PandoraPartyProject

シナリオ詳細

急募:救世主

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎争い、絶えず
 とある世界。
 人間が平穏に暮らしている中、邪悪な生き物である魔族が何処からか飛来し、世界を覆い尽くさんと侵略を仕掛けた。
 人々は必死に抵抗を重ねながらも、次第にその数を減らしている。
 そして今ではたった一つの国……セフィラ王国しか残っておらず、このままでは滅びを迎えてしまうだろう。
 人間達に残されたものは五百の王国軍。
 それに相対するは──五万の魔族軍。 そして四人の四天王と、本陣最奥に控える魔王である。
 その戦力差に誰もが絶望している中で、暗雲立ち込める戦場に一筋の光が差し込んだ……。

⚫︎立ち塞がる強敵
「──なんだ? 何が起きている?」
 魔族軍本陣中央、議事の間。
 暗闇に満たされた空間の中に、魔族軍四天王と呼ばれる四体の怪物が揃って集合していた。
 そして僅かな沈黙を破り、言葉を発したのは魔族軍四天王のうち一体──剛角のガイビート。
 焦茶色の堅固な外殻に覆われた身体を持ち、頭部に巨大な一本角を携えた異形。
 有り体に言ってしまえば所謂カブトムシがそのままヒト型と化したような姿をしており、六本ある脚のうち二本で地に足を着けたその全長はおよそ三メートルにも達するだろう。
 そんな彼が本陣の外へと興味を持ったのは、ひとえに「強者の気配を感じたから」だ。
「……ほう。これは中々面白くなりそうだな」
 くつくつと笑いながら、彼は今にも戦場へ乗り込もうとする──が。
「待ちなさい。貴方が其方へ向かえば作戦が成り立たなくなる。……魔王様から御叱りを受けるわよ?」
 そう言ってガイビートの首元へと針を突きつけたのは彼の同僚たる四天王のうち一体、崩毒のクインビー。
 そのままハチが巨大化したような容姿に加えて異様な程に発達した複眼と毒針を備えた彼女は、神経質な声でガイビートへと語り掛ける。
「貴方がそうでは、世界を魔王様の掌中に収めたとしても何が起きるか分かったものではないわね?」
「ふん。忠誠を誓っているのは構わんが、オレの邪魔はしてくれるなよ……クインビー」
 それだけ告げれば、ガイビートは何処かへと姿を消す。
 何処へ向かったかは定かではないが、我の強いガイビートの事だ。ロクな事にはならないだろう──と、残された三体は推測する。
 暗闇が再び静まり返るが、そんな事は関係無いとばかりに三人目の四天王……瞬撃のメントローチが二人へと話し掛ける。
「……今からでも追いかけるかィ?オレッチなら追い付けるけどヨ」
 軽い調子でありつつも、真面目な声音にも聞こえるような声で話す彼は所謂『黒光りするアレ』をベースとして、ヒトを模した姿を備えている異形だ。
 ……見るものが見れば今の姿でさえ生理的嫌悪感を持つだろうが、魔族軍にとっては些事である。
 そして彼の発言は事実であり、ガイビートが何処へ向かっていようと数秒以内には見つけられる程の疾さが彼にはある。
「否。それは不要であると思います。……ガイビート殿は、きっと此処に残られますから」
 ──が、しかしその行動は四天王最後の一人によって制止された。
 四天王最強、終拳のブレイアント。
 二足歩行のアリとでも呼ぶべき姿を持ち、魔王を除いた魔族軍において最も筋力に優れた存在。
 丁寧な口調でこそあるものの怒らせては恐ろしい事になる……と、魔族軍の誰もが知っている。
「なんだヨブレイアントォ。ガイビートのヤツを信用してるのハ構わねえけド、ここの万が一の防衛ハオレッチ達の役目なんだゼ?」
「それは理解しています。しかしあの方は案外利口ですし、何某かあれば素直に情報を持ち帰って来るでしょう」
 にこやかな雰囲気でそうブレイアントが告げれば、クインビーとメントローチが揃って嘆息する。
 ……ああ、こいつ案外加虐趣味があったな、と。

⚫︎
 ──では、仮に。
 君たちに、そんな世界を救ってもらうとしたら──どんな方法で世界を救うのかな?

⚫︎世界を救う為には
「……早速だけれど、君達には世界を丸ごと一個救って欲しいんだ。 やり方は任せるし、どんな過程を辿ってもいい」
 そうイレギュラーズ達へ告げたのは、境界案内人たる『ホライゾンシーカー』カストル・ジェミニ。
 銀髪紅眼の青年は淹れたての紅茶が注がれたティーカップとソーサーをイレギュラーズひとりひとりへ渡すと、依頼の詳細を話し始めた。

NMコメント

 はじめまして、先日よりNMを務めることになりましたコウガネと申します。
 色々ぐぬぬとなりながら考えた結果、PPPにおける初めての作品は「とりあえず世界救っちゃおうぜ」というノリで始まるLNと相成りました。
 
⚫︎目的
 魔族軍を殲滅する
 
 魔王とその配下である四天王、そして五万の魔族軍を倒し切ることが目的です。
 何章かに分かれるかと思いますが、想定としては全部で三章を予定しています。
 一章は「魔族軍本陣へ乗り込む」が主な目的となっており、そこに到達するまでに二万の魔族軍が待ち構えています。
 二万の軍勢に対処しながら突き進んでください。
 味方をどう扱うかはお任せします。
 
 本LNにおいては参加したイレギュラーズ全員に特別な火力支援……「聖なる加護の付与」が行われます。
 これにより一度の攻撃で倒せる敵の数が劇的に増加し、回復や付与などの支援の効果が増大します。
 では加護がどういった形で付与されるのか、に関してですが、イレギュラーズ全員が所有する武器または魔法、または特殊な戦闘法に有形無形を問わず付与されます。
 具体的に言うと武器が本LN限定で、名前は据え置きですが何故か聖剣とか聖槍とかの冠詞が付きます。 冠詞は自由に設定して頂いても構いません。
 また、加護の効果を更に強める方法として「必殺技の名前を全力で叫ぶ」「格好いい・可愛いなどのポーズを決めながら技を放つ」が存在します。
 これらの行為を行うと、イレギュラーズが行う行動はより良い成果や特殊な効果をもたらすでしょう。

 そして戦場に降り立ったイレギュラーズに出来る事は二つに分かれており、どちらも重要になるかと思われます。

1.敵を倒す
 とにかく敵をなぎ倒して魔族軍本陣、そしてその最奥の魔王城まで向かいます。
 先述の「聖なる加護」の効果で元来非力なイレギュラーズや『レベル1』だったイレギュラーズであっても相当の数が倒せるようになっていますが、必殺技の名前を叫んだりすると加護が強化されて更に敵を倒すことが出来るでしょう。

2.味方の支援
 五百人の味方軍や同行することになったイレギュラーズをサポート出来ます。
 「聖なる加護」の効果で支援効果が強化されている為より多くの味方を癒したり、味方への強化の効果を引き上げる事が出来ます。
 そして、行動によっては味方陣営へ特殊な効果をもたらす事もあるでしょう。


⚫︎状況
 一章の戦闘フィールドは荒野となります。
 途轍も無く広く、大きな岩などはありません。
 上空には暗雲が立ち込めており、イレギュラーズ達が降り立った地点の真上だけ青空が覗いて見えているでしょう。
 地面の石ころなどは存在していますが大きな岩などは無く、地面が所々ひび割れています。
 また、イレギュラーズが降り立った地点は戦場のド真ん中となっています。
 ちょうど両軍が真正面から激突する直前であり、そこにあなた達が現れました。


⚫︎その他
 プレイングは出来うる限りノリノリで書いて下さると助かります。
 緊張しながら書いているので文体がやたらと硬いですが、これからゆるく出来ればなと思います!

 それでは、皆様渾身のプレイングをお待ちしております!

  • 急募:救世主完了
  • NM名コウガネ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月03日 20時55分
  • 章数2章
  • 総採用数13人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

⚫︎動き出す四天王
 魔族軍本陣──議事の間にて、ガイビートを欠いたままの四天王が動き出そうとしていた。
「──二万が全滅、ですか。あの光が寄越したのは随分と強大な戦力のようですね」
 戦場の偵察に向かわせた斥候からの報告を聞きつつ、ブレイアントがふむと思索に耽る。
 このままでは議事の間よりも奥まった位置……謁見の間で眠っている魔王へと牙が届く恐れすらある、と危険な考えすら抱きかけ、即座にかぶりを振って否定する。
 そう。彼等が守護する魔王に決してそのような事はあってはならないのだから。
「……どうするヨ、全員で迎え撃つかィ?」
 そして他の二人へそう問うたのはメントローチ。
「そうねぇ。いっそ此処で待っていた方が奴等も消耗するでしょう。……ガイビートはもう放って置くとして」
 クインビーもそれに同意した事で、四天王内での意見は凡そ固まっている。
 ──迎撃。
 完全に待ち構えた上で、念入りに倒すのだと。

⚫︎
 コウガネです。
 七人(実際には六人とも言えますが)のイレギュラーズにより、本陣への道は開かれました。
 ここからどんな風に戦うのか、とても楽しみにしております。
 では、以下が二章以降の戦闘シチュエーションになります。

⚫︎二章の目的
 ・本陣奥にある議事の間へ到達すること
 ・四天王を全員倒すこと
 ・残された三万の軍を全滅させること
 以上です。
 実際は議事の間への到達=三万の魔族軍全滅である為、そう難しく捉えずとも大丈夫かと思われます。
 議事の間へ到達して以降は四天王との戦闘になりますので、三万体全滅→議事の間到達→四天王全員撃破の順番でクリア出来るでしょう。
 また四天王はそれぞれが専門分野に長けたスペックをしており、場合によっては連携攻撃も行ってくる為同時に相手にすると非常に厄介です。

⚫︎味方情報(NEW!)
 ・王国将軍ランドルフ
 強いおじさん。
 防技とHPと物攻に長けているタンク兼サブアタッカーです。
 ・騎兵部隊一〇〇名
 機動力と反応に優れたユニットです。
 ・歩兵部隊三〇〇名
 HPと物攻に優れたユニットです。剣持ちと槍持ちが半々で存在します。
 ・弓兵部隊五〇名
 EXAに優れたユニットです。遠距離からの物理攻撃を行います。
 ・魔法部隊五〇名
 神攻に優れたユニットです。遠距離からの神秘攻撃を行います。

⚫︎敵情報(NEW!)
 ・剛角のガイビート
 防技とHPがとても高く、EXFが低いタンクです。
 所持技:
 ホーンブレイカー
 (物至単・【災厄】【体勢不利】)
 ・崩毒のクインビー
 命中とクリティカルがとても高く、HPがとても低いデバッファーです。
 所持技:
 スプレッドポイズン
 (神遠範・【致死毒】【猛毒】【ショック】【失血】)
 ・瞬撃のメントローチ
 反応とEXAがとても高く、防技が低いアタッカーです。
 所持技:
 ソニックラッシュ
 (物至単・【追撃】【足止】)
 ・終拳のブレイアント
 物攻が凄まじく高いですが、回避と防技が凄まじく低いアタッカーです。
 所持技:
 ブレイクナックル
 (物至単・【ブレイク】【弱点】【致命】)

⚫︎状況
 二章の戦闘フィールドは魔族軍本陣となります。
 本陣は荒廃し切って瓦礫の山と化した都市の残骸がベースとなっており、障害物や遮蔽となるものもそこそこ散見されます。
 障害物を気にしなければほぼ荒野のようなものですが、中央にある正方形の建物、通称「議事の間」と最奥にある禍々しい造形をした「謁見の間」が形になっている建物として見られるでしょう。
 
⚫︎
 ──それでは、皆様渾身のプレイングをお待ちしております!


第2章 第2節

ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ティフォン・テンタクルス(p3p007865)
仕事の後の一杯
只野・黒子(p3p008597)
群鱗

⚫︎進軍せよ
「やーっと越えたー! ……って、さっきより多くない!?」
 『白雀』ティスル ティル(p3p006151)がうげぇ、と呆れたようにそうぼやく。
 彼女自身の燃費はさほど良い方ではないからこそ、セーブした戦い方を続けているが──いよいよそうも言ってはいられなくなって来ていた。
(強い奴が出て来るなら、全力でやってやらなくちゃね!)
 そう心中で思いながら、天使の如き少女は前方をキッと見据える。
「二万の軍を突破出来たは良いけれど、まだ三万も敵が残っているなんてね……!」
 そしてその横では、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)もまた、危機感を持ってそう呟く。
 二万の軍を六人のイレギュラーズと五百人の王国軍で蹴散らせど、未だ敵には余力が残っているのだ。
 進軍は尚も続いてこそいるものの、会敵を重ねていけば王国軍の消耗はより重なって行くだろう。
(──だったら、私はこの三万相手に注力する。味方は、出来るだけ……死なせたくないから)
 言葉に出さず、静かにウィズィが決意を固める傍らでは、味方軍が意気揚々と進軍を進めていた。
 強い味方に頼り切りでも無く、イレギュラーズが行えない集団戦術の有効活用も為し得るその技術は一級品だ。
 けれど『嫌な予感』は、確実にウィズィの胸の裡に澱んでいて。
 そして、ちょうどその時。
 先行して偵察へ向かっていたティフォン・テンタクルス(p3p007865)が軍へ合流し、味方軍へ情報を齎した。
「あの建物、議事の間とやらの周りに兵が一塊になってやがる。彼奴ら、俺達を迎え撃つ心算らしい」
 上等じゃねえか、と歯を──否、鋭い牙を剥き出しにしながら、白髪の海種は獰猛に笑う。
 丸出しの喉笛には食らいついてやるのが流儀なのだ、とでも言わんばかりに。
「なるほど。でしたら、先ずはその固まった陣形を突破しましょう。俺達(イレギュラーズ)が前へ出ます」
 ティフォンの報告を聞き少し思索したのち、そうランドルフとイレギュラーズ達へ進言したのは、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)。
 最早軍師か何かかと言わんばかりの働きをしているが、単独戦力に長けたイレギュラーズでは集団を取り纏める能力に長けた彼のような存在は貴重である。
 故に働かされ通しなのだ。
 彼自身がそれを苦痛に思うかどうかは置いておくにしても──今この時は、彼の真骨頂(歯車らしさ)が発揮されているとも言えよう。
「……うむ。では、射撃戦力は後方から援護を行え!歩兵及び騎兵は彼らに続けぇ!!」
 そしてランドルフの号令に伴って、騎馬と歩兵がイレギュラーズの後を追い進軍を始めた!
 そして──
「オッケー! じゃあ行くよッ!」
 先程もその縦横無尽な動きで敵兵を大量に倒した実績のあるティスルが真っ先に突撃した。
 光の翼が敵陣を荒らし回り、雑兵を薙ぎ倒す。
 遅れて来た友軍を癒しながら敵軍を蹴散らして行くことで、敵の注目(ヘイト)を浴びるものの──そうしてティスルに襲い掛かろうとした兵は悉くが、暴風のように振るわれた長大な刀で粉砕された。
「シャァ!! オラ、何処からでもかかって来いよ!」
 次いで苛烈に名乗りを上げながら、敵兵の注意を引くティフォン。
 猪突猛進なようでいてその実クレバーな立ち回りを見せる彼もまた、この戦場において欠かせぬ存在である。
「これでも食らっていやがれッ!」
 自らも攻撃を重ねながら、堅実にカウンターでの反撃を繰り返して行く事で戦況に貢献しているのだから。
 ──そして一方。
 味方軍に紛れながら損耗を出来得る限り減らそうと立ち回るのは、黒子とウィズィ。
 黒子が敵を大量に引き受けながらウィズィが全力で殲滅する即席のコンビネーションを成立させてはいるものの、やはり限界はある。
「敵の数が多過ぎる……!」
「ええ。突破しやすいだろう弱点はある程度見えていますが──この差では……」
 ウィズィが悪態を吐き、黒子が自らの分析に顔を顰める。
 両者共に状況に対して歯噛みしながらも、全力で頭を働かせていた。
 ──どうすれば突破出来る?
 ──どうやれば味方は死なない?
 刻一刻と此方と彼方の数が変わる戦況に猶予はほぼ無く、選択の余地も無い。
 そうして数瞬置いた後、ウィズィが意を決して発言する。
「……じゃあ、私が全力で穴を開けてやります。黒子さんは『その隙に騎兵の損耗を出来る限り少なくして突破させて下さい』。お願いしますね?」
 無茶なオーダーだ、という事は二人とも分かっていた。
 けれども黒子は了承する。
 損耗を前提とした歯車として動くのが、彼なのだから。
「ええ。敵を引き受けるのが、今回の俺の仕事なのですからね」
「助かります。では、行きますよ……!」
 ウィズィはそう言い放つと、左の掌で左眼を覆い隠し、己が身を恋人を守るようにかき抱く。
 そうして気合を入れた所で、彼女が右目に持つ魔眼が起動した。
「いっ、けええぇぇぇ!!」
 ウィズィが叫んだその瞬間、がちりと世界が止まるかのように──彼女の視界内にいた敵兵のみが動きを停止する。
 そしてその隙を見逃すなと言わんばかりに騎兵達が突撃すれば、無防備な敵は全力で蹴散らされて行った。
 勿論停止していたのはほんの数秒。
 しかし、されど数秒。
 それだけの猶予があれば、大軍に穴を開ける事も容易である。
「う、わぁ。なんか行けそうな気はしてましたけど……ここまで凄いんですね、この世界(ライブノベル)」
 自らの手で引き起こした惨状に少しドン引きしながらも、攻撃の手は休めない。
 ──まだ、ここからなのだ。
「さあ、掛かって来い──!」
 そう口上を上げて敵の注意を引けば、死角の味方が容赦無く轢き潰す。
 黒子本人は囮としての役割を機能させながら、味方の能力を最大限に引き出していた。
 
⚫︎
 魔族軍殲滅数、凡そ二万体。
 王国軍損耗兵士数、騎兵八名及び歩兵十七名。

成否

成功


第2章 第3節

ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)
豊穣の空
只野・黒子(p3p008597)
群鱗

⚫︎戦いの果て
「戦況は優勢。しかし、死人が出ましたか……」
 未だ戦闘が続く戦場にて、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はそう呟く。
 道中を阻み斃れて行った魔族兵は数え切れぬ程にいるが、遂に此方の兵士にも死人が出た。
 兵士達を使い捨ての駒として見るなら、それらが数人盤面から脱落した……ただそれだけのことだ。
 しかし──これは現実で、彼らは生命を賭して最後まで抗った人間であるという前提があるのなら。
 それはきっと悼むべき事である。
 少なくとも、只野・黒子という男はそう感じた。
「……よし」
 両の手を合わせて目を閉じ、死者を悼む。
 一連の動作を手早く済ませると、敵手のいる方向へと駆け出す。
 そして、敵軍の眼前に飛び込み──己の命を対価として、混沌にて手に入れた力を発揮する。
「あまり使いたくないが……お前らの恨み、膨らみ、爆ぜろ」
 その台詞をトリガーとして彼自身が敵と認識した存在の闘争本能が過剰に活性化し始める。
 加えて、彼が武器として用いるゼシュテル・フィーバー……闘争本能を暴走させる力をも利用すれば、その効果は果たしてどうなるか。
 その答えは直ぐに明かされた。
「SLWOOOOOAW!!」
 ばきり、めしり。
 敵味方の区別すらなく同族同士で攻撃し合い、戦場のあちらこちらで容赦も何もない打擲音が鳴り響く。
 本来であれば黒子当人へ向けられることを前提としたその殺意は、同族の殺し合いという余波を伴い──狙い通りに、黒子自身を狙って一直線に襲い掛かる。
「──ッ、これは些かまずい……!」
 数百数千という数の群勢が黒子ただ一人を殺そうとしたその時。
 もう一人、この場にいたイレギュラーズがアクションを起こさんとした。
「やばい、やばいやばい! な、なんかないか!? えーとそうだ、こうすれば……!」
 その台詞と共に即興で組み上がる魔法陣。
 どんな形であったとしても、成した努力は決して裏切らないと言わんばかりの構築速度を以って──逆転の一手が完成する。
 『幻想の冒険者』ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)が高速で組み上げたのは、「ほんの少し」特殊な魔砲を撃ち放つ魔法陣。
 一秒の余裕すら惜しく、技名すらカッコよく考える暇もなく。
 名付けは適当に、けれど的確に彼女はそれを撃ち放った!
「ホースの先を潰したらびゃってなって威力が強くなったように見える感じのビィ──ムッ!!」
 実に大雑把な掛け声であったとしても、世界が定めた緩い基準にさえ合致するのなら、威力を増し規模も拡大するのがこの世界。
 そしてその原理で過剰に強化され放たれた拡散型魔砲は、大規模な破壊を形作りながら、威力が減衰することは無く突き進み。
 四天王が待ち構える議事の間と魔王の眠る謁見の間を、跡形もなく消し飛ばした。
 ──魔族の全滅と、味方ほぼ全員の生存という結果を齎して。

⚫︎
 魔族軍、全滅。
 世界に平和が戻りました。

成否

成功

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