シナリオ詳細
反転衝動レゾナンス
オープニング
●覆水盆に返らず
戦場。戦況。狂う。乱れる。
夢を見た。俺も勇者になれるのだ、と。
握った剣が俺に応えてくれる。
必ずや悪を滅ぼそうと誓った仲間が、俺について来てくれる。
けれど。俺は何時だって先頭で『孤独』だった。
誰も俺の隣になんて、立ってくれなかった。
震える瞳を射抜くように、敵の女は俺を見た。
抗うことが出来ず、俺はただ前に進む。
足が、言うことを聞かない。
惹かれるように。運命のように。
俺は女の元へと、我武者羅に進む。定められた轍を進むように。レールがそこにあるかのように。
「レオ! 駄目よ、そっち側に行っては行けないわ!」
「レオナルド! 気を確かに!!」
愛しい声。相棒の声。
けれど、嗚呼。俺を呼ぶ声がした。俺に嘯く声がした。
握った剣が震える。固く握った手が揺れる。
――俺を呼ぶ、声が。
心を揺らす。揺らす。
世界をこれほどまでに愛し尽くし、戦い、失い、傷ついてきた。
俺はいくつも、失ってきた。
ならば、世界だって失うのが筋というものだろう?
「●☆◆★◇□*△!???」
『レオナルド』
「○▼※△☆▲※◎★●!!!!」
『この手を』
「●△◇★□◆☆◆*!?!!」
『とりなさい』
――そうだ。俺が世界を壊せば、いいのだ。
「あは、は、――ははははははははははは!!!!!!!!!」
「レオ!!!」
『貴方は間違っていないわ』
『レオナルド。共に世界を壊しましょう』
この日、勇者は悪に堕ちた。
そして、世界が滅んだ。
●抗えぬ衝動の夢を
「正直あまりおすすめしたくない物語なんだけどね」
カストルはその表情に影を落として。長い睫毛が揺れる。
手に握られた本。黒地のそれ。けれど、触れたくないような、そんな見た目。
心を乱す何かがそこにある。
手を伸ばしては――いけない。
「君たち特異運命座標(イレギュラーズ)で言うところの、反転や狂気に近い現象が起こる世界だ。
抗えないんだ。その衝動には」
赤い瞳が揺れる。揺れる。カストルはそれでも、と続けた。
「あくまでそれは夢の出来事で終わるんだ。だから、きっと君たちは無事に帰って来れる。
けれど、心まで無事だとは言いきれない」
「それでも、この依頼を頼まなければいけないんだ」
「頼めるかい、特異運命座標(イレギュラーズ)?」
カストルは唇を固く結んで、此方を見つめた。
- 反転衝動レゾナンス完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年06月20日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●血の温もりより確かなもの
渇き。
恋しい。
どうして。
どうして、キミは、ボクと、
(どうしてボクは、こんなにも寂しいのに…他の人は、あんなにも楽しくしているんだろう)
惨状。広がる赤。
血の温もりが足を通して全身へと広がりゆく。
命の温もりだ。
『墓場の黒兎』ノア・マクレシア(p3p000713)は問う。
何故ボクはこんなにもさびしいのに、誰も彼も楽しそうなのだろう?
『オトモダチ』になろうよ。囁いたノアの鎌は灯火を消していく。
(五郎さんはもう何も話してはくれないし、あの子も、もう、ボクの所にはいないし、きっと他の子もみんな逃げてしまう……)
落ちた頭を拾い上げる。嗚呼。幸せそうだ。きっとそうだ。
じゃなければ、こんなにも目を開いたりはしないでしょう?
あの子が足りないのかなあ。なんて、のんきに鎌を奮っていたのだけれど。
心に吹き付ける風。冷えた、風。
心の奥底を噴き嵐て、やがてそれは台風のように膨れ上がっていくのだ。
「あの子……? あの子って、誰だっけ」
赤い水たまりを歩く。赤い森を歩く。
赤い君を追う。
嗚呼。解らない。
(……思い出せないから、きっと、あの子なんていなかった。
ボクが作った幻で、空想上のお友達)
オトモダチが、足りない。
「ああ、妬ましい、寂しい。ボクがこんなに寂しいのに、他の人が楽しいなんて……許せない、よね?」
何も語らないぬいぐるみ。ボタンの目が嘲笑うようだ。答えてよ、ねえ。
赤。赤。赤。
オトモダチが笑っている。ボクも、嬉しい。
だから、ずっとオトモダチを増やそう。きっとそれが、いちばんのしあわせだ。
(今までは、無闇に増やさないように、なんて心がけてたけど……やっぱり、自分の衝動に従うのが1番だったんだ。
それに、オトモダチになってくれた子は、逃げないし、ボクを置いていかないでしょう?)
ああ。
でも。
まだまだオトモダチが、足りない。
だから、×さなきゃ。
劈くような悲鳴も、泣き叫んだ罵りも、興味がなかった。
『オトモダチ』は、どこに居ますか。
(きっと、まだ。ボクは寂しいんだ)
キィ、と鳥籠が揺れる。詰まった魂の数に比例して、オトモダチも増える。だから。
(もっと一杯殺して、オトモダチを増やして、そして、いつか、ボクも寂しくないように。みんなみんな、オトモダチにしなきゃ)
ありきたりな喜び。ささいな幸せ。
遠い。
遠い。
覚えていないあの日が、影に揺れた気がした。
●強欲なるままに
「我等キルロードは所詮殺人鬼の家系なんだよ、ガーベラ。俺もお前も……そんな悪人の血が流れてる『悪役』だ」
「どれだけ善行を行い民に尽くそうとその悪の血は覆せない……。
何れ貴様も悪に堕ちる……例えるなら貴様は『悪役令嬢』だな?」
「故にいつか『断罪』の日がやってくる……その時が楽しみだな、ガーベラ?」
消えない声。
木霊する嘲笑。
『noblesse oblige』ガーベラ・キルロード(p3p006172)は立つ。
裁きの刃。ギロチンの前へ。
正しい道ではなかった。
楽な道でもなかった。
それでも。それでも、民を守りたかっただけなのだ。
生き残った者から向けられる憎悪に、ガーベラはそっと目を伏せた。
(キルロード家の祖は『殺戮帝』と呼ばれた傭兵団の団長であり、彼率いる傭兵団『殺戮の道(キリングロード)』は悪逆の限りを尽くした『悪人』。
だから……これはそんな『悪人』の家系の末路なのか?)
護り。守り。慈しみ。
そうして、絆を築いていった民達の亡骸。
生き残った者から向けられる、嫌悪と憎悪。
嗚呼。憎い。
嗚呼。呪わしい。
嗚呼。汚らわしい。
人々の突き刺すような視線。嘗て受けた下腹部の傷が疼く。痛む。
(やめて……。私はただ、認めて欲しかっただけ……。
“ガーベラ・キルロードは『悪役令嬢』じゃない”と……)
滲む涙を汚らわしいと誰かが言った。
零れる雫をおぞましいと誰かが罵った。
溢れる泣き声を誰かが腹立たしいと叫んだ。
どうして、こんな目に合わなくてはいけないの?
姫騎士と呼ばれた彼女。今やその影もなく、ただ魔女と、叫ばれて。
(――嗚呼。こんな想いをするくらいなら、いっそ悪に堕ちて……全てを手に入れ黙らせようか。
強欲に……愛も尊厳も信頼も何もかも、)
ガーベラが嘗て民に向けた優しい声も、あたたかい声色も、ない。
そこにあるのは、絶望と失望と諦観。
鋭い刃が民の心に突き刺さる。
「我が『魅了』で手に入れてやりますわ」
ガーベラ・キルロード。姫騎士。
堕ちる。
堕ちる。
堕ちる。
そうして、彼女は。呼び声にその身をゆだね、姿をくらませた。
そうして、彼女は。高らかに笑った。
ああ、やっと幸せになれるかもしれない!
●たのしいことがだいすき
(勢いで参加しちゃったけど、物騒な話ね。
どうすれば良いかも分からないし、正直さっさと帰りたいかなー、なんて)
ぶらぶらと、混沌に似た世界を歩く『砂漠の冒険者』シグレ・ヴァンデリア(p3p006218)。
「あぁでも、帰ったら美味しいお酒飲めるように、出来ることはやっておきたいわね」
ぐぃ、とのびひとつ。何ら変わりはない。
空だって青い。行きかう人は笑みを浮かべている。
木々は揺らめき、鳥は囀り、そしてシグレはそんな世界を歩いているだけ。
平和だ。
何も、おかしいところなどないように思える。
だから、どうするべきかもわからない。
(こういうときって……自分をしっかり持つとか? うん、そうしよう、自分をしっかり持って)
小さく思案。後に決断。
(私は、私が善いと思うことを成せば良い。
誰かの幸せを願い、そのために行動する。
何が来ても、そこだけはブレないように)
ああ。これならきっと。大丈夫だ。
そう、思っていた。
(嗚呼……でも。
それは本当に、私が善いと思うこと?
私は私のことすら、分かっていないのに。
私の一生のうち、半分はまだ、私の知らない私なのに)
ぐちゃり。滲む赤。
足元を揺らす赤。
息が、詰まった。
「……? ……え、なんで、手に、血がこんな、え?」
足元。
死体。
沢山。
転がる首。
「なにこれ、私こんな景色知ら……」
い。
と、言い切りたかった。
けれど。嗚呼。知っているなんて。思いたく、なかった。
(知って、る?
いえ、知らない、こんなの…!
私、こんなっ……)
人々の怯える顔。
人々の泣き叫ぶ顔。
倒れた躯。
(でも、分かる。臭いとか、温かさとか、感触とか。
いえ違う、知らない…!
でも、いえ、だけど、そんな……)
ふと。
口角が上がっていることに、気付く。
「……これは……私の、知らない、私……?
……なんで、私、笑って……」
だって。そんな。だって。
顔を触る。笑っている。
嗚呼、私が、私が。
人の死を見て、笑っている?
「……ふふ。……そう、か。
そうよね。そういう、善も、あるよね。
私が善と思うこと。
私が気持ちよくなれること。
何も我慢せず、好きに生きること。
そうよね。そうすれば良かったのよね」
嗚呼。
気づく。
それが、好きなのだと。
それが、恋しいのだと。
「ふふ。
そうよ、子供の頃からそう生きていたなら、
今の私だって、そうやって生きれば良いのよ…!
思うまま、力のまま、私だけのために、自由に。
邪魔者は壊して、欲しいものは力付くで手に入れて…!」
シグレは、刃を構えた。
●鉄屑の夢
それは、幻想だった。それは、鉄帝だった。
それは、天義だった。それは、深緑だった。
それは、練達だった。それは、それは、それは――失ったものだった。
得たもの。失ったもの。
それらを、思い出した。
『黒鉄波濤』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)は、確たる確信を得ていた。
これが、『私』なのだ、と。
黄金の腕。槍。
これまでとは違う身体。けれど、嗚呼。解る。
これが、本来の自分なのだと。
(ボクは。いや……。『私』は、捨てたはずのものを、取り戻してしまったから。否、ちがう、これは取り戻してなどいない。
ただの夢だ、幻想だ、然し。魂が云う、なによりもしっくりきてしまっている)
ならば言い直そう。『朽金の主』■■■■は、愛しい子を追っていた。
壊れてしまう程、脆くて、華奢で、弱くて、小さくて、醜くて、愛おしい。
愛を。愛を。慈愛を、与えましょう。
黄金の愛情。血濡れの腕。
幸せになりたいのなら、私が導こう。
愛しているから、壊さねばならない。
これは、矛盾なのだろうか。
愛しているから、手にかけるのだ。
簡単に壊れてしまうから、この手で壊すのだ。
壊れてしまう子は、愛しい子。
嗚呼。愛しい子。どうか、お眠りなさい。
子供が一人。茶の髪を揺らした。
おにいちゃん。その声も、また、届かない。
ああ、可哀想に。
壊れてしまう程にもろい子よ、守ってくれる親鳥の居ない雛鳥よ。
私が握りつぶしてしまえば、死んでしまうのだから。
もう大丈夫。お眠りなさい。
槍で貫く。
愛の証。
受け取っておくれよ、愛しい子。
翳した傲慢。愛と騙った強欲。
嗚呼。なんと脆いことだろう。
(愛おしく、矮小なそれがボクを殺してくれる日をただ夢見るのだ。
もしも願いが叶うなら。全てを捨ててこの手で人を守り、そして誰かが、ボクを、葬る夢を。
微睡みの中。一生この痛みを忘れたまま目を醒ましたくなどないのだから――、)
ヴィクトール。否。■■■■。
嗚呼。堕ちるのだ。諦観の檻へ。
●
悪い夢を見た。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
悪は間違っているのでしょうか。
それが善だと信じているひとがいるのなら、悪は悪だと言いきれるのでしょうか。
それでは、今回のシナリオの説明に入ります。
●目的
擬似的な『反転』或いは『狂気』に抗う。
もしくは、抗わずに従う。
そう言った夢を見る。
ライブノベル世界ですので判定に影響も何も無いです。
ただ、反転衝動に抗ったり抗わなかったり、そういう夢を見るシナリオです。
●世界観
限りなく混沌世界に近い世界です。
行動内容にたとえば『鉄帝』とありましたら、鉄帝を参考にリプレイをお書きすることになると思います。
旅人種さんの場合は元の世界に近くても構いません。その場合は元の世界の情報を教えてくださいね。
●書いて欲しいこと
文字数はできるだけ使い切ってください。
そして、反転した理由も書いてください。
●その他
反転イラストがあるよ! という方でそちらを参考にして場合はプレイングか通信欄に送信時にお書き下さい。
また、公式のスレッドに書き込まれている方はそちらのリンクを貼って頂く形でも構いません。
口調等の把握に繋がりますので有難いです。
●サンプルプレイング
……嗚呼。どうして、わたしは彼を失わなければいけなかったの?
いつもいつもいつもいつも。
わたしから大切ななにかを、この世界は奪っていくのね。
こんな世界、要らない――!!!
以上となります。
皆様のご参加、お待ちしております。
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