PandoraPartyProject

シナリオ詳細

何度だって君のために星を描いた

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●星ひとつない空虚な夜に
 7月7日。七夕は何も、織姫と彦星のためだけにあるものじゃない。
 その日は誰もが夜空を見上げ、遥か彼方、天の川の輝きに願いを託し、思いをはせる。

 だからこの日は俺にとって、特別な大舞台なんだ。

 夜空というカンバスに、星を溶かした絵の具で描く芸術。

――星描き。この世界の人々は、俺の事をそう呼んでいる。

「……そう。この世界の星空は、貴方の手で作られているのね」
 あり得ない、なんて事はあり得ない。境界図書館から繋がる数多の異世界には、あらゆる不思議が詰まっている。
 我々が神秘的だと思う自然現象さえも、人為的に造れる世界があったとしてもおかしくない……と思っていても、いざ実物を見ると驚かずにはいられなかった。
「それで、今年の七夕はどんな星空を描くの? 星描きさん」
 夜空を泳ぐように飛びながら、視察に来ていた『境界案内人』ロベリア・カーネイジは問う。しかし、星描きは首を緩く振るのみで。
「やめたんだ、夜空を彩るのは。……もう、意味のない事だから」

 彼には愛する人がいた。
 この世界で一番美しい緑の丘で、全ての行く末を占う占星術師。
 彼女が幸せな未来を沢山示せるよう、星描きは夢中で毎晩夜空を描いて、描いて、また描いた。
 不治の病が彼女を蝕み、残された時間が少ない事を知っていたから。

「ふぅん……」
 事情を聞いたロベリアは、静かに目を伏せた。しかしそれは、悲恋を知ったが故の憐れみではなく。
「貴方の愛って、その程度ですのね」
「なッ……!」
 挑発めいた言葉を受けて、思わず眉を寄せる星描き。
 それを気にした様子もなく、加虐的な笑みでロベリアは続ける。
「では、今年の七夕の夜空――私がいただきますわぁ」
「そんな勝手な!?」
「あらあら。手放したのは貴方でしょう? 捨てる神あれば、拾う神がいても当然の事」
 薄く弧を描くロベリアの唇。それはまさに、アリスを弄ぶチェシャ猫の口元めいていた。

●キャンパスに輝きを
「――という訳で、今回は星空を描くお仕事よ。とっても素敵な依頼でしょう?」
 確かにロマンティックな依頼だと思ってましたよ! 事の顛末を聞くまではね。
 呆れ混じりの視線を感じても、ロベリア・カーネイジは歪みない。清々しいほど爽やかな笑顔で革表紙の洋書を掲げる。
「この異世界では、貴方達は自由に夜空を歩けるわ。お散歩がてら、夜空を彩って来なさいな。
 バケツいっぱいの絵の具をぶちまけて天の川を作るもよし、新しい星座を作るもよし。貴方の思う素敵な空をつくりなさい」
 皆の力が合わさって、素敵な七夕の星空が出来たなら――星描きも腕が疼くかもしれない。
「彼が描きたがったらどうするかって? そうね……貴方達の好きにして頂戴。物語が進みさえすれば、私はそれでいいもの」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 七夕に聖女が星空を強奪。しかも笑顔で。

●目標
 素敵な七夕の夜空をつくる

●場所
 異世界《ミルキーウェイ》の夜空です。丁度七夕の季節。
 地上で暮らす一般人は、今年も星描きが素敵な夜空を用意してくれると信じて疑わず、七夕を祝う準備を進めています。

●できる事
 オープニングでロベリアが述べた通り、この世界では特異運命座標は自由に夜空を歩いたり、飛び回る事ができます。
 星を溶かして作られた魔法の絵の具が用意されており、星と線を描いて好きな星座を作ったり、川のように流して天の川を作ったり。
 色々な発想で夜空を彩る事ができます。もちろん、持ち込んだアイテムやギフトの力で星ではないものを空に浮かべる事だって可能です。

●登場人物
『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
 "解放の聖女"の異名を持つ境界案内人。足を拘束具でガチガチに戒めている怪しいお姉さんです。
 星描きからサックリ夜空を奪ってきました。

『星描き』ミゲル
 この異世界で夜空を彩り続けてきた星描き。職人気質なのか素直になれないところがあり、ロベリアにゴリ押されても「勝手にしろ」と返してしまったそうです。

『占星術師』アイシャ
 今は亡き星見の乙女。生まれつき身体が弱かったそうで、長く生きられないながらも、ミゲルの描く星空を導に多くの幸福を占ったそうです。

 説明は以上となります。
 それでは、よい七夕を!

  • 何度だって君のために星を描いた完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月21日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

クランベル・リーン(p3p001350)
悪戯なメイド
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
スー・リソライト(p3p006924)
猫のワルツ
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨

リプレイ

●不思議な夜空
 日頃は冴えない村人の私も、休日くらいは息子にとって誇れる父親でありたい。
 初めて買ってもらった天体望遠鏡を覗き込み、目をきらきらと輝かせながら息子がはしゃぐ。
「パパ、お星さまがすっごく綺麗に見えるよ!」
 嗚呼、この笑顔のためなら私は努力を惜しまない。懐は痛んだが、完璧な父を演じる準備は万端だ。七夕の日に合わせ、あらゆる星の知識を頭に叩き込んできた。今ならどんな質問が来ようが言い淀まずに答えられる。

「あのお星さまはなぁに? 向こうの星座は?」
「息子よ、そんなに慌てなくてもお星様は逃げたりしな……逃げたーー!?」

"逃げた"は多少の語弊がある。正しくは舞い踊っているのだ。

「もっと遠くまで、もっと華やかにっ!」
 円を描いて緩急つけて、飛沫と足跡を夜空に残して!
 軽やかなステップを刻み、『猫のワルツ』スー・リソライト(p3p006924)が夜空を舞う。
 踊り子の衣装からケープまで豪快にバケツで絵の具をかぶり、飛び散る雫が夜空に散ってーー無作為に散りばめたそれは、あちらこちらで星へと変わり瞬きだした。
「なんだか、とっても贅沢な事をしてる気がするね、これっ!」
「確かに……素敵なものですねえ。こうして下から見上げるだけの夜空を自分で作れるだなんて」
 日頃からそんな事が出来る『星描き』がちょっとだけうらやましい。きらきら光る星だってわたしのものにしたいと、『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)は降り立った夜空を見渡す。
 箒を使わず飛ぶのだってそう。まさか歩けるなんて少し新鮮で……いつもより空が近くて。
 叶うならばこの"星を溶かした絵の具"を持ち帰りたいところだが、案内人曰く境界図書館へ戻る頃には紙切れへと変わってしまうらしい。
「……やっぱり境界は興味深いものばかりですこと」

「カッカッカッ! 異世界だからってこれほどスケールデカい依頼はそうねぇよ。
 夜空のキャンパスをごっそり奪って来るたぁ……派手にやってんな、ロべリアちゃん!」
 なぁ、と陽気に笑いながら『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)が話を振ると、名指しされた案内人は歪に笑む。
「買い被りですわぁ。私はただ欲しかっただけ」
「はいはい。そういう強引でSっぽいけど本当はミゲルって奴を立ち直らせる為に敢えて憎まれ役かってでる所、俺は好きだぜ?」
 悪女らしい彼女の振る舞いも馴染みの魔王には形無しだ。虚を突かれて固まったロベリアの横を、元気いっぱいに『悪戯なメイド』クランベル・リーン(p3p001350)がバケツを抱えて走り抜ける。
「お絵描きだー! お掃除の心配もなく好きに描いていいんだっ?」
 リーンには過去の記憶がない。けれど悲観する気もない。ミゲルの事は難しい話だけれど、お仕事なら全力で! 元気にやればきっとオッケー!
「張り切って満天の星空を作っちゃうよー! さあ、ありったけの絵の具を持ってきてー!!!」
 彼女のパワフルさに背中を押されて、特異運命座標が一人、また一人と集められた絵の具に手を伸ばす。夜も更けているけれど、七夕の夜はこれからだ!

●試行錯誤
「絵描きさんが少しでも何かを感じてもらえるような……と思ったのですが。
 描くのが楽しくてちょっとそれどころでは……いえ、好きにやっていた方が良い結果になるかもしれませんし。ええ」
 ひたすら夜に星を置いていたミディーセラが、段々と配置に拘りはじめる。描いた星を掌で握り込むと、角砂糖が崩れるかのように輪郭が薄れて消えた。
「消す事もできるのですね。直観的でこんなに自由に描けるなら……他の目的で絵の具を使うとどうなるのでしょう?」
 そっ、と虚空に滑らせる筆は力ある紋を描きーー。

 成程な? 好きなモノを描いていいってんなら話は早い。
「ボーン君、それなぁに?」
「よくぞ聞いてくれた。ヒナゲシ座にシオン座、そしてロべリア座だ!」
 スペース広めに太めの筆へ、星の絵の具をたっぷり付けて。後はイメージのままに直観で!
 バケツを抱えたままぽかーんとリーンが見上げる脇で、ボーンはドヤァと自慢げだ。
「カッカッカッ! 俺は音楽だけじゃなく美術の方でも才能があったみたいだな!」
「何かしら、このミミズが悶絶した痕みたいなの」
 轟沈。どうだと聞く前にロベリアの言葉が胸に刺さり、骨の顔を更に真っ白にして崩れ落ちる。
「これはこういうコンセプトで……」
「そう。それならまだ足りないわ」
 なんと、これ以上をお望みか……。シュンとするボーンの脇を通り過ぎるロベリア。その手には一本の筆が握られていて、三つの星座の間にひとつ大きな星を描ききる。
「どの星座も見守れる場所で。ボーン……貴方は輝いていて」

「うわわわっ!?」
 どどどど! 激しい音と共にペイント弾の散弾が乱れ飛び、踊っていたスーの耳元を掠める。
「撃て撃て撃て撃てー!」
「リーンさんっ、その散弾銃どこから……ひゃあ!?」
 べしゃり。一度当たれば後はもうなし崩し的に弾の雨をくらい、乾きはじめた身体は再び絵の具に塗れる。
「びっくりしたぁ……絵の具を被り直す手間がかからなくて良いけどっ」
「ごめんごめん、気合入りすぎちゃって!
 メイディッシュに負けないくらい、ぶっしゅぶっしゅ描いていこうかなってねー。
 ここで手を抜くと、メインの迫力に負けちゃうから!」
「メインの……迫力?」
「消費した弾薬(絵の具)の量で勝負が決まるんだよ!!!
 だんまくうすいよー! ってやつ!」
「そんな特殊ルールあったっけ!? ……あっ」
 えへんと腰に手をあて胸を反らしたリーン。しかしその真横から虹色の光の奔流が放たれて、彼女の身体を押し流していく。
 何事かとスーが光の発生源の方へ振り向けば、ミディーセラが魔法陣を描き終えた後だった。
「ああっ、すみませんリーンさん! 発動すると思っていなくて……」
「あっはは! 面白かった-!」
 絵の具でずぶ濡れになったリーンが遠くからてててと走って戻って来る。無事な様子にほっと息をつくミディーセラ。

「描き方も人それぞれで面白いねっ。ミゲルさんの描く夜空も見てみたかった所だけど……この調子で、もっと派手にやっちゃおう!」

 悲しいのは分かるけど。明けない夜はないし、暮れない朝も無いんだよ。
 俯いてるだけじゃ、せっかくの夜空も見えないじゃないっ?
 愛する人が愛した夜空を、無くしちゃうのはもったいないよ。

 濡れた身体で優雅なターン。軌跡がそのまま星となり、空をまたひとつ彩っていく。
「ダンスも芸術も、目指す所は同じだからね。
 夜空を見上げる人が、見るだけで元気になれるようにしたい。
 だからーーあの世からでも見えるくらいの、すっごい夜空を描いてあげないと、ねっ?」
「スーさん……」
「……なんちゃって!ガラにもなく真面目な事を言っちゃったかも!」
 恥ずかしさに耐え切れず、頬を桜色に染めながらスーが笑う。
「さ、一生忘れられないくらいの夜空にしちゃうぞっ!」
「よしっ! わたしもメインに向けて盛り上げていくよーっ!」
「そろそろ仕上げに入りましょうか」

●奇跡の空
「なっ、何だよこれぇーっ!?」
 性悪女に巻き上げられた夜の空を気にしない訳にもいかず、ミゲルが家の窓から七夕の夜空を見上げるとーーそこはもう、めちゃくちゃだった。
 まず右手に見えるのは……何なんだ? ドラゴンやら銃やら物騒な物が描かれていると思いきや、お料理やらおやつやら、食欲に偏った絵も描かれている。
……あと、心なしか猫が多い。
「思いつくのをいーっぱい。これはこれで楽しいよー」
 リーンの笑顔をミゲルが知る由もなかったが、驚きの声を上げるよりも先に別の方向から容赦のない光を浴びる。
「眩しっ!?」
 きらきらぴかぴか、夜空を埋め尽くすぐらい輝く星が所狭しと輝いている。それらは全てミディーセラの作品だ。
 さみしいだとか、孤独を感じるだとか、そんな事を感じさせないぐらいに、たくさん。
「占おうにも一苦労でしょうとも。……騒がしいとか言われそうですね。一度見たら二度目はもういいかな…みたいな感じの」
 でも、好き勝手にしてしまいますわ。だって、いつだって夜を彩ってきた方はお休みなのでしょう?

「ロマンティックなはずの、七夕の夜が……」
「よォ、ミゲルの旦那、こんな所で何やってるんだ?」
 突然後ろから声をかけられ、振り向くミゲル。そこに立っていたのは白骨の姿をした男で、声にならない悲鳴をあげる。
「旦那も星座とか描いてくれないか? 俺が描くと残念な物になるみたいでな、やっぱり本職の作品が見たいんだよ」
「あの女の差し金か?」
「カッカッカ! それもあるが俺の意思でもあるな。……まあ、なんだ。見てられなかったんだよ。
 俺も、理不尽な理由で愛する女を喪って……自暴自棄になっちまった時期があってな」
 その結果がこの様だと己を指さす。恐ろしい姿に変わり、娘との不和は続き。負った心の傷は未だ癒し尽くされる事はなくーー。
「あんたはこのままでいいのか? あんたが描いた夜空が好きだったんだろ、アンタの想い人は」
 特に今夜は思い出の夜だ。彼女と語りたい言葉があっただろう。ボーンの霊魂疎通を通し、夏風と共に聞こえた声は――紛れもなくアイシャのもので。
『見上げてください、ミゲル』
 促す声に導かれるまま彼が見上げた視線の先には、壮大な天の川。
「これはいわばメインディッシュ! しーっかり描かないとね!
 どーんと大きく、たいかんきょほーしゅぎってやつ!」
 ギフトで服の中から大量のバケツを出し、一斉に夜空を塗り替えるリーン。彼女の作品を目の前にして、ミゲルはようやく描く意味を見出した。この星々の輝きは、失いたくない彼女との絆――。

 星空へ優雅な旋律が響く。ボーンの奏でるヴァイオリンの音に癒されて、ミゲルはその手に絵筆を握り直した。

成否

成功

状態異常

なし

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