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シナリオ詳細

さよなら、ブラッディ・メアリー

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『赤い花嫁』
 「ねぇ知ってる? 絶対に告白が成功する恋のおまじない」
 深夜零時に鏡の前で三回『ブラッディ・メアリー』って唱えるの。
 そうしたら、赤いウエディングドレスの花嫁さんが現れて、恋を叶えてくれるんだって――。

 ずり、ずりと何かを引きずる音がする。
 物陰に隠れた女は必死に息を殺し、がたがたと震える身体を抑え込んだ。
 なんでこんなことになってしまったのだろうか。
 『赤い花嫁』の噂を聞いて、あの人に告白するつもりだったのに。
 たとえ、ただの噂だって、告白する勇気をもらうはずだったのに。

「……ア、アア……ドコ、ドコナノ……」
「……っ!」
 声がした。すぐ近くに来ているようだ。
 心臓が早鐘を打ち、脳内にはけたたましく生存本能のサイレンがなる。
 逃げなくちゃ、あの化け物がこちらに気づく前に。
 今ならばまだ気づかれていない。幸い出口はすぐそこだ。
 扉の取っ手に手を駆けて、あとは一目散に逃げだすだけの筈だった。

 視界の端に過る赤。激痛。
 世界はこんなにもゆっくりだっただろうか。
 前に進みたかった筈の身体は後ろに倒れていく。

 ああ、私死ぬんだ。まだ、好きだって言えてないのに。
 こんなことなら、振られてでも自分の言葉で言えば良かったな。

 最期に女が見たのは、真っ赤に染まったボロボロのウエディングドレスでわらう花嫁だった。

●『血まみれの花嫁』
「ブラッディ・メアリーって知ってるかい」
 片手で頁をめくりながら、朧は特異運命座標(イレギュラーズ)に問いかけた。
 面布で表情は見えないが、声色から決して遊びで聞いているのではないと伝わる。

 ブラッディ・メアリーとは、とある世界では有名な都市伝説である。
 深夜零時、三回彼女の名前を唱えると姿を現し恋を叶えてくれる。
 その世界の恋する乙女の間では、彼女の噂を知らぬ者はいないだろう。

「ところが実際はそんなロマンチックなモノじゃないのさ」
 朧は、本を閉じ特異運命座標に向き直る。
「元々はその名の通り『血まみれの花嫁』悪霊だ。それが何の悪戯か恋の女神みたいに伝わっちまった」
 中には語り継がれていくうちにその在り方を変える妖怪や霊などもいるが……。

 彼女は変われなかったらしい。

「質の悪いことに、生還者がいないせいで本当は恐ろしい化け物だってことが伝わらねえみたいでねぇ……悪いんだが、血まみれの花嫁さんをなんとかしてやってくれねぇか?」
 朧は一つ溜息をついた。

「なに、もしお前さんたちが殺されてもすぐにこっちに戻ってくるようになっているから安心しな」
 何を安心しろというのだと、恨めし気な目線を受け流し朧はあなた方を送り出した。





 

NMコメント

 初めましての方は初めまして。白(ハク)です。
 六月なので私も結婚にかこつけた花嫁さんのシナリオ出したいと思いました!
 なのにふとホラーっぽい何かを書きたくなってこうなりました。なんでや。
 ともあれ、今回の依頼の内容を記します。

●目的 
 ブラッディ・メアリーを無力化する。

 幸せになれなかった花嫁の成れの果て。悪霊です。
 本来は名前通り『血まみれの花嫁』という恐ろしい伝説で伝わっていたはずなのに、いつからか『赤いウエディングドレスの花嫁』と恋する乙女の守り神的な存在に伝わっていました。
 しかし彼女は在り方を変えられず、伝説を信じ呼び出した女性たちを惨殺しています。
 主な攻撃方法は大型の鉈での切り付けですがさほど命中はありません。
 動きも素早くはなく、回避も低いです。が、殴られるとめちゃくちゃ痛いです。
 なお、プレイング次第では攻撃以外の無力化もできるかもしれません。
 
●場所
 深夜零時、鏡の前です。『ブラッディ・メアリー』とどなたかが三回唱えるまでは彼女は現れません。
 全員がその場にいても構わないし、一人だけでも構いません。

●プレイング例
 血まみれの花嫁ねぇ、ちょっとかわいそうだけどさっさと倒しちゃしましょ。
 物陰に隠れて待機。彼女が姿を見せたら奇襲攻撃をしかけるわ。

 こんな感じです。
 それではご参加お待ちしております。







 

  • さよなら、ブラッディ・メアリー完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月05日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

只野・黒子(p3p008597)
群鱗
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛

リプレイ


「鏡の前で三回、ブラッディ・メアリー……今更ですが、深夜に唱えるには割りと不穏なのでは?」
 その手に、カサブランカのブーケを持ちながら橋場・ステラ(p3p008617)は苦笑いした。
 人に危害を加えるのならば、打ち倒すのみと言いたい所だが『可能性が有る』のならば、何とかしたいでとステラは考えていた。
 都市伝説と聞いたときはどうしたものかと考えたが、やれるだけのことはやってみたい。
 ただ何もせず打ち倒すだけというのあまりにも虚しい。
 目の前の鏡と仲間の様子を伺いながら不意打ちを警戒した。

「ここの血まみれの花嫁とやらは本来の性質とは真逆の概念がついてしまったんだね。ふふ、ボクとよく似ているじゃないか」
 ステラの様子に注視しながら『流離の旅人』ラムダ・アイリス(p3p008609)は物陰で気配を殺していた。自分にも不吉の月のフォークロア……殺人鬼の噂が付き纏っている。
「失礼だよねー。いや確かにちょっとは事件に介入した覚えはあるけど」
「人とは噂が好きな生き物ですからね」
 柔和な笑みを浮かべ、謙虚に答えたのは『群鱗』只野・黒子(p3p008597)だった。
 文字通りの『その他大勢人生』を歩んできた彼にとって、人が根も葉もない噂を流すのも踊らされるるのは珍しいことではない。だから、今回の事件についても理解できないわけではなかった。
「ですが、告白の勝算を他者に求める、というのは理解に苦しみます」
 反対に首を傾げ理解に苦しむと断言したのは『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)である。
 世間一般が言う『愛』があまり理解できない彼は、何故犠牲者たちが他者に縋ったのか解らなかった。だが、理解できないことと役目を放棄することは違うのだと己の手袋を嵌めなおす。
 ブラッドの役目はメアリーへの意志の疎通を図ることだった。

 そして、仲間の準備が整ったのを確認し、ステラは鏡に向き直る。
「ブラッディ・メアリー ブラッディ・メアリー」
 ブラッディ・メアリー。
 三回目の名前を唱えた瞬間、鏡の中心が渦を描くように歪みだす。
 何かを求める左手が、血で錆びついた鉈が順番に現れ、最後にベールに隠された頭が出てきた。
 破れたベールから覗く口元はにんまりと弧を描いている。
 純白だったドレスは血に染まり、なるほど真っ赤なウエディングドレスなのも頷けた。

 ――ブラッディ・メアリーが姿を現した。
 

 今宵の獲物はこいつかと、目の前のステラに目を付けたメアリーは早速狩りを開始しようとした。
 だが――。
「悪い行いの前に花嫁も悪霊も関係ありません」
 メアリーの行動を阻害する様に、断固とした意志を伴った声がメアリーに直接響く。
「……!?」
 ステラに向けられていた目が、声の方を見た。
 コツコツと革靴を床に叩きつけながら、ブラッドはメアリーをまっすぐ捉えた。
「ブラッド様」
 ステラをすぐに庇える位置まで移動した黒子がブラッドに合図をする。ブラッドはそれに頷き返した。

 事前に黒子はもしメアリーと意思疎通ができそうなら来歴の有無と詳細、敵意の有無を確認してほしいと、ブラッドに頼んでいた。
 敵意の有無はこの凶行が別の『ブラッディ・メアリー』によるものではないかと警戒した為だ。
 そして未練があれば、それを疑似的に叶えられないかと黒子は考えたのであった。
「メアリーといいましたね。君は何故こんな事を?」
 自分に怯えもせず、むしろ自分を深堀してくるブラッドにメアリーは後退る。
 その様子を見て、ブラッドは『意思の疎通ができる』と判断した。
「もし、君が幸せになれなかった未練から悪霊になったのなら。我々は君を救うことに尽力します」
 決して酔狂で言ってるのではなく、真面目にブラッドは説いた。
 この男は何を言っている?
 メアリーがいつもと何かが違うと気づいたのは、ステラが純白のカサブランカの花束と、シルバーの小さなリングを持っている事を確認したからだ。
 メアリーは思わず己の左手を見て、『探していた物』を思い出した。
「ア……ア……アッタ……」

 ――鉈が床に落ち、無機質な音が響いた。

「へぇ……?」
 敵意の消失を感じ取ったラムダが物陰から姿を現す。
 仲間が事を為すまでは、見守るつもりであったし特に反対はしなかったが、ラムダは戦闘以外で化け物を無力化できるのかと懐疑的であった。
 だが現に、あの花嫁は敵意を無くし固まっている。
 それどころかどこか嬉しそうに花束と指輪を見つめているではないか。
 ひゅうと、ラムダは口笛を吹いた。
 メアリーはそっと目を閉じると、ラムダたちの脳内に直接イメージを伝えてきた。


 美しい式場に鳴り響く祝福の鐘。
 多くの人達に見守られながら、花嫁はその時を待っていた。
 目の前にいる人が、花嫁の華奢な左手を手に取った。
 緊張しながら、その様子を見つめていたその時だった。
 突然の悲鳴。乱暴に開けられた扉から銃を持った男たちが乗り込んできた。
 最初は、親友が。次に恩師が、両親が撃たれた。
 そして、目の前の共に幸せになるはずだった人が撃たれた。
 彼の血が、純白のウエディングドレスを真っ赤に染め上げた。
 下卑た笑い声を上げながら、男どもは泣き叫ぶ花嫁の手をつかんで連れ去った。
 唯、式場に残された持ち主を喪った指輪だけが証人であった。

 彼女が、メアリーが『ブラッディ・メアリー』になったのはずっと昔のことだ。
 最初は悲劇的な花嫁として伝わっていた話が、時が経つごとに恐ろしい化け物の話として伝わっていった。それでもまだ眠ることができた。呼び出されることなんて早々無かったから。
 だが血まみれの花嫁は赤いウエディングドレスの花嫁に変わり、あまつさえ恋を叶えてくれる女神のような存在へと変わってしまった。メアリーは変われなかった。

 自分は幸せになれなかったのに、何故叶えてもらえるなどと。
 その癖、無理やり起こされ、いざ現れると目の前の女どもは青ざめながら、悲鳴をあげるのだ。
 妬ましかった、悲しかった。
 だから、同じ様に血塗れにしてやろうと鉈を振りかざした。

「なるほどね」
 イメージを受け取り、来歴を知ったラムダは呟いた。
「人を害為す存在と定義されているのに、眠っている所を都合で勝手に呼び出されるのは同情するけどね」
 彼女の気持ちを一部理解し、同情したうえでラムダは続ける。
「他者を巻き込んだ時点で君はやりすぎだよ」
 どれだけ悲劇的であっても何の罪もない女性たちを手に掛けた事への言い訳などにならないのだ。メアリーは力なく顔を伏せる。血まみれの花嫁と呼ばれた恐ろしい化け物の面影はもはやなかった。その様子を見て、ステラがとりあえずと声を掛ける。
 
「まずはこれを、花嫁さんにはブーケがないとですよね」
 カサブランカの花束がメアリーに渡される。おずおずとメアリーは花束を腕に抱いた。
「指輪を探していたんですね。同性の拙からで申し訳ないのですが」
 ステラはメアリーの血で汚れた左手を手に取り、小枝のような薬指に指輪をゆっくりと嵌めた。
 それをメアリーはじっと見つめている。
 ちらりとステラがメアリーの顔を見るとどこか幸せそうな表情に見えた。
 きっと、あの日の人生で一番幸せだった瞬間と重なっているのだろうとステラは思った。

「『灰は灰に、塵は塵に、土は土に』死人は死人らしく、未練がましくいつまでも現世にとどまるものではないものだよ?」
 言葉とは裏腹に、ラムダは悪戯っ子のような笑みを見せている。
「ええ、俺達が君と犠牲者を弔いましょう。しっかりと反省してください」
 そうすればきっと君は変われるでしょう。
 憐憫も同情もないし理解もできないが、魂を眠らせるのは己が役目だとブラッドは判っていた。
 
「さっさと来世也に逝くんだね。まったく、もう手間取らせないでね?」
 せめて花嫁として眠らせてやりたいと、内心密かに思いながらラムダは、メアリーを振り返った。
 メアリーはただ嬉しそうに微笑み、無邪気に頷いた。
 簡素だが丁寧に作られた墓には、あらかじめ買い込んでおいた花をたくさん飾ってやった。

「さ、やっと解放されるときですよ」
 じっと墓を作る様を眺めていたメアリーを墓までステラは連れて行った。
 簡単なお墓で申し訳ないけれどと、断ってステラは続ける。
「今度は、たくさん人の役に立って幸せになってくださいね」
 幸せになってと言われたメアリーはひとつ頷いた。

 光の粒子に包まれたメアリーの笑顔は、化け物ではなく生前の幸せな花嫁の笑顔だった。
 ありがとうと美しい声が聞こえた気がして、彼女は目尻に浮かんだ涙を拭う。
 その左手の薬指には、ようやく持ち主を見つけた指輪が誇らしげに輝いていた。
  
「さて、まだやることがありますね」
 光に包まれたメアリーを見送った後、黒子はペンを執った。
 一度広まった噂を完全に無かったことにするのは難しい。
 ならば今ある噂に付け足して、無害化されるパターンを作ればよいのだと黒子は考えた。
 紙に今までの噂を書きこみ、そして新たな要素を書き加える。
「今度はきっと、幸せになれますよ」
 そうして新しくなった噂を紙飛行機にして、朝日が差し込む窓から放った。
 

「ねぇ知ってる? 絶対に告白が成功する恋のおまじない」
 深夜零時に鏡の前で三回『ブラッディ・メアリー』って唱えるの。
 そうしたら、赤いウエディングドレスの花嫁さんが現れて、恋を叶えてくれるんだって。
 ただ何も持っていかないと『血まみれの花嫁』に変わっちゃうの。
 だから、白いカサブランカの花を一輪と玩具でもいいから指輪を持っていくの。
 そうしたら、ドレスが白に変わってアドバイスをくれるんだって!

 この噂が広がった後、恋を成就させる乙女たちが増えたという。
 そして、彼女たちはみなこう答えるのだ。
 『メアリー』のおかげだと――。







成否

成功

状態異常

なし

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