シナリオ詳細
そうだお酒の話をしよう
オープニング
・尾佐家田伊耒の溜息
「ふむ……なかなかピンとくるものがないのぉ……」
テーブルの上に並べられた大量の新商品についての提案資料。
それのすべてに目を通しながら、尾佐家田酒造会長である尾佐家田伊耒は呟いた。
どれもしっかりと練られている素晴らしい案ばかりだが、今一つ従来の路線をなぞり過ぎて新鮮さが見受けられない。
社員たちの熱意は受け止めながらも、これではと伊耒はうむむと唸る。
「いかがされますか、会長」
真面目そうな秘書が伊耒の眉間に皺が寄ったのを見て声を掛けた。
心配そうな秘書を他所に、唸りだして約五分後ぽんと伊耒は手を打った。
「そうじゃ! わが社の酒と縁遠い者からアイデアを貰おう!」
どうしても社員の案ばかりでは煮詰まってしまう。
たまには純粋に酒が好きな者たちから話を聞いてみるのもよいだろうと、伊耒は考えた。
「知識がなくても好きなら構わん! すまんが予定を調整してくれるかのう?」
と伊耒は秘書にスケジュールを調整するように指示を出す。
その顔はとてもにこにことしていて、人の好さが滲み出て居る。
「かしこまりました。すぐに調整いたします。」
早速手帳に秘書はペンを走らせた。少人数なら無理ではなさそうだ。
「ありがとう。そうじゃ、お礼はそのお酒の試飲にしようかの」
楽しみじゃのうと伊耒は満面の笑みで、来客を待つことにした。
・そうだお酒の話をしよう
「なぁ、お前さん達酒は好きかい?」
お猪口と徳利を持ちながら、朧はあなた方に問いかける。
というか何ちゃっかりお酒飲んでるんだこの黒衣。
という至極まっとうなあなた方のツッコミを華麗にスルーして朧は続ける。
「お前さん達には、酒のアイデア出しも兼ねてその爺さんと話をしてやってほしいのよ」
老人の名前は、尾佐家田 伊耒。
尾佐家田酒造という会社の会長を務め、気のいいお爺さんだそうだ。
お礼にお酒を振舞ってくれるらしいとも朧は言う。
「もしお前さんが酒が苦手なら、こんな酒なら飲めるかもしれないって話をしてやればいいんじゃねぇかな」
好きなものは多いに越したことはないからねぇ。と呑気に酒を注ぎながら朧はあなた方を送り出した。
- そうだお酒の話をしよう完了
- NM名白
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年07月17日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
ここは尾佐家田グループの応接室。
空調が効いた快適な部屋で、イレギュラーズ達はそわそわと依頼人を待っていた。
「なんてこと。なんてことなの……こんな素敵な依頼があったなんて。
お酒を飲みながらお酒の話をして…? お酒をもらえる…?」
恋する乙女のような表情で立派な尻尾を躍らせているのは『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)である。
「ええ、ええ、お酒は良いものです。どこかの神も、ワインを嗜んでいたと聞きます」
目を閉じ祈りを捧げるように手を組んでいるのは『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)である。
一見清楚な修道女に見えるが、今回の依頼を聞いて駆け付けた生粋の酒好きである。
「酒は、いいもの、だ。果実酒の爽やかな味わいも、蒸留酒の焼けるような旨味も、どれも、素晴らしい。歴史と技術の、結晶、芸術品といっても、過言では、ない」
うんうんと腕を組み頷いているのは『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)である。
見た目は八、九つ位の幼女で不安になるが、実年齢は約十倍ほどあるから問題ない。
「ふふ!今日はよろしくね! 実は私はそこまでお酒には詳しくないんだけど、お酒好きな友人もいることだし後学の為に一生懸命知恵を絞るよ!」
みんなのおすすめも知れるし良い機会だね! と赤いポニーテールを揺らして無邪気に笑うのは『雷光・紫電一閃』マリア・レイシス(p3p006685)である。
お酒好きの友人で、橙の髪の修道女が一瞬皆の頭に過るがニコリと笑うだけに留めておいた。
そしてイレギュラーズが和気あいあいと今回の依頼について話していると、扉がガチャリと開く。
「お待たせしてしまい申し訳ございません。遠いところからよくぞお越しくださいました」
人の良さそうな笑みを浮かべて入ってきたのは、今回の依頼人尾佐家田伊耒その人である。ソファに腰かけた尾佐家田はエクスマリアを見て目を瞠った。
どうみたって孫くらいの女の子ではないか。
「お嬢さん、あの」
「ああ、マリアはこう見えてとっくの昔に成人済みだ。気にしないでくれ」
「ああ、そうでしたか! これは大変な失礼を……」
慌てて頭を下げる尾佐家田に気にするなと手を振り、エクスマリアは酒のプレゼンを始めた。
「百年にも満たぬ生だが、質も量も、それなり以上に嗜んできた自負は、ある。
マリアからの提案は、そうだな。薬膳酒で、どうだろう」
「ほう! 薬膳酒ですか!」
尾佐家田は目を輝かせ、さっそくメモを取り始めた。
「薬としての、効果の高い薬草や、果実、植物の根など……カンポウ、とも言うのだった、か?」
エクスマリアの提案はそれらを煎じるなり漬け込むなりで、健康維持にも、効果的な酒として出してはどうかというものであった。
日本では昔から『酒は百薬の長』と言われ、実際に薬膳酒も長い歴史を持っている。
「ああ、しかし漢方は苦手な方もいらっしゃいますな……」
「味や匂いへの影響は、他にも果汁等を混ぜれば、いい。醸造、蒸留、どちらの酒でも出来るはず、だ。」
なんと深い酒への理解、知識であろうか。
感動した尾佐家田は興奮冷めやらぬ様子でメモを取り続けていた。
「次はわたしかしら」
おっとりと耳を揺らしてミディーセラが語りだす。
「やっぱり甘くて…あまりしゅわしゅわしてなくて…ひんやり。そんなお酒がいいですねえ」
「なるほど、夏にぴったりですな!」
しかし、甘くて炭酸が入っていない冷たい酒なら既製品にもあるだろう。
ミディーセラはさらに続けた。
「きりっ、とした後味のお酒をちょっとだけ凍らせて飲んだり……しゃりしゃりした感触だとか、ちょっとずつしか飲めないぐらいの冷たさがおいしいのです」
「シャーベットのような、ということですかな?」
ええ、とミディーセラは尻尾をふるりと揺らす。
「果汁を凍らせたものをお酒にどぼんとするのもやってみたいですねえ。しゃくしゃくしていて、色んな味が楽しめて……」
混ぜてから全部凍らせてしまって、小さく丸めたものをデザートにするのもいいかもしれない。きっと、見た目も綺麗だろうとミディーセラははんなり微笑む。
あ、と何かに気づきミディーセラはこう締めくくった。
「……冷たいのばかり? 寒い季節なら暖かいお部屋で食べればいいでしょう。解決ですね」
炬燵でアイスならぬ、炬燵で氷酒。
うんうんと始終、尾佐家田は楽しそうに頷いていた。
「では、次はわたくしが」
美しい銀の髪を耳にかけ微笑みライは言う。
「果実を使用した味付けで……僅かに甘みを付けましょう。そこそこに炭酸を含めば、刺激的で爽快感のある飲み物になると思います」
「こちらも夏にぴったりですな」
「ええ、アルコールはやや強めに致しましょう、度数で言って十パーセント弱くらいでしょうか? 美味しさも重要ですが、飲みやすくて手っ取り早く酔えるお酒です」
「手っ取り早く酔える……?」
「美しさよりは、荒野を彷徨う戦士の心を守る泥臭いお酒……でしょうか?」
ライの提案は『安くてその範囲で出来るだけ美味しくて飲みやすくて酔える酒』
であった。
「飲んでいると、頭の中にある、生きるために生じる様々な問題が全て、ぼやっとモザイクがかるような……そんなイメージのお酒です」
「ふむ……?」
「このクソったれな世の中を一時的に誤魔化すにはそういう酒が必要で……こほん、けほん。
明日の活力の為に一度苦しみを忘れ楽しく過ごすことを、神はお許し下さるでしょうそんなお酒です」
え? 強くてゼロなお酒? いえいえ存じ上げませんね。ええ、ええ、本当に。
神に仕える方の提案されるお酒は奥が深いなあと尾佐家田は素直に感心した。
決して強くてゼロなお酒なお酒ではない。本当に。神に誓います。
「最後は私だね!」
よし、と気合を入れマリアは提案を開始する。
「私はウィスキーが好きなんだけど、ソーダで割ったり炭酸系の甘い飲み物で割ったら美味しいと思うんだ!」
「ウィスキーときましたか!」
「うん! 割る呑み方ならアルコールに弱い人も調整して呑めるし良いと思わないかい?」
たしかに酒が苦手な人でも飲みやすいというのは大事である。
そうして一つでも好きな酒ができれば、楽しみ、ひいては利益につながる。
「発酵が難しいそうなんだけど、ヨーグルトのお酒なんかは飲んだことがあるよ。
度数は割とあるんだけど、ヨーグルトのまろやかさと酸味甘味が生きていてとても美味しかった」
尾佐家田グループではヨーグルトの酒、リキュールはまだラインナップになかった。理由は開発が難しく、発酵のさせ方をミスすると瓶が割れてしまうからだ。
「でも尾佐家田会長ならきっとうまく作れるはずさ!」
「ありがとうございます。さっそく持ち帰って作らせましょう」
「あ、柿やキウイなんかのリキュールもとても美味しかったね……あれは苦手な子もくいくい飲んじゃうと思う! ちょっと危ないお酒だね」
「そうですな! 飲みすぎにも気を付けるようにと喚起もせねば」
酔いが回らない酒ほどつい飲みすぎてしまい危険なのである。
それを忘れてはいけない。
●
「今日はありがとうございました。こちらは約束のお酒でございます」
お気に召すものがあればよいのですがと、テーブルの上にずらっと並ぶのは様々な種類の酒瓶。
酒好きが見たら手を伸ばさずにはいられないお宝の山である。
「なるほど、良い酒が、揃っている、な。じっくり、楽しませて貰うと、しよう」
普段は果実酒や葡萄酒ばかりだが、エクスマリアの目に留まったのは日本酒や焼酎である。とくとくと試飲用のグラスに注いでぐいっと煽る。
「五臓六腑に染み渡るという、やつ、か。うむ、美味い」
どうやらお気に召したようだ。
テーブルに並んでいるのはイレギュラーズ達が提案した物の試作品もあり、ライはそれらに一通り手を伸ばした。
酒が好きという者たちが趣向を凝らした酒。美味しくないわけがない。
つい呑みすぎてしまいそうになるが、演技で取り繕った嘘が崩れてしまってはかなわない。
柔らかな微笑みを湛えながら、ライは帰った後一人で思う存分晩酌をしようと決めた。
「そうだなぁ……私はゆっくりウィスキーを呑もうかな!」
マリアが選んだのはやはり好きなウィスキー。
琥珀色が美しい酒をグラスに注いで、ゆっくりと飲み干す。
マリアは規律正しい真面目な軍人である。酒に呑まれるような真似はしない。
「皆も呑み過ぎには気を付けるんだよ? まぁ酔ったら介抱くらいしてあげるさ」
いつも呑み過ぎると口を抑えている友人の介抱にマリアは慣れていた。
「そうねえ……ひとくち飲むたびに色とか味が変わったりするお酒とかないかしら」
「でしたら、こちらはいかがでしょうか?」
尾佐家田がミディーセラに勧めたのは鮮やかな橙色が美しい酒であった。
一見するとよくある酒だがと、ミディーセラは酒を口に含んで舌で転がす。
柑橘系の味と甘みがなんとも爽やかで美味しい。
一口飲んでグラスの中に目をやると、鮮やかな橙色から淡い桃色へと変化していた。
「まぁ……!」
目で楽しんでからまた口に含むと、今度はほんのり苺の味がする。
酒の色に髪が変わる愛しい人を思い出し、ミディーセラは微笑んだ。
そして楽しい宴の時間は過ぎていく――。
「本当にありがとうございました。とても有意義な時間でした」
帰路に就くイレギュラーズに尾佐家田は好きな酒を土産に持たせてくれた。
「ぜひ、こちらをお持ち帰りいただき大切な方々とお飲みになってください。もちろん独り占めでもかまいませんぞ!」
はっはっはっと尾佐家田は朗らかに笑う。
その後イレギュラーズ達が提案した新商品は軒並み大ヒット。
尾佐家田グループはさらに勢いをのばしたのだとか。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
初めましての方は初めまして、白です。
夏は好きですが気圧の変化で頭が痛いこのころです。己気圧!!
今回はネタと悪乗りに全フリしたシナリオです。
戦闘は発生いたしません。
真面目にお酒を考えてもいいしそんな酒あるか?
というような物をアイデアとして出しても構いません。
楽しんだもの、考えたもの勝ちです!
余談ですが私は梅酒と獺祭が好きです。
以下詳細!
●目標
尾佐家田 伊耒にお酒のアイデアを出す。
●世界観
現代日本によく似た世界です。
尾佐家田 伊耒の管理する酒造の応接間で冷房の効いた快適な空間でお話をします。
終わった後はお礼として好きなお酒が飲めます。やったぜ。
●NPC
尾佐家田 伊耒(オサケダ・イスキ)
お酒と人の話を聞くことが大好きなおっとりとしたおじいちゃまです。
尾佐家田グループの会長も務めており、あなた方の話に興味津々です。
そんなお酒あるか? という内容でも決して馬鹿にせず真剣に聞いてくれます。
アイデア出しのお礼としてお酒を振舞ってくれるそうです。
●境界案内人
朧
ご指定がなければ登場しません。ご指名があればホイホイついていきます。
●サンプルプレイング
「お酒! 飲まずにはいられないわ!」
と、いうわけで私はお酒のアイデア出すわよ!
試飲で飲ませてもらえないかしら、えへへ。
日本酒をベースにフルーツの果汁を絞って華やかにしたものなんてどう?
最近暑いし、キンキンに冷やしてソーダとかで割ってもよくない!?
以上です。貴方にとって良き旅路になります様に。
それではいってらっしゃい!
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