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シナリオ詳細

【CW】このメチャクチャなこうこくで宣伝を!

完了

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オープニング

 世はまさに大広告時代!
 広告が社会を変え得る程の影響力を持つミーハーの聖地ウェブ皇国!
 彼の国では日夜様々な広告が鎬を削っていたが遡ること一年前……とある広告でバズったために国民の主食がタピオカになったことを受けて、国は国内の主要産業をキャッサバ栽培一本に切り替えた!
 が、しかし! ブームの終焉と共にキャッサバの需要は激減、皇国は未曽有の大恐慌に陥ったのである!
 そして現在、皇国はこの困難を国外の企業を誘致して雇用を創出することで切り抜けようとしたのだが、どうやら少し問題があるようで……。

 皇国に降り立ったイレギュラーズたちは、自らの正気を疑った。
 まず彼らの目に飛び込んできたのは、行き交う人々の手に例外なく握られた一本の剣。
 
「“でんせつのまけん”……だと!?」

 そう、彼らが持っているのは、つい最近冠位魔種にラスアタを決めてガチ伝説と化したと噂のでんせつのまけん(CT+99、FB+99、【両手】)に違いない。
 どうしてこんなゲテモ……もといピーキーな武器がこれほど浸透しているのか甚だ謎であるが、現地での案内役を名乗る男に連れられ最初に向かった先は首都の郊外に位置する住宅街。

「なんだ、あの棒……」

 そこで彼らは再び異常を目にする。
 立ち並ぶ家々に例外無く突き刺さっているのは“先端に輪っかのついた金属の棒”に違いなかった。それも、一軒あたり三~四本は刺さっているだろう。いったい何の目的があってそんなデザインになっているのだろうかと、イレギュラーズは揃って頭を抱えた。

「おかしくなったのは、一年前からなんです」

 そんな様子を見かねたか、案内役がこの不可解な現状に至る経緯を語り始めた。

「一年前から、国外企業のCMが増えたんですよ。それ自体は悪いことじゃないんですけど、この国で広告を打ち出すことに慣れてない企業ばかりだからか、あるいはそれが逆に新鮮に映ったのか、とにかく滅茶苦茶バズったんです。それで規制する法律が成立する前に全国民に浸透してしまったものだから行政も手を出せず、さりとてこの状況を放置していたらこの国の人々の生活は危うくなるばかりなのです」

 ご覧ください、と男は一軒の家を指さす。会社帰りと思われるスーツ姿の男性が、玄関前をうろうろしながら立ち往生していた。目線は家に刺さった棒に注がれているようだ。

「あれも、国外の……この場合ゲームのCMがバズった結果ですね」

 彼らは宣伝されたものに飛びつく国民性なんですよ、と案内役は肩をすくめる。

「棒を引き抜く順番を間違えると、家にいる奥さんがペットのヒグマの餌になるか、二階に設置してある溶岩生成器から溢れたマグマをかぶって炭になります。……あ、今回は失敗したみたいですね。ちょっと彼について行ってみましょうか、あの“まけん”についても説明が必要でしょうから。……ああ、奥さんの方は十中八九なんとかなりますよ。むしろ放置したほうが安全です」

 棒を引き抜いた直後、猛獣の雄たけびと女性の甲高い悲鳴が町内に響いた。
 助けようとしたイレギュラーズもいたが、男の言葉をひとまず信じて剣を下ろす。
 スーツの男性はがっくりと肩を落とすと、腰に差していたでんせつのまけんを引き抜いて家を後にするようで、イレギュラーズ一行も気づかれないように尾行を開始する。
 
「繁華街に出ましたね、このストリートは“ナンパ通り”と呼ばれる程度には出会いの場として有名です」

 尾行すること三十分、高層の建物と往来する車の量も随分と多い首都の中心部に辿り着いたイレギュラーズ一行。
 案内役が再び指さした先には、先程棒を引き抜いていたスーツの男が女性に声を掛けていた。手に持ったまけんをみせびらかすようにひらひらと振っている。
 イレギュラーズたちは耳をすませた。

「へい彼女! 俺とお茶しない?」

 なんとあのスーツ男、ヒグマに襲われた妻を放置して別の女に粉をかけはじめたではないか!
 これにはたまらず、正義感の強いイレギュラーズの一人が飛び出さんとするが、まあ見ていてくださいと案内役が手で制す。

「ふーん。あなた、戦闘力は?」
「俺はこの通り、初回120Gチャージでゲットした“でんせつのまけん”と、招待コード『PPP』を入力してカースド装備一式を持っているから、100万はあるよ!」

 女性は男の方に振り向きもせず、スマホを見つめたまま男に問い返すが、男の方もめげずにアピールを続ける。だが……

「ふん、雑魚じゃない。シュペル装備一式揃えて国内サーバー戦闘力一位になってから出直して!」

 女性の方はお気に召さなかったらしく、あえなく撃沈。

「ご覧の通りです。みんなが“でんせつのまけん”を持っているのは、この国でCMを出したとあるアプリゲームの初回チャージ特典だからですね。ちなみに最近では、今見たようにそのアプリでのユーザー戦闘力がナンパ成功率に直結するような文化が生まれてきています」

 いやどんな文化だ。イレギュラーズの心は一つになった。

「さきほどペットの餌になった彼の奥さんに関してですが、彼がこれまたCMで宣伝された別のゲームをやっていれば無事なはずです」

 案内役の不可解な説明にどういうことだと詰め寄るイレギュラーズ。

「放置すればするほど奥さんのレベルが上がるゲームです。ペットに勝てるレベルになるまで経験値を稼ぐため、彼はここで暇つぶしをすることを選択したのでしょう。あのゲームは負けても再挑戦が可能ですからね。まあ、浮気は広告となんの関係もないんですが……」

 この国の人々の生態はどうなっているんだ。

「本題に入りましょう。最早この状況は国が動いてどうにかなるものではありません。そこで、イレギュラーズの皆さんの出番です。皆さんには、皇国の人々の平和な生活を取り戻すため、『宣伝』を行っていただきたい」

 具体的には何をすればいい? イレギュラーズの一人が男に問うた。

「そのままの意味です。目には目、歯には歯、宣伝には宣伝です。国外の広告にも負けないインパクトのCMを皆さんに作っていただき、それを我々が公共の電波に乗せて流します。異邦で数々の冒険を経験したあなた方なら、きっとすごいインパクトのCMを作れると考えています」

 宣伝するものは他者を除き自由です。ご自身やそのグッズ、思想、宗教でもいいでしょう。なんなら、お金儲けに利用していただいてもいいのですよ? との説明に、一部のイレギュラーズの目がキラリと光る。

「毒を以て毒を制す、です。イレギュラーズの皆さんの宣伝――お待ちしております。
 あ、自動追尾するドローンカメラを配布いたしますので、撮影のことは難しく考えなくて結構ですよ?」

NMコメント

はじめまして、新人NMの甘海與美(あまみよみ)と申します。
これを皆さんが読めているということは、無事にこのシナリオが審査を通過したということですね。まあこのシナリオは実在の人物団体名等とは一切関係ないので審査を通過するのは当然なのですが。
初シナリオなのでまずは軽くジャブのつもりで書かせていただきました。
二章構成を予定しております。

■目的
一章では、皆さんに何らかの『宣伝』をしていただきます。案内役の男曰く、国外のCMに負けないインパクトの宣伝をすれば、皇国に平和が戻るそうです。
具体的な宣伝の内容ですが、宣伝対象はある程度自由です。ご自身でもいいですし、グッズを作って売り出すのもいいでしょう。アカい思想だって広められます。お金儲けだってできちまう!(できるとは言ってない) 
ただし、他PCの宣伝についてはお控えいただくようお願い申し上げます(事前に示し合わせたうえでグループタグを一行目に設定いただければその限りではありません。アイドルとプロデューサーなどの関係で他のPCと共演したい場合は示し合わせたうえでグループタグの設定をお願いします)
うちの子はこんなキャラクターなんだ! という紹介のつもりで気軽にご参加ください。

二章は……皆さんの行動次第ですが、もしかしたら戦闘になるかもしれません。

■世界観
ウェブ皇国:広告がとにかく強い国です。広告されたものがバズり、広告されたものを人々が真似するようになります。隣国にAC(アンチコマーシャル)連邦という国があり、仲が悪いです。

宣伝に必要なものがあれば適宜生やしますので、戦闘力を誇示するためにわるいゴブリンがいるかもしれないし、空中にホログラムを投影できる科学力だってあるかもしれません。なんかそんな感じなので時代設定とか難しいことは考えなくてもお楽しみいただけると思います。別にそういう背景設定考えるのが面倒だったとかそういうことではないです。ただし失われた古代文明があります。

このシナリオの情報精度はE(当社比)です。真実よりも宣伝が力を持ちます。

  • 【CW】このメチャクチャなこうこくで宣伝を!完了
  • NM名甘海與美
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月08日 16時03分
  • 章数2章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

「クソ! クソ! クソ!」

 皇国某所、地団駄を踏み唾をまき散らしながら悔しがる男がいた。
 もしイレギュラーズがこの場にいたのならピンときただろう。
 彼は紛れもなく、イレギュラーズたちに皇国の現状を伝えて回ったあの“案内人”に違いなかった。

「おのれイレギュラーズ……もっと身勝手な宣伝で皇国を混乱させていればいいものを……!」

 そう、彼は決して皇国の人間ではなく、ましてや皇国を憂う者ですらない。
 猛る怒りを鎮めるためにひとしきり暴れ、やがて落ち着いたのか額の汗を拭う“案内人”。
 汗と手で拭ったことにより、額に施していた特殊メイクが剥がれ落ちた。
 メイクの裏に隠れていたのは――『AC』という消えない刺青。
 そう、彼はウェブ皇国の隣国にして敵国――AC(アンチコマーシャル)連邦のスパイだったのだ!
 一年前から暗躍していた彼らは、広告に踊らされやすいという皇国民の性質を利用することで皇国内部を混乱に陥れようとあの手この手を使った。
 最初にやったのはタピオカをバズらせることで主要産業をキャッサバ一本にするように仕向けること。そしてすぐさま別の食品を流行らせ、皇国の経済をガタガタにした。
 そのあとはもう消化試合だ。大恐慌で外国資本に頼らざるを得なくなった彼らを内側から食い破ればいいだけのこと。札束でメディアを乗っ取り、トンチキ広告を広めて市民の生活さえも崩壊させれば、戦わずして皇国はAC連合の足元に跪く――そのはずだった。
 たった一手、イレギュラーズという異邦の住人達も計画に加え入れてしまったことで、全てが破綻しようとしている。
 彼らに期待したのは、自分たちの視点、経験では思いつかない斬新な広告を打ち出してもらい皇国を更なる混乱に陥らせることであった。しかし結果はどうだろう。
 人々はプリンピックや古ロリババア本でかつての大恐慌に比べ随分と活気を取り戻し、へっちな広告のせいで出生率も増加してなんかめでたい雰囲気になってしまった。こうなっては無理矢理軍事力で屈服させる他ないが、どこぞの大艦巨砲主義者のせいで軍拡が進み、それも難しい。
 しかし、賽は投げられたのだ。
 AC連邦のスパイとして、もう失敗は許されない。

「これ以上イレギュラーズに広告を出されればジリ貧だ……」

 ――今、やるしかない。

 “案内役”だった男は、最後の切り札を切るのだった――!



『――親愛なるウェブ皇国の諸君』

 突如、街中にある広告用ビジョンが一斉に一人の男を映し出した。
 それを見たイレギュラーズたちは、その男が“案内人”であるとすぐさま気づいただろう。
 だが、様子がおかしい。柔和な雰囲気を醸していたかつての面影はなく、目は血走って額にはACという刺青が見える。イレギュラーズたちは自らの経験で、なんとなく異常な事態が進行していることを悟るだろう。そして、それは正しい。

『これより、お前たちの国中に潜ませておいた兵器を一斉に起動させるッ!』

 男が手に持ったリモコンのボタンを押した直後、皇国の至る所で同時多発的に爆発が起きた。

『お前たちは知っているか? 遥か昔、古代に喪われた彼らのことをッ!』

 各地で一斉に起動された人型の何かを見た皇国人の一人が声を上げた。

「バ、バカなッ……!? あれは失われた古代広告の……二足歩行掃除ロボット『ペッポー』!?」

 いまいちピンと来ないイレギュラーズたちをよそに、次第に状況を理解した皇国民たちから悲鳴が上がる。

「“100%”除菌ロボット……おのれAC連邦! 誇大広告は国際法違反だぞ!」
『誇大広告かどうかは貴様らが流す血によって証明されるだろう。この地上から汚らわしい貴様ら皇国民を“除菌”すれば、誇張すら真実に変わるッ! やれ! ポッパーたちよ!」

 各地で飛び交う怒号、悲鳴。軍拡により武器が一新されたにもかかわらず、皇国民の心がそれにおいついていない。
 なぜなら、『宣伝』されてしまったからだ。

 ――『これから皇国は滅ぶ』と!

『フハハハハハ! 我々にぬかりはない! ポッパーの一体一体にスマホとアプリの新規アカウントを配布して初回120Gチャージ特典の“でんせつのまけん”と招待コード『PPP』の入力によって手に入るカースドセット一式も装備させているのだからなぁ!』

 最早『宣伝』がこれ以上ないほどに決まった以上、皇国民単体ではAC連邦のテロには勝利できないだろう。
 だが、ここにはイレギュラーズがいる。
 このような暴挙に出たAC連邦の野望を阻止するのだ!
 具体的には自分たちが各地のポッパーを撃破し、その様子を皇国民に見せて高らかに宣伝するのだ!

 ――皇国にはイレギュラーズがついているのだと……ッ!



 以下NMコメント

 というわけでここからは、皇国各地で武装蜂起した古代広告の品『100%除菌二足歩行掃除ロボットポッパー』と戦って皇国民たちの勇気を取り戻しましょう。
 『ポッパー』たちは皆共通ででんせつのまけんを装備しており、加えて個体ごとにさまざまなカースド装備を身にまとっています。なんておそろしいんだ……!
 なんとか『ポッパー』たちを撃破しその様子を『宣伝』して皇国の人々に見てもらえば、彼らは勇気を取り戻し一緒に反撃してくれるでしょう。では健闘を祈ります!


第2章 第2節

メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種

「カースド装備のご利用は計画的に、ですのよ? まあそれはともかく、華麗にやっつけて参りましょうか!
 皇国の平和を乱すその所業――お天道様が見逃しても、この蕩ける瞳が見逃しません!」

 突如として響き渡るポップでキラキラしたメロディーと共に、口上を述べ颯爽とビルの屋上から飛び降り華麗な着地を決めるは誰あろう、以前インモラル一歩手前の広告を流し、今や皇国の人気セクシー女優としての地位を確固たるものにしていた『蕩幻卿』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)であった。
 メルトアイの代名詞である計六本の触手が翼のように広がる。
 彼女の存在に気づいた付近のポッパーたちが襲い掛かるが、もう遅い。

「揺蕩う触手はせいぎの証! 舞い踊れ――メルティ☆ハートッ!」

 あらかじめ触手に貯めておいたエネルギーがポッパーたち目掛けて放出される。回避をFBさせながら動力の中枢に彼女の攻撃を受けたポッパーたちが、次々にその稼働を停止させていった。
 だが、生き残ったポッパーのうちの一体がでんせつのまけんを盾に彼女に肉薄し、まけんを捨てて殴りかかった!
 
「はじける衣服はせいこうの布石! メルティ☆チョークスリーパーッ!」

 だが、それを衣服を破りながらも耐え忍び、お返しに触手でポッパーを締め上げるメルトアイ。
 ピンチをチャンスに変えるメルトアイの姿を見た皇国の人々は(主に男性陣が)元気と勇気を取り戻した!

成否

成功


第2章 第3節

マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一

 『マッスルプリン☆バーサーカー』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)は先の騒動に気づいていなかった。ポッパーとかAC連合そっちのけで、きたるプリンピックにおける皇国の代表内定入りを目指して日常の全てをプリンに捧げていたからである――。

 実況:地元のダチコー
 昨今のルールの整備と選手が選択できるプリンの摩擦係数に関する考察が進んだことで、先駆者であり考案者でもあるマッチョ ☆ プリン選手ですらトップであり続けるためには一分たりとも妥協を許されないほどの魔境と化した現代プリンスライダー。
 しかし彼が未だその頂点に座しているという事実が、彼のプリンに賭ける情熱の大きさを物語っている。
 さあ、いよいよ優勝候補筆頭、プリンといえばこの男ッ! 今、スタートの号砲と共にマッチョ ☆ プリンが走り出したッ! 助走をつけてファーストプリンをブレイクッ! このあたりはさすがの……おっとここでアクシデントだ! 進路上に敷かれたプリンを蹴散らしながらポッパーが飛び出してきた! ここで止まってしまうのかマッチョ ☆ プリン!?

「スライディィィング!」

 ――け、蹴散らしたァ! 皇国の黄色い閃光がポッパーをあっという間に星へと変えた! 本人はこれに気づいているのか!? 妨害に遭いながらも記録更新ペースで滑走を続けるこの男に場内大歓声ッ!

 


 ――記憶にも記録にも残るこの滑走は、皇国に勇気を齎した。

 
 

成否

成功


第2章 第4節

小平・藤次郎(p3p006141)
人斬りの鬼

「なるほど、アレをぶっ壊してワシらの凄さを見せつけるわけじゃな!」

 愛用の刀を構え、ニヤリと笑みを浮かべる『人斬りの鬼』小平・藤次郎(p3p006141)の周囲を、多数のポッパーが取り囲む。
 多勢に無勢?
 否――足らぬ。
 異世界で剣客として数々の修羅場を潜り抜けてきた彼にとって、この程度物の数にも入らない。

「喧嘩で金がもらえるなら安いもんじゃ! たたっ壊すぞ!」

 瞬間、一番近かったポッパーの首が――ズレた。
 この場の誰も、藤次郎の抜刀に反応できなかった。

「どした? この程度か――?」

 挑発するように手招きをする藤次郎を見たポッパーたちが、今度はこちらだと言わんばかりに一斉に襲い掛かる。だが、

「――桁が一つ足らんなァ!」

 まさしく紫電一閃、再び抜刀の構えから、今度は左足を軸にぐるりと独楽のように回転しながらポッパーたちの体を横一文字に切り裂く藤次郎。きちんと撮れてるじゃろか、などと上空のドローンカメラに目配せするだけの余裕を残して周囲のポッパーを狩りつくした彼は、声を張り上げて『宣伝』した。

「楽しい喧嘩の時間じゃ! 日頃の鬱憤はらせ! 退屈をぶっ壊すんじゃ!」

 それを見た皇国の人々はああそうかと納得した。

「なんだ、テロかと思ったけど祭りだったのか!」
「みんな、丸太は持ったな!」

 ――これはAC連合のテロなどではなく、あらゆる暴力が許容される祭りなのだ。人々は武器を手に立ち上がった。

成否

成功


第2章 第5節

 皇国の民が立ち上がる。
 “祭り”の空気にあてられた人々は大鑑巨砲の兵器を駆り、次々にポッパーを破壊していく。
 路上に整然と並べられたプリンに引っかかったポッパーたちはその場で延々と転び続けた。
 空戦用カースド装備により飛行するポッパーたちには、とあるカルト宗教の免罪符を懐に忍ばせている翼の生えた古ロリババアたちが応戦、間もなく制空権を奪取した。

「馬鹿な……そんな馬鹿な……!」

 元案内役の男は呆然とした表情でモニターに映るポッパーたちの末路を見る。
 広告至上主義とも言えるウェブ皇国で、まさかモニタージャックによるテロ宣言がイレギュラーズたちの“口コミ”に負けるとは……!
 奥歯を噛みしめ崩れ落ちるAC連合のスパイ。そこへ、居場所を突き止めたイレギュラーズ達が詰めかけた。

「お前たちが……お前たちが邪魔さえしなければ……!」

 恨み言を吐く男には、しかしもう抵抗する気力はなかった。イレギュラーズに連れられ、男はあえなく御用となり一連の事件は幕を閉じた。
 世間ではテロ事件を“祭り”に変えて見せたイレギュラーズたちの雄姿が宣伝され、瞬く間に異世界ブームが起こった。こいつら懲りねえな。
 ともあれ、皇国にはかつての活気と平和が戻ったのだ。めでたしめでたし!

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