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シナリオ詳細

門限は火の落ちるまで
門限は火の落ちるまで

完了

参加者 : 8 人

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オープニング

●きれいな花
「うわあ……」
 少年は見える景色に嘆息し、思わず息をのむ。
 あたり一面に、きれいな花が咲いている。見たことのない、きれいな赤い花。

 来てはいけないと言われていた森。決して行くな、と言われていた森。
 人の目を盗んでくる価値はあった……と思う。

 カサリ、と音がした。
 びくついて振り向く。何もいなかった。そこにはただ、花があるだけ。
(なーんだ、やっぱり、危ないなんて嘘だったんだ)
 それにしても、人がいないのには困った。
 音がしないことに心細くもなってくる。
 どうしよう。引き返すべきか?
(でも、どっちから来たんだっけ……)
 花は少年を誘う様に、森の奥へと続いている。そうそう。こっちだ。花をたどってきたのだから……。

 少年は足を踏み出した。
 森の奥へ、奥へと……。

●小さな森、名もなき森
 ここは深緑(アルティオ=エルム)の、大樹ファルカウから遠く離れてやや辺境の地。別の国との国境が近く、中央よりも「多少」は、異種族との交流もある場所である。
 この森は、とある問題に直面していた。

 人食い植物の大量繁殖である。

 ここに住まう幻想種たちは、その植物を「マンイーター」と呼んでいる。
 もっとも、マンイーターは積極的に人を食らう植物ではない。
 マンイーターは、夜になると活動を開始し、毒の胞子を振りまく。それにあてられた動植物の死体を栄養源としてさらに肥え、仲間を増やす。人ひとり殺す力は優にあるが、その性質から、死人が出ることはほとんどない。
 この植物の被害が多少ならば、生態系の一部として看過もしただろう。
 しかし、このマンイーター群はあまりにも増えすぎた。
 すべてを破壊し、枯らしつくす。

 事態を重く見たアルティオ=エルムは、森を守るために苦渋の決断を下した。
 森の末端、ごく一部を区切り、マンイーターの巣食う一帯を焼き尽くすことにしたのだ。

●焼却作戦
 ローレットを通じて協力要請を受けてやってきたイレギュラーズ。
 目の前の森を見て、確かにその異様さに気が付くだろう。
 木々は生い茂って入るが、生気なく枝をぶらさげ、森からは鳥の鳴き声一つしない。見るからに覇気のない森の中に、毒々しい、ラフレシアのようなあでやかな毒花が咲いている。
「これがマンイーターだ」
 アルティオ=エルムの自然保護官たるソロディーは、小さなマンイーターをつまみ上げた。少しじたばたして花粉が多少舞うが、それだけだ。ふん、と鼻を鳴らして、焚火の中に放り込む。
「こいつらは日の光に弱く、昼はたいして狂暴ではない。マンイーターという名前がついているが、死ぬのはよっぽど間抜けな馬鹿だけだ。
……とはいえ、日の光の届きにくい森の深部となると、まるで手が付けられん。
こいつらは、一個の女王……雌株から発生している。そいつの周りでは、マンイーターは統率され、「狩り」すら行うと聞いている。
 そこにはいかに森を知り尽くした俺達でも踏み込めない。説明した通り、森ごと……限られた区間を区切って、女王ごと焼き払う。お前たちの任務は、そのための安全確保だ。いいだろうか」
「保護官!」
 一人のレンジャーが、ソロディーの前へ歩み出た。
「どうした!?」
「たいへんです! 森の中に、少年が迷い込んでいる、かもしれないとのことです……」
「なんだと? ……かもしれない、というのは?」
「「出かけていく」と言ってから、その子は帰っていないのだそうです。森の入り口で、少年のものと思われる虫かごが……」
「馬鹿な。この森の危険さを知らんのか!」
「……作戦を中止しますか?」
 ソロディーは考え込み、結論を出した。
「いや、だめだ。これ以上先延ばしにしては、被害が増える一方だ。このままでは近隣の村に被害が及びかねない。日を伸ばすにも、明日には雨だ。この作戦は、今日でなければ実行できない」
「しかし……」
 ソロディーは断固として言った。
「探索隊を組織しよう。深追いはするな。ただし、夕刻、決めた時間通りに火を放つ。戻ってこようが、……来るまいが」

GMコメント

●解説
人食い植物「マンイーター」および「イータークイーン」
 マンイーターは日のある場所ではほとんど活動しませんが、森の奥にいる女王個体だけは別です。
 巨大な体躯を持ち、あたかも意思があるかのように、鞭のようにしなる触手を振り回して獲物を捕らえます。
 毒や行動を阻害するバッドステータスが厄介です。
 女王の周りでは、明るくてもマンイーターが活性化するようです。
 活発なマンイーターは根を引っこ抜いて移動もします。女王を害そうとする者には、積極的にマンイーターが襲い掛かります。
 主に近距離攻撃を仕掛けてきます。クイーンのツタのみが中距離(R2)の間合いで、マンイーターもイータークイーンも遠距離(R3)以上の間合いはもちません。

迷子の少年「ピーター」
 好奇心旺盛な幻想種の少年です。都会育ちのようです。森の中ほどで迷子になっており、イータークイーンに捕まりかけています。驚くと動きを止めます。素早く動くことはできません。
 開始から徐々に深部へと近づいています。
※すぐに危険が及ぶ、ということはありませんが、放置すると危険です。

焼却作戦
 開始時から4時間後、夕刻、森には火が放たれます。
 マンイーターらは火に弱いです。
 少年を連れて森から出ることができれば任務は成功です。
 イータークイーンの討伐は任意です。倒せなくもない強さです。

 焼いた後の森に深刻な被害をもたらすような(例:強い薬剤の散布)ことでなければ、必要がある活動は許可されています。

  • 門限は火の落ちるまで完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月01日 21時25分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
義に篤く
リゲル=アークライト(p3p000442)
死力の聖剣
オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)
果ての絶壁
恵禍(p3p002069)
逆焔
メルト・ノーグマン(p3p002269)
山岳廃都の自由人
ミストリア(p3p004410)
霧の主
ライハ・ネーゼス(p3p004933)
トルバドール
牙軌 颯人(p3p004994)
黄金の牙

リプレイ

●森の中に、分け入り進む
 火の粉がぱらぱらと空から舞い降りてくる。
『逆焔』恵禍(p3p002069) は大きな翼をはためかせ、上空から森の様子をうかがっていた。
 かつては清涼な空気に満ち溢れていただろう森は、今やマンイーターに浸食されていた。
(ここが、焼けることになるんだね)
 はびこるマンイーターとともに、いくつかの道筋が見えた。中央部は、木々が密集していてよくわからない。
 恵禍は仲間たちのもとに舞い降り、木の幹に傷をつける。戻るときはこれが目印になるだろう。
「やっかいな食虫植物だ」
『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442) は、道を阻むマンイーターに勇ましくロングソードを振りぬいた。
 真一文字の見事な太刀筋が道を拓き、隙間からわずかに陽光が差し込む。
「人喰いの植物、か……」
『トルバドール』ライハ・ネーゼス(p3p004933)が、眠たげな目で森を見据えた。
「なんと面妖な森である事か。いや、いや。かような森がある事自体はよい。これも世界を。この世を。物語を奏でる一要素なれば……」
 ライハの声が、静かな森に響き渡る。応えるように、あるいはおびえるように、森の木々の葉がざわめいた。

「さて、今回の仕事は、人喰い花の森に迷い込んだ子供の救出だ。しかも夕刻までの時間制限付きときた」
『任侠』亘理 義弘(p3p000398) は、長身で筋肉質の男だ。全身に刃物でついたであろう傷や銃創。そして鋭い目つきからは明らかに堅気ではないように見受けられるが、その反面、子供を救おうとする声色は、どこか優しさを含んでいる。
「早さも冷静さも必要だ、気合い入れていくとしようぜ」
「やれやれ、子供は無事に返さなきゃね」
『山岳廃都の自由人』メルト・ノーグマン(p3p002269)は、手慣れた様子で森の地図と現在位置を照らし合わせる。
「行く事を禁じられた森、そして子供か……よくある事でもあり、タイミングの悪い事だ……叱るのは依頼人達に任せるにしろ、先ずは助け出さねばな」
『黄金の牙』牙軌 颯人(p3p004994) はメルトが予想したルートのうちの一つで、確かに少年のものと思われる足跡を見つけてしゃがみ込む。
 どうやら、花に興味を引かれて、森の奥深くへと分け入っていったらしい。
「好奇心旺盛なのはいいけど、他への影響ってもんを考えなきゃ一流にはなれやしないさ」
 その小さな足跡を見て、リゲルはいっそう気合を入れる。
「……必ず少年を助け出さねばな。騎士の誇りにかけて!」
「では往こうか。迷い込んだ少年を探しに、な」

 油をしみこませた布のにおい。
『霧の主』ミストリア(p3p004410)が後ろを振り返れば、保護管らが火を放つ準備をしているのが見える。
「くく。さて、今回はどのようになるか。依頼の遂行を第一とはするが、楽しみだね。毎度の事だが」
 ミストリアは、帽子を押さえ悠々と森へ分け入ってゆく。
「良き巡り合わせとなるか、否か。見せて貰おう」

「物語の時間だ。焼却すべき森からの脱出劇。否。救出劇か。何方でも好い。此度も愉快な脚本を綴らねば」
『Nyarlathotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569) が嗤う。
 自らの故郷を守るためとはいえ、それを焼く火を用意している幻想種たちの顔は不安そうだ。それに加えて、同族の幼い子供が、まだいるかもしれないとなれば……。
 恐怖を必死に覆い隠すようなその様子を見ると、衝動が沸き起こりそうになるではないか。
 否。否。
 オラボナは首を左右に振る。
「恐怖は不要。我等『物語』の存在を冒涜する所業だが、至極悦ばしい自嘲で在れ」
 なにはともあれ、と言葉を切って。
「其処等諸々は諦めて依頼を完遂せねば」
 オラボナは、木々の隙間に消えてゆく。少しだけ影が濃くなったような気がした。

●少年を探して
 颯人の超聴力が、葉っぱに混じるわずかなざわめきをとらえている。
 生き物の気配。
 森の中央では何かが起こっているのだろうか。
 一行は、少年を助けるために道を急ぐ。
 メルトは見えづらい小道をよく見分け、痕跡を見失うことはない。
 この道は撤退時にも戻らなくてはならない。義弘は広めに道幅をとり、邪魔な花は排除する。差し込む日差しを避けるように引いたマンイーターを、義弘が拳で殴り飛ばす。目印はほかの仲間がつけてくれる。恵禍は牙で剥がれかけた木の皮を剥いだ。
 何度か目の曲がり角。リゲルが木にスカーフを巻く。

 森の奥に分け入っていけば、雰囲気ががらりと変わる。日が届かなくなってきた。
 少年の名前を呼びながら、恵禍は地面を踏み、飛び上がって豪快に枝を折る。差し込んだ日光を避けるように、マンイーターが逃げようとする。
「ここは私が……」
 ライハが逆再生を奏でた。マンイーターは、咲き誇る花から葉に戻り、毒々しい鮮やかさを減じながらみるみるうちに小さな芽に戻る。
 後ろからも、退路を断つかのように、わずかに何体かがはい寄ってきた。だが、たいして殺意はない。オラボナにぶつかり、マンイーターは動きを止めた。
 後方を守るミストリアが、カンテラを片手に、衝撃の青でマンイーターを払い捨てた。

 返事はない。ただ、かすかな泣き声、ほんのわずかなそれを颯人がとらえ、ならば、とライハが朗々とした歌声を響かせる。
 それは、美しい自然をたたえる歌だった。
 あと少し、となれば、ミストリアが、助けを求める者を敏感に察する。
「こっちだ、このすぐ先だな」
 ミストリアの言葉を聞き、 颯人の歩みは自然と速まる。

●森の最奥
 急に開けた場所に出た。
 イレギュラーズたちは、ここが最奥と瞬時に理解する。
 生い茂る木々の合間に、いっそう巨大なマンイーターの姿。
 それに招き寄せられるように、少年がふらふらと歩み寄る。
 恐ろし気な花に、少年は魅入られたように手を伸ばす……。

 結末が悲劇に収束しようとする、その時。
「止まれェ!」
 ドスの利いた声。腹の底から発せられた義弘の叫びだ。元の世界では、は古き任侠の世界で生きてきた男だ。大きな声や怖い声を出すのは慣れている。
「それ以上進むな! ここは危険だ! 俺達が君を守る!」
 リゲルの声が、辺りに響き渡る。
 少年はおどろき、歩みを止める。ツタがざわめく。少年へ向かって……。
「我等『物語』の娯楽性を存分に発揮せねば」
 オラボナのギフト、『娯楽的恐怖』が、周囲に数多の人の影を作った。
――助けに来たぞ。もう大丈夫だ。君の帰りを待っている。幾多の影が少年を抱きしめるように、手を差し伸べる。
 少年は、オラボナの操る影の方に手を伸ばし、思わず尻もちをついた。
 地面を這う蔦まで、あと一歩。オラボナの影と対極をなすような鋭いツタが、少年を捕らえようとして空を切った。もしもクイーンの側に倒れていれば、ツタに捕まっていたことだろう。
 クイーンは、ものすごい勢いで距離を詰めてくる。女王の側のマンイーターたちの凶暴さは、道で出会ったそれらの比ではない。
 群がるマンイーターに、いち早く動いたのは義弘だった。あえて前進し、マンイーターの群れに自らの身を置く。
 背水の構えだ。
 風のような速さで、マンイーターに、体重を乗せた重いクラッシュホーンを叩きこむ。
「この場に俺達が居る限り、誰も捕食などさせはしない! 飢えているならば、俺達を喰らうがいい。できるものならな!」
 リゲルが前に進み出て、勇ましく名乗り口上をあげる。木々から落ちてきたマンイーターが、即座にリゲルに群がった。
「少年。物語の主人公『赤頭巾』は冒険を終え、英雄的な狩人に守護される」
 少年を覗き込んで嗤う三日月。オラボナが、幽鬼の如く場を離れる。オラボナを覆いつくすは、茨の鎧。マンイーターのツタよりも鋭いそれが、クイーンのツタを退けた。
 オラボナが、我に続けと仲間を鼓舞する。
「その命が惜しくば走りたまえ、くく」
 ミストリアの言葉にはっとしたように、少年はかろうじて立ち上がる。動くことはできなかったが……。
 ミストリアは思う。それで、十分だ。
(一瞬でいい。離れる猶予さえあれば十分だ。確保に向かうのだから)
「こっちだよ!」
 恵禍が間に合った。松明をくわえ、少年を背に乗せる。始まりの赤。体中の血液が沸騰し、これから始まる戦いを告げている。
「え、あ……」
「乗って! しっかり捕まってね」
 獲物を逃がすまいと、クイーンのツタが伸びた。
「おっと、させないよ」
 すかさずバックラーを片手にしたメルトが割り込む。
「まったく、厄介な植物もいたもんだけど……重なるねえ、厄介事は」
 我流剣闘術で振るわれたロングソードが、乱暴に、一気にツタを切り裂いた。死角から延ばされたもう一本は、ミストリアの遠距離からのマギシュートが振り払った。
 ライハが奏でる『勇壮のマーチ』が、味方を鼓舞する。
 ばらばらと木の枝から花が降ってきた。
「少年は任せた、此方は目の前のアレに集中するとしようか」
  颯人が黄金に輝く剣を掲げて敵陣に勇ましく駆け込み、姿勢が崩れるのも構わずにクイーンにスーサイドアタックを仕掛ける。
 道が、開けた。

 恵禍はとびぬけて素早かった。
 恵禍は、クイーンに焔式を放った。それは炎を操る恵禍のギフトでもある。赤い炎が、高温に燃え盛り青い炎へと変わる。クイーンは叫び声をあげ、辺りにがむしゃらに体当たりする。
 木々が倒れ、何匹かのマンイーターが圧し潰される。
 恵禍は羽ばたき、そのまま後退する。
 群がるマンイーターを、蹴散らすように進んでいく。少年は、振り落とされないように必死にしがみつく。

 森が怒りだす。ざわざわとざわめき、一行を阻む。
 クイーンはリゲルに向かって、無慈悲にツタを振るう。毒々しいツタを、ラージシールドがすべて防ぎ切った。
 多少攻撃をくらいはしたが、リゲルの行動は乱れない。
 横を恵禍が走り抜ける。松明の火が揺れた。
(どうしてだろう)
 少年は、思った。この暖かい恵禍の火は、恐ろしいものでないように感じられる。
 通りすがりざま、恵禍の放つ鮮やかなマジックフラワーが、マンイーターを蹴散らしていく。枝が邪魔して、飛ぶことができない。ただ、仲間たちの援護で邪魔は入らない。
 マンイーターはざわめいた。
「追わせない!」
 次はリゲルの番だった。降りぬいたロングソードが、マンイーターに触れると燃え上がる。フレイムバスター。炎を纏った一撃が、易々と花を屠っていく。
 朽ち果てた木々とともに、花々は容易に燃え上がる。

 女王は、まだ恵禍を追う気配を見せている。
 ミストリアは引き続きクイーンを狙う。マギシュートが的確に女王の巨体にヒットした。マンイーターが一気に颯人に群がるが、茨を纏ったオラボナが割り込む。
 ライハの奏でる逆再生が、クイーンのツタを成長前の未熟なツタへと縮め、破壊する。
 メルトにマンイーターが飛びかかるが、倒れたのはマンイーターの方だった。暗黒剣。暗闇を纏った剣が、敵を振り払ったのだ。
 もはや、少年を乗せた恵禍に攻撃は届かない。
「さて、最早後顧の憂いは無い……此処からは問答無用。全力で貴様の相手をしてやろう!」
 射程外に出たとみて、 颯人は思い切り構え直す。
 黄金に輝く剣と鞘、二刀の輝きがまるで黄金の炎のように軌跡を描く。
「我が炎は既に魔を払う術ではない、だが磨かれた技は貴様と相対するには十分……!」
 炎上するクイーンは、でたらめにツタを振るった。
 義弘はツタを受け止める。
「とにかく、イータークイーンを打ち倒せばマンイーターも止まる」
 鋭い踏み込みから一気に肉薄し、捕まれていない方の拳を固める。
「とことんまで、やってやろうじゃねえか」
 思い切り振りぬいた拳が、クイーンに突き刺さった。

●攻防と脱出
 森が、姿を変えていく。
 クイーンの巨体で、容易に木々はなぎ倒される。差し込んでくる日を嫌がるように、クイーンは攻撃を繰り返す。
 死に物狂いでツタが振るわれる。
「後の村人への脅威を減らす為にも!」
 リゲルのリッターブリッツが、女王と何匹かのマンイーターを貫いた。マンイーターはばらばらと崩れ落ちる。
 クイーンは元より、この場に居る敵を燃やし尽くす勢いだ。

 手ごたえは、あった。
 クイーンの振るうツタは、もう半分も残っていない。
 際限なく降り注ぎそうだった、マンイーターたちの数が減っている。
 だが。
「そろそろだ」
 メルトが言う。
「チッ、時間か……」
 義弘はクイーンをにらみつけた。
「無理をすることは無い。死に挑むは今日、この時ではない……」
「同意見。討伐はあくまで副目標だね。そう固執する事もないだろう」
 ライハの言葉に、ミストリアが同意した。
「一緒に火に焼かれちゃたまんないしね」
「面倒な状況を打破すべく。我等『物語』の肉を視よ」
 イレギュラーズたちの勝利を讃えるように、オラボナの勇壮のマーチが響き渡る。
 向きを変え、体勢を整え、行動開始だ。
「私が殿を務める」
 リゲルが後ろで盾を構え、再び、戦闘にたつ。一人にはしないとでもいうように言うように、オラボナがリゲルの隣に立った。
 イレギュラーズたちは駆け出した。

 ライハの逆再生が奏でるように。
 まるで行きの工程をぐるりと反転させたように、一同は森を飛ぶように走る。
 あちこちには、恵禍が通ったのであろう跡がある。少年は、問題なく逃げ延びていることだろう。
 義弘が道を再び切り拓く。
 クイーンは怒っていた。死に物狂いに、仲間を巻き込むのをいとわずにツタを振るう。リゲルへの攻撃を、オラボナが庇う。
 だが、もう一つの攻撃は。
 先陣を切り、殿を守る颯人の身体が大きく揺らいだ。 
 踏みとどまる。
 それはパンドラ。イレギュラーズたちの持つ力。
 黄金の炎きらめく剣を支えに、倒れはしない。
 ミストリアのマギシュートが、女王を思い切り後退させる。クイーンのツタが、ライハをかすめた。
「やれ、やれ。早く逃げねば火に飲み込まれる。それは些か御免だな――」
 リゲルは炎を纏い、美しく輝くロングソードを振りぬいた。

 クイーンの勢いは、明らかに失われている。手傷がかなり深いようだ。

 日が暮れようとしていた。
 約束の時刻には間に合っていた。
 初めに戻ってきたのは……、恵禍だった。マンイーターを振り払い、背には少年を抱えている。次に、イレギュラーズたち。
 否、そればかりではない。
 森がうごめいているのを確認して、待ち受けていた保護管らは叫ぶ。
「火矢を放て!」
 森から這い出してきたいっそう巨大な化け物の姿を見、一斉に矢を放つ。
 炎のついた矢をつがえる。
 転がり込むように、次々とイレギュラーズが戻ってくる。全員いる。彼らの頭上を、すい星のように火矢が飛んでいく。

 イレギュラーズに致命傷を負わされていたクイーンには、ほとんど力は残っていなかった。
 燃え盛る木々の倒木に挟まれ、クイーンは最後の悲鳴を上げた。
 マンイーターは、それに群がり、もう追ってくることはなかった。

●終焉
 森が燃える。
 炎の音とともに、枝葉が落ちる音が響いている。森が奏でる最期の調べに、ライハは耳を傾ける。
 しばらくそうしてみていると、火勢は徐々に弱まっていった。
「あれだけ暴れて擦り傷だけとは、うまくやったものだ」
 ミストリアは、少年の膝に簡単な手当てをしてやった。
「ピーター君」
 リゲルはかがみ、放心したように森を眺める少年に視線を合わせる。
「大人達は、君たち子供を守ろうとしてくれているんだ。長い人生……それこそ君が大人になれば。冒険しなければならない時が、いつか自然に訪れる」
 不意を突かれ、ピーターは息をのんだ。怒られると思っていた。
「その時までは、大人たちの言う事を聞いて。沢山勉強すると良いよ」
 リゲルの言葉は、とても優しい。
 少年は小さく頷いた。
「たまにゃ楽な仕事にありつきたいもんだ」
 メルトはのんびりと伸びをする。
「何れ森もまた元に戻るだろうとはいえ……辛い結果だな」
 颯人の目が、じっと焼け落ちる森を眺めている。黄金に輝く剣と鞘が、燃え盛る火を映してきらめいた。
「まあ、最良の結果だ」
 森を照らす炎の代わりに、義弘が咥える煙草の火が夜を照らす。
 空には三日月が浮かんでいた。オラボナの瞳を思い起こさせる。
 そうだ、あの人は。
 少年はオラボナの姿を求めて振り返るが、そこにはもうオラボナはいなかった。
「この少年も、蘇った森の姿を見る日が来るだろう……」
 いつの日か、この森も美しい姿をよみがえらせることだろう。

成否

成功

MVP

恵禍(p3p002069)
逆焔

状態異常

なし

あとがき

タイムリミットのある中の冒険、お疲れ様でした!
救出ミッション付きの戦闘シナリオ。
一体どうなることかと思っていましたが、森を出るまでにクイーンは瀕死、見事、討伐されてしまいました。
また一緒に冒険することがありましたら、よろしくお願いします。

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