《狐の嫁入り　異聞録拾壱》解放戦争

オープニング

■援軍到着
「やっと来たか！」
「おまたせしました。団長の指示により我ら200名これよりイグニス隊長の指揮下に加わります」
　レジスタンス救出から数日。兎人の協力もあり、彼らにも武器防具が行き渡ったところへ、城塞都市からの援軍も到着した。
　戦えるレジスタンスは30名。後20名程はいたのだが、戦えない獅子人を守る為に残る事になっている。合わせて狐人の騎士も20名残す約束になっていた。
「二人の結界があるから大丈夫なんだが、まあ保険ってやつだな」
「悪くないと思うよ。人心安定の為にもね」
　イグニスとコルス。二人の若き指揮官が帳にて作戦を練る。
「いよいよ獅子人の本拠地に殴り込みか……」
「奇襲できるような死角もなし、真っ向からの力勝負しかないね」
　敵の戦力がどれほどあるのかは不明だが、王さえ倒せば狂気の伝搬は薄れ残った獅子人達は正気を取り戻すだろう。
　そう予測を立てたのは、シルヴィアとメルティの魔術師２名だ。レジスタンス達からの証言より、原因はやはり王にあると睨んでいる。
「しかし、獅子人の王か……どんな人かは知ってるかい？」
「いや、俺も詳しくはないな。ただやはり、実力主義の種族の中で頭やってるだけあって強いとしか」
　肩をすくめそう応えるイグニス。どこか諦めた風な言い方とは裏腹に、顔は笑っている。
　勝ち目のない戦ならば、ここまで来る事はなかったからだ。
「頼りすぎは悪いとは思ってるんだけどな」
「それは僕もそうだよ」
　義兄弟が揃って笑う。彼らには素晴らしい『友人』がいるからだ。
　いつからか姿を見せ、困った事があれば力を貸してくれる。奇跡を見せてくれる友人達が。
「だからといって手は抜くつもりないけどな」
「勿論だよ」

■決戦の舞台へと
「皆、いつもの獣人達の世界の物語の、新たなページが開かれたわ」
　境界案内人のポルックスは、その可愛らしい顔で険しい表情を見せ、集ったイレギュラーズ達を見渡す。
　ついにこの日が来たとばかりに。
「依頼人はイグニスさん。……獅子人達の本拠地へ遂に攻め込むらしいわ」
　強靭な獅子人の戦士達が集う地。その頂点に立つ王。
　いかなる強敵かはわからないが……それでも。
「イレギュラーズに倒せない敵はいない。わよね」

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第2章

第2章 第1節

　イレギュラーズが協力する狐人の騎士とレジスタンス。そして後方援護を行う兎人達は精鋭を王の待つ塔へと送り出す。
　外では未だ戦闘が続くが、王さえ打ち倒せばこの戦争は終わるはず。その希望を胸に抱き、一行は階段を登っていく。

※第二章は獅子人の王とその側近二名との決戦になります。戦場となる王の間は超遠距離までの射程は利用できるくらいの広さがあります。
　味方NPCとして、イグニス、メルティ、アシュトン、他数名の狐人の騎士と獅子人のレジスタンスが参戦しています。兎人の援護による再生充填も有効のままです。
　外で他NPCが奮戦している間、敵増援は現れません。
　それでは皆様方、どうかご参加をよろしくお願いいたします。

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第2章 第2節

　獅子人の中に置いても一回り体躯に恵まれ、威風堂々としている者。玉座に腰かけ、狐人の騎士とレジスタンスを見下ろす者、それが王。
　『初日吊り候補』セリア＝ファンベル（p3p004040）は、彼の者を見つめ戦意と、一つの想いを口にする。
「仮にも脳筋たちの王様やってるなら、自分を操ろうとするやつくらい根性で追い出しなさいよ」
　油断なく王を目で捉え、その身体から湧き出る黒い影の正体を探る。もし、別の存在であったのならセリアの目ならば見分けがつく。影だけを倒せば、王は救えるはずだと信じて。
　しかし彼女の瞳には、王と影は同一……いや、『一つの存在しか感じ取れなかった』。
「……仕方ないわね。……助けられなかったら、ごめん」
　前へと歩み出る騎士、イグニスを盾に。最大の魔術である精神力の弾丸を作り上げる。小さな、謝罪と共に。
「ククク……来い、弱者共。相手してやろう」
　ゆっくりと玉座から立ち上がる王の姿は、威圧に溢れ。気圧されぬようにセリアは意識をしっかりと保つ。
「皆、前はお願い！」
　セリアの声に騎士とレジスタンスから「応！」と声が上がる。
「なんかこう、誇り的なので自分がおかしいかどうか気づきなさいよ！」
　悲痛な叫び声と共に、精神の弾丸は王へと向け飛び交う。
　それを避ける事もなく、その身で受け。なお嗤い続ける黒き影の王。まるでセリアの叫びなど、祈りなど聞いていないかのように。

成否

成功

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第2章 第3節

「なるほど、敵はたったの三名」
　『群鱗』只野・黒子（p3p008597）は騎士達の構える騎士の隙間から状況を観察し、思考を働かせる。こちらの数は十五を超える。それに対し相手は三。普通ならば負けはない戦いだ。
　普通ならば。
「油断無きように。相手はかなりの手練のはずです」
　戦功に溺れ一人で先走る事のないように、と声を張り上げる。こちらの連携が崩されれば一気に瓦解する恐れすらあると判断したのだ。
「いいねぇ、その才。俺の副官に欲しいくらいだ」
　王の振るう拳を盾で受け止めながら、イグニスが軽口を叩く。実際のところはそんなに余裕はないのだが、敢えて指揮官として余裕を見せ味方を鼓舞しているのだ。
　そんなイグニスに一つ、薄く笑みを浮かべてから黒子は魔術回路を起動させる。
「左の騎士、ニ歩下がって下さい」
　彼の言葉に従い、騎士が下がる。すると、彼らが相対していた側近の獅子人の足元が崩れ、煉瓦が砂と化し足を埋めていく。
「今です、かかってください！」
　再び騎士達が側近に襲いかかる。しかして、下半身が砂に埋れたとはいえ側近も簡単には崩れない。騎士の振るう槍を払い、剣を受け、なお砂から歩を進め立ち上がる。
　しかし。
「計算通りです」
　黒子が距離を詰めた。彼の狙いは足場を崩す事だけではなく、相手に連携をさせない事。その為に、一人に狙いを絞り攻勢をかけたのだ。
　ドン！　と大きな衝撃音と共に側近の身体が吹き飛ぶ。

成否

成功

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第2章 第4節

　獅子王は吼える。嗤う。挑み続ける騎士達を、レジスタンス達をその腕で殴りつけながら、狂気を振りまき続ける。
「ふうﾔﾚ、戦争ってのには早く終止符を打ちたいものだﾈ」
「同感だ。その為にも狂気を引っ剥がせば或いは……！」
　『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト（p3p007518）と『砲使い』三國・誠司（p3p008563）。得物は違えど二人の射手は、互いを一瞬見やり頷きあう。
　今、暴れる獅子王を押さえているのはイグニスだ。外から今なお響く臆病者のエールと、彼の妻たるメルティの癒やしの術で実力差を埋めて、立っている。
「イグニスｸﾝ、ちょっと踏ん張りなﾖ！」
　ジュルナットが叫びながら矢を番える。彼が得意とするのは、一瞬でニ矢放つ早打ち。
「巻き込んでしまったらごめんな！」
　大砲の弾を詰め込み、着火させながら誠司も叫ぶ。唸りを上げて砲が叫ぶ。
「いいから、早く打ちな！」
　イグニスが後ろを振り向かずに応える。彼らの事を信じているからだ。
　側近の一人が射手の邪魔をしようと走るが、そこへ割り込むはレジスタンスのアシュトン。横から思いっきり顔をぶん殴り吹き飛ばす。
　もうひとりの側近は先程轟音と共に壁まで飛ばされたのを確認している。狙うなら今しかない。
「いっくぜ！」
　豪快な炸裂音とは裏腹に、誠司の狙いは繊細で精密。彼が狙ったのは獅子王の足。
「温い！」
　放たれた砲弾を、あろうことか素手で弾く獅子王。しかし、誠司は怯まない。むしろ笑い返す。先程までの獅子王と同じように。
「そりゃそうさ。俺たちは一人じゃないんだからな！」
「こっちにもいるんﾀﾞﾖ！」
　時間差でニ矢を放つジュルナットの狙いは心臓。大きな剛矢が先に走り、一瞬後に小さな鋭矢が影となり飛ぶ。
「ちぃ！」
　身を捻るが、躱しきれない。ジュルナットの矢は肺に刺さる。一度崩れれば如何に強靭な肉体の持ち主とはいえ、崩れるのは早い。
「さっさと決めちゃいなさい！」
　同じ部屋にいる、一人の女性の声が響く。ジュルナットにとって聞き慣れた声だ。
「こちらはもう少ししかもたない」
　ピンチを伝えながらも声色を変えないのは、戦場を作り上げた男の声だ。その背を見つめ、誠司は応える。
「任せとけ！」
「任せなﾖ」
　二人の射手は王を獲物とみなし、王の身体に、背に宿る影を敵とみなし攻め立てる。
「お前が何の亡霊かは知らないけど……今を生きるやつらを、お前の犠牲なんかにさせない！」
　誠司の決意に応えるかのように、大砲は唸り声を上げ。
「何を思うてこんな混乱を起こしたのかは知る余地もないけど、それが友に仇なすのならおじいちゃんは許しはしないｻ」
　友を思うジュルナットの矢が、影を射抜いた。

成否

成功