PandoraPartyProject

シナリオ詳細

染まりゆく炎

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●戦災の火種Ⅰ
 沢山の命が犠牲になった。
 敵も、味方も。
 人も、魔も、精霊も。
 心を持つ者の悪意を煮詰めたスープのように混濁とした感情が溶け合い、あらゆる命をこそぎ取る。

 それが戦争。この異世界を滅びの道に定めた悪しき歴史。
「何が"聖戦"だ! 何が"誇り"だ! 兵士だって人間だってのに……ちくしょう、ちくしょうッ……!」
 冷たくなった友の亡骸を抱きしめたまま、荒れた地に膝をついて嘆く青年がいた。

 彼の名はフェイ・グルーヴス。この世で最も戦災を憎む者。
 不条理な世の中で己が憤怒を刃に変えて、悪しきを挫いて切り結ぶ英雄ーーの、筈だった。

●解放の紡ぎ手
「集まったわね、特異運命座標。今回の依頼は残党狩りよ」
 境界案内人のロベリア・カーネイジは口元を歪め、妖艶な笑みを浮かべて話す。
 その手に収まっているのは古びた革の表紙の歴史書で、開いてページを何枚か繰ると、途中でぴたりと手を止めて読み聞かせるように言葉を紡ぐ。

「精霊軍、フェイ・グルーヴス少佐。歳は30歳手前くらいかしら。
 憤怒を司る炎の精霊で、この異世界の世界大戦では英雄と呼ばれても遜色ない程の功績をあげたわ」

 しかしながら戦争は決着がつく前に、停戦条約による和平によって強制的に終わりを告げた。

 長い戦いにより大地が荒れ、その世界を支える魔力の流れーーマナが枯渇しはじめている事に戦争中の三国が気付き、生き延びるため止む無く結ばれた条約で、互いの健闘を讃える事もなく、軍事的に目立った動きがないか、互いを監視しあう形ばかりの和平であった。

 結果、敵対国を煽らぬようにフェイの功績は讃えられる事もなく、どの領主も受け入れを拒むばかり。
「認められなかった兵士の怒りを諫めるのなんて命がけだし、戦争が再び起きたら真っ先に受け入れた領地が狙われるでしょうからね。
 彼は戦争が終わった後、腫物のように扱われ……帰る場所すらなくしたの」

●戦災の火種Ⅱ
「食料をありったけこの袋に詰めろ」
 人質にとった村人の首筋に剣を押し当てたまま、低い声でフェイが脅す。
「そんな! もう分けれるような食料はこの村にないって言ったでしょう!?」
「ならここで一人分の食い扶持を減らしてやろう」
「やめろーーッツ!」
 カツン、と小石がフェイの甲冑に当たる。投擲の犯人へ振り向くと、それは小さな少年だった。

「お前たちみたいなのが居るから……戦災は無くならないんだッ! この……!」
「やめなさい坊や!!」

ーー戦災? 俺が?
「ははっ。嗚呼……そうだな。俺こそが戦災だ!」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 誰が被害者で誰が加害者か。争いとは悲しいものなのです。

■目的
"戦災"フェイ・グルーヴスの討伐

■戦場
 異世界『エレメンタルズ』。中世ヨーロッパのような街並みです。
 剣も魔法もある世界で、人と魔と精霊が各々の国と領地をもっています。近年、世界を支えるマナが枯渇してる事に気づいた三国が停戦条約という形で矛を収め、共に生き残る道を模索しはじめたそうです。

 特異運命座標がフェイを迎え撃つのはレンガ造りの家が並ぶ小さな村。
 あちこちで火の手があがっており、村人は皆、近くの湖に避難している状態です。

■敵情報
『緋色き牙』フェイ・グルーヴス
  褐色肌の30代ほどの男性です。憤怒を司る炎の精霊。自身が怒るほど扱う炎は燃え盛り、威力を増すそうです。
  近距離から中距離に向けて炎を使った攻撃をしてくる模様。『火傷』の対策が出来るといいかもしれません。

 崩れずの炎×20
  フェイが召喚する炎のしもべ。かつて戦場で亡くした仲間の姿を模しているそうです。
  剣による近距離攻撃と銃による遠距離攻撃が出来るとか。

■登場人物
『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
  特異運命座標に依頼した案内人。拘束衣を彷彿とさせる装束を身に纏い、足を戒めた姿の妖しい女性です。
  呼ばれなければ特に活躍はしませんが、何か求められればサポートにまわったり、顔を出したりするでしょう。

■その他
・倒幕目標は"戦災"としてのフェイ・グルーヴスです。生殺与奪は特異運命座標に委ねられています。
・大火事で辺りは火災現場のようになっています。煙や火の粉への対策があると、よりスムーズに戦えるかもしれません。

 説明は以上となります。
 それでは、よい旅を!

  • 染まりゆく炎完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月03日 22時06分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

ロスヴァイセ(p3p004262)
麗金のエンフォーサー
秋川 涼(p3p004402)
こっそり抱えた大きな秘密
回言 世界(p3p007315)
貧乏籤
糸杉・秋葉(p3p008533)
黄泉醜女

リプレイ


 命の灯を初めて摘んだのは、仲間に襲い掛かってきた敵兵だった。
 最初は戦友を失うのが恐ろしくて。しかし灰と化すまで敵を燃やし尽くした後は……人を殺めた己が恐ろしくて。

"お前は何も悪くない。全ては戦が呼んだ災いだ!"

 己を正当化するために聞こえた幻聴ーー今思えば、悪魔の囁きだったのかもしれない。
 それは今でも耳にこびり付いて、ほら。赤々と燃える村を見た所で、何の感傷もーー。

「横暴はそこまでよ。止まりなさい」
 凛とした声が響くとほぼ同時、槍の形を成した影が、空を引きフェイへと降る。
『麗金のエンフォーサー』ロスヴァイセ(p3p004262)が放つファントムチェイサーは身を躱す彼の方へ追従し、二の腕を掠めて血を滴らせた。

 強敵の気配にフェイの殺気が膨れ上がる。高揚感を覚えて声の主の方へ視線を向ければ、そこには4人の男女が立っていた。
 巫女服やら白衣やらアイドルやら、初撃を放った者は兎も角、纏まりのない面子である。

「何だお前達。この村の生き残りか?」
「違うと言ったところで、殺意を収めるつもりは無いだろう?」
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が見渡す限り、炎と煙にまかれた村に生存者の気配はない。フェイの間近に折り重なって倒れている死体はーー嗚呼、逃げ延びようとした命なのだろう。
 境遇には同情するが、それが無関係な国民を虐げる理由にはならない。静かな怒りの炎を胸の内で燃やしながら世界はフェイを睨みつける。
「かつての英雄が今や盗人に……いや、それ以下の下種になり下がったか。人間ああはなりたくないものだな」
「なりたくない? それはアンタ自身が決められる事じゃない。悪魔が決めるのさ。戦争っていうとびっきり性質の悪い悪魔が」
 英雄に祀り上げられた者の成れの果ては最早、戦災というしがらみに繋がれた奴隷だった。悪魔に魂を売り渡し、操られるがままに新たな命を手にかけ続ける。
「受け入れられなかった英雄、か……」
 落ちる所まで落ちたフェイを、『こっそり抱えた大きな秘密』秋川 涼(p3p004402)は他人事ではないと心を痛めて見つめていた。
「……やめろ、そんな目で俺を見るな」
「だって!! ぼ、私も本当の気持ちを押し殺してアイドルを続けてるから」
 カッコいいアイドルになりたい。男らしい魅力をみせたい。
 なのに求められるのは『女の子』としての偶像で。今もなお、どう活動すればいいか決め切れず藻掻いている。
「あなたの気持ちは痛いほど分かる気がするよ。だから……」
 救えるならば救いたい。けれど、取り返しが付かないようであれば……。
 独断では決められない、と涼が向けた視線に気づき、ロスヴァイセはフェイの方へと槍を向ける。
「友を失ったあなたの気持ちもわからなくはないけど、戦争は終わったのよ? これ以上は、世界を道連れにしかねない」
「いいや、終わっちゃいない。続いてんだよ今、ここで!!」
 フェイの身体に業火が纏われ、地からマグマがにじみ出るように盛り上がり人の形を成していく。彼のしもべ、崩れずの炎。その姿は大柄な男から少女と見紛う小柄なものまで。
 共に戦場を共にし、生き別れた者達の哀しき幻影。
 仲間が出来上がる前に殴り掛かってきたその一体を鋭い一閃が打ち砕く。『黄泉醜女』糸杉・秋葉(p3p008533)の神刀「火之迦具土」である。
「数多くの英雄豪傑を見てきたけれども『戦災』にここまでの憤怒を抱く者を見たのは初めてかもしれないわ」
 しもべの姿を見れば、大切な者を失い続けるという彼の悪夢が伺える。よほどの怒りを重ねてきたのだろう、秋葉は悟りーー神刀を構え直す。
 同じ憤怒の炎を宿す者として、この凶行を止めねばならぬと瞳に力強い意思を宿らせて。
「その憤怒や天晴。称賛に値する……されど自身が『戦災』となり生者に危害を加えるのは、巫女勇者として看過できないわ」

 嘆きにも似たしもべの咆哮。その重奏に怯む事なく、特異運命座標は戦地を駆るーー。


「——剣よ!」
 目には目を、歯には歯を。炎の剣が振り下ろされるならば、焔式での炎剣を。
 火花を散らし、ロスヴァイセはしもべと激しく打ち合う。鍔競り合いになれば力を込めるが、呼吸は荒くなる一方でコホッとひとつ咳込んだ。
(火の手がまわるのが思っていた以上に早いわね。このままじゃジリ貧だわ)
 思考に必要な酸素もまた、燃える街に奪われていく。劣勢になりかけたその時ーーふわ、と心地よい風が彼女の背中を押すように吹き、煙を身体から退けた。
「これなら……!」
 一呼吸がロスヴァイセの気力を取り戻し、猛攻でしもべを切り伏せた。
「大丈夫か? あまり無茶をするなよ」
 傷ついた彼女へと、世界はミリアドハーモニクスで力を注いだ。治癒の心地よさに目を細め、ロスヴァイセは微笑んだ。
「ありがとう。さっきの風もあなたの力なんでしょう?」
「嗚呼、簡易召喚陣と精霊操作で風の精霊を呼び寄せた。側に付かせておくから、煙の事は心配するな」
「ありがたいけど、あなたも無理はしないでね」
「俺は火炎無効がある。それに、涼が消火活動にまわってくれてるからな。俺も沈下させ次第フェイを叩きに行く」
 街の火の手がしもべを強化している事は、文字通り”火を見るより明らか”だ。涼と合流しようと走る世界を阻止するように、立ち塞がる崩れずの炎。
 多勢に無勢かと思いきや、世界が焦る様子はなく。
 虚空に描いた白蛇の陣が命を得て、間近に居たしもべを痛みなき牙で鋭く穿つ。
「さて、フェイとやらには悪いが俺にも精霊に関しては多少心得があってな。
 精霊と精霊使い、はたしてどちらの実力が上か試させてもらおうか」

 カロン、と涼の手元でカンテラが揺れる。
「このあたりの火は収まったかな」
「聡いわね、涼。炎を炎で打ち消すなんて」
 秋葉に褒められ、涼は照れたように微笑んだ。勢いの強い炎めがけてカンテラの火を放つ。向かい火に煽られ火の手が弱まっていくーーバック・ファイアを利用した消火活動は、火事の沈下に目まぐるしい成果を見せていた。
「本当は消火が間に合わない時の最終手段なわけだけど、この非常事態なら仕方ないよね」
 しかし、敵もタダでやられっぱなしではいられない。消火活動を阻止しようとしもべ達が群がり始める。
 じり、と後退る涼に変わって、共に居た秋葉が呼吸を止めて前に出た。
(セオリー通りに動くなら、私はどちらかと言うと後方向き。だが……今回は!)
「疾く燃え上がれ、憤怒の炎よ!」
 しもべの炎の身体。その一番燃える場所へ業火を纏った一振りを力いっぱい振り落とす。
 向かい火に煽られ弱るしもべ。その身を一閃、断ち切った。
 涼が用いた消化方法を、秋葉は瞬時に戦闘へと取り入れたのである。頼れる仲間に勇気を貰い、涼も戦う決意を固め。
「よーし、ここからは私も!」
 鮮やかな変身バンクと共に纏うコスチュームはキラキラと華やかさを持って敵すらも魅了しきり。
「私は魔法少女ムーンライト☆りょう!」
 名乗り口上で引きつけたしもべを笑顔のまま、マジカルアックス……つまり斧だが、鈍重なそれを振り上げレジストクラッシュで粉微塵に打ち砕いた。
「行こう、涼さん。私は彼を止める義務がある」
「梅雨払いは任せて! どんどん倒しちゃおーう!」


「不可解だ」
 巧みな連携でしもべを倒し、街の炎を沈下する4人。その姿を見たフェイは、言葉とは裏腹に心の奥底から燃え上がるものを感じていた。
 火の手を恐れず、襲いかかる不条理を打ち払う。数年前はそれが自分の役目だったじゃないか。
「もしも、その心に一片の良心が残っているのなら……今後の戦争に反対しなさい」
 どちらの勝利もない終わり方をした、無意味な戦争、ただ屍の山を築いただけ。
 記録を見る側はそう言えるけど、戦線にいた当事者のやるせなさは……。
 心に訴えかけるように弁舌を奮うロスヴァイセ。その言葉はついにフェイの心を捉え。
「そんな表情(かお)するなよ」

 彼の胸の痛みを取り戻させた。
 だからこそ、フェイは許せない。血で染まった自身の両手を。
 ゆえに因果の代償を支払うべきだと。

 秋葉がふいうって放った剣魔双撃がフェイの身を貫く。吐き出された血は紅蓮の如く。
「友を喪い、戦場の悪意を呪い……貴様が抱えた憤怒は! 戦災に対する憤怒は!
 自身を憎むべき"戦災"と言ってしまえる程度のものなのか?」
「ッ、ああ……アンタらのせいで目が覚めちまった。だから!」
 仲間の眠る"戦場(この場所)"で、眠りたいーー。
 フェイの両脇を固めようとした崩れずの炎。その姿を世界の放つスケフィントンの娘が、涼の剣魔双撃が。巧みな連携で倒しきり。

「……だから面倒は嫌いなんだよ」
「それがあなたの望みなら、私はもう迷わない!」

 火の粉を巻き上げ振り上げられたフェイの剣を真正面から迎え撃とうと、ロスヴァイセの槍が、秋葉の神刀が、力強い刺突をくり出した。

「我が神刀の……煉獄の憤怒の炎に焼かれて眠るがいい!」
「執行者たる我が槍に慈悲はない——貫け!」

 魂からの叫びと共に放たれた一撃は、英雄の剣を打ち砕きーーフェイの身すらも消し飛ばした。

「彼のモノの来世が幸せである様に……畏み畏み申す」
 白髪に染まった秋葉の髪が、月明かりの下で美しく輝く。唱えられた祝詞により輪廻へと還る無数の魂。犠牲となった街の人も、フェイも、来世は幸せであるように。

 幻想的な光景を見つめながら、ロスヴァイセがぽつりと呟く。
「最後にぶつかった瞬間、あの人……笑っていたわ」
ーーどうして。
 疑問を帯びた呟きに、涼と世界は顔を見合わせ、ロスヴァイセに微笑みかける。
「それは……あなたの言葉に救われたからじゃない?」
「非道な行いを躊躇なく行うような奴だったがーー命の尽きる刹那、思い出したんだろう。本当の自分を」

 国のため、仲間のため、怒れる英雄、ここに眠るーー。

成否

成功

状態異常

なし

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