PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ちいさなあなたと

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎おかあさんのゆりかご

 おかあさんがいいました。
「きょうは、だれがおつかいにいってくれるのかしら?」
 あつまったこどもたちは、みんなてをあげていいます。
「わたし!」
「ぼくだよ!」
「ちがうよ、おれだ!」
 あらあら、たいへん。みんなみんな、じぶんがいきたくてゆずろうとしません。
 おかあさんはそんなわがこをみわたして、うれしそうにわらいます。
「ありがとう。かわいい、かわいい、よいこたち」
 ひとりひとりあたまをなでて、なまえをよびます。
 さいごに「ムク」とやさしくよんだのは、すみっこでごほんをよんでいたこのなまえ。
「なぁに、おかあさん」
「ねぇ、ムク。きょうはあなたにおねがいしたいの」
 ムクはきょとんとして、それからふるふるくびをふります。
「だめだよ、おかあさん。ぼくはすぐにまいごになっちゃうんだって」
 ナオはいつもそういうよ。となりにすわっていることめをあわせていいました。
「そうだよ、おかあさん。ムクはすぐにどこかにいっちゃうんだから」
 ナオはムクのてをにぎっていいました。
 おかあさんは、そんなふたりをじゅんばんこにみてうなずきます。
「それじゃあ、ふたりいっしょにいきましょう。それならまいごにならないでしょう?」
 かおをみあわせたムクとナオ。
「それから、あなたたちも。いっしょにいってらっしゃい?」



⚫︎はじめてのおつかい

「はろーはろー☆ はじめまして、イレギュラーズの皆々様! 実はぜひともお願いしたいおつかいがあるんだけど、どうかな? 興味ある?」
 ご機嫌な挨拶と共に現れたのは、紫頭にだぼだぼの作業着という出で立ちの少年だった。本を片手にお願いとくれば境界案内人か、と慣れた者ならわかるだろう。
「お、その顔は興味ありげ? やったね、ぎせ……参加者ゲットだぜ! それじゃあ詳しくご説明をば!」
 何やら言いかけた不穏な単語にツッコむ暇も与えず、彼は言葉を連ねていく。
「と言っても、特に難しい話じゃなくてねぇ? とある世界で文字通りそのまんま、おつかいに行ってくれればいいだけの簡単ミッションだよ☆」

 彼曰く、その世界は一人のお母さんとたくさんの子供達で構成されているらしい。
 大きな家にみんなで暮らしていて、外には人が誰もいない。けれど家を出てまっすぐの大通りにはお店や遊び場がいくつも並んでいる。
 本来そこにいるべき大人達の代わりに働いているのは、かわいらしいお人形やぬいぐるみ、おもちゃの兵隊である。なんともメルヘンな光景だ。

「そこでふたりのお子様と一緒におつかいに出されるから、無事に済ませて帰ってきてネ! 一本道だし、迷うことはないと思うけど地図は要るかい?」
 にこにこと差し出された紙切れ。確かに家から一直線に進めば目的地のようだ。
 途中にケーキ屋や動物園、遊園地があることも確認できた。これを目印にすれば行き過ぎてしまうこともないだろう。
「目的地は郵便局。仲良くおててでも繋いでさ、お母さんに頼まれたお手紙を出してくればミッションクリア☆  ね、簡単でしょ?」
 まさに子供のおつかいだ。彼が言う通り、難しいことは特になさそうだった。
 さあさあ早く行っておいで、と左右色違いの瞳を細めながら送り出す案内人の笑みに不安を感じなければ、だが——


 ——結果から言えば彼の言葉に嘘はなかった。ただ、大事なところはしっかり隠されていた。
 この世界はお母さんがひとりだけで、残りは全て子供。つまり大人は存在できないのだ、と。
 イレギュラーズはみな一様に4、5歳の幼児程度まで縮んだ姿で子供達の中に加わることになるのだった。

NMコメント

初めまして、氷雀(ひじゃく)と申します!
この度NMとして登録させていただき、最初の依頼がこちらになります。
どうぞよろしくお願いいたします。

簡単に言うと幼児化です。
「生まれた時から大人でした!」という種族であれ強制的に人間の幼児サイズになります。
今とは違う姿(髪や瞳の色が違う、など)を指定したい方はプレでどうぞ。
なお、中身はそのままです。そのままです。
話す言葉が舌足らずだったり、歩幅が小さかったり、身体的なペナルティが発生する可能性は無くも無いですが、基本的には普段どおりの能力が発揮できると思って大丈夫です。
ご自身で被る分にはご自由に……
存分にお子様ライフをお楽しみください。
『ムクとナオと無事におつかいを済ませてお母さんのところへ帰ること』が目標です。


⚫︎NPC
おかあさん
みんなのお母さん。たった一人の大人。
母性・包容力カンスト。みーんな可愛い我が子です。
必殺技は泣く子も眠る子守唄。
この世界においてそれに抗える者はいません。

ムク
たくさんいるお子様のうちの一人。
ナオとは双子。天然ちゃん。
目を離すとふらふらどこかに行ってしまう。
ナオが喜びそうなことを見つけるのがうまい。
いつも止められるのでおつかいは初めて。

ナオ
たくさんいるお子様のうちの一人。
ムクとは双子。真面目ちゃん。
きちんと話せば素直に聞いて従ってくれる。
ムクが心配でいつも後ろを追いかけている。
一度だけおつかいをしたことがある。

洋菓子店
お子様たちの主食は甘いお菓子。
特にナオは甘党。
ロールケーキをまるまる一本食べてしまうほど。
従業員は女の子の人形です。

動物園・水族館
ここの生き物たちはおしゃべりします。
お子様たちもそれぞれ親しい子がいるようです。
ムクはうさぎ、ナオはペンギン。
従業員はライオンのぬいぐるみです。

遊園地
お子様向けの優しい乗りものがたくさん。
コーヒーカップ、メリーゴーランド、観覧車など。
どれもとてもゆっくり回ります。
従業員はおもちゃの鼓笛隊です。

郵便局
たくさんの手紙や荷物を、いったいどこへ運んでいくのでしょうか。
従業員はやぎのぬいぐるみです。


⚫︎プレイング例
「くそ!あのあんないにん、だましやがったな!」
子供しかいないとは聞いてたけど、まさか自分まで子供になるとは!喋りにくい!
文句を言ってやるためにも、早く終わらせて帰るぞ!

遊園地、俺も昔はよく親に連れられて遊びに行ったもんだ。
大人になると恥ずかしくて行けないんだよなぁ……
いかんいかん、今は郵便局に行くぞ!
「おいこら、ふらふらすんなよ」
手を繋げばふらふらとどこかに行っちまうこともないだろ。
慣れない体で動くから帰り着いたらぐったりだろうな……

  • ちいさなあなたと完了
  • NM名氷雀
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月10日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
雁(p3p008167)

リプレイ

⚫︎てをつなご!

「おいおい、こんな幼稚園児みたいになるなんて聞いてないぞ?」
 黒髪にピンクカチューシャの男の子『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は眼鏡を押さえながら声を上げた。
 幾度となく境界世界へ足を踏み入れている世界は体が縮んだ程度では驚かない。仕事に支障がないことも手足を動かして確認済みだ。
 彼とっての問題は道中の洋菓子店に万全の態勢で挑めないこと。この体では想定より段違いに量が入らないだろ、という甘党の個人的な不満だった。

 同じくずり落ちそうな眼鏡越しに周囲を見る『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)はきちっと整えられた子供らしくない頭を撫でる。
「確認していなかったこちらも、わるいか。大人ばかりでは、目立ってしまうしな」
 郷に入っては郷に従え。煙草へ伸ばしかけた手を引っ込める。非難しても許される状況を努めて冷静に飲み込んでみせるが、自身が発した声の違和感には咳払いをして顔をしかめざるを得なかった。

「ずいぶん簡単な依頼だなあと思ったらこれだ。困ったもんだ、ほんとうに」
 雁(p3p008167)も、自身の舌足らずっぷりが気になった。しかし黙っていては話が進まない。
「……わるいけど、おれはうまく目がみえんから、だれかその子らを先導してくんないか」
 おれはあんたらのにおいをたどっていくからさあ、と随分と重たく感じるサングラスを仕舞い込んだ手をトントンと叩く者がいた。
「道標ならココにもひとりいるのだけれど……ねぇ羽白のコ?」
 銀の長髪を靡かせて覗き込むのは『闇之雲』武器商人(p3p001107)。幼児サイズでも妖しい魅力は健在だ。ふくふくと柔らかい頬に笑みを乗せ、戸惑う一行の中でただひとり状況を楽しんでいた。
「小鳥が見たらどんな反応をしてくれたかなーァ?ヒヒ!」

 慣れた動きで雁と手を重ね、武器商人は同じ目線のナオとムクに問いかける。
「忘れ物は無いかい?大事な手紙がお留守番では物語は始まらないからねェ」
 鏡合わせの二人はムクの小さな鞄をぽんぽん。
「ここ、ちゃあんとぼくがもってるよ」
「ちゃんとポシェットにはいってるよ」
「お前たちも、手をつないでいたら、一人で迷子にもならないが。どうだろう?」
 仲睦まじい二人に提案したジョージ。それなら見張る側も対象がまとまって具合が良い。
「がんとおそろいだ!」
「しょーにんもだね?」
 互いの手を握った双子は雁へ嬉しそうな笑みを向けた。真っ直ぐな視線の熱に押された彼は口籠もり、それを見た武器商人がおやまァと唇に弧を描く。
「そろそろ出発した方がいいな」
 どこか落ち着きない世界の声を合図に、ちいさな大冒険・初めてのおつかいはスタートしたのだった。



⚫︎あまいゆうわく

 踏み出した一本道。ジョージを先頭に、ムクとナオと世界、その後ろに武器商人と雁が続く。いざ目印の洋菓子店へ。甘党二人のそわそわっぷりは容姿と相まって可愛らしいが、片割れの好きなもの目掛けてふらふら歩き出すと予想した世界はしっかりとムクを見張っている。それは正しく的中した。
「あっ、ケーキやさんだぁ」
 誰よりも先に見つけた看板へ走る幼子がすり抜ける前に手を掴んだのはジョージだ。
「こらこら。まずは、おつかい。だろう?」
「じゃあナオとせかいは?」
 優しく諭そうとした彼がムクの人差し指の先を見れば、いつの間にか手を繋いですたすたと歩を進めている二人の姿が。
「こいつをフリーにしちゃまずいだろ」
 ショーウィンドウから店内を覗きながら言い訳しても説得力が無い。色鮮やかなケーキ達から意識的に目を逸らしてジョージは溜め息を吐く。彼だってその誘惑と闘っている最中なのだ。
 そうこうしているうちに少し遅れて武器商人と雁が追いついた。
「どれも美味しそうだねぇ。大きなショートケーキはクリームがシルクを触った時のような色で、上に乗っている苺は木琴で演奏している時の色。チョコレートケーキは温泉に浸かった時の色をしているね」
 弱視の雁の手を引いて、彼のために独特の言い回しで色を表現する武器商人。雁はそれをひとつひとつ、丁寧に自分の中に飲み込んでいく。
 隣でそれを聞かされたジョージは「耳に毒だな」と苦笑した。現に世界と双子は今にも涎を溢しそうな顔だ。
「……ほら、チョコならあるぞ。食うか?」
 雁が灰色の王冠とも呼ばれる最高級品のそれをパキリと割って差し出せば、遠いケーキの群れより眼前のチョコレート、と目を輝かせて飛びついてくる。仲良く三等分された甘い欠片を頬張って静かになったところでジョージが改めて声をかけた。
「手紙を出す、という役目を任されたのだ。最後までがんばろうか」



⚫︎おはなししよう!

 二人ひと組、手を繋いで動物園と水族館の正面アーチの下。ライオンのぬいぐるみが箒片手にお辞儀し、跳ねるうさぎとペンギンに名前を呼ばれた双子は手を振り返す。
「動物のぬいぐるみが動物の世話をしているというのも、なんだか奇妙な話だね」
 興味深そうに武器商人。雁は耳からの情報に首を傾げた。
「しゃべってないかどうぶつ? ……まあそうめずらしいことでもないか多分」
 にんぎょうもしゃべってたしな、と道中に声をかけてきたおもちゃ達を思い出す。
「ああ、この世界の主食はお菓子だから生き物達がおしゃべりする事に耐えうるのか。少なくとも、子供達は」
 理に触れた武器商人は、今回の同行者の中で一番双子に近い存在かもしれなかった。
「水族館の水はとっても綺麗だよ、夏に冷やしたラムネを飲む色だねえ」
 外からも見える水槽の魚達を、日差しに乱反射するビードロ玉などに喩えることも忘れない。
「あいつらとは、親しいのか?」
「うん、とっても! ぼくはペンギンとおともだち」
「あのね、うさぎさん、とってもやさしいんだよ?」
 ジョージが足を止めないために切り出せば、自慢の友人を紹介したくて身を乗り出す双子。
「郵便局までは、もう少しだ。それまで、二人の話を聞かせてくれないか?」
「ただ歩くのも退屈になってきたところだ。俺にも聞かせてくれよ」
 ケーキはお預け、幼子の歩幅ではなかなか目的地にも辿り着かず、少しでも気を紛らわせたい世界も相槌に加わって花が咲いたようにお喋りは弾んでいく。

ぱんぱかぱぁん♪

 突然のファンファーレ。ラッパにシンバル、太鼓に笛の音。キラキラの音色を纏ったおもちゃの鼓笛隊の歓迎のパレードだ。
「っ、あしおとが多いとおもったら、ゆうえんちか」
「賑やかだねぇ、耳のいいコには少し騒がしいかな。大丈夫かい?」
 大きな音に肩を震わせた雁は、武器商人の手を握り返して心配ないと伝える。
「ここは全体的にいろんな種類の花を集めて作ったブーケの香りの色をしてる」
「チューリップとかひまわりとか、たんぽぽ?」
「ハチさんをよぶあまぁいミツのにおいかなぁ」
 同じものを見ても感じ方はそれぞれだ。太鼓のリズムに倣って歩きながら一生懸命考える姿に武器商人が微笑む。その横で振り切るように首を振るジョージにムクが訊ねた。
「行きたいの?」
「いや、珍しいだけだ。他所で見たものより、ゆっくり回るんだな、と」
 誤魔化そうとしたジョージの思惑は別方向に作用した。
「そとではどんなののった?おしえて!」
「なにをみたの?ねえねえ、ジョージ!」
 どうやらこの話題は双子の興味を引きすぎたらしい。矢継ぎ早に投げられる質問はもはや攻撃に等しく、今度は彼が話して聞かせる番のようだった。



⚫︎おつかいとまどろみと

「手紙に切手はちゃんと貼られてるね?他には何かお願いされてない?」
 郵便局の前、最後の確認を促す武器商人に頷いて元気に中へ入っていく双子を見送る。
「誰に手紙を送って、誰から手紙が来るのだろうね?」
 その答えは誰も教えてくれないが、あとのことは従業員のやぎぬいぐるみが案内してくれるはずだ。
「まかせきりにしちまって、すまないな。時間もだいぶかかっちまったろう。かえりみちは行きよりはやく帰れるようにするぜ」
 残念ながら雁のその意気込みは達成されなかった。帰るまでがおつかいだ、と注意を続けるジョージの隙を突いた三人が洋菓子店へと突撃したのだ。押さえた発条が弾け飛ぶようなものだから仕方ない。
 そうして一行は一人ひと箱、大きな持ち帰り用の箱を提げて母の待つ家へ帰り着くのだった。

「俺とどちらが多く食べられるか勝負だ!」
 世界にとって同じ甘党として共闘したナオは好敵手である。まるまる一本のロールケーキを持って対峙した二人は掛け声で一斉に齧りついた。わあわあと盛り上がる中に交じったムクの側にジョージがやって来る。
「ムクもナオも、よく頑張ったな。いい子だ」
 手した皿には一人分ずつカットされた苺のショートケーキ。ナオの楽しそうな顔を見て満足したムクが自分の分を取り損ねているのに気づいたらしい。
「いっしょにたべよ、ジョージ」
 お礼とともにお誘いされれば照れくさくて笑ってしまう。その後ろでは別腹を駆使して二本目のロールケーキを飲み込んだ世界が優勝していた。

 こちらでは律儀に仕事の報告をしに来た雁が甘やかされていた。ほめられた記憶なんてほぼなかったな、と過去を思い起こせば、それを読んだのか抱き寄せてくるお母さんに戸惑うばかり。
「…だから、よせったら。おれはもっと構われたくてむくれてるんじゃないんだよ」
 それでも振り解けない彼を、前髪の下の紫水晶を細めて武器商人が眺めていた。

「さあ、おひるねのじかんよ」
 腕を広げて呼び寄せるお母さんの膝で、お気に入りのクッションで、大切な片割れの隣で、甘いもので満たされた子供達は丸くなって目を閉じる。
 辺りに響く不思議な子守唄はイレギュラーズの意識すら容易く攫っていく。またおいでなさい、と靄の向こうから告げる声を最後にふわりと揺れて、めでたしめでたし。

成否

成功

状態異常

なし

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