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シナリオ詳細

<サイバー陰陽京>テロリストの窟

完了

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オープニング

 半ば打ち捨てられたかのような込み入った低層ビル群と、それを見下ろすかの如き完全環境型超高層建造物(アーコロジー)群。『八紘』世界の中心地、『洛外』の光景は、常に対比的な貧と富の象徴に彩られていた。
 貧民らは電子的、時に物理的な暴力に頼り、片や富豪らは金と権力を恣にする。そんな市井の喧騒を遥か天頂より見下ろす者は、結界の中に浮かぶ陰陽都市、『洛中』――この世界全てを統べる『キョート』国の元首にして最高の陰陽師、『帝』の住まう真の都である。

 さて、その神秘の都より『体仁(なりひと)』親王殿下がお下りになり、立太子パレードをなさったのは数ヶ月ほど前のこと。その際、同時多発テロを目論んで特異運命座標らに全ての企てを阻止された反政府武装勢力『白峯』は、今は一見、鳴りを潜めているようにも見えた。
 が……『イースト祇園』地区の遊女兼フィクサーであり境界案内人のオハナは、坂東訛りのピジン京言葉でこう語るのだ。
「かの超巨大企業、『徳大寺重工』とも結託してはった白峯が、これで諦めはったとは考えられへんどすなぁ。どこぞに隠れて、何かしら目論んではったとしても可笑しゅうありまへんのや……」

 その時、本のページの中から、ひとひらの揚羽蝶が飛び出してきた。それはオハナの指先に留まると、頷くかのように羽ばたいてから電子の粒へと還る。
「……会員制ナイトクラブ、『東三条』。雑居ビルの地下に位置するそのクラブに、複数の白峯メンバーが出入りしてはるらしいどすえ」
 オハナによれば此度の依頼(ビズ)は、ナイトクラブで彼らが何を企んでいるのかを明らかにすること。
 が……場合によっては『東三条』そのものに、白峯の息が掛かっている可能性もある。あまり騒ぎ立てることはせず、クレバーに潜入して様子を確かめてほしい……そしてオハナのお眼鏡に適った君たちならば、必ずや見事に事を運んでくれることだろう。

NMコメント

 サイバー陰陽小説『ネオホーゲン』の世界へようこそ。椎野です。
 『八紘』は、『キョート』と呼ばれる国家が地球上の全てを統治するサイバーパンク世界です。舞台となる『洛外』地区の上空には陰陽術に守られた空中都市『洛中』が浮かび、地上には無数の企業アーコロジーが林立する……そんな中で人々は、金と権力にしがみつきながら生きているのです。

●今回の舞台:会員制高級ナイトクラブ『東三条』
 大型のダンスホールにカクテルバーが併設されたナイトクラブです。内部には他にも、密室に近い形を作れる個室が幾つかあるようです……『白峯』メンバーが会合を開いているとすれば、そのうちのどれかでしょう。
 立地は洛外の治安の悪い地区にありますが、大企業の社長からヤクザの親分まで、様々な大物が訪れます。つまり……『東三条』のセキュリティは、物理的にも、電子的にも、それなりに強固なものが用意されている、ということでもあります。
 クラブ周辺には、サイバーパンク的な繁華街にありそうなものなら大抵あるとお考え下さって構いません……「利用する」というプレイングがあれば、あまりに不自然なものでなければ実際にあったことにします。

●本ライブノベルでできること
 皆様にはまず、このセキュリティを突破して『東三条』に入り込んでいただく必要がございます。
 基本的には、「会員に紹介された人物も入店できる」という仕組みを利用することになるでしょう。この店を利用する大物の名簿はオハナが持っていますので、「○○のような人物を探して、○○という方法で紹介を依頼する」というプレイングが有効です。議員でも、アイドルプロダクションのプロデューサーでも、派手なことが好きそうな大物なら何でもござれ。
 他にも、「何らかの方法で店員として忍び込む」「電脳戦(※後述)によるハッキングを試み、店内に入ることなく店内の様子を確かめる」等の手法もあるかもしれません……もちろん、誰かが紹介されて会員になったなら、その人が他の特異運命座標を紹介する、という手もあるでしょう。

 そうして店内に入り込んだ後は、「白峯メンバーに感付かれないように会話を盗み聞きする」というミッションが始まります。「全力でクラブを楽しむことで陽動役となる」ことも可能です……パーッと遊んでしまいましょう!

●想定される敵
 万が一戦闘になる場合、物理戦闘では身体をバイオサイバネティック強化した用心棒たち、電脳戦闘ではクラブのセキュリティを監視する電脳体ハッカーたちと戦うことになるでしょう。
 他にも、アプローチ次第ではクラブの客の私的な護衛たち(多くは全身を義体化しています)等と戦うルートもあるかもしれません。

●本ライブノベルの特殊ルール
 データは通常のルールに従い解釈されます。
 ただし皆様は、自身が『電脳体である』として、物理空間ではなく電脳空間上に存在することもできます。その場合、皆様のデータは電脳戦用アバターとしてのものだということになります(物理存在としてのデータがどうなっているのかは、ご自由に決めて構いません)。
 クラブを防衛するハッカーを無力化する際には、電脳体として戦闘する必要があります。

  • <サイバー陰陽京>テロリストの窟完了
  • NM名椎野 宗一郎
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年06月24日 16時26分
  • 章数1章
  • 総採用数6人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業

 『東三条』予約システムへの一人の侵入者に防衛ハッカーたちが気付いたのは、侵入者が深くに進入した後だった。どうして察知できなかったのか……ハッカーたちはそんな悲鳴を上げているだろうが、答えは『そうなるように手間隙をかけたから』という当たり前の話でしかない。
 侵入者――『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)の電脳体はほくそ笑む。会員情報が来店退店時刻とともに記されたデータベースは、まさしく宝の宝庫だと――もっともそのゲイシャガール姿の電脳体には、笑うべき顔などなかったのではあるが。

「いたぞ! 正体をスキャンしろ!」
「了解! コピー権限の剥奪は任せた!」
 一度動き出したら手早いハッカーたち。ああ……顧客情報のコピーが途中で阻止されてしまった。
 反撃して、コピー権限を再奪取しようかしら? そんなことを瑠璃は考えない。
「ご機嫌よう、そしてさようなら」
 そのまま忍者のように忽然とログアウトすると……現実世界の瑠璃は大きく溜め息を吐いた。

 今頃店のハッカーたちは“痕跡”を辿り、全く別の所にいる式神に辿り着いている頃だろう。さて……今のうち、こちらのホテルもチェックアウトしてしまいましょう。
 ホテルを後にする瑠璃のコンピューターにこそ顧客データは落とせなかったが……瑠璃自身の頭脳の中に、全ては瞬間記憶されているのだから。

成否

成功


第1章 第2節

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業

 あのホテルが何者かに襲撃されたらしい、という報せを聞いたのは、その日の夕方のことだった。けれども『東三条』だか白峯だかの私兵らが、瑠璃に辿り着くことはない……何故なら、その頃には彼女は記憶にあった情報を頼りに、宇野なる活動家の事務所を訪れていたからだ。

「その通りです。洛中に篭もってばかりの帝には、我々市民の苦しみは届かないのです!」
 少しばかり瑠璃が支援者のフリをしてやれば、宇野は喜んで演説してみせた。恐らくは、その義憤自体は真っ当なものなのだろう……けれども彼が『東三条』の常連――恐らくは裏で白峯と繋がる人物だというだけで、人権派という彼の印象はまるで違ったものになる。
「私も闘争に参加するにはどうすればいいでしょう?」
 長きに渡る“熱意の確認”の末にそう問えば、彼は常人には気付かぬほどの一瞬だけ勝ち誇って顔を歪ませ、本性の片鱗を露にする。
「そうですね……では善は急げです。まずは私の友人たちを紹介しましょう……今夜は空いてらっしゃいますか? 私は途中、打ち合わせのために幾人かと別室にゆきますが、その他の友人たちは貴女に多くのことを教えてくれるでしょう……」

 それは宇野による、「『東三条』にて会合がある」という自白そのものだった。そして瑠璃は会合そのものでこそはなくとも……会合のすぐ目と鼻の先に陣取るための切符を手に入れたのだ。

成否

成功


第1章 第3節

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

 ナイトドレス姿で向かった『東三条』は、その仄暗い正体を秘し隠すかのごとく眩さに満ちていた。
 近頃頭角を現した新進気鋭の社長。その広告塔たる有名俳優。それから彼らをバックアップすると言われる大物議員に、『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)。
「お招きいただき恐縮です。この『東三条』には、『秘密の商談』を行うのにお誂えの部屋があると聞きまして」
「なに、礼には及ばんよ。支持者の陳情には耳を傾けるのが議員の務めだからね、はっはっは」
 議員と寛治はあたかも長きに渡って支援関係にあるような会話をしていたが、議員の下品に肥え太った腹回りを見れば、必ずしもそうとは言い難いことは瑠璃の目にも明らかだった。実際……寛治が議員の支持者になったのはほんの数時間前。彼があの手この手で合法範囲内に収まるよう迂回して、多額の献金を行なった時のことである。
「こんな方々までいらっしゃるんですね」
「活動の正しさが支持されている証拠です」
 瑠璃をエスコートしながらいけしゃあしゃあと嘯く宇野に、ひとまず瑠璃は何も言わないでおいた……それから紹介された“友人”の顔と名を、密かにウェブ上の公開情報や記憶の中の会員名簿と照らし合わせてゆく。
(先日のテロの際にも白峯を支援していたという『徳大寺重工』の役員に、意図的な資料誤読と二重基準による過激な政府批判で悪名高い社会学者ですか……まだまだ「テロの失敗により打撃を受けた」と言うには元気そうに見えますが、果たして何を企んでいるのやら……?)

 しばらく瑠璃を他の活動家へと紹介したところで、宇野は「そろそろ我々は機密度の高い打ち合わせを」と断ると、幾人かを引き連れて店の奥へと向かおうとした。
 同時……寛治に電話が“掛かる”。
「失礼。どうやら至急の案件のようでして」
 中座のついでにスタッフにブラックカードを預け、議員の分の支払いまで持つと告げると……ふとスタッフの意識が逸れた拍子に背景に紛れ込んだ寛治。

 密談用に防音された個室でなされた会話は、扉のすぐ目の前に立つ寛治にさえも、容易くは聞き取れそうになかった。もっとも彼らの会話の内容自体は、瑠璃には大まかな予想だけならついている。
(決算資料によれば徳大寺はいい加減投資を回収したい頃合いでしょうし、社会学者の方も最近は種が大衆に暴かれかけていて苛立っています。この会合、誰もがこの辺りで改めて大きな花火を打ち上げたいと思っている筈ですが……?)

 重要なのは……それがいつ、どこで、どのような形で行なわれるのか?
 それらを明らかにしようと思うなら、特異運命座標たちはこの密室を、物理的にでも、電子的にでも――いっそのこと霊的にでも――、攻略せねばならなさそうだった。

成否

成功


第1章 第4節

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

 そこまでを把握し終えると瑠璃は、ふらついたふりをして手近な“友人”にもたれてみせた。
「どうしました?」
「すみません……あまりに楽しい時間でしたので、少しお酒をいただきすぎてしまったかもしれません」
 そう理由をつけて空いている個室を借りる。
 会合の場はすぐ隣であるにもかかわらず、内部の音は洩れ聞こえなかった……店のシステムを“間借り”すれば盗み聞けるだろうが、わざわざ厳重な警戒網に飛び込む必要もない。
 代わりに瑠璃が繋いだ先は、例の社会学者の個人携帯だった。侵入は……ほぼ無抵抗に等しい有様だ。論理より感情を優先するという印象通り、彼女はその敵の多い立場にも拘わらず、セキュリティ意識は驚くほど低い。
 が……その代わり彼女の携帯の中には、重要そうな情報など大して残ってはいなかった。せいぜい学者仲間や学生らの連絡先くらいだが……今の瑠璃にはそんなもの必要はない。

 密かにマイクをオンにするだけが、瑠璃に必要なことだった。
 聞こえてくるのは幾つかの声。全ての声こそ明瞭には得られぬものの、「帝の罪に無感心な大衆にこそ罪がある」だとか、「力ずくでも民衆の意識改革をしなければ」だとかの、不穏な言葉がちらほらと混ざる。
(彼女が携帯を、鞄から出してくれればもう少し判るのですが……)
 そんな感想を瑠璃が抱きはじめた頃……会話が、ふと収まった。次に聞こえてくるのは扉を開ける音……どうやら飲み物を取りにゆくらしいと気付いたところで、するりと動き出したのはもう一人の諜報員だった。

(なるほど、これほど防音が完璧なのでしたら、是非とも私も商談に使いたいところではありますが)
 そんな思考はひとまず脇に置きながら、開いた扉に向けてそっと手を伸ばした寛治。
(こういう時はローテクの出番です)
 気付かれぬよう出てきた男のスーツを撫でたなら、大枚叩いて買い付けた小型盗聴器は、予定通りに服に付着した。発する電波は微弱なものだが、壁一枚のみを隔てた場所で背景と同化できる寛治にとっては困りはしない。
(そしてハッカーたちの監視網とて、非電脳空間経由の電波までは捉えられないでしょう)
 セキュリティの穴は、いつの時代も低次元な所にこそあるものだ……人知れず寛治はほくそ笑んだ。これだけのことに随分と散財させられてはしまったが、どうせ白峯の計画を阻止することは、より多くの利益に繋げることもできるのだ。
(いまだ強固に繋がる白峯と徳大寺に、謎めいた『期日』の取り決め……間違いなさそうです。その日、彼らが再び大規模なテロを計画しているらしいことは明白だ)

 そのテロの準備が行なわれる中枢拠点、徳大寺の秘密工場への言及が零れ出てきたことは、今回の依頼で得られた、最も重要な情報であったに違いなかった。
 そうして隠されし陰謀を全てつまびらかにすると……2人は適度なところで潜入を切り上げて、秘密を持ち帰ったのだった。

成否

成功

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