シナリオ詳細
ドラゴン・ハント
オープニング
●生まれたての仔山羊のようにいたいけな彼
彼が生まれたのは、ダンジョンの最奥だった。
芽生えたての自我が認識したのは、背が固い鱗に覆われている事。肉は分厚く、手足や尾は太い。どのくらい自分の手足や尾が立派か、比較する対象を彼は知らなかった。そのダンジョンは他にモンスターがいなかったから。
彼は、甘えるように喉を鳴らした。応える聲はなかった。
彼は、咆哮した。応える者はなかった。
彼は、空腹を感じた。
長い通路を歩いた。食べるものは何もなかった。
幅広の階段を登った。途中で背に生えた翼を羽搏かせると、足を使わず飛翔できることがわかった。
ふと思いついて顎を上げ、腹からせり上がる熱を喉に溜め、吐いた。炎の塊が飛び出て直線上に迸る灼熱のブレスとなった。壁や天井の一部が焼かれ、溶け、破壊された。尾を奮い、爪を暴れさせれば壁がガラガラと壊れた。
「くるるるる!!」
彼はそうやってダンジョンを破壊しながら上に登っていった。
そして外の世界に出ると、食べ物も子分も沢山見付けられた。彼は、自分が強い生き物なのだと識った。
空は澄み渡り、青く広く果てが無い。白い雲は儚く清らかで、流れる様は悠然としていた。眼前に広がる大陸には豊かな緑と生命が溢れていた。
流れる清冽なる川のせせらぎ、
大地揺らし駆ける獣達やモンスター、
村や町をつくり暮らす人間達。
――思った。
「この世界は俺様のものだ!」
●彼は、ドラゴンだったのです。
「森の中で、エルフ達が精霊術や弓や細剣を手に必死に応戦しています。モンスターの群れが村を襲ってきたのです。
エルフ達がなんとか撃退し続けていたのは、スライム、ゴブリン、オークといったモンスターの群れ。健闘の甲斐あり、モンスターは数を減らしていました。
しかし、彼らの森に王手をかけたのは悪しきドラゴン。
ドラゴンは名を『シハーブ』といいます。彼はダンジョンを出て以来、モンスター達を次々と力で屈服させ、自らの配下にしてきました。
この時、彼は邪悪な瞳にぎらぎらと滾らせて、森に向けて言いました。
エルフ語です。
『エルフの姫君を我がいけにえとせよ、そしてエルフ族はドラゴンの軍に下るのだ。さもなくば森ごと焼き払ってしまおう』」
本のエピソードを読み上げて、案内人である翠仙(すいせん)が微笑んだ。
「エルフ族は姫を差し出さず、戦う道を選びます。そして、全滅してしまいます。ボク、この物語に出てくるエルフの皆さんが可哀想で……。
ですが、皆さんは、この未来を簡単に変える力をお持ちです」
翠仙はそう言ってちょこんと頭を下げた。
「もしよかったら、エルフ族を助けてくれませんか?」
お忙しい中すみませんが、もしよかったらよろしくお願いします。
翠仙はそう言って深く頭を下げ、お願いしたのだった。
- ドラゴン・ハント完了
- NM名remo
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月30日 22時11分
- 参加人数4/4人
- 相談3日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●英雄
森に眩き光点が降る。流星の如き救い手達が今まさに顕れたのだ。遍く生命が目を奪われる中、光は人型となり朗々とした聲を響かせた。聞く者の心震わせ活力を与える歌。英雄の勝利と栄光を高雅なる桜に準えた詩。
「世界は誰かのモノじゃない。そこで生を紡ぐ全ての命のためのものよ!」
歌い手は藤野 蛍(p3p003861)。隣では桜咲 珠緒(p3p004426)が儚桜の髪を風に揺らしている。
「それを奪おうというのなら、ボクがこの世界を守ってみせる!
ボクの力じゃ足りなくても、皆と、珠緒さんと一緒なら絶対に負けないわ!」
全員の力が高まるのを感じながら、珠緒は敵を視る。
(誰に教えられるでもなく、支配という思考に染まる。種としてそのような性質備えていたのかは不明ですが)
「その傲慢が、終わりを呼ぶ……とは思いもしないのでしょうね」
「ドラゴンを倒し、エルフのお姫様を救う……ふふ、まるでおとぎ話の英雄ッスよね」
赤い装甲を木漏れ日に煌めかせ、イルミナ・ガードルーン(p3p001475)が緑の天蓋の隙間を仰ぎ見る。隙間からシハーブが見え隠れしている。上空を旋回しているのだ。
「……ただし、それを為すのは聖剣を携えた勇者ではなく。ただのマシン、イルミナッスけどね!」
「逆らえる者がいないからといって好き勝手やりやがって……まったくいいご身分だな。羨ましいぜ」
回言 世界(p3p007315)はイルミナ同様に上を視て肩を竦めた。
「だがまあ、やり過ぎてるのは気に入らないな。ここは一つ灸を据えるやるとしよう」
世界は素早くエルフ族の陣を見て村の位置を把握し、白衣を翻して村と反対側へと走った。
「おい、上の!」
叫べば、視線を一身に感じる。視られている――世界は口の端を持ち上げた。
(煽り慣れてなんかいないだろう?)
開けた場所に出ると同時に天から渦巻く炎が押し寄せた。横に跳ぶ。熱が一瞬前居た大地を焼く。地に手を付いて廻転する世界を連続のブレスが追いかける。世界は木に延焼しないように進路を選び、挑発する。
「空からブレスを噴く事しか能がないのか?」
(場所を変えてよかった。危うく森やエルフを巻き込むところだったな)
「そんなしょぼくれた攻撃なんていくら撃っても無駄だぞ」
怒気が膨らみ、ドラゴン『シハーブ』が降りてくる。その時。
ひらり。くるり、ひらひら。
明媚絶麗に桜の花弁が舞い散る。
森の命の営みを象徴するような自然の美しさ。
「佳景也」
シハーブが恍惚と呟き、自失の内に囚われた。蛍の結界だ。世界は味方の後ろに下がり、支援するべく力を手繰る。
(守りたい)
「こんなに美しい世界なんだもの」
力強い足取りで前に進み出る蛍の聲が玲瓏と響く。
「誰かと分かち合ってこそ、この世は歓喜に満ち溢れるんだってボクは信じてる……!」
「むっ」
シハーブが桜吹雪の中に蛍の姿を見出し、敵意を燃やした。
「貴様ら、たった4人で俺様に対抗できると思うのか!」
翼を荒々しく上下させ、シハーブが降りてくる。引き付けは成功だ――蛍と世界が眼を合わせ、頷きを交わした。
「ボクには敵を倒す力なんてない。それでも戦場に立てるのは……心から信じる人がいてくれるからよ!」
見返す蛍の眼は晴れ渡る夜空のようだった。
「そういう人が一人もいないのなら、貴方は悲しい人ね……!」
蛍が眼鏡の奥の瞳に珠緒を映す。大切な彼女への想いが胸をあたたかにする。指先が自然と術式を紡ぐ――「珠緒さんが存分に戦えるように!」
優しく包み込むような光の中で、珠緒はゆったりとした袖を揺らして胸に手を当てる。
(込められたこころ、望まれるちから、珠緒にはわかります)
背に負う信と愛を両翼に彩異なる双眸が宝石めいて煌く。
「『桜花水月』展開。対象構造及び有効戦術の解析開始」
嫋やかな身に流れる桜咲の血。世界を守る意思。其れを知らぬ人にもありありと伝わるような荘厳な歌が高く低く、可憐に優美に紡がれた。
●竜狩
戦場低く茂る草が燃え、土が焦げている。空気を震撼させ鳴動する大地。咆哮と尾撃は常人であれば震えあがり、抗う意思すら奪われた事だろう。
「上には上がいるって、わからせてやるっス!」
イルミナは両腕をクロスさせる。エネルギーフィールド展開。衝突音は硬質な物体同士が戦う時特有の耳に痛い烈しさ。ドラゴンと比べれば余りにも小さなその身体。衝撃に足元が大きく抉られ、後ろへ押される。
「クッ」
歯を食いしばり耐えるイルミナ。水色の頭目掛けて凶爪が振り下ろされる。
「させないんだから!」
爪の軌道に割り込み防ぐのは、竜殺しの英雄の生き様を顕現さた蛍だ。
「感謝っス、攻撃を正面から受け止めるのはあまり褒められた事では無さそうッスね。蛍さん、木や岩も利用していくっス」
「そうね!」
世界が賦活の力を2人に届けている。与えた傷がみるみる癒えるのを見てシハーブが忌々し気に鼻息を荒くした。
「治癒者か。厄介な!」
(全員の継戦を維持)
世界は冷静な瞳で力を送り続ける。
「ありがとう!」
「助かるっス!」
蛍とイルミナが姿勢低く木々の間を駆ける。追い縋る竜腕に白蛇が絡み、牙を立てる。回復の手が空いた隙に世界が放ったのだ。
「巨体故に足元は見にくいはずッス」
「右に行くわね」
聲が届く。2人同時に左右に分かれた。
「ちょこまかと!」
シハーブが足元を跳び廻る前衛に気を取られている。珠緒は隙を付いて間合いに飛び込んだ。
「『桜花水月』、防衛戦術破棄。――殲滅形態へ移行」
魔力が眼に見える程に高まっている。桜色の髪を背に靡かせ、珠緒が舞踊めき静謐な拳を突き出した。堅い竜鱗を渾身で打つ。骨が軋み、衝突した部位から電気が奔るように痛みが走る。だが珠緒は手を止める事無く髪を振り乱して拳を打ち付け続けた。
「貴方には、想像もできないでしょう……っ、自身の一部が奪われることなど!」
悲鳴が上がる。
(効いている)
世界は珠緒に治癒の力を送り、珠緒の背に迫る爪を蛍が身を呈して防ぐのを見て蛍へと治癒対象を切り替えた。
「例え、1体で強さが勝っていたとしても、」
死角をついてイルミナが雷霆の如き一撃を穿つ。
「こんな風に仲間同士で助け合えば、勝てるんっス!」
竜が憎悪と苦痛の入り混じる咆哮を上げた。身の毛立つ狂聲。だが、怖気付く者は1人もいない。
「熱が高まってせり上がってく――ブレスッ!」
蛍が鋭く警告を放つ。蛍には、『温度が視える』のだ。
「口の中は硬い鱗も無い弱点の筈っス!」
イルミナがドラゴンの脚を足場に跳び、エネルギーフィールドを全開にして。
「ピンチはチャンス、飛び込むッスよ……!!」
炎の渦へと飛び込み、決死の覚悟を籠めた一撃を浴びせた。
「お見事!」
世界が白蛇を放ち閉じようとする竜口を阻害しながらイルミナへと連続で治癒を送る。イルミナはさっと口から飛び出して距離を取った。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
シハーブが狂乱の爪を奮う。蛍は爪の射程にいた珠緒の前に立ち、正面から爪を受け止めた。
「貴方とボクの違いはきっとただ一つ。「愛」を知ってるかどうかよ……!」
ぐ、ぐ、と押し合い睨み合う両者。だが、ふいに爪の勢いが急速に弱まった。シハーブが己の体の不調を感じ取る。初めての経験だった。疲労と蓄積されたダメージと……、
「多くの世界において、竜は歴史と共に世界から去っていくようです」
珠緒が呟く。シハーブはどうと豪音を立てて横倒しに倒れた。薄紅の花がふわりと舞う。珠緒に何度も打ち据えられた箇所だとシハーブは気付いた。いつの間にか根を張り開花した花が咲き誇り、儚く散る。場違いなほど幻想的で奇麗な花だった。
楚々とした聲が降る。
「貴方はあるいは、ひとり取り残されてしまった、哀れな遺児なのかもしれませんね」
身を焦がす想いを拳に束ね、珠緒が告げる。
「もはや覆らない選択を思うならば……躊躇わず送るが情けですか」
シハーブが絶望の瞳を向ける中、イルミナが駆け寄る。
「た、たぶん根は悪い子じゃないと思うんス……」
眉がへの字に下がっている。
(助けたいのか)
仲間の想いを察した世界が黒いキューブを生成して低い聲で脅しをかけた。
「同じような事をしたらまた俺たちが来るぞ。俺達にはそれが可能だ」
シハーブは気配で其の言葉が真実であると悟った。理屈はわからないが、いつ何処を襲ってもやってくる。そう理解した。
「し、……しない」
シハーブは必死に誓い、生まれて初めての命乞いをして大空を飛んで逃亡した。地上のモンスター達はシハーブの退却を知り、シハーブを気に入り奉じている者は主を案じて追いかけ、隷従していた者は自らの巣へと逃げていったのだった。
●落着
無数の葉が微風に擦れる音が耳に心地好い。
敵が去った空を視る珠緒の隣で、蛍がほんのりと顔を赤らめた。
「……も、もしかしてボク、戦闘中に恥ずかしいこと口走っちゃってたかしら……?」
頬に手を当て、そっと珠緒を視る。珠緒は振り返り眼を円くした。そして、少し心配そうな顔をした。
「蛍さん? もしかして、体調が……?」
「ふぇっ? ううん、大丈夫よ!」
茂みの向こうにこちらを窺う気配が幾つもある。エルフだ。
「エルフの戦いも落ち着いたようだな」
世界が額に滲む汗を拭い、一息ついた。即興竜狩パーティーの回復役はなかなかの激務であった。
「其処の方々」
遠巻きにしていたエルフが1人、勇気を出した様子でおずおずと近寄って来て頭を下げる。
「助けてくれて大変助かりました。感謝を」
「ドラゴン相手に集中出来たのもエルフの皆さんのお陰ッス!」
イルミナがにこりと八重歯を見せて笑えば、エルフは緊張を和らげた。
「腕の立つ冒険者一行様、一族の宴にお招きしたく存じます。如何でしょうか」
その夜、彼らはエルフの村の勝利の祝宴に招かれ、救世主として遇されたのであった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
おはようございます。remoです。
初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
今回は「エルフの村を襲っている悪いドラゴンを倒そう」というライブノベルです。
ドラゴンが討伐対象となります。ドラゴンを倒せば残りのモンスター達は散り散りになって逃げていきます。
●敵情報
●ドラゴン
全長8メートルほどの西洋風ドラゴンです。炎のブレスを吐きます。鋭い爪や牙、尾を使ったり、体重を活かしての踏みつぶしや体当たり攻撃をします。
人語やエルフ語を理解します。性格は好戦的。
●モンスターの群れ
スライム、ゴブリン、オークといったモンスター群が地上にいます。エルフの人達が相手しており、手助けしなくてもなんとかなりそうです。
●戦場
地上は森の中にあるエルフの村。
空中戦をする場合は森の上に広がる大空を舞台にしての戦いになります。
スタート時点では、ドラゴンは大空にいます。
挑発行為等による戦場変更は有効です。
●プレイングについて
ライブノベルの物語世界では、皆様の行動は成功します。
戦闘に役立てたい武具やスキル、台詞や心情を書いて、自由に遊んでみてください。
キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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