シナリオ詳細
<菓想世界>チョコニャンコさん! 新しい器よ!
オープニング
●お菓子の世界『ドルフェイト』
ドルフェイド。それは、ありとあらゆるものがお菓子でできている世界。雲は綿菓子、屋根瓦は焼き八つ橋、海はサイダーで、小石はチョコレート。
一番の特徴は『この世界は【イノチの核】と呼ばれる金平糖によく似たモノさえ残っていれば翌日には修復されるから、いくら食べても大丈夫』という夢のような世界。
とはいえ【イノチの核】を奪われてしまうと修復されなくなってしまうのだという。【イノチの核】は生物や人によって身につけていたり体に埋まっていたりとそれぞれ違うようだが形は全てが星の形をしているらしい。
取り外し可能なので、たまにおっちょこちょいな生き物は【イノチの核】を盗まれたりするんだとか。【イノチの核】は他人に装着しても効果があるが、有限でもあるようで、溶けて消えてしまうらしい。
男女という概念はなく、その代わりに、毎年、金平糖が降り注ぐといわれる【流星の日】に7つ、世界に【イノチの核】が産み落とされるのだという。
また、世界は『ハイティースタンド』と呼ばれる3段の層で出来ていて、天空層、地上層、地底層があるのだと。そして、……世界は平面で有限らしい。
●吾輩はチョコレートニャンコである。名前はヴァレンティーン。
ヴァレンティーンと云う猫は、まるで山のごとく巨大なチョコレートでできた猫であった。
彼は生まれついてからこれまで、バスケット森林地帯をナワバリとして生きてきた猫である。その体格から街に行ったことはなく、時折森へとやって来てくる同胞達の土産話でその賑やかで楽しげな街の風景を想像するのが彼の楽しみだった。
そんなある日のこと、木々の葉は砂糖細工、枯れ葉はシュガーパイ、木の幹はバームクーヘンでできているバスケット森林地帯に嗅ぎ慣れない匂いと、賑やかな声が聞こえてきたのである。
なんだなんだとやってきてみれば、そこにはこの世界の万物を創造すると言われる『パティシエール』達が――彼らは自身を『イレギュラーズ』と名乗っていたが――いたのだ。
ティーパーティーを楽しむ彼らに、ヴァレンティーンは頼みごとをした。それは、この『ドルフェイド』ならではのお願いだった。
「吾輩に新しい器を作って欲しいにゃぁ」
この世界の住民は【イノチの核】を持っており、それさえ移植すれば、器は簡単に変えられる。そして、その器は【流星の日】に奇跡的な確率で生み出されるか、パティシエールが生み出すかの2種類でしかこの世に現れないのだ。
「吾輩、友人がもっとたくさん欲しいのである。もう1人で森にいるのは嫌なのである!」
ココアの涙を降らすヴァレンティーンを見て、イレギュラーズは顔を見合わせたのちに引き受けることにした。
問題は『なんのお菓子で器を作るのか』『どんな姿にするのか』である。どうも、ヴァレンティーンは大きささえ、皆と同様であれば容姿にこだわりはないようだ。
「吾輩の運命はパティシエールにゆだねられたのである!」
すっかりご機嫌になったチョコレートの猫は、大きな尾を1度だけゆったりと振った。――バウムクーヘンの木々が一部、いともたやすく倒れた。
「なんてパワーなの……」
ポルックスの呟き。イレギュラーズは聞かなかったフリをする事にした。
- <菓想世界>チョコニャンコさん! 新しい器よ!完了
- NM名蛇穴 典雅
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月27日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●おかしなお菓子と大忙しのかまど
「吾輩、友人がもっとたくさん欲しいのである。もう1人で森にいるのは嫌なのである!」
ココアの雨を降らせてニャアニャアと鳴くヴァレンティーンを見て、『小鳥の翼』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)はそっと手を伸ばした。山のように大きなヴァレンティーンに比べると、高くはないものの平均身長であるヨタカはまるで小人のようだ。
「ああ……。ココアの雨が勿体ない……。……んん、涙は君に似合わないよ……」
ぐすん、と鼻をすすりながら、ヴァレンティーンはその目をうるうるとさせているものの、ヨタカの言葉にココアの雨を降らせるのをやめた。一方で、よし、と腕まくりをするのは『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)だ。
「ようは大きさが災いして友達ができない奴の器を劇的ビフォアフターすればいいってわけだな」
「回言の旦那は話が早くていいねェ。……いいよ、キミの望みを叶えよう。我(アタシ)の小鳥も、キミの力になりたいようだしね」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)も前髪で目元こそ見えないものの、ニコニコと口角を上げてそう答えた。――おそらく、この世界の仕組みについてもだが、『桃源郷』と内心浮き足立っている大事な大事な《小鳥》が、巨大な猫とじゃれている様子を見て、面白がっているのだろう。完全なる純粋な善意と言うものをこの《ナニか》から感じるのは難しい。
けれど、ヴァレンティーンはそれに気付いているのかいないのか、助けてくれると言う各々のイレギュラーズの言葉に喜んで目を細めた。
「それならッ! 《お菓子の妖精》たるアタシの出番ね!」
『あま〜いお菓子をプレゼント♡』タルト・ティラミー(p3p002298)の言葉に、おお、とヨタカは目を輝かせた。
「頼もしい、な。俺は不器用だし……上手に作る事ができるかわからない、から……」
前回、一枚だけ上手に焼けたクッキーさえ大切に大切にしたヨタカにとって、タルトの存在はまさにスイーツの神様と言ったところだろうか。
「我(アタシ)もあれから製菓の研究は続けていたし、前に来た時より多少腕もマシになっているから猫のカタチに作ってあげよう」
ギルドで様々な商品を売っている武器商人とサーカスで演出を任されているヨタカに大まかなデザインや材料は任せることにして、一同は材料の調達に赴いた。カステラやクッキーの材料になりそうなものはそこら辺に満ちている。
「綿菓子で毛並みを表現するのはどうだ?」
「綿菓子……そうなると雲になるのかしら」
チョコレートもせっかくだから使いたいわね、とヴァレンティーンを見つめるタルト。一度温め直したチョコレートを再度形成すると味が落ちてしまうからと、このままヴァレンティーンを削るのも1つの手だと考えてもいたが、山ひとつ分のヴァレンティーンを通常の猫のサイズに削るとなると何年かかるかわからないので、辞めたのだ。
「気にしなくていいんじゃないか? 前にこの世界に来たときに、バームクーヘンの木やら、砂糖菓子の木葉やら加工したりして使ったけれど、特に劣化した感じはなかったよ」
「そうなの? もしかして異世界だからかしら」
「その可能性は大いにありうるなぁ」
召喚されたがために異世界によるユニバーサルカルチャーショックならぬ、ワールドカルチャーショックを受けたことは記憶に新しい。《旅人》同士なにか通じるものがあったようで、回言とタルトはうんうんと腕を組んで頷き合った。
さて、ヴァレンティーンのニューボディだが、イレギュラーズが考えたデザインは以下の通りだ。
1.『これまで通り猫型である』
……これは、今までの友達がヴァレンティーンを認識できるように、そしてヴァレンティーン自身がニューボディに早く慣れるように全員の意見が一致した。
2.『大きさは猫標準程度』
……ヴァレンティーン直々のオーダー、つまり、ニューボディの大前提である。
3.『蜂蜜たっぷりのふんわりカステラがベース』
通常の猫のサイズとなると、それでもお菓子としてはかなり大きいサイズのものとなる。猫特有の柔軟性があり、それでいて形のあるものとなるとカステラがふさわしいだろうと武器商人が提案した。
4.『爪など硬い部位はクッキーとコーティングしたチョコレートで作成、肉球はグミ、毛並みは綿菓子、装飾に砂糖細工』
……せっかく街に行くのだから、オシャレな姿でいこうと提案したのは回言である。ニューボディのお披露目をするならば、とっておきのものが良いと判断したのだ。
さて、これらを踏まえて、イレギュラーズはヴァレンティーンのニューボディを作り始めた。カステラ作りではヨタカがかき混ぜる係をする。回言はクッキーを型抜きし、焼き加減はしっかりと武器商人とタルトがかまどを見張る。
「少し切れ端が余ったね。……ハイ、小鳥。アーン」
「えっ、味見していいの……?」
目を丸くするヨタカ。ちなみに、先ほどまで彼は、昔絵本で見たふわふわの奴がとても美味しそうで、ばあやに良くねだった事を思い出していたらしく、焼ける生地にバターの香りが食欲をそそってたまらないのか、唾を何度も飲み込んでいたのを武器商人は見逃していなかった。
「んっ……凄く、美味しい……」
ほわほわと花を咲かすように柔らかく目を細めるヨタカに、武器商人はそうかい、それはよかったと微笑んだ。二人の間で、ヨタカが作ったクッキーの小鳥がぴよぴよと飛んでいる。
「材料の蜂蜜より甘いわねッ!」
「俺も味見したかったな……焼き立てとか絶対美味しいもの」
タルトはそれを見て羨ましいような声を上げる。甘い夢を見る女の子に白馬の王子様が迎えに来るのはいつのことだろうか。一方で花より団子と言わんばかりに、回言がのんびり笑う。
●ヴァレンティーン! 新しい身体だよ!
程なくして出来上がったのは、それはもう立派な猫だった。紫やピンクの雲である綿菓子を使った毛並みから、まるで不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫のような姿である。けれど、おかしなお菓子の世界《ドルフェイト》にはぴったりの姿だろう。
クッキーにアクセントとしてルビーチョコレートでコーティングされた爪は、タルトが丹念を込めて塗ったおかげで、まるでマニキュアを塗ったかのような美しさだ。もちろん、可愛らしい桃色の肉球は回言が自ら選んだ『ベスト・オブ・ぷにぷに』のグミだ。
スティッククッキーにミルクチョコレートをえいやっとヨタカが豪快にディップしたヒゲもチャームポイントになっている。
首元には武器商人が作った鈴カステラも添えてあった。不思議なことに、きちんと鈴らしい音が鳴り響く。初めての現象に武器商人も不思議な世界だなぁと改めて実感した。
「……うン。これはなかなかの大作。気に入ってくれるといいのだが。どうだいチョコレート族の大きな猫、ヴァレンティーン?」
「すばらしいのである!」
問いかけにヴァレンティーンは嬉しそうに喉をぐるぐると鳴らした。《イノチの核》を入れる重大な役割はタルトが担当している。何せ、お菓子の妖精なのだ。彼女より適役になる人物はなかなかみつからないだろう。
「それじゃ、外すわねッ」
取りやすいようにと地に伏せたヴァレンティーンから痛くないように、そっと、金平糖をヴァレンティーンから外す。すると、ヴァレンティーンだったチョコレートは、すっかり"ただのチョコレート"になって、そこに鎮座している。
「不思議な感じだ。……お菓子が生きてないって俺たちの世界では当たり前なのに……寂しい感じがする」
ヨタカの言葉に頷くイレギュラーズたち。
「さぁ、ヴァレンティーン。新しい身体よ」
タルトが《イノチの核》を、ニューボディに嵌め込んだ。程なくして動き始めた複数の材料から出来上がった猫は嬉しそうに一声鳴いた。
「ありがとにゃ、パティシエール」
「……よしよし。これでかなり良い感じになったんじゃないか? それじゃあさっそく街デビューしに行こうぜ」
この世界で街に行くのは初めてである。ワクワクが止まらない様子のヨタカはもちろん、回言の言葉に一同は頷いた。
――ちなみに、街へは徒歩数分とヴァレンティーンは説明して道先案内をしたのだが、それは例の巨大な体躯で移動した時の話で、今の彼のサイズでは1ヶ月はがかかったということを、のちほどポルックスは聞いて大笑いすることになる。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
コロナ太りをしました。蛇穴典雅です。皆さんはお変わりないでしょうか。体重計という名の現実から目を逸らす為にも、甘い夢を一緒に見ませんか?
(なお、題材的に飯テロな時間帯でしたら申し訳なく)
●メイン目標
ヴァレンティーンの新しい姿を作る
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