PandoraPartyProject

シナリオ詳細

走れ、真夏のアルタイル

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・ただ君に会いたくて
 星が綺麗な真夏の夜。
 約束の場所へと夜空は走った。
 間に合え、間に合えと。
 もう限界だと叫ぶ身体を無視して走った。
 途中で何度も転んだけれど、立ち上がって走った。
 約束したから。君に会いに行くって。
 そうしたら、君は手術を受けてくれるって言ったんだ。
 
 一緒に星を見て、君の手術が上手く行きますようにって星に願うんだ。
 夢中で走った、絶対にあの場所へ行かなくちゃ行けないんだ。
 だから走った、だから。

 ――だから夜空は気づかなかった。
 信号が赤に変わっていた事も。
 トラックが慌ててハンドルを切ろうとした事も。
 自分の体が宙に浮いて、アスファルトに叩き付けられたことも。

・守れなかった約束
「来てくれるって言ったのに」
 ずっと待っていたのに。
 瑠夏は病室の窓から星空を見上げた。
 元々手術なんて受けるつもりはなかったのだ。
 どうせ治りっこない、死ぬしか未来が用意されていないのに。
 生きていたっていい事なんてないのに。
 なのにあのお節介な幼馴染は受けろと言った。
 毎日の様に病室に来ては自分を励ました。

 そこからだんだん、彼に惹かれていった。
 もっと一緒に居たいと思うようになった。

 だから瑠夏は約束したのだ。
 手術の前の日に一緒に星を見てほしいと。そうしたら、頑張れる気がすると。
 夜空はそれこそ星空みたいに目を輝かせて何度も頷いた。
「必ず行くよ!約束だ!」
 と指切りをして、無邪気に笑ったのだ。
 だから待っていたのに。

「本当に、馬鹿みたい」

 異変に気づいた看護師が駆け込んだ時には瑠夏の姿はなく、彼女は病室の窓の下を覗き込んで悲鳴を上げた。

・星空の約束
「お前さんたち、物語の立役者になるつもりは無いかい」
 黒衣の境界案内人、『朧』はあなた方に向き直った。その片手には今しがた読み終えた本がある。
「とある、少年少女の約束の話さ。それをちょいと書き換えてほしいんだ」

 それはとある子供たちの約束の話。
 お互いを信じていたのに叶えられなかった残酷な約束の話だ。
「何、目的は簡単だ。少年……夜空を瑠夏って女の子の所に無事に送り届けて欲しいんだ」
 彼らに直接関わってもいいし、関わらなくてもいい。
「俺は子供が可哀想な事になるお話は苦手でねぇ……なに、ハッピーエンドに書き換えたってバチなんざ当たらねぇよ」

 じゃ、よろしくなと朧はあなた方に手を振った。

NMコメント

 初めましての方は初めまして。白(ハク)です。
 真夏の星空×叶えられなかった約束というテーマで書きたくなりました。
 戦闘は発生しません。
 戦闘が苦手だけどという方もお気軽に!

・目的
 夜空を瑠夏の元へ無事に送り届ける。
 
 瑠夏との約束を果たすため、夜空を無事に瑠夏の病室まで送り届けてください。
 夜空に直接会ってもいいし会わなくても構いません。
 ちなみに彼は周りが見えていないので何もしなければあなた方に気づくことはありません。

・世界観
 現代日本によく似た世界です。
 道路があって、信号があって、病院がある世界です。
 
・NPC
 夜空
 星と瑠夏が大好きな男の子です。
 瑠夏に何とか元気になってほしいと毎日病院に通い励まし続けました。
『手術の前の日に一緒に星空を見る』
 という約束を守るため一所懸命走り、病院にあと少しで着くというところで事故に遭い命を落とします。
 ちなみにあなた方がこの世界に降り立ち、何もしなければ約三十分後に夜空は命を落とします。

 瑠夏
 星と夜空が大好きな女の子です。
 生まれつき難病を抱えており、手術を控えていました。
 元々受ける気はありませんでしたが、夜空の懸命な励ましにより希望をもち彼に惹かれもっと一緒にいたいと思うようになりました。
『手術の前の日に一緒に星空を見る』
 という約束を信じ、病室で待っていましたが夜空が来なかったため絶望し窓から身を投げました。
 あなた方が何もしなければ約一時間後に彼女は身を投げます。

・備考
 夜空の不注意で事故が起きたため、トラックを止めても別の場所で事故に遭う可能性があります。

・プレイング例
 約束を守れなくて二人とも死んじゃうなんて……。
 この悲劇絶対に阻止しなくちゃ!
 
 まず、夜空君の居場所をサーチするよ!
 そんなに距離が離れてないなら、走れば見つかるはず!

 以上となります。
 どうか、二人の子供を救ってあげてください。 
 終了した後は二人と星を見てもいいかもしれませんね。

  • 走れ、真夏のアルタイル完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月12日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

只野・黒子(p3p008597)
群鱗
モルドレッド(p3p008649)
 
二(p3p008693)
もうまけない
木南・憂(p3p008714)
やまぶき

リプレイ

●果たせなかった約束
 ここは病院から少し離れた場所の市街地の屋根の上。
 二人の運命を変えるために待機する影が二つあった。

「約束が果たせない、というのはとても辛いものでございます」
 自身も数年前に妹を事故で亡くした小柄な少年、『やまぶき』木南・憂(p3p008714)が目を伏せ呟いた。
 その呟きに呼応し、大きな白い手がゆっくり揺れる。
 二(p3p008693)の背についている骨のような手であった。
「わざわい。ひとに、おこる。だめ。否定。ゆるさ、ない。阻止。
 にい、は、そのための。……その、ための?」
 目覚めた時に記憶にエラーを起こしてしまった二は自分が何者なのか分からない。
「……ともかく、こうどう。やれるだけ」
 だが自分が今やるべきことはわかる、と二は屋根から飛び降りた。
 
 一方こちらは、病院近くの木陰の中。
「おいおい、こんな簡単に魔法が使えるようになるとかマジでパネェなこの世界!」
 一人の青年がやけにテンションを上げて、迷惑にならない程度に叫んでいた。
『ラウンドナイツ』モルドレッド(p3p008649)である。

 だが彼は魔法が使える事実にテンションが上がっているだけではない。
 自らの能力を生かし、二人の子供を救う為に騎士の務めを果たしに来たのである。
「非科学的で原理の分からん謎技術だが……まっ、使えるもんは有り難く使わせてもらうとすっか」
 手袋を嵌めなおし、短く呪文を詠唱すると彼の周りに三体の真っ白な鳩が現れた。
 事前に黒子から知らされていた夜空の顔は脳内に叩き込んでいる。
 ただのギャグキャラと舐めてもらっては困るのだ。
「さ、頼むぜ!」
 主人の命令を聞き届けた鳩が二体、夜空を探しに羽搏く。
「お前はこっちな」
 もう一体の鳩が向かったのは、瑠夏の病室の窓であった。

●病室で待つ少女

 病室の窓から空を見上げる少女、瑠夏。
 夜空との約束の時間はもうすぐだが、本当に来てくれるのだろうか。
 うっかり忘れてしまっていたら? 手術を受けさせるためだけのでまかせだったら?
 病室の時計の針が進むたびに瑠夏の心に不安がじわりとインクの様に滲んでいく。
 瑠夏がちょうど、窓から時計に目を移したときに無機質な扉を叩く音がした。
 ナースコールは押していないはずだがと不思議に思っていると、扉が静かに開けられる。
 そこには『群鱗』只野・黒子(p3p008597)が立っていた。

「えっと……どなたですか?」
「いきなり押し掛け、申し訳ございません。私は只野黒子と申します」
 見知らぬ男性に怯える瑠夏の視線に気づき、黒子は視線を合わせる。
 そしてなるべく怖がらせないようにと優しい声で用件を伝えた。

「夜空様の到着が若干遅れているご様子ですので、お伝えに参りました」
「夜空が……? ほんとに、向かってるんですか?」
「はい、ご安心ください。ですからどうかもう少しお待ちいただけませんか」

 必ず夜空様は約束を果たしてくださいます。

 黒子は優しく、しかし断言した。彼の様子を見て瑠夏は小さく頷く。
 誰かはわからないが、この人は信用できると直感した。
 彼女の背後に見えた白い鳩を確認後、黒子は別件があると一礼をし、その場を去った。


●約束を果たすために
 憂と二に夜空発見の報せが届いたのは、この場所に降り立ち約十五分後のことであった。
 事前に事故に遭うのは病院周辺の信号の辺りと絞り込んでいた。
 さらに自宅から病院に向かうまでのルートを逆算、重点的に捜索したおかげで予想よりも早く探し出すことができたのである。

 そして、二の金の瞳が無我夢中で走る夜空を捉えた。
 夜空の進行方向に対し手を伸ばし彼を物理的に止める。
「ぶっ」
 いきなり目の前に現れた謎の巨大な手に夜空は盛大にぶつかる。
「え、何……? 手……?」
「うん、にい、手、のびる。おどろかせて、ごめん、なさい」
「う、うわあ!?」

 夜暗い場所で真っ白な巨大な骨の手に、面を付けた謎の存在。
 夜空が驚くのも無理はなかったため、二は素直に謝罪した。
 後から追いついた憂と黒子が合流する。

「驚かせてしまって申し訳ありません。俺は憂と申します」
「私は只野黒子と申します」
「あ、えっと、夜空です……」
 二人が頭を下げたのを見て慌てて夜空も頭を下げる。
 挨拶もそこそこに、二人は本題を切り出した。

「瑠夏様のところまで送り届けに参りました。一緒に行きましょう」
「え、瑠夏を知っているんですか!?」
「ええ、病室でずっとお待ちいただいているご様子でした」
 まさか知り合いの少女の名前が出てくるとは思わず、夜空は動揺した。
 困惑する夜空を優しく手で覆った二はゆっくりと語りかける。

「にいたち。あなたに、はなし。ある。……にいのめ。みて」
「目?」
 キインと頭の中に鋭い音がして、真直ぐな瞳が意識に行動を刷り込んでくる。
 一つは"視界に歩行者信号が入ったら其方を見る事"と。
 もう一つは――。

 無事に魔眼が働いたことを確認した二は覆っていた手を外す。
 そしてすぐにフォローができるように夜空の五メートル以内の距離を保ち歩き出した。

「たしかこの辺りは暗く見通しの悪い道が多い筈です。あちらの明るく広い道を使いましょう」
 黒子が掌で指したのは、本来夜空が通らなかった道であった。
 合流するまでの間に黒子は、病院周辺を散策しその際に車の通りが少なくより安全な道を発見していたのだ。
 万が一の時を考え自身が車道側を歩くのも忘れない。

「では、もし危険が迫ったら俺がお守り致します。これでも頑丈なのです」
 ニコリと憂が笑って見せれば、夜空は些か安堵した様子だった。

 二の掛けた暗示もあり『例』の赤に変わった信号の前でも、夜空は飛び出すことはなかった。
 そして目の前をトラックが何事もなく通り過ぎ、青信号に変わったのを確認してから歩き出す。
 徹底的な調査に、リスクヘッジ。十分すぎるほどの護衛。
 
 夜空が無事に病院についたのは必然であっただろう。


●果たされた約束
 黒子が去ってすぐに瑠夏は白い鳩に気が付いた。
「よう!ちょっとお話しないかい」
「……は?」
 気のせいだろうか、今確かに喋ったような気がした。
 正しくは頭の中に声が響いてきたような気がした。

 慌てて辺りを見渡すが静まり返った病室しかない。
 そっと視線を鳩に戻す。
「えっと、あなた、なの?」
「んあ? 俺? “読者(カミサマ)”みたいなもん、って言ったら信じるかい?」
 すっと深呼吸をして瑠夏は自分の頬を思いきり抓った。痛かった。
「まっ、いーじゃんいーじゃん。悩みがあるなら話してみなよ
 俺みたいな変な奴の方が逆に話しやすくない?」
 変なのっていう自覚はあるのかと思いつつ、知人に話すよりも話しやすいのは事実であった。瑠夏はぽつぽつと話し始める。

 病気の事、ずっとこの病室にいた事、人生を諦めていた事。夜空の事。
 ――一緒に生きたいと願った事。

 全く持って不思議だが、一度口に出すと自然と言葉が続いていった。
 彼女の想いを受け止めて鳩は語り掛ける。

「願いってのはさ、神頼みってだけの行為じゃないんだ。自身に誓いを立てる行為でもある。」
 一拍おいて鳩は続ける。

「俺は必ずやり遂げます、だから見守っててください……ってな」
「自分への誓い……」
 鳩は首を捻って、星空を見上げる。

「彼と一緒に星に願ってみな。『一緒に生きたい』ってよ。嬢ちゃん達の願いが、決意が本物なら、病なんかに負けはしねぇよ!」
「本当に……?」
 まだ不安そうな少女の様子に、男らしく鳩は続けた。

「なーに、鳥が喋るくらいだ! そんな奇跡もあったっていーじゃん!」
 えっへんと鳩胸を逸らした鳩に、くすりと瑠夏は笑みを零す。
 確かに鳩が喋るくらいなのだ。
 そんな奇跡があってもおかしくはないかもしれない。

「ありがとう、なんか元気出た」
「どういたしましてだ。それより、約束が果たされる時が来たみたいだぜ」

 鳩の言葉に瑠夏はゆっくりと振り返った。
 そこには夜空が立っていた。
 
「ほんとに、来てくれたの……?」
「だって約束したじゃん! まぁこの人達が連れてきてくれたんだけど……」
「この人達?」
「え……あ、あれ?」

 夜空が慌てて振り返ると、そこに特異運命座標達の姿は無かった。
 確かにさっきまで……しかし何故か姿や声が思い出せない。
 夏の夜が見せた幻覚だったのだろうか。

「私もさっき鳩とお喋りしたのよ」
「え、すごい! いいなぁ!」
「もういなくなっちゃったけどね」
「……ね。手術受けてくれる?」
 不安げな夜空の声に瑠夏は頷く。

「うん、夜空と一緒に生きたい」

 瑠夏と夜空は星に願う。
 お喋りな鳩はいつの間にか消えていた。
 ただ、満天の星空が広がり輝いているばかりであった。
 
 ――病院から遠く離れた何処かの場所。
 星空を見上げる特異運命座標達がいた。

「あすふぁると、というものは土と違って走りにくくて……ちょっと疲れたのであります……」
 固いコンクリートの感触に驚きつつ、酷使した脚はパンパンに張っていて憂は苦笑いをした。
 だが、二人の再開した時の笑顔を見て頑張ってよかったと心が温まった。
 手術が成功するようにと、これからも二人が仲良くありますようにと憂は願う。

「にい。ひと、には。異質。異物。異形。あまりに、無粋。いる。だめ」
 少し寂しげな眼をしていたが、二は自分が普通でないことはわきまえていた。
 だから、夜空に魔眼を使って『二と出会った事を忘れる』と暗示をかけたのだ。
「……それに。にい、しってる。こういうとき。じゃま、する。うまに、けられる。そっとする、が、いい」
 どこでそんな知識を付けたのかは不明だが二はよくわかっていた。
 同時に自分の記憶もいつかあの星々の様に輝きを取り戻す日が来るのだろうかと考えた。 

 走れ、真夏のアルタイル。
 真夏の夜空に輝く大鷲は今、運命を変えて約束を果たしたのだ。

成否

成功

状態異常

なし

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