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シナリオ詳細

<力の代償>箱庭学園七不思議 壱

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●運命は巡り廻る

 ──ましろ。

 誰かに呼ばれた気がして、長い黒髪を翻した少女がひとり。
 雪宮舞白。特異運命座標たる君達によって救われた『はずの』少女だ。
 今は下校途中。
 舞白の通う学園では、行方不明者が出たとの旨を受け、生徒を明るい時間に帰すようにしていた。
 彼女の八人の友人のひとりである青年──赤坂一輝もそのひとり。
(やぁね……なんで一輝まで、あんなわけのわからないものに巻き込まれたのかしら)
 過去。
 教会。
 弓矢。
 魔法。
 医者。
 ××。
(あれ、私、)
 こめかみを抑えて、小さく呻いた。

(なんだかとっても大切なことを、忘れているんじゃないかしら)

 ましろ。ましろ。ましろ。ましろ。
 呼ぶ声が近付いてくる。気が、して。
 夕暮れ染まる校舎、引きずるような音がした気が、して。
 そちらを、見た。
「ま、しろ。逃ゲ、ろ」
「か、かず……っ、なに、それ、

   ぁ」
 思い出した。
 嘗て命を奪われそうになったこと。
 また狙われる可能性があるかもしれないこと。
 平穏な日常が拭い去った過去は、あまりにも惨くて、酷だった。
「頼、ム。はやくっ────ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「一輝ッ!」
 竦む足。叫ぶ君。
 継ぎ接ぎの躰。
 嗚呼。君は、どうして、
(そんなの、一輝が救われないわ……っ)
 零れる涙。溢れる想い。
 君と紡ぎたい思い出があった。
 這う音が近付いているのが判る。
 でも、君が逃げろと言ってくれたから、逃げる。
(ねえ、一輝。必ず助けに来るから、)

(死なずに、居てね)

●七不思議ノ壱
「……」
 ガトゥは暗い顔をしていた。
 手にはしわしわの手紙。恐らくはきっと、水分で濡れた跡を、必死に乾かしたのだろう。
「舞白ちゃんから、お手紙っす」

「おともだちが、バケモノになったらしくて、」

「オレ、どうしたらいいのかわからなくって」
 『俺は皆さんをその世界まで案内することしかできないんだから』と、その瞳に涙を浮かべたガトゥ。震える拳。握った掌。
「……手紙を、読みます」
 徐に取り出した手紙。ガトゥはわざと声を張り上げて、読みだした。

「皆へ。
 図々しいお願いね。ごめんね。
 助けてほしいの。
 わたしの、たいせつなともだちを。
 彼が、死んでしまうかもしれないの。
 たすけて。」

 ノートを破いて書かれたであろう手紙。
 ちぎれた切れ端。
 涙の、痕。
「オレからまた、お願いっす」

「助けてあげて、ください」
 ガトゥは深く、腰を折った。

NMコメント

 心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
 それでも救われない物語だってある。
 今回は仄暗く参ります。
 それでは説明です。

●依頼内容
 ・舞白の友達を救う。(※救えません)
 ・柘榴を狩る

 救えません。死を以って救いましょう。

●友人だったもの。
 赤坂一輝

 運動部所属。舞白とは同い年の同じクラス。
 七不思議の壱に巻き込まれました。
 健康そうな四肢はヒトともバケモノともつかぬ色々な生物の死骸と継ぎ接ぎにされ、怨霊と化しています。
 救いはありません。
 どうか、安らかな死を。

●柘榴
 七不思議の壱番目《柘榴の約束》

 あかいざくろが みをつける
 ししゃのかじつが みをつける
 ひとくちたべれば いっかげつ
 ふたくちたべれば いっしゅうかん
 さんくちたべれば あらふしぎ
 どんないのちも ついえるの

 口にすれば死の約束を結びつける呪いの果実です。
 一輝の心臓に根を張っています。
 潰しましょう。

●舞白
 幸宮 舞白(ゆきみや ましろ)
 くだものと友達が大好きな17歳の女の子。
 癒しの能力を持つ超能力者で短命、それ故に入院していました。
 虚弱ではありますが、走ったりするのは問題ありません。足は遅いです。
 サポートが必要であれば、ヒーラーとして立ち回ります。

●世界観
『力の代償』
 という物語の中。
 現代日本によく似た世界ですが、超能力者が居ることが大きな違いです。
 超能力者は二つのグループに対立していて、良いことをする超能力者と悪いことをする超能力者に別れているようです。
 超能力者はその力と引き換えに短命で、大人になることが難しいと言われています。

●サンプルプレイング
 ……胸糞の悪い話だな。
 舞白は家に帰って寝てろ。俺たちがなんとかする。
 死者への冒涜は、許さない。
 弔いと、敬意を以って、お前を倒そう。

 以上となります。
 皆様のご参加、お待ちしております。

  • <力の代償>箱庭学園七不思議 壱完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月18日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談2日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人
80 12(p3p008012)
只野・黒子(p3p008597)
群鱗

リプレイ

●「あの子はね、すごくいい子だったのよ」
(全く、嫌になる仕事だな。
 犠牲の結果とはいえ、子供に手を下すのは……。
 しかし、誰かがやらねばならぬのなら――それは、俺の仕事だ)
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は一輝を見据える。その肌は青白く、その瞳はぎょろぎょろと忙しなく動き、ある種の恐ろしさを覚えさせる。
(……悲しい話さナ。
 静かに、眠らせてあげようカ)
 『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)はまた、その手に弓を携えた。
 嘗て舞白の敵を穿った鋭き刃がまた奮われようとしている、そのことに僅かな心苦しさを覚えながら。
「舞白チャンは帰っておきなさイ、おじいちゃんたちが収めておくからネ」
「でも、ジュルナット、私だって戦えるのよ?」
「……振り返らず、真っ直ぐ、家に帰るんだヨ?
 おじいちゃんとの約束、ネ?」
 敢えて何も語らず、多くは告げず。
 舞白は、固く唇を噛み、頷いた。
 友に最後の別れを告げるように、『さようなら、またね』と告げながら。
(何、心配はいらん。それに……万一、お前に何かあれば、一輝がお前を逃した意味が無いだろう)
 逃がした。
 さいごの、理性で。
 それを告げるには、舞白はあまりにも若すぎたのだ。その背を一瞥すると、ジョージ、ジュルナット、80 12(p3p008012)、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はただしっかりと、敵(かずき)を見据えた。

 ――さあ、はじめよう。
 七不思議がひとつ、極悪の柘榴に囚われた少年を解放するために!

●「だからね、叶うなら、助けてあげて欲しいの」
(七不思議というのは、随分と悪趣味のようだ――命を奪うのみならず、其の身体を乗っ取るとはな……)
 ジョージが見据えた先、未だに動けぬ一輝。
 舞白の友。最期の理性を振り絞っているのだろうか。
 呻き声が聞こえた。ちいさく、ちいさく、零すように。
「まし、逃ゲ、ぁ、ァァ、マシ、ろ、う、ァ、ァ゛」
(――これまた奇っ怪な七不思議があるもんだネ。
 おじいちゃん自身が体験した事は無いヨ、境界図書館の書籍の学園モノをなんとなしに漁ってみればあるものもある、ってのを知ってるだけさナ)
 一輝が動いた。
 ジュルナットは後方へと飛び退いた。その先には舞白が帰路を辿っていることだろう。
 だから、越えさせられないのだ。
 越えさせるわけには、いかないのだ。絶対に。
(ここまで直接的に害を成すものは流し目でも見たこと無いネ…一体何がこの世界をそこまで狂わせたがるのかは知りたいところだけれど、サ。
 まぁ深々と考える時ではないネ、今は早く"解放"させてあげないとサ)

 ――おじいちゃん、約束しちゃったからネ。

 バアン。
 引き金の音が、始まりを告げるように空気を裂いた。鋼の驟雨が降り注ぐ。
 ただ執拗に。
 ただ正確に。
 彼を弔うための、正確無比な弾丸を。
「一輝とやら。意識があるのかは知らん。故に、一つだけ伝える」
「ァ゛、ぁ、イタ゛、ぃ、ァァァ゛」

「舞白嬢は、無事に逃した。お前のお陰だ」
「ま、あ、り、り、ガ、ぁ、ぁ、トド、ァ、う、ぁ」
「よく、頑張った」

 伝えるは少なく、短く。
 ただ真っ直ぐな感謝の思いを、届けたい。
 振りかざした右手より、一輝の腹を殴るジョージ。
 その拳は確実に一輝の弱点を突いた。鋭き一撃は、一輝に回復を行わせる余地すら与えない。
「ギャァァァァァァ!!!!」
 12は口調すら曖昧で、まだ何かを多く語ることは無い。
 けれど、戦う。
 その真意はわからない。
 ただ、その胸にやどる正義を、風に靡かせながら。
 12の淡い虹の軌跡が一輝を包む。そう、それは目障りな正義の光。
 救われない一輝の思いと無念を、やけに刺激するのだ。
「あ、ころ、ス、まて、マッ、て、あは、ハ、は、は!!!」
 けらけらと。
 呂律すら回っていないのだから、それが恐ろしい。
 12が駆ける。ただ広いスペースを求めて。
 薄暗いそこに、生徒や教員の影は見えないから、恐らくは怪異の生み出した境なのだろう。ならば、壊したって構わないだろう。
 そうして、駆けて、駆けて、駆けて。
 階段の踊り場でまた刺激するように、怪しい炎を飛ばし、燃やした。
 役目を引き継ぐように、黒子が『アバレロ』と囁いた。
 にぃ、と気持ち悪い笑みを浮かべた一輝は、黒子をターゲットに変える。
 びた、びた、びた、びたびた、びたびたびたびたびた。
 這いずる音が響く。廊下の照明が点滅した。
 黒子は抵抗する力を拳に込め、破壊の一撃をその身体へと埋め込んだ。
 ジョージの無慈悲な一撃が柘榴を少しずつ剥いでいく。
(俺に出来ることは、唯一つ。この拳に全力を乗せることだけだ。
 近づき、拳を打ち込む!
 怨霊だろうと、触れることが出来るなら、壊すだけだ!)
「逃がしはしないサ」
 奪う一撃。真っ直ぐな弾丸は一輝の腕と手足を貫いて、動きを止めた。
 血が吹きでる。
 青々とした血。赤い血は、もうない。
 そんな腕を、足を。貫いた。
「一撃をもって、息を吹き返す事なく、永遠の眠りを願ってネ」
 ただ。
 ただ、ジュルナットは、願った。
 その眠りが、安らかであるようにと。

「あ、ぁ、ァ、あ、アァァァ、アァ!!!!!!!!!!!!!!」

 心臓に根を張った、赤き柘榴。
 穿つ。
 その眠りに祝福を。

「おやすみ、一輝」
(絶対に、ここから逃しはしない。
 次の犠牲者を出しはしない。
 ――ここに救いなど無い。だが、矜持はある)

「最後の手向けだ。これ以上苦しまぬうちに送ってやる」

 破壊の。弱点を抉る、一撃。
 人間として残った心臓のみを残し、柘榴を砕く。

「……ま、しろ、だれか、ねら、っ、て、ま、す。たのみ、ます、あいつを、」
「……ああ」
 たどたどしい言葉で、赤色の警報を鳴らして。
 そうして一輝は、身体はそのままではあるが、人間として、死ぬ事が、できたのだった。
(あぁ。少年。お前は、よく頑張った)

●「ねえ、……一輝は、きっと、楽園で幸せに生きているわよね?」
 ジュルナットは、舞白の教会の近くまでやってきていた。
 本当なら持ち帰り、手厚く火葬をしたかったのだが、生憎それは叶いそうに無かった。
 ならば、せめて舞白の癒しの側で。永遠に優しい眠りを。そう考えて。
(おじいちゃん一人でもやるヨ、これはおじいちゃんの心掛けだからネ)
 そう、ジュルナットはひとりだった。
 舞白を誘うことは躊躇われた。あの子をこれ以上傷つけるのは、あまりにも惨く、躊躇われることだったから。
 土を掘り、遺体を埋め、黙祷を捧げる。
「……君が木星(もくじょう)で安らかに木となって眠る事を祈るヨ、赤坂クン。
これはおじいちゃんの部族の言い伝えさナ、受け取っておくレ」
 残った骨は僅かだった。その心臓に埋まっていた、鈍色の宝石を、ジュルナットは報告するために持ち帰るのだった。

●「ねえねえ、学園の七不思議って、知っているかしら?」
 警察への通報と諸々の説明を行い、再発防止への協力依頼を済ませた黒子。
「犯人像が不明のため、可能な限り『気づかれていない』よう処理をして頂いても構いませんか」
「ええ、勿論です」
 七不思議が悪さをする。伝承が動き出す。
 そう、それは必然に。
「舞白様、良ければ残りの七不思議も教えて頂けますか」
「……それはいいな。知っておいた方が、俺達もいいだろう」
「あら。黒子と、ジョージね。
 ……ななふしぎ。ええと、ね」
 指折り数えた舞白。その眦は僅かに赤く腫れていた。
 昨日の、今日。
 彼のことを忘れることなど、叶いそうにない。

「たしか、ね。
 ふたつめが、骨折り少女。
 みっつめは、時計塔の幽霊。
 よっつめは、夜迷い鏡。
 いつつめは、延々廊下。
 むっつめが、スピーカーの悪魔。
 ななつめが、青空キャンバス。
 ……だったと、思うけれど」
「そうか、ありがとうございます」
「少々興味が湧いてな」
「あと、そうだ……一輝様の、おかしい動向とかあったら、聞けるとうれしいです」
 思い出したように、ふと言葉を零した黒子。
 舞白の肩が小さく震えた。
 けれど、舞白は笑ってまた答えた。
「ええと、……ううん。
 たしか、告白されたーなんて、言っていたような気がするけれど――、」
「よっす舞白! だれこれ、友達?」
「あら、橙也! うん、そうよ。お友達」
「ったく、一輝も見つからねーんだからあんまりふらふらしてんなよ。
 あっ俺は門池 橙也(かどいけ だいや)っす。バスケ部っす」
「ねえ、一輝って最近何かあったかしら」
「ああー、なんか『赤い手紙』が届いたーなんて言ってたな……あ、俺もオレンジの手紙届いたんだけどさ」
「……え?」
「ああ、なんか『次はお前だ』なんて書いてあるけど……わけわかんねーよな」
 少し脅えたような素振りを見せるも、あまりかっこよくないと思ったのか『なんちゃって!』と笑った橙也。

 その背中を、誰かが見ていた。

成否

成功

状態異常

なし

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