僕は美味しくないって言ってんでしょーがぁ!! 皇帝とかいうなら臣下でも従えて自給自足でもしててよねぇ!? はっ? してる? やめろよどこにいるんだよそいつらああああ!! なんだよもおおおエンペラーの次はマザーとかあああ!」
火炎瓶のフルスイングから爆破、炎症その他諸々。
触手に巻き込まれんとしていたメンバーが救い出される――ルフナも、ラズワルドも。特にラズワルドはあらゆる身体能力の長を用いて台詞を吐き捨てながら撤退モード。そしてこの火炎瓶の為に仕込んでいたものもあったのだ……それが。
「ぶ、はぁ! なんとか助かった!! やばいよ後一枚な所だったよ……!!」
チッ!! あともう少しで全部だったのに! なリウィルディアであった。
炎で弱った隙に奴から脱出。その手に持っていたのは――油壺。
ただ取り込まれていただけではなかった。こんな事もあろうかと奴の身体の中で壺を割り、油を蔓延させて。水塊であるからこそ――沁み込むソレは炎の勢いを増大させる。ただ衣類だけはガチでやばかったが。
「ふふっ、囮となる役目はキッチリ果たせたみたいだね……さぁ逃げよう!!」
「しゃオラァ! こうなったらコイツだけに火を付けて撤退だなんてケチ臭い事を言わず――この城を燃やしていくわよ!」
「ええ!? いや、失礼ながらそれは……」
煩いわね、おにーさんが早く出て来ればこんな必要も無かったのよ――とゼファーは語る。今は出てきているからいいが、出てこなければ恐らく全員が柔肌(?)を晒して社会的深刻なダメージを負う所であった。何ならむしろ新たな世界を切り拓くまでワンチャンあったのだ!
「私なんて危うく『よいこのろーれっと条約』を逸脱して監視対象になる所だったしね……さぁ! この忌まわしい記憶事、TNNも燃やし尽くしてやりましょう!!」
「え? TNNを改心させるために城を燃やす? なるほど……? サポートするよ!」
いやさっきの全裸騒動は完全にゼファーさん単独の――ああ! 城に炎を放った! 逢華ちゃん、止めて! 疑問符を浮かべながら放火の手伝いをしないで!! わあああ!
あっという間に広がる火災。当然消化する人員なんていなければ、やがてこの城は崩れる事だろう……その前にイレギュラーズ達は脱出する必要がある。
『まあ! 燃えてるのだわ、鬼灯くん!! 見て! TNNが! TNNが悶えているわ!』
鬼灯の嫁殿が指差す――が。鬼灯はそもそもカーチャンの件から現実を理解したら正気度判定ありそうなので、あらゆる手段を放棄して駆け抜けるのに専念していた。
「えぇい! 皆大丈夫か!? 諸肌は持ちづらい……転ぶんじゃないぞ!」
「来るな――! これでも食べてろ――!!」
行人もまたエンペラーの身から脱出し、シャイニング精霊による全年齢維持に貢献。それでも後ろから追って来るエンペラーの触手――に対してラズワルドはマントを放って最終手段の囮を使う。
くっ、あと少し。あと少しで外に出れるのだ……!
山の中に入れば障害物が多い。逃げ切れるはずだ!
炎が――炎が煙を形作っている。
身を焦がす程の愛の炎は煙となり高く高く登って行って。
何れ雲となり、恵みの雨を降らせる。
――其れ迄、どうするかって?
「莫迦! 山を下って逃げるに決まってるじゃないッ!」
カーチャンたるアリスは諦めない。
外の光を浴び。門を抜け。たけしの手から逃れる為に全力を。
再度捕まれば逃げ出せるかは分からない。あと少し、なんとかもう一歩――ッ!
「――まったく。須らく何をしているんだか」
瞬間。猛追撃していたエンペラーの足元で――爆薬が炸裂した。
僅かに止まるTNNの王の足……何が起こったか、理解よりも先に皆が距離を稼ぐ。
これは――罠?
見た視界の端。そこには何やら線の細いイケメンがいた気がして……
「あぁ……」
やっぱり弥生いたもん!
幻覚ではなかったのだと森に入りながら誰かが呟き。
駆け抜ける――ああもう嫌だ二度と会いたくなどないが。
後方より聞こえるはエンペラーの咆哮。
奴は生存している――またいずれ、何かの星が巡り合えば。
山の下に降りてくるかもしれない。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
弥生さんは幻覚だもん!
と言う訳でお疲れさまでしたイレギュラーズ!
真面目に言うと弥生さんは脱出が確定した後に(成功になった後)ちょっと友情出演してもらっただけ的な……つまり諸々の判定とかには関わらない部分で出てきた的な……やっぱり幻覚かもしれない!
ともあれエンペラーの名前がたけしである事が判明し、これから奴はどうなるのでしょうか。
もしかしたらイベシナで出てくるかもしれないし、なんかその内私が正気をうしなったら大群で来るかもしれません。とにかく、ありがとうございました!!
GMコメント
リクエストありがとうございます!!
まさか二回目があろうとは……ともあれ詳細です!
■依頼達成条件
睦月を救助し、生き残って脱出する。(!?)
もしくはエンペラー・TNNを撃破する。
■戦場
カムイグラの僻地に存在するとある城です。時刻は昼。
元々は人が住んでいたそうですが、TNNの圧倒的な力に殲滅されました。
城としては小規模で、長年人が住んでいないこともあってか老朽化が進んでいます。
位置的には山の中にあります。周囲は林が広がっています。
シナリオ開始時は城の周辺からスタート出来ます。
皆さんは城からなんか凶悪な(エンペラー)の気配を感じ取っていても構いません。グッドラック。
■敵戦力
『エンペラー・TNN』
髭と王冠を携えた対忍々です。滅茶苦茶強いです。
硬い・強い・早い・エロいの四拍子を揃えたスーパーオールラウンダー・エンペラー・スライムです。長い。通常の対忍々の三倍近い巨体を誇り、デカいです。
ただし通常の対忍々とは異なり、特殊な回避能力は持っていないようです。(前回:https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3384を参照)あまりに大きいからでしょうか……ともあれ、そんな能力なくてもなんかやたら強いですが、つまり前回とは微妙以上に性能が違います。
城の通路一杯にまで広がりながらも、その軟体性から狭い所にまで容易に入ってきます。
戦う場合、追い詰められるとまずい事になるかもしれません。本当にまずいかも。いやん。
逃げる場合、城から脱出し、一目散に山の中を駆け降りればやがて逃げ切れるかも……?
また、前回同様重度の服繊維フェチ。
お洋服食べたい。通常の対忍々の三倍近いスピードで捕食します。
人間は食べません。ベジタリアーン。
エンペラー以外の、他に通常の対忍々はいないように感じます。多分。
■味方NPC
・睦月
忍集団『暦』の一人。真面目な性格で、普段は主に会計役を担当しています。
どうして……どうして彼がこんな目に……
忍者刀を用いる戦術が基本であり、巧みな刀捌きと、バランスの取れたステータスで相手にこちらの弱点を突かせない中々に厄介な能力を宿しています――が、エンペラーさんは知ったこっちゃありませんとばかりに圧し潰して来ました。
こわいめにガチめに合わされそうになった睦月さんは、あらゆる意味で身の危険を感じ逃げの一手と気配遮断やステルスなどをフル活用して城のどこかに潜んだようです。本来は脱出したいのですが、動くとどうやらエンペラーに勘付かれるようで……
厄介なのがステルスを使っているので、恐らく探知系は引っかかりません。
こっそり見つけるよりも、派手に音を鳴らして気付かせた方がいいかもしれません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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