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シナリオ詳細

<星芒のカンパネラ>死の商人と陰謀デビュタント

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死の商人と陰謀デビュタント
 この世界は、『プロキオン』が統べている。人類とよく似ていて見た目では区別が付かない。けれど嘗て人類は『プロキオン』を『モンスター』と呼び、戦争したのだ。

 人類に勝利したプロキオンは、人類の文化を大切にしている。例えば、『デビュタント』。彼らのデビュタントは数年に一度で、10歳~20歳の貴族の子ども達を主役にしたチャリティ舞踏会だ。
 会場は、中央星系<アヌサリー太陽系>の緑豊かな<惑星サン・ウェルノ>の都市内にある。
 暖かみのあるベージュの床、高潔な白に金装飾が華麗な壁や扉、シャンデリアは蕩けるように煌めく大粒の宝石塗れ。ダンスフロアに響くメロウな木管金管生演奏、円卓には豪勢なご馳走と大輪の薄紅薔薇飾り、椅子に落ち着く人々が入場する若い男女に微笑ましく拍手を送る。オートクチュールのドレスは白を基調として華やか且つ清純。頭にティアラを頂くのは、プロキオンの王女のみ。
 騎士にエスコートされて入場する王女ピエラは弟王子イルを意識する。数か月の間に王位継承を争うライバルとなった弟は、以前会ったイレギュラーズの話では悪意を持って何かするような性格ではないという。王女の視線が会場を彷徨う。そして、商人達の席でしばし止まった。

「ああ、大丈夫だろうか。心配だ」
 美術品を多く取り扱うグピル商会の跡取り息子であるロウィン・グピルは会場の隅で頭を抱えていた。隣では手袋を填めた手を落ち着きなく撫でる父レスタフ・グピルがいる。王妃から賜った指環を盗まれてしまい、手袋の下の指に指環がない。それが露見すればどうなってしまうだろう。きっと恐ろしい事になる。そんな予感がひしひしと足元から恐怖の波を寄せて全身を呑み込もうとしているようだった。
「おやグピルさん、顔色が優れないようですが如何なさいました?」
 同じテーブルを囲むロボット製造業のスペリオール・サイバネティクス・サービス社(略して3S社)のマルコ・モントゴメリーが口ひげを扱きながら心配そうに声をかける。

 内心では、嘲弄しながら。
(王女殿下には「レスタフ氏が指環を失くしたが、失くした事を隠している」と情報提供済だ。このデビュタントにてきっとレスタフの手袋の下を確認なさるだろう。
 そして、我輩の懐には王妃殿下からの檄文がある)
 最近になって玉座への意欲を見せた王子のために、王妃は実際に動いているのだ。「イル王子のために力を貸してほしい」と有力者に次々と檄文を送り、王子の支持者を増やしている。マルコはまだ返事をしていない。

 会場の隅でマルコの部下がドリンクを準備している。部下は、王室の覚えめでたいグピル商会に潜り込ませて3年働かせた商人だ。王女のグラスには毒を入れさせる。処置が速ければ死なない程度に強い毒だ。王女が毒を飲んでも飲まなくとも、部下は自害する予定である。

(万が一、王女が毒で死ねば王子の味方になろう)
 だが、王女は死なないだろう。マルコはそう思うのだ。何故なら、会場には有事に備えた警備兵と医師団が控えているからだ。口にする前に本人や護衛が気付くか、口にしてから医師が処置するか。どちらにせよ、王女が死ぬ可能性は低い。
(王女が死ななければ王妃の檄文を公開して王女暗殺を企てた王妃・王子には従えないと声高に非難し、王女に味方すると宣言しよう。そして、前々から反りが合わず気に入らなかったレスタフ・グピルを暗殺者を手配した犯人に仕立て上げるのだ)
 事前の情報提供もあり、王女はマルコを今後重用してくれるだろう。なにより、マルコが製造し商うものは『戦うための技術』である。人が乗り込んで操縦するパワードスーツ、人型ロボット兵器。人や動物の体を改造し、機械化するサイバネティクス技術。人工的に突然変異を起こして変異種を生みだす技術。

(もし王女が死なずに対立をますます深め、戦争が起きれば儲かるぞ)
 何を隠そう、先日の『王女暗殺未遂事件』もマルコが黒幕である。彼が指環を盗ませ、暗殺者に持たせたのだ。

 嗚、情勢を傾けんとする指し手此れに在り。
 死の商人は、ほくそ笑む。


●境界図書館に英雄集いて
「こんにちは、いつもお世話になっています」
 翠仙(スイセン)が本を手に頭を下げる。
「ご案内するのは、『星芒のカンパネラ』の世界です。この世界に関わるのは、今回で5回目でしょうか」
 翠仙はそう言って、『星芒のカンパネラ』に関しての過去のイレギュラーズの冒険譚と、冒険により変わった物語世界のあらすじを語った。

 『星芒のカンパネラ』。
 その世界は、プロキオンという種族が統べている。嘗て人類と争い、勝利した種族だ。
 プロキオン王には王女と王子がいる。
 覇気のない王子イルは、王から惑星を貰った。そして、イレギュラーズと会った。

 『コールド・スリープ・エラー』。
 惑星には実は滅んだはずの人類が残っていた。イレギュラーズは滅びかけた人類を救った。
 王子は自らの所有惑星に住む人類を知り、プロキオンの大人達から隠すことにした。そして、「自分が王になる」と言った。

 『王女暗殺未遂事件』。
 数か月後、王女の暗殺未遂事件が起きた。本来そこで命を散らすはずだった護衛騎士はイレギュラーズの活躍により助けられた。現場からは王妃が暗殺者の背後にいる事を思わせる指環が出た。
 王女はイレギュラーズの助言により王妃や弟を敵と決めつけず、慎重に判断すると告げた。そして、「弟が王位を狙おうとも、自分こそが王になるのだ」と意思を明らかにしたのだった。

 『シンクロトロン・マーケット』。
 辺境にある惑星の中、砂漠にあるオアシス内のマーケット会場でイレギュラーズは商人の息子フリン・アラー、ロウィン・グピルと出会った。グピル商会は王妃から賜った指環を盗まれてしまい、王女暗殺未遂事件の関与を疑われているという。

「今回は、『王女暗殺未遂事件』ならびに『シンクロトロン・マーケット』の翌月。デビュタントのエピソードです。
 プロキオン達が大勢集まるチャリティー舞踏会で、再び王女暗殺事件が起きようとしています。何もしないでいても暗殺は失敗します。けれど、事件をきっかけに王子派と王女派は対立を深め、数か月後には世界を二分しての戦争に発展してしまうのです」

 翠仙は「その戦争の最中、惑星カンパネラは巻き込まれて滅びてしまう」と告げた。そして、もう一度頭を下げたのだった。
「ボクは、皆さんを現地デビュタント会場に送ることができます。」
 現地での行動は全て自由です、翠仙はそう言った。

「皆さんが現地で行動した結果、この世界の未来がどうなるのか。どんな結果でも、ボクは、――」
 ――この日、宇宙世界の未来は貴方に託された。

NMコメント

 おはようございます。remoです。オープニングを読んでくださって有難うございます。今回は『星芒のカンパネラ』シリーズの続編です。シリーズものですが、初めてのご参加でも大丈夫です。

●世界観説明
 嘗て、蒼き星を起源とする『人類』は『プロキオン』という亜人種と宇宙を巡る戦争を繰り広げ、敗北しました。現在は『プロキオン』が星々を統べています。
 過去作品は
 『星芒のカンパネラ』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2296)、
 『コールド・スリープ・エラー』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2527)。
 『王女暗殺未遂事件』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3334)。
 『シンクロトロン・マーケット』(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3368)

 あらすじはオープニングで案内人が語っていた通りとなっております。ざっくり言うと「姉王女派と弟王子派で王位継承をめぐって戦争が起きそうだよ!」という情勢です。

 キャラクター様は「前回までのお話を報告書や案内人の説明で知っている」と言って行動してもよいですし、「知らない」と言っても大丈夫です。

●舞台
 舞踏会の会場です。

●主なNPC
 ・プロキオン王・王妃……王は中立、王妃は王子の味方です。
 ・姉王女……ピエラ。「幼い頃から努力してきた王位を今更譲りたくない」と思っています。
 ・弟王子……イル。「惑星カンパネラにいる人類を守るために王になりたい」と思っています。

 ・グピル商会の跡取り息子……ロウィン・グピル。『シンクロトロン・マーケット』でイレギュラーズに「指輪を盗まれてしまったんです」と相談をしました。

 ・グピル商会の会長……レスタフ・グピル。手袋の下に指環がないのを隠しています。
 ・3S社の社長……マルコ・モントゴメリー。デビュタントで陰謀を巡らせています。
 ・王女の護衛騎士……アレクセイ。何もしないでいるとグラスの毒を発見して騒ぎます。
 ・マルコの部下……グラスに毒を入れて王女に差し出そうとしています。

 ●遊び方
 「戦争が始まっちゃうかもしれない!」という情勢ですが、これをしないとだめ」という目的はありません。現地での行動は自由です。行動の結果、世界は戦争に進むかもしれませんし、戦争回避となるかもしれません。

 キャラクター様は、会場で自由に過ごすことができます。
 陰謀をまるっと放置して着飾ってダンスを楽しんだりご馳走を楽しむのもOKですし、陰謀に対抗するために、NPCに積極的に関わったりして現地の未来をぐいぐい引っ張っていくのも大歓迎です。
 NMはプレイヤー様の味方であり、ライブノベルに失敗はありません。思うまま、生きた世界を楽しんでください。

 説明は以上です!
 目を通してくださり、ありがとうございます。
 キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。

  • <星芒のカンパネラ>死の商人と陰謀デビュタント完了
  • NM名remo
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月08日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
リコシェット(p3p007871)
跳兎

リプレイ

●舞踏会
「アウローラちゃんの歌を聴いてみて!」
 舞踏会がざわりとする。アウローラ=エレットローネ(p3p007207)だ。
「まあ、何事ですの?」
 人々が華やかな少女に注目する。花弁めくスカートをひらりと翻し健康的な脚を魅せて踊る少女は存在自体が光り輝くようだった。
 舞踏会は初めて、とアウローラは頬を染める。花めいた香りが漂っている。人々の囁きが楽器の音と混ざり不思議な高揚を招く。その中に不穏な気配がある。
(アウローラちゃんにも何かできる事はあるのかな?)
 一声を紡ぐ時、自然と目蓋が一度降りた。再び目を開くと同時に高い音がポーンと出る。下腹から頭のてっぺんまで突き抜けるように、全身を楽器のようにして紡ぐ音は張りがある。可憐な歌声は小刻みなリズムを全身で刻みながら人々の心をしかと掴んで熱狂へと導かんと伸びる。心地よく伸びる声に人々は夢中になり、歌姫に手拍子と笑顔を送るのだった。


 王女の信を意味するリボンをつけたリコシェット(p3p007871)と黒を基調としたイブニングドレス姿の弓削 鶫(p3p002685)は、そんな会場にいた。
「鶫のドレス。とても綺麗だな!」
「ふふ、有難う御座います」
「私は、ちょっとこういうのは合わない気もするけど」
「リコさんも似合ってますよ。とても綺麗で可愛いです」
 リコシェットは眼を喜びに耀かせながら照れるように頬を染めた。若い男達が友に声を掛けようとするのを牽制し、鶫は王子へと挨拶する。
「初めまして、王子様。私は、弓削 鶫と申します。本日はリコさんのお供を務めさせて頂いています。以後、お見知り置きを」
 これには会場の人々も目を剥いた。王女から賜ったリボンを付けているのに、王子に声をかけたのだ!
「イル! 久しぶりだな。元気そうで良かった」
 王子は一瞬リボンに目を向けた。そのリボンは敵対の証ではないかと問うような眼であった。
「リコシェットさん。お久しぶりです。何故……?」
 王子を取り巻く人々の眼が痛い。鶫は友を守るように背筋を伸ばし、2人の会話を見守った。


 同時刻。商人達の間には緊張が走っていた。
「グピル氏。私を暗殺しようとした者は母の指輪を持っていたのです。手袋を外してくださらない?」
 王女がレスタフにそう言ったのだ。
「指輪はいかがなさったの?」
「で、殿下、話を聞いてください……」
「ええ。臣下がゆっくりお話を聞かせて頂くわ」
 レスタフが連行されてゆく。ロウィン青年は必死に王女に縋った。
「王女殿下、父は無実です! 指環は盗まれたのです、本当です、本当なのです。父は暗殺など企んでおりません!!」
 だが、彼を助ける者はなく、言葉を裏付けるものもない。
「信じてください! どうか信じてください、証拠も何もありませんが、嘘は言っていないんです!」
 マルコは「なんということだ。グピル商会が王女殿下の暗殺を企てるとは!」とおおいに嘆く演技をし、内心でゲラゲラと笑い転げた。


●毒
(いよいよか)
 毒入りグラスを持ったグピル商会の男が会場を歩く。目指す先は王女の――、
「あっ」
 嫋やかな手が横から伸びてグラスを奪った。一瞬の出来事だった。待ってください、と慌てて追い縋ると長い黒髪の美女が振り返る。鶫だ。潤むような紫水晶の瞳。
「あっ、姫君……」
 長い睫が震えるように伏せられる。足元がふらついたのだろうか、鶫は頼りなくよろめいた。咄嗟に男が手を差し出してその身を支えれば楚々とした仕草で鶫は華奢な肩を預け、ほっそりとした指を男の胸に添えて頼るように体温を寄せた。柔らかであたたかな体温。芳香が鼻を擽る。間近に上目遣いの眼が男を捉える。
「ふふ、ごめんなさい。少し酔っちゃって……」
 男は真っ赤になって何度も頷き、夢中で鶫を介抱した。そして、気付くと鶫と共に王子陣営の輪に加わっていた。
「"お待たせしました"、リコさん。どうぞ」
 鶫がグラスを友に差し出す。
「あっ!」
 それはいけない、と男が血相を変える。だが、リコシェットは止める間もなくグラスの中身を飲み干した。そして、平然と微笑んだ。毒への耐性があるのだ。
「イルがカンパネラを守りたいのは、知ってる。じゃあ、お姉さんが守りたいものは、何だろうな」
 男がハラハラと見守る中、王子と彼女らの話が続いている。
「私とイルがカンパネラで色々話しただろ? あんな風に、王子と姫じゃなくて、ただのイルとピエラ。家族として、正直に話をしてみるのも、いいと思う」
「家族として、ですか」
「私と鶫もそうだ。話そうと思わなかったら、友達になれなかったしな」
 友達、と呟いた王子がふと何かに惹かれたように輪の外に目を向けた。そして、ひどく驚いた顔をして突然駆けだした。


「ノリアさん!」


●『友達』
(もう……仲直りの機会は、ないのでしょうか……?)
 ノリア・ソーリア(p3p000062)は困惑に瞳を揺らしていた。それぞれが大勢の人に囲まれる王女と王子は、なにやら距離が遠く感じて近付き難い気がするのだった。
(……いいえ、まだ、あきらめるわけには、ゆきませんの。おふたりとも、わたしの、お友達なのですから……)
 しっぽが揺れれば、その美しさに周囲の視線は釘付けになった。
「あのしっぽをご覧になって」
「まあ、綺麗」

 王子が声に惹かれるように顔を向け、目を見開いた。

「ノリアさん!」
 王子が人の輪から飛び出して駆けてくる。周囲の人もノリアも驚きに目を丸くした。

「見つけた。……僕が、探すって言ったのを覚えていますか?」
 興奮に頬を紅くして王子がノリアの顔を覗き込む。真っ直ぐな目が喜びに満ちていた。ほんのちょっぴりの不安を滲ませて。
「……僕のこと、覚えていますか?」
「もちろんですの」
 ノリアが微笑めば、王子はパッと破顔した。
「会いたかったんです」
 その姿を視て人々が驚いている。王子はノリアを席にエスコートして自身は向かい合うように座った。
「カンパネラを、守るには、プロキオンの王様になる必要なんて、ありませんの……人間たちの生活さえ守れれば、十分なのですから」
 ノリアが王子に考えを語る。時を同じくして、王女もまたノリアからの書状に目を通していた。
『王位を、守るには、王子様と、戦う必要なんて、ありませんの。王子様には、守りたいものがあるだけなのですから、それを、認めてさしあげてしまえば、いいですの』
 思案する王女の耳に声が届く。
「戦争などというものは、行き詰った世界が止む無く行う最終手段です。回避できるのなら、そうすべきですよ」
 鶫の声だ。王女はそっと目を向けて、頷いた。


「イル。話をしましょう」
「姉上。僕も話がしたいです」

 姉弟が互いの部下を引き連れてゆっくりと近づいた。一つの卓を囲み、2人は微笑んだ。瞳の色が酷似している事に互いに初めて気づいたような微笑みだった。

「私達は争う必要があるかしら」
 姉がぽつりと言った。弟は目を瞬かせた。それが星の瞬きのようで、姉は好ましく感じた。
「僕もそう思っていたところです、姉上」
 幼いながらも賢さを感じさせる声だった。姉はますます弟を気に入った。
「気が合うわね」
「――家族ですから」
「イル、猫は好きかしら。後日、猫を愛でながらたくさんお話をしましょう」
 弟は姉の目を見て嬉しそうに頷いた。姉弟はその日、初めて互いを心通わせられる存在だと感じたのであった。


●天秤
「戦争なんてくだらない。旅人に聞いたサバイバルゲームのほうが楽しいぞ」
「それは何です? 教えてください」
 王子が悪戯を共有する子どものような顔でリコシェットに話をせがんでいる。鶫は保護者のように2人に笑顔を向け、王子に幾つか今後に備えた助言をしたのだった。


 マルコは王妃からの手紙を王女の目の前で破り、深く頭を下げた。
「我が社はピエラ王女殿下に忠誠を誓います」
 王女はマルコに信頼の眼差しを向けた。
「私は有能な者を重用する主義なの。今後とも頼りにさせて頂くわ」
「光栄です、殿下!」


 ――ら、ら、ら……♪

 会場にアウローラの歌声が響いている。歌を耳に、ロウィンは身を丸めて身を震わせていた。
「ゆ、許さない。父を、グピル商会を陥れた奴。許さない……」
 古参の商会員が耳打ちする。
「坊ちゃん、商会はもうおしまいです。数日のうちにわしらは全宇宙に大罪人と知られ、会長は間違いなく処刑。下手すれば貴方や母君も連座となりましょう。何処か辺境星系に逃れ身を隠しましょう。すぐに。今すぐに!」


 舞踏会が終わる頃、王が歌姫に声をかけた。
「其方の歌は見事であった」
「アウローラちゃんは、少しでも何か悩んでいる事があるならちょっとでも忘れて楽しんでもらえたらいいなと思って歌ったんだよ」
「ははは、そうか」
 王はすっかり歌姫を気に入り、別室に招いて果物や甘物を振舞った。
「王様、アウローラちゃんを無礼と怒ったりしないんだね」
「其方は自由な鳥のようなものであろう? 咎めたりはせぬ。好きに囀るがよい」
 アウローラは許しを得て、王の耳にマルコの真実を届かせた。
「証拠はないんだけど」
「其方は嘘をつくような娘には見えぬ。娘に仕える商人マルコについては、心に留めて置こう。今すぐ介入することはないが」
 王は顎に手をやり思案する。王妃が王子に肩入れしていたのは事実なのだ。冤罪だが、グピル商会を黒幕にするのは王にも利があった。王妃を窘めて大人しくさせ、王位継承の天秤を再び王女に傾け直すことができるのだ。

(冤罪であるグピル商会は哀れではあるが、犠牲になって貰おう)
「歌姫よ、我が子らが争う未来は回避できる。安心せよ」
 王は優しく微笑んだ。
 歌姫は喜び、王のためにもう一曲を歌い捧げた。


 天秤は傾けり。
 その日、グピル商会が破滅した。
 王女と王子の距離が縮まった。
 王女は商人マルコを臣下に迎え、王は暗躍する王妃を窘めて歌を楽しんだ。
 歴史書にはかく綴られき。

成否

成功

状態異常

なし

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