PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<力の代償>箱庭学園七不思議 弐

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●さよならなんて言えなかった
 夕暮れ時の体育館というのは、なんとも趣のあるものだろう。
 茶色い床と壁の中に差し込む、ひとひらの、ひかり。
 バスケットボールの弾む音、弾む音、音。
 友を喪った悲しみも、すべて消え去ってしまえばいいと思っていた。
 居なくならないで欲しい。
「橙也!」
 そう名を読んでくれた君は、もう居ない。
「橙也!」
 ならば、どうすればいいのだろうか。
 あのとき、自分に何ができたのだろう。
「橙也!」
 君が、居ない。
 それだけが、胸を締め付けた。
「ねえ、橙也くん」
「――え?」
 ガシャン。証明の音。
「君、七不思議って知ってる? あ、知ってなくても僕には関係ないんだけどさ!」
「え、あんた、誰だよ」
「まあ何でもいいんだけどさ! ともかく、ええと、さ。なんだっけ」
「……」
 からから。けらけら。
 呑気に、陽気に笑うソレが恐ろしく思えた。
 橙也は入口に向かって走り出す。
「あ、そうだ」

「次は君の番だから」

 バァン、と勢いよく放たれた弾丸が、橙也の胸を穿つ。

「うっ!?」
「君のおともだちはいい感じになってくれたからねぇ、」

「君も、せいぜい頑張ってね?」



 目が覚めた。
 が、そこに居たのは少女だった。
 流石にびっくりした。
 面識もないのにバスケットボールの対決をしようと言われた。
 たぶん、勝てると思った。だけど、俺は負けた。
 爛々と瞳を輝かせ、少女は俺を殴り続けた。
 にっこりと、笑って告げられた。罰ゲーム、らしい。
 げんなりした。俺は多分、骨が折れてる。
 廊下。つめたい。
 そうだ、起き上がろう。
 しようとしても、できない。
 手がせいぜい動く程度だ。
 とりあえず、おまえにれんらくしてる。
 びっくりしたんだから、帰ったら、はなしきけよ。
 来月はなつやすみだから、それまでには。
 まあ、しんぱいすんな。
 できないことなんてないから、おれには。
 はあ、つかれた。
 しんどいんだぜ?
 れんらくはしなくていいから。

 縦に読め。
 だから、もう、むりだ。
 このスマホも、もうこわされるかもしれない。
 ましろ、にげろ。
 この学校から、はなれて。
 おれも、かずきも、きつt

 ――――――――――END――――――――――

●七不思議ノ弐
「……」
 ガトゥは酷く落ち込んでいた。
 舞白からの手紙。
『また、友達が消えてしまったの』
 という文面。
 酷く震えた声で、ガトゥは求めた。
「たすけて、ください」
 

NMコメント

 心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
 七不思議第二弾。
 実はホラーは苦手です。
 それでは、今回の依頼の説明に入ります。

●依頼内容
 ・門池 橙也(かどいけ だいや)の捜索、救出
 ・舞白の保護
 ・骨折り少女の破壊

 彼も例によって救えませんが、よろしくおねがいします。
 舞白は体育館にいます。

 参考までに:https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3672

●門池 橙也
 バスケットボール部所属。舞白とは隣のクラス。
 七不思議の弐に巻き込まれたようです。
 彼は体育館にて息絶えたようです。
 舞白に手紙を送り、逃げるように指示しました。

●骨折り少女
 七不思議の弐番目《骨折り少女》

 あそんでとねだってくるかわいいおんなのこ!
 しょうぶにまけちゃうと、ばつげえむだよ!
 ほねがおれても、しんじゃっても、ずっと!
 わたしとあそんでね!

 超火力型、中回避です。
 殴られたら骨が折れるでしょう。

●舞白
 幸宮 舞白(ゆきみや ましろ)
 くだものと友達が大好きな17歳の女の子。
 癒しの能力を持つ超能力者で短命、それ故に入院していました。
 虚弱ではありますが、走ったりするのは問題ありません。足は遅いです。
 サポートが必要であれば、ヒーラーとして立ち回ります。

●世界観
『力の代償』
 という物語の中。
 現代日本によく似た世界ですが、超能力者が居ることが大きな違いです。
 超能力者は二つのグループに対立していて、良いことをする超能力者と悪いことをする超能力者に別れているようです。
 超能力者はその力と引き換えに短命で、大人になることが難しいと言われています。

●サンプルプレイング
 怪異……なんてことを。
 痛かったでしょう。つらかったでしょう。
 ……はやく、たすけないと。

 以上となります。
 皆様のご参加を、お待ちしております。

  • <力の代償>箱庭学園七不思議 弐完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月25日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談3日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
マヤ ハグロ(p3p008008)
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
月錆 牧(p3p008765)
Dramaturgy

リプレイ

●「橙也はね、体育館に入り浸ってるのよ。馬鹿みたいでしょ? でも、そういうところが、素敵なのよ」
(流石に、二度。同じ状況が続けば、嫌でもわかる。
 一輝少年が伝えたように、舞白嬢を狙った行動だろう。
 ――全く、気分の悪い話だ)
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は苦しげに口元を歪めた。
 思春期の少年少女を中心に起こるこの事件は余りにも酷く、余りにも悪意が塊すぎている。
 体育館に居た舞白の元に駆けつけたジョージ。舞白は声を震わせていた。
「じ、ジョージ……だ、橙也が、ね、橙也もね、居なくなってしまったの、私、わたし、」
「落ち着け。大丈夫。
 きっと――きっと、どんな形であろうと、舞白嬢の元へ戻ってくる。
 ここは危ない。さあ、早く家へ帰りなさい」
「……っ、……う、ん」
 目に涙を浮かべた舞白。恐らくは展開が予想出来ていたからかもしれない。
 赤坂一輝との別れは、舞白の心に深く傷を追わせている。その事実だけが、そこにあった。
(……次は、『橙』。ならば、今度は『黄』……?)
 『群鱗』只野・黒子(p3p008597)の勘は鋭く。
 ここまでの繋がりを嫌でも認識させた。舞白の名前に入っている『白』のように、名前に色が入っている者が犠牲になっているからだ。
(……恐らく虹だと思うんですが……いくつか違いはありますが。
 橙があるところの次は黄、その次は緑、青。別の世界だと、藍を飛ばして紫)
 恐らくは。
 名前にこの色が入っているものが、危ないのだろう。
 次の犠牲者が出る前に、この場を何としてでも片付けねばなるまい。
「……生憎ですが、成功させる他、ないんですよね」
「この海賊に人助けを頼むとは、余程困っていると見えるわね。
 まぁいいわ、人助けも海賊の仕事の一つ。ここは私達にまかせて、貴方達はすぐに逃げなさい!」
 震えるだけで逃げることが出来なかった舞白の背中をそっと押したのは、『海賊見習い』マヤ ハグロ(p3p008008)。
 快活な笑み、大きな声。それが示すは『海賊』。
 時に不安になる場面でも、それが大きく指揮をあげることもある。
 ポケットから徐にラム酒を取り出すと、マヤはそれを一気に飲み干した。
「――さぁて、骨折り少女との戦闘(パーティ)といこうか!」

●「だからね、明日も一緒に遊べると思っていたの。ほら、焼きそばパンを買いに行けないから……」
「私は海賊マヤ・ハグロ! 人の命をもてあそぶ化物共よ、私が成敗してあげるわ!」
 マヤの高らかな名乗りが響いた。骨折り少女は特異運命座標を視野に射止めた。
 ジョージが踏み込む。そして地を、駆ける。
(少女の姿をした怪物、いや、怪異か――まずはヤツを止める!)
「あーそ、ーび、ぃーま、しょーぉ、ぅー?」
「遊びたければ、俺が相手になろう」
 骨折り少女の一蹴りが風を揺らした。鈍く肉を打つ音が響く。
 危なげなく回避したジョージ。先程まで居た場所には大きく亀裂が入っている。
 ケラケラと笑う少女から目をそらすことはしなかった。ぐ、と踏み込む。踏み込む。そして、
「――俺の骨を折るなら、貴様も折られる覚悟はできているんだろうな?」
 放つ!
 骨折り少女の身体が宙を舞う。
「それほどまでにゲームがしたいのなら、私達が遊んであげるわ」
 マヤの精密な射撃は敵を逃さない。地に堕ちる骨折り少女へと鉛の雨をふらせた。
 『新たな可能性』月錆 牧(p3p008765)が手をかざし暗闇へと導く一撃を奮う。牧の方へと骨折り少女が向かう。
「――っ!?」
 咄嗟に死骸盾を放つが、それもすぐに抉られてしまう。
「俺が相手だと、言ったはずだ!」
 ジョージが無理やり意識を呼び戻す。
「あは、あは! あそぶ! おまえ、あそぶ!」
 楽しいおもちゃを見つけた子供のように、骨折り少女はジョージの元へと駆け出した。
「おまえ、おもちゃ? それとも、あそぶ?」
「答えはノーだ!」
 肉の音、ぐしゃり。
「あ、は!」
「ぐぅ……!?」
 左腕。犠牲にしても、構わない。
 その決意が、ジョージの技をより深く埋め込んだ。
「ギャア!?」
(腕が一本あれば、事足りる。脚が無事なら、動作に支障はない。
 腕が一本使えなくなった程度で報いを受けさせることが出来るなら、十分だろう……!)
 それにここは境界世界。
 腕の1本くらい、どうってことはないだろう?
(――アバレロ)
 崩す。怒れ。暴れろ!
 黒子の術は確かに骨折り少女を刺激し――落とす。
 マヤ弾丸は骨折り少女を逃さない。
「さっきまでの勢いはどうしたのかしら?
 まさかこれで終わりとか言わないわよね? さあ、もっと私を満足させてみなさいな!」
「ギャァァァァァ!!!」
 吠える、吠える、吠える。
 骨折り少女の瞳孔が揺らめいた。
 ジョージの攻撃がまた、骨折り少女を食い止める。
「――……もう、い。や、め。ばいばい」

「つぎ、きいろ。も、しぬか、も、えへ、うふふ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 けたたましく笑う骨折り少女。その声が含みを持っていた。
「貴様を生み出したのは誰だ!」
「……ぇ? ぅ、おと、こ……っ、ぇ、ぁぁ」
「っ、く、しまった!」
 ジョージの一撃をわざと心臓に受けた少女は、その姿を消した。
 ケラケラケラケラと笑う声だけが響く。
「……な、なんだったの」
 しゅう、と消えた骨折り少女。
 その身体から出てきたのは、他でもない被害者だった。

●「……焼きそばパン。もう、買えなさそうね。なんて。……そう、そうなのね」
「……ジョージ」
「……ああ、舞白か」
 橙也の身体は、純粋な少女には見せられたものでは無い。
 ジョージがコートを被せてやった直後にやってきた舞白に、ジョージは少しだけ安堵を覚えた。
「どうやら橙也は遅かったみたいね。けど、貴方だけでも助かって良かったわ」
「……そう、橙也も。橙也も、なのね」
 悲しげに目を揺らした舞白の肩を、マヤは抱いた。
「貴方の友達を助けられなくてごめんなさい。でも友達の仇は取ったわ。
 ――橙也。貴方の大切な人は無事だから、安らかに眠りなさい」
「……っ」
 その裏で、黒子は黙々と少女の破片を回収していた。
 警察への通報と諸々の説明、再発防止への協力依頼を行う黒子。
「犯人像が不明のため、可能な限り『気づかれていない』よう処理をするための協力依頼も……頼めると幸いです」
「了解しました」
「――舞白様」
「……あら、黒子。また来てくれたのね」
 泣き腫らした瞼の舞白に、何も告げずに頷いた。
「……此度も、質問を宜しいでしょうか」
「ええ。何でもどうぞ。力になれるのなら……」
「では、三点ほど。
 メールの情報を頂きたいこと。
 そして、門池様の生前の行動をお伺いしたいこと。
 名前に『黄』が入ったご友人はいらっしゃらないか、ということ……です」
「メールはいつでも、鍵にしてあるわ。お気に入り登録、ってやつね」
 はい、と見せたメール。
『目が覚めた。
 が、そこに居たのは少女だった。
 流石にびっくりした。
 面識もないのにバスケットボールの対決をしようと言われた。
 たぶん、勝てると思った。だけど、俺は負けた。
 爛々と瞳を輝かせ、少女は俺を殴り続けた。
 にっこりと、笑って告げられた。罰ゲーム、らしい。
 げんなりした。俺は多分、骨が折れてる。
 廊下。つめたい。
 そうだ、起き上がろう。
 しようとしても、できない。
 手がせいぜい動く程度だ。
 とりあえず、おまえにれんらくしてる。
 びっくりしたんだから、帰ったら、はなしきけよ。
 来月はなつやすみだから、それまでには。
 まあ、しんぱいすんな。
 できないことなんてないから、おれには。
 はあ、つかれた。
 しんどいんだぜ?
 れんらくはしなくていいから。

 縦に読め。
 だから、もう、むりだ。
 このスマホも、もうこわされるかもしれない。
 ましろ、にげろ。
 この学校から、はなれて。
 おれも、かずきも、きつt

 ――――――――――END――――――――――』
 あまりにも、わかりやすい縦読み。
 取り繕うつもりすら無かったのだろう。結果として、それは舞白の命を救っているが。
(……扉?)
 しかし、扉。
 見つかっていないそれが、黒子の心にひっかかる。
「橙也の素行……特に変わったことはなかったわ。
 それと、友達は……萌黄。萌黄と言う子がいるわ。美術部の女の子よ。
 時計塔の常連ね……」
「……七不思議、ですね」
「ふむ一つ確認したいのですが……彼ら二人になにか届いていませんでしたか?
 もしかしたら、同じような傾向があるものが届いた方が次、なのかもしれません」
「……も、萌黄。萌黄のところに、行ってみましょう。
 二人とも、手紙が届いたって、いっていたから」
 舞白の慌てる声が響く。
 七不思議は獲物を――逃がしは、しない。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM