シナリオ詳細
越境図書館とボキャッジ禁書
オープニング
●はざまの図書館
本を愛する者。本を追い求める者。本に人生を捧げた者。
そんな彼らが夢見るという、ある秘境の話をしよう。
「『越境図書館』を聞いたことはあるかね」
金色のパイプをくわえ、深く煙をはく老人がいた。
まえかけのように豊かな白髭と三角帽子。ローブは黒と白の入り交じった美しい模様が描かれている。
老人のはき出した煙はもくもくと形を変え、巨大な樹木や船や島や、石の城や井戸といった場所に開くゲートの存在を示していた。
「異空間のはざまに存在するというその図書館には、コレクターたちが欲する様々な本が眠っているそうだ。
しかし本を読むことも持ち出すことは許されず、その禁を犯す者には死の制裁を与えるという」
興味を示したのか、聞き手がわずかに身を乗り出す。
対して老人は手を翳し、首を小さく振った。
「本というのは恐ろしいものだぞ。
持ち主の生涯や信念が打ち込まれ、時として大衆の願いすらも吸い上げていく。
そうしてできあがった本は聖書や魔書と呼ばれ崇拝や力の行使に用いられることもあれば……時には異書や禁書と呼ばれ、焼かれることもある。
だが中には、持ち主たちの人生をも狂わせ死よりも恐ろしい運命を押しつけるものもあるのだ。
ワシが依頼するのはそのなかのひとつ『ボキャッジ禁書』。越境図書館に置かれている本のひとつだ」
禁書のコレクターだという依頼主は、伝説にあるボキャッジ禁書の容姿とそのありかを説明してくれた。
「越境図書館に入る所までは考えなくてもよい。
今回は偶然だが、ゲートが開く場所を特定できた。一度限りだが侵入することができる。
問題はその後だ」
再び煙を吐く老人。煙が本棚に挟まれた広々とした通路を示した。
しかし一般的に考えられる図書館とは異なり、本は鎖でしっかりと固定され、持ち出すことはおろか触れることにすら禁忌を感じさせた。
「越境図書館は文字通り、異空間への境界を超えたところにある。それゆえ、空間と空間が複雑に繋ぎ合わさり、やみくもに歩き回ればたちまち迷ってしまうだろう」
煙で再現された人形が図書館を進んでいく。
進んでいくと、突如として別の空間に入り、周囲の棚の並びや雰囲気ががらりと変わった。どころか場所によっては空間の上下すら反転して、人形は頭からどすんと床に落ちてしまう始末だ。
効率的に、そして安全に探索するすべが必要となるだろう。
「目的の本を見つけたなら、それを持ち出して越境図書館を脱出するのみだ。
むろん、禁を犯したとして魔のものが襲いかかるだろうが、それを倒し時にははねのけて進め。
それまで通ってきた空間のルートを間違えないようにするのだぞ。もし迷ってしまえば、恐ろしいことになるだろう」
越境図書館は異物を内包し続けることを嫌うとされており、戦闘不能になったなら強制的に外へと放り出されるという。また長すぎる時間図書館に居続けることも危険になるそうだ。
「繰り返すが、ワシの依頼は『ボキャッジ禁書を持ち帰り提出すること』だ。
それ以外のことは関知しないつもりだが……本来の目的だけは忘れぬようにな」
老人はパイプを翳し、厳しい顔でそう締めた。
- 越境図書館とボキャッジ禁書完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年04月14日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●図書館ゲートと山河の古城
ぴちゃん、という滴の音が反響する。
『魔法騎士』セララ(p3p000273)がやってきたのは石で作られた古城だった。
「ここはマントイフェル城という。かつては高い軍事力をもった将軍のもっていた城だったが、盛者必衰というものか」
依頼主の老人が煙草を吹かしながら先導する。
「ゲートはこの先だ。準備はよいか」
「ふっふっふー。既に遺跡を2つも攻略してるボクにお任せあれ。でも異世界の図書館って結構気になるよ。面白い漫画とか無いかな。持って帰ってきちゃダメ?」
老人は難しさと面白さでできた左右非対称な顔をして振り返った。
「『ボキャッジ禁書』を持ち出せるなら、好きにするといい。だが、お主らを1チームとして投入する意味は理解できるな?」
「単身での任務遂行はきわめて難しいということだ。もし余計に持ち帰りたいなら、仲間の協力が必要になる……そうだろう?」
『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442)は少しうきうきとした様子を隠さぬまま、剣に手をかけた。
「とっちはともかく、『例の作戦』の方は把握してる。協力できる筈だ」
いかめしい石像を眺めていた『生き人形』雫(p3p002862)が『ああ例の』と呟いて振り返る。
暫く進むと、両開きの扉が見つかった。
傭兵らしき人間が厳重にその扉を守っている。
扉を開くと、その向こうが奇妙にぼやけていた。そのうえで、城の中の風景とはまるで違う風景が広がっている。越境図書館の風景だ。
「いいか。チャンスは一度きりだ。ボキャッジ禁書を持ち帰れ」
「禁書、素敵な響きじゃない……ふふっ」
「そうだね」
『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は『依頼人がものすごくイケ爺だ』と頭で考えながら後ろに並ぶ。
ゲートを潜るには一列になるようで『天邪鬼七変化』両極 優樹(p3p004629)はその後ろについた。
「対人ならあーしに心得あるんやけど、物やから今回は大変やわぁ」
「魔導書タイプのモンスターはある程度知っています。注意してください」
その更に後ろには『メガネ小僧』メド・ロウワン(p3p000178)。
コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)と神宿 水卯(p3p002002)が前後を挟むように立った。
「技術的な事が記された本があったら、持って帰りたいなーとか思っちゃけど」
「忍術書とか、あるわけないか? でも脱出直前に手近な本を抜くぐらいは……」
「ダメだよねー、うん。我慢我慢!」
イレギュラーズたちは頷き合い、ゲートをくぐっていった。
●越境図書館
水卯やメドがゲートを超えて最初に感じたのは空気だった。
まるでプールに飛び込んだような、温度と流れの異なる空気。思わず深呼吸をしたくなるような深く美しい紙の香り。
次に雫や優樹たちが感じたのは足の感覚だ。
ゲートから地面までの相対距離が数十センチ違うせいで、がくんと身体が落ちたように感じたのだ。目隠しをして段差を下りると感じるアレである。
ついで、自分の靴がやわらかい絨毯に受け止められる。
「なるほど……」
そうしてやっと、風景を改めて見ることになる。
高い高い天井。遠目に分かる天井の美しい装飾。
壁までの距離は驚くほど遠く、見たところ巨大なドーナツ状の作りになっているようだった。仮に空間が乱れていなかったとしても、端から端まで走りきるにはけっこうな時間がかかりそうだ。
そして陽光のひとつもさしていないのに不思議と明るい室内には、子供が駆け回ってもよいくらい広々とした通路がとられ、その両サイドには本棚が並んでいる。
最初『本棚』と聞いたとき、背表紙をこちらに向けて本が詰め込まれているさまを想像していた優樹たちだったが、依頼主の話にあるとおり本は全て鎖でしっかりと固定されていた。持ち出すには鎖を切っていくか、丁寧に時間をかけて固定具を外すしかないだろう。とはいえ、普通に行けばその機会はたった一度しかないのだが。
「気をつけて進んでいこうね」
「本までの道程はマーク着けて行くみたいやから……消さんように気を付けて行動しはるね」
「お願いね」
にっこりと笑いあうセララと両極。
「マークにはこれを使おう」
リゲルは羊皮紙に印をつけたものを束にして配った。
「もう知ってるとは思うけど、確認しておこう。これは探索と脱出の際に迷わないための工夫であり、図書館への配慮だ」
通路探索と言えばマーキング。消えないようにナイフで傷をつけたりチョークやインクで文字を書き付けたりというのがパッと思いつきやすいが、それによって図書館がいきなり『死の制裁』とやらを発動するやもしれない。
絵物語に出てくるような『宝をあさりにきた愚かな盗人』のようにならぬよう、図書館がギリギリ怒り出さない程度に紙片をあちこちに残しておこうと決めたのだ。
対象としたのは――扉(メド担当)、本棚(リゲル担当)、壁(水卯担当)、床(コリーヌ担当)の四つだ。それぞれに数字と文字を組み合わせた色違いの付箋を持たせている。
「歩いてきた道順は、これで目印にするつもりだけど……」
雫がロープを手に取った。全員で持ち寄った分をあわせても100メートルないだろう。図書館の広さから察するに、途中でつきてしまうに違いない。
だがそうなったらなったで雫は自分の髪をどるどる伸ばせば代わりに出来るので、そこは心配なさそうだ。
ムスティスラーフが『じゃあ僕が先導するね』といってふわふわと飛行し始めた。
探索はなかなかに壮絶だった。
普通に通路が続いているなと思って進めば急に本棚にぶつかって行き止まりになったり、空間のつながりが逆転しているせいで実質的に数メートルの段差ができていたり、音があちこちからするけどそれがここに向かっているのものなかどうか分からなかったり。
空間の非連続性というのは彼らが思った以上にえげつないものだった。
それでも、ムスティスラーフは段差にかかわらず飛行を継続できる。そのうえで水卯がアクロバティックに本棚を上り下りしてロープをわたしたり、コリーヌの正宗くん2号や雫の呪髪で道を作ったりして比較的安全に進むことができた。
「結構、めんどくさい感じになってるねー」
手帳にこれまでの道筋を書きとめながら、コリーヌが難しい顔をした。
空間のつながり方は本当にめちゃくちゃで、本棚だらけの似たような景色ばかりなせいで記憶がかなり難しかった。まっすぐ進んだら一度来た場所に戻るなんてザラである。
印をつけて進まなければたちまち迷ってしまっただろう。いや、印をつけてもたびたび整理する必要があるくらいだ。
「案内図くらいあればいいんだけどね」
そう言いながら進もうとしたムスティスラーフを、メドと水卯が引き留めた。
水卯が変な音が聞こえると言うのだ。
地面をかりかりとひっかくような音だ。
メドがよく観察してみると、地面に一冊の本が落ちている。黄金のカバーがなされた美しい本で、青い蝶と手を繋いで遊ぶ少女たちの図柄が描かれている。
「なんだろう。触ってみてもいい?」
「まってください。罠かもしれません」
メドがいうには、美しい本を手に取った途端相手の生命力を吸い上げる呪いの本があるという。
魔術を練って投げつけてみると、なんということだろうか、本から少女のような腕がはえ、宙に浮き上がったではないか。
それに伴って、近くの本棚から鎖を自ら千切って魔導書が火を噴いた。ページの隙間から飛び出した炎が蛇のような形をとり、こちらに頭を向ける。
さあ、戦闘の始まりだ!
放たれる炎の魔術を水卯はぴょんぴょんと飛んでかわしていく。
そのまま勢いよく距離を詰めると、防御用マントで炎を遮りながら突撃。
宙に浮かぶ魔導書を蹴り飛ばす。
くるくると回転しながら飛んでいく魔導書だが、途中で炎を吹いて制動をとった。翼のように広がる炎が水卯を襲うが、水卯はスローイングナイフでの格闘で対抗した。
ナイフが本を貫き、どさりと地面に落ちる。
次は何だと身構えるが、どうやらそこで終わりのようだ。本は自らを燃やし、灰となっていった。
一方で少女の腕をはやした魔導書は空気に溶けるように透き通った腕をメドめがけて素早く伸ばしてくる。腕が首を掴んだ途端、精神が引っ張られるような感覚があった。
対してメドは魔弾で対抗しながら距離を取りキュアイービルで自分の異常を回復しはじめる。
充分に距離を取った所で、雫の呪い人形がメドの横をかすめるように飛んでいった。
魔導書の至近距離へと近づき、赤黒い髪を伸ばしてぐるぐると巻き付けていく。
やがて髪に埋もれた魔導書は、そのまま溶けるように消えていった。
危ないところだった。雫は長いまつげが伏せる。
「この図書館の本って、こういうのばかりなのかしら」
こういうのばかりだった。
「セララ団長! 貴方の死角は俺が護ります!」
リゲルの盾に、影のような魔物が爪をたてる。
がりがりと表面をけずるように通り過ぎ、振り抜いたその途端。リゲルは鋭く剣を突き立てた。
剣が影を貫き、ぎゃあという悲鳴と共に影は数枚の紙片になって散っていく。
一方、リゲルの脇をすり抜けた影の矢がセララに刺さる。
直撃を受けたのかよろめくセララだが、ムスティスラーフが急いでキュアイービルをかけてやった。
攻撃された瞬間が最大のチャンス。
「今だよっ」
「ボクの必殺剣を受けてみろ! セララスペシャル!」
セララは素早く距離を詰めると、影をざっくりと切り裂いた。
きらりと光る剣。
セララやリゲルたちは頷きあい、ムスティスラーフもこっくりと満足げに頷いた。
そこへ、ここぞとばかりに突っ込んでくる魔導書。
表紙についていた人の顔がカッと開き、目と口から光線を発射する。
そこへ突っ込んでいったのは優樹だ。
優樹は組技をしかけて倒すと、コリーヌがガトリングを構えた。
「どいてどいてー!」
トリガーを引いてガトリング射撃。
魔導書は魔法の壁をはったが、その壁をばきばきに貫いて魔導書を蜂の巣にしていった。
こんなもんかな、と武器を下ろすコリーヌ。
振り返ってみると、そこには黒い本がひとつ。
奇妙な模様とシンボルマーク。
タイトルは無く、しかし奇妙な存在感があった。
依頼主から受け取ったスケッチを見て、頷く。
「これが、『ボキャッジ禁書』……か」
「鎖でしっかり固定されてるね」
「解くのは難しくはなさそうだ」
触れる前にしばし観察してみる水卯やリゲル。
「僕が持って走る役目だったよね」
ムスティスラーフが手を上げると、メドたちが頷いた。
「敵の攻撃は僕が受けます」
「まずは全力で走って逃げて……」
「逃げ切れないほど多くなったら戦うのよね」
セララと雫はコリーヌのまとめた道順をもう一度頭に叩き込みつつ、それぞれの武器を構えた。
作戦としてはまず距離を稼ぐというものだ。チームのうち一人がブロックされたり離れたりした場合の作戦は用意していなかったが、逆に言えば一点突破狙いの鋭い作戦ということである。
いざとなったらパンドラの奇跡にモノと言わせてごり押ししたっていい。
「あーしは禁書の近くにある本をザックに数冊拝借しつ逃走開始やわ。禁書だけに反応しいひんやろうから撹乱できたらいいわぁ」
優樹はザックを広げて鎖を解く構えをとった。
うんと頷く一同。漫画本をサッと構えるセララ。
「それじゃあいくよ」
手を伸ばすムスティスラーフ。
ごくりと息を呑むコリーヌ。
「こういう脱出シーン、映画で観た事ある、けど……」
●脱出劇
「自分が体験する事になるとは思わなかったけどぉー!?」
コリーヌは歯を食いしばって全力疾走していた。
本を封じる鎖に手をかけた途端にあちこちの本棚から本が飛び出し短冊の束や巻物や、分厚いカバーの本や動物の皮でできた本、四角い鉱物の板など様々な『蔵書』が明確な敵意を持って襲いかかってくるのだ。
それを知りつつ急いで鎖を解き、本を抱えて突っ走るムスティスラーフ。その周囲を固めるコリーヌたち。
一方でセララはえいやっと鎖に自分の作った漫画本を引っかけ、走り出した。
ふと見ると、優樹が近くの本をいくつか奪ってザックに詰め込んでいる。
ごく当たり前の警備システムなのだろうか、優樹めがけて影の魔物が三体ほど飛びかかっていく。
よい攪乱作戦になりそうだ。優樹は奪った本の一つを掴んで投げつけ――ようとした途端、手の中で魔力の爆発がおきた。
本がひとりでに開き、闇を吹き出し始めたのだ。闇の中からのぞいた目が優樹の心を直接攻撃し、そこへ影の魔物が群がっていく。
こうなってはもはやひとたまりも無いだろう。
一方で、あちこちから蔵書が飛び出す図書館を突っ走るコリーヌたち。
「そこを左、それから右左右で、ターンすれば――!」
ぎゅんと絨毯の上をターンして来た道を逆走。
するとゲートの扉が100メートルほど先に見えた。
その寸前に、大量の本が待ち構えている。
「居ると思った! 纏めて吹き飛ばすよー。巻き込まれないように注意してね!」
コリーヌが円盤状の物体を放り投げると、物体はシャカシャカ走っていって勝手に爆発した。
爆発をくぐり抜けて突っ込んでくる無数の魔物。
一方で背後からは大量の魔物がぶわっと押し寄せる。大量の敵に囲まれることは想定の内だ。
セララとリゲルはそれぞれ前後に立って剣を構えた。
「ここはボクに任せて先へ行って!」
「本は溢れ出る知的欲求を他者に見て欲しいという渇望が詰め込まれている場合もある。貴重な知財は守るべきだが、誰の目にも届かぬ場所で管理する事に何の意味がある? 保護するだけでは無価値な置物と成り果ててしまうぞ!」
それぞれ名乗り口上をつかって3体ほどの敵を引きつける。
ムスティスラーフは後を任せて走り出し、集中する攻撃をメドが引き受けていく。
これまでもムスティスラーフを狙った攻撃を引き受けていたので体力は限界に達していた。
ばたんと倒れるメド。ムスティスラーフに殺到する魔物。
「受け取って!」
飛んできた本をキャッチする水卯。
「勝手に持って行ってごめんね!」
と言いながら水卯は飛びかかる魔物を殴り倒した。
本が地面を素早く滑り、飛び出した岩の腕が水卯の足を掴む。
ならば、とばかりに投げた本が空中を回転。
ジャンプしてキャッチしようとする影の魔物が空振りして墜落。更に二体三体の魔物が空振りした末、ジャンプした雫が本をキャッチした。
ごろごろと転がる。目指すはゲートだ。
雫を捕まえようとした魔物が爪を繰り出すが、雫の髪を切るだけだった。
ギリギリのところで雫はゲートをくぐり抜け、かの古城の一室へとたどり着く。
慌てて扉を閉める傭兵たち。
直後、扉が勝手に開いてばたんきゅーした仲間たちが一塊になって飛び出してきた。
「うーん……なんとか……」
「なったみたいね」
ゆらりと起き上がる雫。彼女の差し出したボキャッジ禁書を、依頼主の老人は満足そうに受け取った。
「うむ、確かに。以前に送り込んだチームは全員解体されて戻ってきたからな。一人も死なずにこの仕事をこなすとは、たいした物だ。機会があったら、また仕事を頼もう」
だがとりあえず今は休んでおけ。
依頼主のそんな言葉に、雫はちらりと振り返った。
気絶して倒れた仲間たちが山になっている。彼らを起こして手当するのが、先のようだ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズの皆様。
今回回収されたボキャッジ禁書がどんなものなのかはわかりませんが、そのうち禁書に絡んだ依頼がやってくるかもしれませんね。
けれど今は、疲れた身体をゆっくりと休めてくださいませ。
GMコメント
【オーダー】
『ボキャッジ禁書を持ち帰り提出すること』
越境図書館の中を探索(探索パート)
↓
ボキャッジ禁書を獲得
↓
積極的に襲いかかるモンスターをかいくぐって脱出(脱出パート)
が正規ルートとなります。
途中で別のことをしようとするとそれだけ難易度が上がっていくのでご注意ください。
●依頼概要
・空間転移(短):空間が細かく途切れ途切れになるため五感を用いた探索に不向きです。
・時間制限(短):時間が限られているため、HP回復などの途中休憩がとれません。
・強制排出(HP0):戦闘不能時に強制排出され、全行動が終了します。
・探索パート:探索パートがあり、工夫によって探索を効率化できます。
・脱出パート:脱出パートがあり、脱出にかかるターン分戦闘を継続する必要があります。
【探索判定】
・探索パートでは新しい空間に訪れたところでロールし、
ロール値に応じて以下のうち1種のイベントが発生します。
A:エネミーが襲ってくる
図書館を徘徊する魔のものとの戦闘状態に突入。
発生対象はエネミー表からランダム。
B:魔術トラップが発動
蔵書のひとつが付近の人間に対してちょっかいをかける。
メンバー一括で回避ロールを行ない、失敗したら次の戦闘時にランダムなペナルティがつく。
罠解除や探索関係の技術を上手に行使すると全員の回避にボーナスがつく。
C:ボキャッジ禁書を発見(レア)
ひたすら進み続ければボキャッジ禁書を見つけることができます。
ただし工夫次第で遭遇確率を上げることもできます。
【脱出判定】
脱出パートでは、襲いかかるエネミーに対処しながら脱出を試みることになります。
ルールは以下の通り。
・副行動は『移動』に限定される
・パート開始時のエネミー数は5。種類はエネミー表からランダム。包囲状態からスタート。
・毎ターン開始時にエネミーが『現在ターン数-(1D3)』ずつ発生し続ける。
発生場所はランダムな壁際。
(ターンカウントは『ボキャッジ禁書』獲得時から計算)
・脱出完了時点で『ボキャッジ禁書』を誰かが所持していれば成功。
・トラップは発動しない
【エネミー表】
越境図書館では以下のエネミーが発生します。
甲:生きた魔導書
魔術的な生命を得た魔導書。様々な理由で人に害をなす。
基本的に自律飛行し、魔術を放つとされる。
短所:回避、防御技術
長所:命中、攻撃力
→使用スキル
心の隙(神近単【乱れ】):対象の心を乱そうとします
精力剥奪(神近単【苦鳴】):魔力やスタミナを奪い取ろうとします
乙:呼び出された影
書によって呼び出された魔物。
紙のようにうすっぺらく切り絵細工のような形をしている。
基本的に足の無い人型。爪や矢によって攻撃する。
短所:反応、機動力
長所:EXF、回避
→使用スキル
影なる爪(物至単【痺れ】):影でできた爪で切りつけます
影なる矢(物遠単【毒】):影でできた矢を放ちます。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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